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ヒトノ帝国編
第79話 税金と警備兵
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――翌日の早朝、レイナは自分の家から持ち出した荷物を取り出し、ガスコンロでお湯を沸かしてカップ麺を皆で食べる。父親が好きだったので普段からカップ麺の類は大量に保管しておいた事が幸いし、旅の途中でも気軽に食べられる食料はリル達も喜ぶ。
「このカップ麺というのは本当に素晴らしいな……お湯をかけるだけで出来上がる料理など聞いた事もない」
「味も悪くないし、種類も豊富。すぐに食べなければならないという点は残念だが……」
「美味いっ!!」
「うわっ!?ネコミン、そんな大声出せたの!?びっくりした……でも、喜んでくれて何よりだよ」
「「ガツガツッ……!!」」
カップ麺が好評な事にレイナは安心する一方、シロとクロはリル達が用意しておいた干し肉を味わう。朝食を終えた後、レイナはこれからどうするのかを尋ねる。
「今日も野宿するんですか?」
「いや、今日は前に訪れた事がある村へ向かおうと思う。1年ぐらい前に私達が泊った村だ。今から移動すれば昼には辿り着けるだろう」
「村……でも、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、その村は帝国には税金を納めていないからヒトノ帝国の警備兵は存在しない。村人が自力で自分達の村を守っている」
ヒトノ帝国では村や街の住民に税金を納めさせる代わりに魔物から守護する警備兵が送り込まれ、税金を支払えない村には警備兵は滞在する事は無い。そのために貧しい村や、あるいは魔物に対抗する戦力を持つ村には警備兵は存在せず、リル達が1年前に訪れた村は近くの街の冒険者ギルドに依頼して冒険者に街の警備をしてもらっているという。
高い税金を支払って警備兵を滞在してもらうより、魔物の討伐に関してはプロである冒険者に依頼して警護を頼む村は意外と多い。リル達が向かっている村は近くの街の冒険者に依頼して村の防衛を任せているらしく、リルの見立てでは今現在も村は税金を支払わずに冒険者に警備を任せているという。
「1年前に訪れた時に調べたところ、これから向かうホロ村は住民は50人程度、農作物を育てて生活をしている貧しい村だ。冒険者ギルドから派遣される冒険者の中には村の出身の者もいる。きっと、今も税金を支払えずに冒険者に警護を任せているだろう」
「ちなみにヒトノ帝国に支払う税金はいくらぐらいですか?」
「住民1人当たり、月に銀貨5枚だ。少し前までは銀貨2枚程度だったが、魔王軍が出現した時期から税金が値上げしている。これもウサンの仕業だろう」
「銀貨5枚……日本円で5万円ぐらいか」
レイナは頭の中で計算を行い、ヒトノ帝国で暮らす人間は税金として年間で「銀貨60枚」を支払う事になり、日本円に換算すると60万円支払う事になる。魔王軍が現れた途端に税金が2倍以上も上昇した事に対してヒトノ帝国の民衆にも不満は募っているが、最近では魔王軍の件以外でも魔物の被害が増しており、魔物の対策として警備兵に頼らなければならない現状だった。
どうしても税金を支払いきれずに警備兵に頼れない村や街の最後の希望は冒険者だけとなり、冒険者ギルドの方では村や街の防衛の依頼が殺到しているという。銀狼隊は外国から訪れた冒険者集団なのでその手の依頼は引き受ける機会はなかったが、ヒトノ帝国内では税金を支払わずに冒険者に依頼を行う事を問題視されていた。
「冒険者は確かに魔物の討伐に関しては頼りになる存在だ。だが、彼等は警備兵とは異なり、あくまでも金で雇われる存在だ。つまり、仕事を斡旋されても断る権利を持つ」
「私達が調べた結果、有名どころの冒険者達は村や街の防衛の依頼は殆ど引き受けていない。まあ、当然と言えば当然の話だな……税金を支払えない村人たちが出す報酬金などたかが知れている」
「だから村の警備を引き受けるのは目先のお金に目が眩んだ新人の冒険者が多い。階級が高い熟練の冒険者からすれば割に合わない報酬だとしても、階級も低くて報酬が高い仕事は引き受けられない新人冒険者は、多少は報酬が低くても村の防衛の仕事を引き受けてお金を手に入れようとする冒険者も多い」
「そ、そうなんですか……」
「ちなみにケモノ王国では税金の制度は存在するが、一人当たり銅貨5枚程度だ。仮に税金を支払えない村の場合は調査を行い、税金を支払える状態ではない事を確認する事が出来たら無償で1年間は警備を行う制度になっている。良心的だろう?」
「なるほど……国によって制度が違うんですね」
「無論、国を支える以上は民衆から税金を得ないといけない。ケモノ王国とヒトノ帝国ではそもそも規模が違うから税金の値段が異なるのは仕方ない。しかし、例年の2倍以上の税金を支払わされる民の事を考えると同情せざるを得ないがな……」
ヒトノ帝国と比べるとケモノ王国の方は民衆には良心的な値段で税金を取っているらしく、仮に税金を支払えずとも無償で1年間は警備を行う制度が存在する辺り、ヒトノ帝国よりも民衆に優しい政策を取っている。最もヒトノ帝国の方も魔王軍が出現する前はそれほど治安は悪くはなかったらしく、魔王軍を裏で操るウサンのせいで国は傾いているというのがリル達の見解だった。
「このカップ麺というのは本当に素晴らしいな……お湯をかけるだけで出来上がる料理など聞いた事もない」
「味も悪くないし、種類も豊富。すぐに食べなければならないという点は残念だが……」
「美味いっ!!」
「うわっ!?ネコミン、そんな大声出せたの!?びっくりした……でも、喜んでくれて何よりだよ」
「「ガツガツッ……!!」」
カップ麺が好評な事にレイナは安心する一方、シロとクロはリル達が用意しておいた干し肉を味わう。朝食を終えた後、レイナはこれからどうするのかを尋ねる。
「今日も野宿するんですか?」
「いや、今日は前に訪れた事がある村へ向かおうと思う。1年ぐらい前に私達が泊った村だ。今から移動すれば昼には辿り着けるだろう」
「村……でも、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、その村は帝国には税金を納めていないからヒトノ帝国の警備兵は存在しない。村人が自力で自分達の村を守っている」
ヒトノ帝国では村や街の住民に税金を納めさせる代わりに魔物から守護する警備兵が送り込まれ、税金を支払えない村には警備兵は滞在する事は無い。そのために貧しい村や、あるいは魔物に対抗する戦力を持つ村には警備兵は存在せず、リル達が1年前に訪れた村は近くの街の冒険者ギルドに依頼して冒険者に街の警備をしてもらっているという。
高い税金を支払って警備兵を滞在してもらうより、魔物の討伐に関してはプロである冒険者に依頼して警護を頼む村は意外と多い。リル達が向かっている村は近くの街の冒険者に依頼して村の防衛を任せているらしく、リルの見立てでは今現在も村は税金を支払わずに冒険者に警備を任せているという。
「1年前に訪れた時に調べたところ、これから向かうホロ村は住民は50人程度、農作物を育てて生活をしている貧しい村だ。冒険者ギルドから派遣される冒険者の中には村の出身の者もいる。きっと、今も税金を支払えずに冒険者に警護を任せているだろう」
「ちなみにヒトノ帝国に支払う税金はいくらぐらいですか?」
「住民1人当たり、月に銀貨5枚だ。少し前までは銀貨2枚程度だったが、魔王軍が出現した時期から税金が値上げしている。これもウサンの仕業だろう」
「銀貨5枚……日本円で5万円ぐらいか」
レイナは頭の中で計算を行い、ヒトノ帝国で暮らす人間は税金として年間で「銀貨60枚」を支払う事になり、日本円に換算すると60万円支払う事になる。魔王軍が現れた途端に税金が2倍以上も上昇した事に対してヒトノ帝国の民衆にも不満は募っているが、最近では魔王軍の件以外でも魔物の被害が増しており、魔物の対策として警備兵に頼らなければならない現状だった。
どうしても税金を支払いきれずに警備兵に頼れない村や街の最後の希望は冒険者だけとなり、冒険者ギルドの方では村や街の防衛の依頼が殺到しているという。銀狼隊は外国から訪れた冒険者集団なのでその手の依頼は引き受ける機会はなかったが、ヒトノ帝国内では税金を支払わずに冒険者に依頼を行う事を問題視されていた。
「冒険者は確かに魔物の討伐に関しては頼りになる存在だ。だが、彼等は警備兵とは異なり、あくまでも金で雇われる存在だ。つまり、仕事を斡旋されても断る権利を持つ」
「私達が調べた結果、有名どころの冒険者達は村や街の防衛の依頼は殆ど引き受けていない。まあ、当然と言えば当然の話だな……税金を支払えない村人たちが出す報酬金などたかが知れている」
「だから村の警備を引き受けるのは目先のお金に目が眩んだ新人の冒険者が多い。階級が高い熟練の冒険者からすれば割に合わない報酬だとしても、階級も低くて報酬が高い仕事は引き受けられない新人冒険者は、多少は報酬が低くても村の防衛の仕事を引き受けてお金を手に入れようとする冒険者も多い」
「そ、そうなんですか……」
「ちなみにケモノ王国では税金の制度は存在するが、一人当たり銅貨5枚程度だ。仮に税金を支払えない村の場合は調査を行い、税金を支払える状態ではない事を確認する事が出来たら無償で1年間は警備を行う制度になっている。良心的だろう?」
「なるほど……国によって制度が違うんですね」
「無論、国を支える以上は民衆から税金を得ないといけない。ケモノ王国とヒトノ帝国ではそもそも規模が違うから税金の値段が異なるのは仕方ない。しかし、例年の2倍以上の税金を支払わされる民の事を考えると同情せざるを得ないがな……」
ヒトノ帝国と比べるとケモノ王国の方は民衆には良心的な値段で税金を取っているらしく、仮に税金を支払えずとも無償で1年間は警備を行う制度が存在する辺り、ヒトノ帝国よりも民衆に優しい政策を取っている。最もヒトノ帝国の方も魔王軍が出現する前はそれほど治安は悪くはなかったらしく、魔王軍を裏で操るウサンのせいで国は傾いているというのがリル達の見解だった。
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