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城下町編
第74話 さらば帝都
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「レイナ、リルの事は普通に呼べばいい。いちいち興奮されても困る」
「分かった。じゃあ、リルさんと呼びます」
「ええっ……しかも私だけさん付け?」
「今は年上ですので……」
今後はレイナは同世代ぐらいと思われるネコミンとチイの名前は呼び捨てに敬語を止め、年上であるリルにはさん付けを行う事に決めた。話し合いが終わると4人は建物の外へ移動を行い、まずはケモノ王国へ向かうためにリル達が潜伏させた騎獣という存在を呼び出す。
「チイ、シロとクロを呼び出してくれ」
「分かりました」
リルに命じられてチイは懐から「犬笛」を取り出すと、そのまま力強く吹き込む。人間であるレイナには特に何も聞こえないが、獣人族であるリル達には聞こえているのかネコミンは獣耳を隠されている髪の部分を抑え、リルも表面上は平気そうな顔をしているが、頬が微妙に引く付いている。人間領に居る間は変装を下手に解く事は出来ず、獣耳も迂闊には出せない。
しばらく経過すると遠くの方から足音が鳴り響き、やがて街道に2体の大きな狼が出現した。どちらも体躯は馬並みの大きさを誇り、名前の通りに白色と黒色の毛皮で覆われた狼が4人の前へ辿り着く。
「「ウォンッ!!」」
「うわっ……凄く大きな狼?」
「魔獣種の「白狼」と「黒狼」だ。安心しろ、命令を受けない限りは人を襲わないように調教している」
「命令を受けない限り……え、じゃあ命令したら人間にも襲い掛かるんですか?」
「場合によっては、な」
「「クゥ~ンッ?」」
シロとクロと名付けられた狼はこの世界に存在する魔獣らしく、人間に飼育されているのから普通の魔物と違って襲い掛かる事はなく、レイナの姿を見ても不思議そうに首を傾げる。これほど大きな狼を初めて見たレイナは恐る恐る近付くと、2匹はレイナに顔を近づけて鼻を鳴らす。
「「スンスンッ……」」
「あの、何してるんですかこの子達?」
「臭いを嗅いでいるだけだ。お前たち、こいつは私達の仲間だ。お腹が空いても齧ったりするんじゃないぞ」
「お腹すいたら齧ってくるんですか!?」
「大丈夫、定期的に餌を与えれば大人しい良い子達だよ」
「「ウォンッ!!」」
人の言葉を理解しているのかリルに褒められたと判断した狼達は嬉し気に声を上げるが、慌ててチイは背伸びをしてシロとクロの鼻先を掴んで静かにさせる。
「こら、不用意に吠えるな!!他の人間やゴブリン共に見つかるだろうが……!!」
「「フガフガッ……!?」」
「チイ、シロとクロが嫌がってる。離してあげて」
ネコミンに言われてチイは手を離すとシロとクロは落ち込んだように犬耳を伏せ、その場に座り込む。そんなシロとクロに対してレイナは無意識に手を伸ばして頭を撫でていた。
「よしよし……」
「クゥンッ?」
「ウォンッ?」
「ほう、シロとクロを怖がらないとは……大抵の人間はシロ達を見ると警戒するんだが」
「え?こんなに可愛いのに?」
「「クゥ~ンッ♪」」
レイナが2匹の首元を抱きしめるとどちらも嬉しそうな声を上げ、顔を摺り寄せてくる。昔からレイナは動物に好かれやすい体質のため、地球の家で暮らしていた頃は大型犬を飼っていた事もある。慣れた手つきで2匹の気持ちがいいところを撫でてやるとシロとクロも瞬く間にレイナにじゃれつく。
こちらから何もせずに自分からシロとクロを手懐げたレイナにリル達は感心する一方、シロとクロが早くも懐いてくれたのは都合が良く、リルは全員にシロ達の背中に乗り込むように促す。
「よし、では出発しよう。大迷宮から抜け出したばかりで全員疲れているだろうが、今は一刻も早くここを離れる必要がある」
「はい!!」
「レイナ、私の後ろに乗る」
「あ、うん……よろしくね、シロ君」
「ウォンッ!!」
ネコミンがシロに乗り込むとレイナは彼女の後ろに乗り込み、最初は体勢を保つのに苦労したが、どうにか乗る事に成功する。そしてクロの方にはリルが乗り込み、チイがその背中に張り付くと、彼女はシロとクロに号令を行う。
「よし、出発だ!!」
「「ウォオオンッ!!」」
「わあっ!?」
号令を受けた瞬間にシロとクロはすさまじい速度で駆け出し、まるで風の様に廃墟の街を駆け抜ける。そのあまりの速度に街道を歩いていたゴブリン達はレイナ達の姿を発見しても驚いた表情を浮かべ、慌てて追いかけようとしても既に距離は突き放されてしまい、見えない場所にまで移動してしまう。
シロとクロは地球の狼よりも素早く動き、しかも馬には真似できない身軽な動作で障害物を次々と飛び越え、数分も経過しない内に廃墟街を抜け出して草原へと辿り着く。ここから先はレイナも足を踏み入れていない領域であり、振り落とされないようにレイナはネコミンの身体にしがみ付く。
「す、凄い速さ……時速何キロぐらい出てるんですか!?」
「じそく……?よく分からないけど、シロとクロは普通の馬よりもずっと早く動ける。それに戦闘でも役に立つ優秀な狼、だから一緒に連れて来た」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?」
ネコミンの言葉を聞いて機嫌が良くなったのかシロは更に速度を上昇させて駆け抜け、レイナは必死にネコミンに抱き着いて振り落とされないように堪えながら後方を振り返る。
(……必ず、ここへ戻ってくる)
徐々に小さくなっていく帝都の光景を確認したレイナは今は自分に3人のクラスメイトを救い出す力はなく、彼等を助ける事は出来ない。だが、いつか必ず3人と再会するため、帝都へ戻ることを心に誓う――
「分かった。じゃあ、リルさんと呼びます」
「ええっ……しかも私だけさん付け?」
「今は年上ですので……」
今後はレイナは同世代ぐらいと思われるネコミンとチイの名前は呼び捨てに敬語を止め、年上であるリルにはさん付けを行う事に決めた。話し合いが終わると4人は建物の外へ移動を行い、まずはケモノ王国へ向かうためにリル達が潜伏させた騎獣という存在を呼び出す。
「チイ、シロとクロを呼び出してくれ」
「分かりました」
リルに命じられてチイは懐から「犬笛」を取り出すと、そのまま力強く吹き込む。人間であるレイナには特に何も聞こえないが、獣人族であるリル達には聞こえているのかネコミンは獣耳を隠されている髪の部分を抑え、リルも表面上は平気そうな顔をしているが、頬が微妙に引く付いている。人間領に居る間は変装を下手に解く事は出来ず、獣耳も迂闊には出せない。
しばらく経過すると遠くの方から足音が鳴り響き、やがて街道に2体の大きな狼が出現した。どちらも体躯は馬並みの大きさを誇り、名前の通りに白色と黒色の毛皮で覆われた狼が4人の前へ辿り着く。
「「ウォンッ!!」」
「うわっ……凄く大きな狼?」
「魔獣種の「白狼」と「黒狼」だ。安心しろ、命令を受けない限りは人を襲わないように調教している」
「命令を受けない限り……え、じゃあ命令したら人間にも襲い掛かるんですか?」
「場合によっては、な」
「「クゥ~ンッ?」」
シロとクロと名付けられた狼はこの世界に存在する魔獣らしく、人間に飼育されているのから普通の魔物と違って襲い掛かる事はなく、レイナの姿を見ても不思議そうに首を傾げる。これほど大きな狼を初めて見たレイナは恐る恐る近付くと、2匹はレイナに顔を近づけて鼻を鳴らす。
「「スンスンッ……」」
「あの、何してるんですかこの子達?」
「臭いを嗅いでいるだけだ。お前たち、こいつは私達の仲間だ。お腹が空いても齧ったりするんじゃないぞ」
「お腹すいたら齧ってくるんですか!?」
「大丈夫、定期的に餌を与えれば大人しい良い子達だよ」
「「ウォンッ!!」」
人の言葉を理解しているのかリルに褒められたと判断した狼達は嬉し気に声を上げるが、慌ててチイは背伸びをしてシロとクロの鼻先を掴んで静かにさせる。
「こら、不用意に吠えるな!!他の人間やゴブリン共に見つかるだろうが……!!」
「「フガフガッ……!?」」
「チイ、シロとクロが嫌がってる。離してあげて」
ネコミンに言われてチイは手を離すとシロとクロは落ち込んだように犬耳を伏せ、その場に座り込む。そんなシロとクロに対してレイナは無意識に手を伸ばして頭を撫でていた。
「よしよし……」
「クゥンッ?」
「ウォンッ?」
「ほう、シロとクロを怖がらないとは……大抵の人間はシロ達を見ると警戒するんだが」
「え?こんなに可愛いのに?」
「「クゥ~ンッ♪」」
レイナが2匹の首元を抱きしめるとどちらも嬉しそうな声を上げ、顔を摺り寄せてくる。昔からレイナは動物に好かれやすい体質のため、地球の家で暮らしていた頃は大型犬を飼っていた事もある。慣れた手つきで2匹の気持ちがいいところを撫でてやるとシロとクロも瞬く間にレイナにじゃれつく。
こちらから何もせずに自分からシロとクロを手懐げたレイナにリル達は感心する一方、シロとクロが早くも懐いてくれたのは都合が良く、リルは全員にシロ達の背中に乗り込むように促す。
「よし、では出発しよう。大迷宮から抜け出したばかりで全員疲れているだろうが、今は一刻も早くここを離れる必要がある」
「はい!!」
「レイナ、私の後ろに乗る」
「あ、うん……よろしくね、シロ君」
「ウォンッ!!」
ネコミンがシロに乗り込むとレイナは彼女の後ろに乗り込み、最初は体勢を保つのに苦労したが、どうにか乗る事に成功する。そしてクロの方にはリルが乗り込み、チイがその背中に張り付くと、彼女はシロとクロに号令を行う。
「よし、出発だ!!」
「「ウォオオンッ!!」」
「わあっ!?」
号令を受けた瞬間にシロとクロはすさまじい速度で駆け出し、まるで風の様に廃墟の街を駆け抜ける。そのあまりの速度に街道を歩いていたゴブリン達はレイナ達の姿を発見しても驚いた表情を浮かべ、慌てて追いかけようとしても既に距離は突き放されてしまい、見えない場所にまで移動してしまう。
シロとクロは地球の狼よりも素早く動き、しかも馬には真似できない身軽な動作で障害物を次々と飛び越え、数分も経過しない内に廃墟街を抜け出して草原へと辿り着く。ここから先はレイナも足を踏み入れていない領域であり、振り落とされないようにレイナはネコミンの身体にしがみ付く。
「す、凄い速さ……時速何キロぐらい出てるんですか!?」
「じそく……?よく分からないけど、シロとクロは普通の馬よりもずっと早く動ける。それに戦闘でも役に立つ優秀な狼、だから一緒に連れて来た」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?」
ネコミンの言葉を聞いて機嫌が良くなったのかシロは更に速度を上昇させて駆け抜け、レイナは必死にネコミンに抱き着いて振り落とされないように堪えながら後方を振り返る。
(……必ず、ここへ戻ってくる)
徐々に小さくなっていく帝都の光景を確認したレイナは今は自分に3人のクラスメイトを救い出す力はなく、彼等を助ける事は出来ない。だが、いつか必ず3人と再会するため、帝都へ戻ることを心に誓う――
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