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城下町編
第72話 脱走開始!!
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「よし、なら迎えの者が訪れる前に抜け出そう。といっても、この人数でこれだけの荷物があるとなると抜け出すのは苦労しそうだがな……」
「あの、その事なんですけど……実はちょっと考えがあります」
リルはどのように他の者に気付かれずに抜け出すのかを考えるなか、レイナは手を上げて事前に考えていた作戦を話す。この方法ならば確実に他の人間に怪しまれる事もなく全員が抜け出せ、抜け道を通り抜けて王都の外まで脱出できる自信はあった――
――それからしばらく時間が経過し、いつまでも更衣室から出てこない銀狼隊に不審に思った職員が中に入って確認を行うと、更衣室にも浴室の方にも4人の姿が存在しない事に気付く。慌てて職員は更衣室を調べると荷物だけが残された状態である事に気付き、銀狼隊が身に着けていた制服と冒険者ギルドのバッジだけが残されていた。
すぐにギルドマスターのゴオンに報告が届き、彼は消えた4人の捜索を行うのと同時に彼女達が消えた更衣室と浴室を調べた結果、一枚の羊皮紙が発見された。羊皮紙には文章は記されておらず、蛇のような紋様が記されていた。その紋様は過去に「魔王軍」と呼ばれる存在が自分達の象徴の証として使用していた紋様で間違いなく、紋様だけが記された羊皮紙を残して銀狼隊は完全に消えてしまう。
「ギルドマスター……これはどういう事でしょうか?」
「ふむ……この羊皮紙だけが残っていたのか?」
「はい、荷物を確認した限りではレイナという名前の女性の荷物だけが確認されていませんが……」
職員達も対応に困っており、唐突に姿を消した銀狼隊と魔王軍の紋様が刻まれた羊皮紙だけが残され、状況的に考えれば彼女達を攫ったのが魔王軍の仕業なのかと考えられる。しかし、羊皮紙が1枚残されているだけでは魔王軍の犯行とは断定できず、そもそも彼女達が魔王軍に攫われる理由が分からない。
「浴室の窓は開いていたのか?」
「はい、恐らくはここから抜け出したかと思います。実際に裏庭の方にて窓から抜け出す人物を見たという目撃者もいますが……少々気になる点があります」
「ほう、何だ?」
調査の結果、浴室から何者かが抜け出そうとしている姿を発見した目撃者の話によると、窓から出たのは全身にフードを纏って大きなリュックを抱えた人物だけであり、他に誰かが抜け出した様子はないという。目撃者の証言が正しければ浴室の窓から抜け出した人物は1人だけに限られ、銀狼隊の面子と数が合わなかった。
「ん?その目撃者はどうして裏庭に居た?」
「その……言いにくいのですが、目撃者の男は覗きの常習犯のようでして、銀狼隊が浴室に入ると聞いて真っ先に駆けつけて見張っていたようです」
「なんと……それはまた命知らずの男だな」
仮にも白銀級の冒険者を勤める少女たちの裸を覗き込もうとした目撃者の男にゴオンは呆れるが、彼によると銀狼隊が更衣室に入った直後に目撃者は風呂を覗くために窓の傍に居たらしく、彼が目撃したというフードの人物以外は誰も窓から抜け出していないという。
目撃者の証言が事実ならばフードの人物以外に浴室から抜け出した人間はおらず、仮にフードの人物の正体が銀狼隊の誰かだとしても残りの3人が消えた理由が分からなかった。目撃者が嘘を吐いているという可能性もあるが、そんな嘘を吐く理由がない。
「目撃者と銀狼隊の面子は何か関係があったのか?」
「まだ確認は取れていませんが、可能性は低いかと……普段から目撃者の職員は態度が悪く、冒険者の方々からも煙たがられています。特に女性冒険者にはセクハラ行為を何度か行っておりますので嫌われています」
「そんな奴をよく解雇しなかったな!!」
「いえ、今月中に解雇通知を送る予定でした。ですが、彼と銀狼隊が何らかの関係を築いている可能性は低いと思います」
「そうか……となると、消えた者達は何処へ行ったのか分からずじまいか」
ゴオンは取り残された羊皮紙に視線を向け、現在のヒトノ帝国の各地で暴れまわっている「魔王軍」を自称する組織の事は彼も知っている。しかし、その組織を裏で操っている人物に対してもゴオンは心当たりがあった。しかし、今回の出来事が本当に魔王軍の仕業であるのか彼は確信を持てず、姿を消したフードの人物の行方を尋ねる。
「浴室から抜け出した者の特徴は?」
「残念ながら全身をフードで覆い隠していたので正確な容姿は分かりませんが、その人物は獣人族の如く身軽な動作で建物の屋根の上に移動し、そのまま立ち去ったようです。現在、動ける冒険者を全員出動させて捜索していますが、未だに報告は届いていません……」
「そうか、それにしても困ったことになったな。まさか、陛下に謁見する前に姿を消すとは……俺はこの事を陛下にどう報告すればいいと思う?」
「…………」
職員はゴオンの言葉に何も言い返すことが出来ず、よりにもよってアリシアを救い出した4人の冒険者達が一斉に姿を消す事態に陥るなど考えもせず、ゴオンは銀狼隊を迎えに来た兵士達にどのように報告すればいいのか頭を悩ませた――
「あの、その事なんですけど……実はちょっと考えがあります」
リルはどのように他の者に気付かれずに抜け出すのかを考えるなか、レイナは手を上げて事前に考えていた作戦を話す。この方法ならば確実に他の人間に怪しまれる事もなく全員が抜け出せ、抜け道を通り抜けて王都の外まで脱出できる自信はあった――
――それからしばらく時間が経過し、いつまでも更衣室から出てこない銀狼隊に不審に思った職員が中に入って確認を行うと、更衣室にも浴室の方にも4人の姿が存在しない事に気付く。慌てて職員は更衣室を調べると荷物だけが残された状態である事に気付き、銀狼隊が身に着けていた制服と冒険者ギルドのバッジだけが残されていた。
すぐにギルドマスターのゴオンに報告が届き、彼は消えた4人の捜索を行うのと同時に彼女達が消えた更衣室と浴室を調べた結果、一枚の羊皮紙が発見された。羊皮紙には文章は記されておらず、蛇のような紋様が記されていた。その紋様は過去に「魔王軍」と呼ばれる存在が自分達の象徴の証として使用していた紋様で間違いなく、紋様だけが記された羊皮紙を残して銀狼隊は完全に消えてしまう。
「ギルドマスター……これはどういう事でしょうか?」
「ふむ……この羊皮紙だけが残っていたのか?」
「はい、荷物を確認した限りではレイナという名前の女性の荷物だけが確認されていませんが……」
職員達も対応に困っており、唐突に姿を消した銀狼隊と魔王軍の紋様が刻まれた羊皮紙だけが残され、状況的に考えれば彼女達を攫ったのが魔王軍の仕業なのかと考えられる。しかし、羊皮紙が1枚残されているだけでは魔王軍の犯行とは断定できず、そもそも彼女達が魔王軍に攫われる理由が分からない。
「浴室の窓は開いていたのか?」
「はい、恐らくはここから抜け出したかと思います。実際に裏庭の方にて窓から抜け出す人物を見たという目撃者もいますが……少々気になる点があります」
「ほう、何だ?」
調査の結果、浴室から何者かが抜け出そうとしている姿を発見した目撃者の話によると、窓から出たのは全身にフードを纏って大きなリュックを抱えた人物だけであり、他に誰かが抜け出した様子はないという。目撃者の証言が正しければ浴室の窓から抜け出した人物は1人だけに限られ、銀狼隊の面子と数が合わなかった。
「ん?その目撃者はどうして裏庭に居た?」
「その……言いにくいのですが、目撃者の男は覗きの常習犯のようでして、銀狼隊が浴室に入ると聞いて真っ先に駆けつけて見張っていたようです」
「なんと……それはまた命知らずの男だな」
仮にも白銀級の冒険者を勤める少女たちの裸を覗き込もうとした目撃者の男にゴオンは呆れるが、彼によると銀狼隊が更衣室に入った直後に目撃者は風呂を覗くために窓の傍に居たらしく、彼が目撃したというフードの人物以外は誰も窓から抜け出していないという。
目撃者の証言が事実ならばフードの人物以外に浴室から抜け出した人間はおらず、仮にフードの人物の正体が銀狼隊の誰かだとしても残りの3人が消えた理由が分からなかった。目撃者が嘘を吐いているという可能性もあるが、そんな嘘を吐く理由がない。
「目撃者と銀狼隊の面子は何か関係があったのか?」
「まだ確認は取れていませんが、可能性は低いかと……普段から目撃者の職員は態度が悪く、冒険者の方々からも煙たがられています。特に女性冒険者にはセクハラ行為を何度か行っておりますので嫌われています」
「そんな奴をよく解雇しなかったな!!」
「いえ、今月中に解雇通知を送る予定でした。ですが、彼と銀狼隊が何らかの関係を築いている可能性は低いと思います」
「そうか……となると、消えた者達は何処へ行ったのか分からずじまいか」
ゴオンは取り残された羊皮紙に視線を向け、現在のヒトノ帝国の各地で暴れまわっている「魔王軍」を自称する組織の事は彼も知っている。しかし、その組織を裏で操っている人物に対してもゴオンは心当たりがあった。しかし、今回の出来事が本当に魔王軍の仕業であるのか彼は確信を持てず、姿を消したフードの人物の行方を尋ねる。
「浴室から抜け出した者の特徴は?」
「残念ながら全身をフードで覆い隠していたので正確な容姿は分かりませんが、その人物は獣人族の如く身軽な動作で建物の屋根の上に移動し、そのまま立ち去ったようです。現在、動ける冒険者を全員出動させて捜索していますが、未だに報告は届いていません……」
「そうか、それにしても困ったことになったな。まさか、陛下に謁見する前に姿を消すとは……俺はこの事を陛下にどう報告すればいいと思う?」
「…………」
職員はゴオンの言葉に何も言い返すことが出来ず、よりにもよってアリシアを救い出した4人の冒険者達が一斉に姿を消す事態に陥るなど考えもせず、ゴオンは銀狼隊を迎えに来た兵士達にどのように報告すればいいのか頭を悩ませた――
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