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城下町編
第61話 レイナの警告
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話を聞き終えたレイナはリルとネコミンと共にイヤンの様子を伺い、彼が明らかに最初に会った時と雰囲気が違う事を知る。今現在の彼はもう正気ではなく、大迷宮という危機的状況で身近な人間を失ってしまったせいで明らかに精神が壊れていた。
「身近な仲間を失って正気を失う人間は珍しくはない。だが、奴の様に自分だけが不幸だと思い込み、他の人間を巻き込もうとする輩は非常に厄介だ。だが、奴一人だけならばどうにか対処はできる。この縄さえ何とかすれば……」
「……魔物の様の特別な縄だと思う。私達の力でも振り解けない」
高レベルの人間ならば普通の縄ならば力尽くで抜け出す事は出来るが、イヤンが使用したのは魔物を捕縛するために作り出された縄らしく、人間よりも身体能力は優れている獣人のリル達でさえも振り解けない。しかし、レイナの場合は「縄抜け」という技能を持っているので自力で抜け出す事は難しくはない。
「あの、これぐらいの縄なら抜け出せると思います。縄抜けの技能を覚えているので……」
「本当か!?」
「ちょっと待ってください……」
間接を外してレイナは両手と両足を拘束する縄を抜け出そうとすると、どうにか取り外す事に成功し、無事に縄から手足を抜け出す。これで身体が自由になったレイナは急いで他の二人の縄を外そうとする。
「よし、抜け出せた。ちょっと待ってください、すぐに外して……」
「駄目、逃げてっ!!」
「気付かれたぞっ!!」
「えっ!?」
縄を抜け出した際にレイナは無意識に身体を起き上げてしまい、それが仇となって偶然にも振り返ったイヤンがレイナが縄を抜け出した事に気付き、彼は背中の弓矢を取り出して怒鳴りつけた。
「お、お前!!動くんじゃない、殺すぞ!!」
「うっ!?」
「くそっ……!!」
「早く逃げて……!!」
弓矢を向けられたレイナは逃げようとした瞬間に足元に矢を撃ち込まれ、動けなくなってっしまう。チイとネコミンはどうにかレイナを庇おうとするが二人とも拘束されているので動けず、その間にイヤンは次の矢を弓に番えて接近する。
レイナは縄がほどけて油断した自分を恨み、どうすればいいのかを考える。両手を上げた状態でレイナは壁際に移動し、逃げ道を探すが生憎と一番近い通路まで7、8メートルは距離はあった。通路へ逃げ出すために動いたとしてもイヤンに狙い撃ちされるのは目に見えており、他の方法を考えている間にもイヤンはレイナの元へ近寄ってきた。
「ちっ……な、縄抜けの技能を持っていたのか。生意気な奴め……殺してやる!!」
「ま、待て!!」
「レイナ、逃げてっ!!」
「早く走れっ!!」
「…………」
接近してきたイヤンに対してレイナは無意識に後退り、壁に背中が当たる。その様子を見てイヤンはレイナが怯えていると判断し、硬骨な表情を浮かべて弓矢を構えたまま距離を詰める。
「いいぞ、その表情……恐怖に怯える顔が堪らない。人間の女にはもううんざりしていたが、お前よく見たら俺を振った奴と似ているな……殺す前に痛めつけてやる」
「…………」
「おっと、動くな!!下手な真似をしたら今すぐに殺すぞ!!」
レイナが右手を前に差しだすとイヤンは弓を構えて矢を放つ準備を行う。そんな彼に対してレイナは正面から向き合うと、彼にアリシアの安否を尋ねた。
「アリシアさんは無事なんですか?」
「何だと?」
「アリシアさんが死ねば貴方はもう報酬も貰えないはず……だからアリシアさんは生きたまま連れて帰らないといけないはず、そうですよね?」
「お前、いったい何を……」
この状況下でアリシアの安否を心配するレイナにイヤンを含め、リル達でさえも戸惑う。だが、レイナは至って真面目な表情で聞いており、アリシアの安全さえ確認出来れば「反撃」の好機は掴める。
警戒しながらもイヤンは周囲の様子を伺い、チイとネコミンの縄が外されていない事を確認すると彼女達がレイナを助ける事はできない。先ほどから痛めつけているリルも離れた場所に存在し、アリシアに至っては気絶している。誰もレイナを救い出せる状況ではない事は間違いなく、余裕を取り戻したイヤンは笑みを浮かべた。
「安心しろ、アリシア皇女にはお前等の持っていた回復薬と俺が調合した眠り薬を飲ませている。今は意識は戻っていないが、いずれは目を覚ますだろう。最も、その時にはお前等全員は帝城の牢獄の中だろうがな!!」
「そうですか……それを聞いて安心しました」
「何だと……!?」
「動かないでください」
『あっ……』
アリシアが無事である事を確認するとレイナは人差し指を構え、その様子を見たリル達は声を上げ、一方で指を構えられたイヤンは訝し気な表情を浮かべた。そんな彼にレイナは最後の警告を行う。
「この指先を動かせば俺は貴方を動けなくすることができます。だから、このまま武器を置いて降伏してください」
「はっ!?それがお前の遺言か!?」
「もう一度だけ言います、降伏しなければお前は苦しみもがきながら倒れる。それでもいいんだな!?」
語気を強めてレイナはイヤンに怒鳴りつけると、彼は一瞬だけ焦った表情を浮かべたが、苛立ちを露わにして弓に番えた矢を放とうとした。
「うるさい、死ねっ!!」
「……警告はした」
――レナは解析の能力を発動して視界に表示させたイヤンの「詳細画面」に指を走らせ、彼の「レベル」の項目の一部を変化させる。その瞬間、イヤンの肉体に激痛が走り、彼は悲鳴をあげて倒れ込む。
「いでぇえええっ!?」
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
「こ、これは……!?」
「…………」
身体中に走る激痛にイヤンはもだえ苦しみ、弓矢を落としてその場に転がり込む。その様子を見たレイナは弓矢を拐取するとチイとネコミンの元へ戻り、まずは二人の拘束を解放する。その後、地面に転がるイヤンを横切ってリルとアリシアの元へ向かう。
「もう大丈夫です。怪我は平気ですか?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
「おい、あいつに何をしたんだ?」
「……ずっと苦しんでる」
全員の解放に成功するとレイナは安心した表情を浮かべるが、一方で助けられたリル達は地面を転がりまわるイヤンに視線を向けて戸惑い、レイナがイヤンに何をしたのかを問う。
イヤンは身体をのけ反らせたり、無我夢中に転げまわったり、あるいは壁に激突して更に苦痛の表情を抱く。そんな彼を見てレイナは近づき、暴れまわるイヤンに尋ねる。
「大丈夫ですか?」
「いだい、いだい、いだいぃいいいっ……だずげて、だずけてぐれぇっ……!!」
「警告はしました、それを無視したのは貴方です。もうしばらくはそうしてください」
「い、いやだぁああああっ……!?」
結局、レイナはイヤンが激痛に耐え切れずに気絶するまで助けるような真似をせず、リル達の元に戻って遂に再会を果たしたアリシアの様子を伺う。事前にイヤンが言っていた通り、どうやら最低限の治療と眠り薬によって意識を失っているらしく、命に別状はなかった。
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「……魔物の様の特別な縄だと思う。私達の力でも振り解けない」
高レベルの人間ならば普通の縄ならば力尽くで抜け出す事は出来るが、イヤンが使用したのは魔物を捕縛するために作り出された縄らしく、人間よりも身体能力は優れている獣人のリル達でさえも振り解けない。しかし、レイナの場合は「縄抜け」という技能を持っているので自力で抜け出す事は難しくはない。
「あの、これぐらいの縄なら抜け出せると思います。縄抜けの技能を覚えているので……」
「本当か!?」
「ちょっと待ってください……」
間接を外してレイナは両手と両足を拘束する縄を抜け出そうとすると、どうにか取り外す事に成功し、無事に縄から手足を抜け出す。これで身体が自由になったレイナは急いで他の二人の縄を外そうとする。
「よし、抜け出せた。ちょっと待ってください、すぐに外して……」
「駄目、逃げてっ!!」
「気付かれたぞっ!!」
「えっ!?」
縄を抜け出した際にレイナは無意識に身体を起き上げてしまい、それが仇となって偶然にも振り返ったイヤンがレイナが縄を抜け出した事に気付き、彼は背中の弓矢を取り出して怒鳴りつけた。
「お、お前!!動くんじゃない、殺すぞ!!」
「うっ!?」
「くそっ……!!」
「早く逃げて……!!」
弓矢を向けられたレイナは逃げようとした瞬間に足元に矢を撃ち込まれ、動けなくなってっしまう。チイとネコミンはどうにかレイナを庇おうとするが二人とも拘束されているので動けず、その間にイヤンは次の矢を弓に番えて接近する。
レイナは縄がほどけて油断した自分を恨み、どうすればいいのかを考える。両手を上げた状態でレイナは壁際に移動し、逃げ道を探すが生憎と一番近い通路まで7、8メートルは距離はあった。通路へ逃げ出すために動いたとしてもイヤンに狙い撃ちされるのは目に見えており、他の方法を考えている間にもイヤンはレイナの元へ近寄ってきた。
「ちっ……な、縄抜けの技能を持っていたのか。生意気な奴め……殺してやる!!」
「ま、待て!!」
「レイナ、逃げてっ!!」
「早く走れっ!!」
「…………」
接近してきたイヤンに対してレイナは無意識に後退り、壁に背中が当たる。その様子を見てイヤンはレイナが怯えていると判断し、硬骨な表情を浮かべて弓矢を構えたまま距離を詰める。
「いいぞ、その表情……恐怖に怯える顔が堪らない。人間の女にはもううんざりしていたが、お前よく見たら俺を振った奴と似ているな……殺す前に痛めつけてやる」
「…………」
「おっと、動くな!!下手な真似をしたら今すぐに殺すぞ!!」
レイナが右手を前に差しだすとイヤンは弓を構えて矢を放つ準備を行う。そんな彼に対してレイナは正面から向き合うと、彼にアリシアの安否を尋ねた。
「アリシアさんは無事なんですか?」
「何だと?」
「アリシアさんが死ねば貴方はもう報酬も貰えないはず……だからアリシアさんは生きたまま連れて帰らないといけないはず、そうですよね?」
「お前、いったい何を……」
この状況下でアリシアの安否を心配するレイナにイヤンを含め、リル達でさえも戸惑う。だが、レイナは至って真面目な表情で聞いており、アリシアの安全さえ確認出来れば「反撃」の好機は掴める。
警戒しながらもイヤンは周囲の様子を伺い、チイとネコミンの縄が外されていない事を確認すると彼女達がレイナを助ける事はできない。先ほどから痛めつけているリルも離れた場所に存在し、アリシアに至っては気絶している。誰もレイナを救い出せる状況ではない事は間違いなく、余裕を取り戻したイヤンは笑みを浮かべた。
「安心しろ、アリシア皇女にはお前等の持っていた回復薬と俺が調合した眠り薬を飲ませている。今は意識は戻っていないが、いずれは目を覚ますだろう。最も、その時にはお前等全員は帝城の牢獄の中だろうがな!!」
「そうですか……それを聞いて安心しました」
「何だと……!?」
「動かないでください」
『あっ……』
アリシアが無事である事を確認するとレイナは人差し指を構え、その様子を見たリル達は声を上げ、一方で指を構えられたイヤンは訝し気な表情を浮かべた。そんな彼にレイナは最後の警告を行う。
「この指先を動かせば俺は貴方を動けなくすることができます。だから、このまま武器を置いて降伏してください」
「はっ!?それがお前の遺言か!?」
「もう一度だけ言います、降伏しなければお前は苦しみもがきながら倒れる。それでもいいんだな!?」
語気を強めてレイナはイヤンに怒鳴りつけると、彼は一瞬だけ焦った表情を浮かべたが、苛立ちを露わにして弓に番えた矢を放とうとした。
「うるさい、死ねっ!!」
「……警告はした」
――レナは解析の能力を発動して視界に表示させたイヤンの「詳細画面」に指を走らせ、彼の「レベル」の項目の一部を変化させる。その瞬間、イヤンの肉体に激痛が走り、彼は悲鳴をあげて倒れ込む。
「いでぇえええっ!?」
「うわっ!?」
「にゃうっ!?」
「こ、これは……!?」
「…………」
身体中に走る激痛にイヤンはもだえ苦しみ、弓矢を落としてその場に転がり込む。その様子を見たレイナは弓矢を拐取するとチイとネコミンの元へ戻り、まずは二人の拘束を解放する。その後、地面に転がるイヤンを横切ってリルとアリシアの元へ向かう。
「もう大丈夫です。怪我は平気ですか?」
「あ、ああ……大丈夫だ」
「おい、あいつに何をしたんだ?」
「……ずっと苦しんでる」
全員の解放に成功するとレイナは安心した表情を浮かべるが、一方で助けられたリル達は地面を転がりまわるイヤンに視線を向けて戸惑い、レイナがイヤンに何をしたのかを問う。
イヤンは身体をのけ反らせたり、無我夢中に転げまわったり、あるいは壁に激突して更に苦痛の表情を抱く。そんな彼を見てレイナは近づき、暴れまわるイヤンに尋ねる。
「大丈夫ですか?」
「いだい、いだい、いだいぃいいいっ……だずげて、だずけてぐれぇっ……!!」
「警告はしました、それを無視したのは貴方です。もうしばらくはそうしてください」
「い、いやだぁああああっ……!?」
結局、レイナはイヤンが激痛に耐え切れずに気絶するまで助けるような真似をせず、リル達の元に戻って遂に再会を果たしたアリシアの様子を伺う。事前にイヤンが言っていた通り、どうやら最低限の治療と眠り薬によって意識を失っているらしく、命に別状はなかった。
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