解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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城下町編

第50話 4人行動

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「おいおい、私の許可なくうちの隊の人間をナンパするのは辞めて欲しいな」
「いや、そういうわけでは……すまない、どうやら人違いのようだ」
「いえ……お気に差ならずに」


レイナの顔を見てダガンは首をかしげるが、正体がレアだと気づいたわけではなく、謝罪を行う。リルはさり気無く二人の間に割って入ると、通路を確認してここからどのように進むのかを考える。


「結局、奴等は先に行ってしまったか……」
「全く……団体行動が危険とはいえ、戦闘の際中に先に移動するなんて危険な事を。第三階層の安全地帯で合流すればその事を注意しないといけないな」
「……奴等が第三階層で待っていると思えないが」


ダガンの言葉にチイは難しい表情を浮かべ、彼等の様子を見る限りでは第三階層の安全地帯へ辿り着いたとしても、先に向かった3組の冒険者集団は待機せず、先に進むのではないかと考える。リルとネコミンも意見は同じらしく、このまま冒険者達が他の冒険者と合流するのを黙って待つようには思えなかった。


「あの3組の冒険者集団、明らかにアリシア皇女様の救出よりも第四階層へ潜る事に夢中だった。もしかしたら他の冒険者に出し抜かれる前に自分達だけで先に向かうかもしれない」
「そんな馬鹿な……第四階層の危険性は彼等も十分に知っているのでは!?」
「確かに第四階層が危険地帯という事を知らぬ冒険者はいないだろう。だが、実際に第四階層に入らなければその危険性がどれほどの物なのかは実際には分からない。先行した冒険者達は自分ならば第四階層でも生き残れるという自信があるんだろう……過信かもしれないが」
「くっ……急ごう!!地図によるとこのまま真っすぐの通路を移動すれば早いはずだ!!」


地図を取り出してダガンは現在地を確認すると、急ぎ足で第三階層の安全地帯の最短ルートを選択して移動を行う。しかし、移動の際中にも壁の向こう側から複数の気配をレイナは感じ取り、コボルト達が潜んでいる事に気付く。


「また、コボルト達が近くにいます!!」
「気付いている、奴等の獣臭は酷いからな……というより、お前はよくそんな事が分かるな?もしかして感知系の技能を習得しているのか?」
「あ、はい。気配感知を一応……」
「ほう、それは便利だな。なら、魔物が接近している時はいち早く気付けるのか。人間でその技能を覚えているのは暗殺者ぐらいだと思っていたが……」
「ちなみに私達も覚えている。大抵の獣人族の戦闘職を持つ獣人は気配感知を生まれながらに持ってる」
「へえ、そうなんですか……」
「そこ、移動中に会話は危険だよ!!」


移動中にもレイナはリル達と会話を行っていると、先行していたダガンが注意を行い、彼は地図を頼りに先を急ぐ。しかし、再び壁の向こう側からコボルト達が現れ、レイナ達の追跡を行う。


「ガアアッ!!」
「ウォンッ!!」
「くっ……相手をしている暇はない!!今は逃げる事に集中するんだ!!」
「気が合うな、私もそう思っていた所だ!!全員、遅れるな!!」
「ちょ、ちょっと待って……!!」
「急げ!!もたもたしていると追いつかれるぞ!!」


大将軍であるダガンは普段から身体を鍛えており、人間よりも身体能力も体力も高い獣人族のリル達は難なく長距離を走れるが、レイナの場合は人間でしかもレベルが10しか存在しない。一応はここへ来てから身体を鍛えてはいるが、これまでの長時間の移動で体力を消耗し、徐々に追いつかれていく。

最後尾を移動するレイナはこのままでは自分が真っ先にコボルトに襲われる事を予測し、どうにか事態を切り抜けるために方法を考える。そしてカバンの中に入っている物を利用して何か作り出せないのかを考えた。


(カバンの中にある物……そうだ、これだ!!)


レイナは移動の際中にカバンから袋を取り出すと、少し勿体ない気がするが「宝石」が入った小袋を取り出し、地面に向けてばら撒く。大量の小さな宝石が通路へ広がり、後を追いかけようとしたコボルトの集団は宝石を踏みつけて転倒する。


『ギャインッ!?』
「やった!!」
「おい、何してる!!立ちどまるな!?」


宝石によってコボルトが転倒したのを確認したレイナは歓喜の声を上げるが、先を走っていたチイがレイナの腕を掴み、強制的に連れ出す。コボルト達は無数の宝石を踏みつけて怯み、中には足の裏に悔いいこんで痛そうに呻き声を上げる。

文字変換の能力で「財宝」を作り出したときに出現した宝石の類を全て失ってしまったが、命には代えられず、レイナはチイに引かれながらもコボルト達が追跡しない事に安堵した――




――それから30分後、地図を頼りにレイナ達は第三階層を進み、幾度かコボルトの襲撃を受けたが撃退に成功する。移動の際中にレイナはステータス画面を確認するとレベルが「13」に上昇していた。コボルトやオークを倒した事でレベルが上がったらしく、あと少しで覚えられる技能の習得制限が解除される。


(あと2レベルで15か……やっぱり、地上の魔物よりもこの大迷宮の魔物の方が手強い分、経験値も多いんだな)


レイナには「経験値倍加」「必要経験値削減」の技能のお陰で普通の人間よりもレベルが上がりやすく、何時の間にか召喚された勇者達のレベルを超えていた。しかし、レベルが高くなってもコボルトの動作にはまだ完全には付いて行けず、最初の戦闘の時のように「隠密」と「気配遮断」を利用したフェイント戦法でどうにか戦えていた。


『君の戦法はまるで暗殺者のような戦い方だな。彼等は戦闘は得意としないが、奇襲などの不意打ちに関しては彼等以上に優れた人間はいない』


何度か戦闘を繰り返したとき、リルがレイナの戦い方を見て呟き、その言葉を聞いてレイナは自分の技能を利用した戦法を「奇襲法」と名付ける事にした。名前を付けた方がわかりやすく、いちいち他人に説明するときに楽なので今後は奇襲法と呼ぶ事にした。


「ふうっ……辿り着いた、この通路を曲がれば安全地帯へ辿り着けるはずだ」
「やっとか……今の所、先に向かった奴等の姿は見ていない。既に辿り着いているのか、それとも……」
「すんすん……通路の方から臭いがする。きっと、誰かが待っている」


嗅覚が鋭いネコミンが鼻を鳴らすと、安全地帯の方角から人間の臭いを嗅ぎ取り、それを聞いたダガンは急いで通路を移動する。安全地帯の周辺には魔物は寄り付かないため、移動中な常に感じていた魔物達の気配も感じ取れなくなったレイナは安心して後を追う。


「おう、お前等もやってきたか。ご苦労さん、疲れただろう」
「……やっと来たか」
「やっほ~」
「君たち……最初に言う事はそれだけか?」


ダガンと銀狼隊が到着すると、既に二組の冒険者集団が待ち構え、全員が返り血を浴びた状態(マイの場合は金魚鉢)で待ち構えていた。流石に全員の顔色は疲労を隠せず、ここまでの道中で激しい戦闘を繰り広げてきたらしい。ゴイルは水筒を飲み込み、イヤンは自分の矢筒に入っている矢の本数を数え、マイは汚れてしまった金魚鉢を拭っていた。

彼等の姿を見て勝手に行動した事を注意しようとしたダガンだが、ここで最初に捜索隊を離れたガロが率いる冒険者集団がいない事に気付き、他の者達に彼等の事を問う。


「暴狼団の冒険者達はここにはいないのかい?」
「暴狼団?」
「ガロが率いる冒険者集団の名前だ。私達の銀狼隊と狼の名前が被るという理由で改名しろと絡んできた事もあったよ」
「私達が人間に変装しているのも知らずに獣人族でもないくせに狼の名前を語るなとも言われたな」
「お前なんか猫っぽいから余計に似合わないとも言われた事もある」
「ええっ……」


まるで暴走族のような冒険者集団の名前にレイナは呆れてしまうが、ダガンに尋ねられた他の冒険者は顔を合わせ、未だに彼等は戻っていない事を伝える。
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