解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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城下町編

第46話 古王迷宮 〈第二階層〉

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――5分ほど休憩を終えた後、仲間の火葬を終えて戻って来たダガンとの合流も果たし、捜索隊は第二階層へ続く階段を降りる。階段は随分と深くまで続き、歩き始めてから1分ほど経過してやっと次の階層へと辿り着く。外見は第一階層と特に変化はないが、第二階層に入った途端にレイナは雰囲気が変化した事に気付く。


(……そこら中から気配を感じる。ここが第二階層なのか)


気配感知の技能を発動させると、階段を降りた途端に周辺から複数の魔物の気配を感じ取り、しかも廃墟街で遭遇したゴブリン達よりも強い気配を感じ取った。他の冒険者達も気を引き締めるように武器に手を伸ばし、先頭を移動するゴオンも背中の鉞を掴む。


「ここからは更に移動速度を上げて進むぞ!!次の目的地は第二階層の安全地帯だ!!行くぞ!!」
『おうっ!!』


ゴオンの言葉に従ってレイナ達は早足で移動を行い、地図を確認しながら通路を進む。ここでレイナは第一階層と比べると迷宮の構造が変化している事に気付き、こちらの階層は上の階層と比べても分かれ道が少なく、通路の幅も広かった。


(階層ごとに迷路の構造も違っているのかな……後でリルさんに聞いてみよう)


移動を行いながらもレイナは大迷宮の観察を行い、情報を集めていく。やがて移動をしてから数十秒が経過すると、遂にこの階層を支配する魔物が出現した。


『プギィイイイッ!!』
「前方からオークが10体現れました!!」
「見つかったか……よし、このまま強制突破だ!!」


通路に現れたのは異世界物の小説ではスライムやゴブリンと定番の魔物である「オーク」が出現し、その外見を初めて見たレイナは圧倒される。レイナの頭の中ではオークとは人間と豚が合わさったような生物だったが、こちらの世界のオークはどちらかというと豚というよりは猪が二足歩行で動いているような生物らしく、全身が分厚い毛皮で覆われていた。

こちらのオークはゴブリンがに人間のように衣服を纏うのに対して、下半身に腰蓑のような物を撒きつけているだけだった。しかも1体1体が非常に大きく、体長は2メートル近くは存在する。しかし、冒険者達は恐れる様子もなくオークの集団に向けて突っ込み、まずはガロが先陣を切る。


「退け、邪魔だ!!ここは俺一人で十分だ!!」


腰に装着していた二振りの「カトラス」を引き抜いたガロは凄まじい速度で駆け抜け、正面に立つオークに向けて跳躍すると、彼は両手に掴んだカトラスを逆手で握り締めると、そのままカトラスを獣の牙のように見立てて上空から振り下ろす。


「牙斬!!」
「プギャアアアッ!?」


カトラスがオークの胴体を切り裂いた瞬間、派手な血飛沫が舞い上がり、オークは後方へと倒れ込む。それを確認したガロは刃に付着したオークの血液を見て笑みを浮かべると、そのまま倒れ込んだオークの腹部をトランポリン代わりに利用して跳躍を行う。


「乱牙!!」
『プギィイイイッ!?』


空中で横回転しながら今度は数体のゴブリンに斬撃を浴びせると、ガロは壁に向けて突っ込み、そのまま壁を蹴りつけて更に高く跳躍を行う。そしてカトラスを逆手で握り締めた状態で今度は縦回転を行い、別の個体へ向けてカトラスの刃を放つ。


「輪牙!!」
「ッ――!?」


悲鳴をあげる暇もなく頭部を切り裂かれたオークは絶命し、地面へと崩れ落ちる。ガロは着地すると額の汗を拭い、周囲に立つオークに対して挑発するように声を掛ける。


「どうした?仲間が殺されたのにお前等は見ているだけか?このくそ豚が!!」
「プギィッ……!!」
「へっ、さっさとかかってきやがれ……うっ!?」


そのまま次の得物を狩ろうとしたガロだが、自分の足元がふらついている事に気付き、舌打ちしてカトラスを逆手から普通に持ち直す。その様子を見たイヤンは舌打ちを行い、ゴイルは呆れた声を上げた。


「ちっ……何を考えているんだ奴は」
「あ~あ、たかがオークを相手に戦技を連発させおって、それでは体力が持たんだろうに」
「……戦技?」


ゴイルの発した言葉にレイナは疑問を抱き、戦技という聞きなれない単語にレナは質問を行おうとした時、隣に立っていたリルが先に答える。


「戦技というのは魔法使いが扱う魔法のように、戦闘職の人間だけが扱える必殺技みたいな物だよ。魔法のように種類は豊富だが、どの戦技も使用すると体力を消耗する。しかも、あんな風に考え無しで突っ込んで戦技を連発すれば疲れて身体がふらつくのは当たり前だがな」
「おい、聞こえてるぞリル!!てめえも見てないで手伝いやがれ!!」
「やれやれ、邪魔をするなと言ったのは君の方だろう?」


オークに囲まれたガロはカトラスを振り回して牽制を行い、その様子を見て呆れながらもリルは剣を取ろうとした時、何かを思い直したようにレイナに振り返った。


「……そうだ、レイナ君。ここは君に任せてもいいか?」
「えっ!?」
「リル様!?」
「おおっ……」


唐突なリルの発言にレイナは目を見開き、チイとネコミンも驚くが、レイナが戦うと聞いて他の冒険者達も興味を持ったように彼女に視線を向ける。


「ほう、嬢ちゃんが戦うのか。確かにどの程度の剣の腕前なのか俺たちも見ておきたいところだな」
「わくわく~」
「うむ、確か剣も扱えるといっていたな!!よし、ここは任せるぞ!!」
「ええっ!?」
「おい、何を話しやがる!!さっさとこっちを手伝えっ!!」
『プギィイイッ!!』


勝手に自分が戦う事を決めた他の人間たちにレイナが抗議する暇も与えられず、複数のオークに囲まれたガロが怒声を放つ。雰囲気的に自分が動かなければ他の冒険者達も動く様子がない事を察したレイナは非常に困惑するが、そんな彼女にリルが耳元で囁く。


(いい機会だ、ここで君の力を彼に見せつけってくれ)
(見せつけてくれって……)
(大丈夫だ、廃墟街で見せた君の動きは決して悪くはなかった。それに聖剣がある以上、オークに後れを取る事はない。ここは派手にやってしまった方が良い)
(はあっ……分かりました)


リルに言われて仕方なくレイナはアスカロンに手を伸ばし、通路を塞ぐオークの集団を観察する。幸いな事にオークは仲間を殺したガロにだけ意識を向けており、レイナ達に対しては見向きもしていなかった。その様子を見てこれならばなんとかなるかと思ったレイナはアスカロンを構え、まずは一番近くに位置するオークに視線を向ける。


(この距離なら……何とかなるかな)


オークとの距離を測り、アスカロンを引き抜いたレイナは両手で剣を構える。距離が離れているにも関わらずに剣を構えて立ちどまったレイナに冒険者達は訝しげな表情を浮かべるが、直後にレイナは右足を強く踏み込むと一気にオークの元へ低空跳躍を行う。


「はあっ!!」
「プギィッ!?」


瞬道術を発動して高速移動を行ったレイナはオークの眼前まで迫ると、そのままアスカロンを振り払う。煉瓦の壁でさえも豆腐のよう切り裂く切れ味を誇るアスカロンによってオークは胴体を真っ二つに切り裂かれ、白目を剥いて倒れ込む。


「おおっ!?」
「何っ!?」
「早い!!まるで獣人族並みの速度だな!!」
「しかも、オークを一撃で仕留めただと!?」


その様子を見ていた冒険者達は感嘆の声を上げ、一瞬にして距離を詰めて更に頑丈な毛皮と分厚い脂肪に守られているはずのオークを一撃で切り裂いた事に驚きを隠せない。しかもレイナは続けて別のオークに向かうと、背後から剣を突き立てる。
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