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城下町編
第40話 出発準備
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「出発は30分後、それまでに各自で準備を整えてくれ。大迷宮に挑む以上、準備は怠るな」
「おい、案内役は誰がするんだ。まさかこの地図を買い取れとか言い出すんじゃないだろうな?」
「案内役は俺が勤める!!ギルドの職員で俺以外に同行できる人間はいないからな!!」
「ギルドマスターが自ら……?」
「おお~元黄金級の冒険者が同行なんて心強いね~」
捜索隊にはギルドマスターも加わるらしく、彼が地図で第四階層の出入口まで案内を行い、その後は他の冒険者集団に任せて自身は戻って来た冒険者達のために退路を確保しておくという。
「今回の捜索隊は数十人の銀級冒険者と銅級冒険者の協力の元、安全な通路を確保している。!!前達は無駄な体力を消耗せず、第四階層の攻略だけに集中しろ!!」
「おいおい、そんな大人数で動いてたら魔物どもに狙われるぞ?」
「安心しろ、彼等はいくつかの班に分かれて通路の各場所に拠点を築いている!!後は我々が冒険者が確保している通路を通り、第四階層に目指すだけだ!!」
「既に準備は整っているという事か……見かけの割に抜け目ない男だ!!」
「はっはっはっ!!そう褒めるな!!」
「褒めたのか今の?」
既にギルドマスターの指示によって大迷宮には先行した白銀級以下の冒険者達が待機しており、彼等は第四階層まで繋がる安全な通路を確保しているという。なので道中は魔物と遭遇する確率は低いが、それでも大迷宮は危険な場所なので絶対に安全という確証はない。
30分後までに準備を整えるために会議室の面々はその場で解散となり、銀狼隊の面子も廊下を抜け出すと他の冒険者が声を掛けてきた。最初にレイナの同行を反対した獣人族の青年で名前は「ガロ」という白銀級の冒険者だった。
「おい、リル!!そいつを何処で拾ってきやがった?」
「……ガロか、今は相手をしている暇はない」
「ちっ、相変わらずむかつく野郎だぜ……おい、女!!てめえ、もしも俺達の足手まといになるようなら容赦なく見捨てるからな。どれだけ腕に自慢があるのか知らないが、せいぜい気を付ける事だな」
「あ、どうも……」
「……ふん」
「またね~」
ガロは数人の冒険者を連れて横切ると、その様子を見ていたエルフの青年はレイナを一瞥し、溜息を吐き出すと金魚鉢に乗り込んだ女性を連れて立ち去る。その際に女性だけはレイナに向けて軽く手を振り、エルフの青年の後に続く。その後姿を見送ったレイナにチイが背中から声を掛ける。
「奴等も我々と同じく白金級の冒険者だ。この帝都でも実力者として名を知られている、顔は覚えておいても損はないぞ」
「あの偉そうな狼の獣人はガロ、そして今去っていったのはエルフのイヤンと彼の冒険者集団に入っているマイだ。どちらも優秀な魔術師と治癒魔導士だ」
「ちなみにギルドマスターの名前はゴオン」
「へ、へえっ……」
いきなり大人数の名前を言われても覚えられるかどうか自信はないレイナだが、リル達によると会議室に集まっていた冒険者達はこの帝都でも有名な冒険者らしく、中には将来的には金級へ昇格すると噂されている冒険者も含まれていた。
ちなみに現在の帝都には金級以上の冒険者は存在しない理由は彼等が他の街に存在する大迷宮へ遠征しているらしく、この帝都には本来は3人黄金級の冒険者と10名近くの金級冒険者が存在するという。3名の黄金級冒険者は全員がリーダーを務めており、残りの金級冒険者を取り仕切っている。
「さてと……私達も準備を整えよう。まずは宿に戻り、荷物を整理する必要がある」
「リル様、ということは……」
「ああ、アリシア皇女を救出次第、我々は王都を立ち去ろう。もしも表彰式に呼ばれでもしたら私達の正体に気付く人間もいるかもしれない。レイナ君もそれでいいかい?」
「え?あ、はい……」
「君が無実を証明したいという気持ちは分かる。だが、アリシア皇女を救い出したとしてもそう簡単には君の無実が証明されるとは限らない。今は私達と共に行動する方が安全のはずだ。それに約束しただろう?私達が協力する以上、君も私達のために力を貸すとね」
「そうですね……分かりました」
銀狼隊の力を借りなければレイナはそもそもアリシア皇女の救出のために結成された捜索隊に参加する事も出来ず、御尋ね者としてひっそりと帝都で暮らし続ける事しか出来なかった。しかし、銀狼隊のお陰でアリシア皇女を救出できる好機を得た以上、彼女達に恩を仇で返すわけにはいかないのでレイナもリル達と共にヒトノ帝国を立ち去り、ケモノ王国へ向かう決心をする。
帝都へ残していく勇者達の事は心配だが、現状ではレイナは彼等に会う方法はなく、仮に再会できたとしても自分達が帝国へ利用されようとしている事を伝えても信じてくれるとは限らない。実際に既に他の3人はレイナと違って帝国に手厚い持て成しを受けており、帝国の人間を信用している節がある。そうでなければダガンの鬼のような訓練を受ける度に逃げ出さなかったり、不満を漏らさないはずがない。
もしも勇者達がレイナの言葉を信じても現状では4名の勇者を連れて逃げ出す方法はなく、全ての勇者が逃走を計ろうとしたら帝国も全力で捕まえようとするだろう。そうなれば国外逃亡も難しく、残念ながら今の状況ではレイナは他の勇者を救い出す事は不可能だった。
(3人の事も心配だけど、今はアリシアさんを救い出す事だけを考えよう。そうだ、俺も荷物を何とかしないと……)
この世界に訪れてレイナは文字変換の能力で色々と作り出しており、まずはフラガラッハとアスカロン、それと資金の確保のために用意した「財宝」を思い出す。最初に当面の生活費の確保のために作り出したのだが、未だにレイナは100枚を超える金貨と高額な値打ちがあると思われる宝石を所有している事を思い出し、逃げ出す前に荷物は持ち帰る必要がある。
(衣服の類も結構買っちゃったし、移動するとなると相当な大荷物になりそうだな……異世界物の小説だと、大抵はアイテムボックスとか収納魔法とかいう異空間に荷物を預けて持ち運ぶ事ができるパターンが多いけど、生憎と技能の中にはそんな便利そうな能力は見当たらなかったな……)
残念ながらレイナが調べた限りではSPを消費して覚える技能の中に「魔法」の類は存在せず、職業が魔術師ではない自分では魔法を覚える事が出来ないのかとレイナは考える。
出発前に銀狼隊は宿へ戻り、各自で荷物の整理と大迷宮へ向かうための準備を整える中、レイナは机の上に乗った金貨と宝石が入った袋、他にも購入した衣服の類を見て頭を悩ませる。どちらも持ち運ぶにはあまりにも重すぎるため、どうにか処分しなければならない。
「困ったな、これどうしよう。全部は持ち帰れるはずがないし……流石にこのカバンじゃ入らないよな」
レイナは外出の際に持っていくカバンに視線を向け、大きさ的に考えても残念ながら全部は入りきらない。せいぜい金貨が入った袋と宝石が入った袋ぐらいは無理に詰め込められるが、大迷宮へ行くというのに余分な荷物を持ち込むのはさけなければならなかった。
時と場合によってはこの宿屋に戻らずに出発する可能性もあるため、いらない荷物は処分しなければならない。しかし、処分といっても捨てるのも勿体ないく、かといって欲を出して持ち込めば命取りとなる。
「どうにかならないかな……ん?待てよ、そういえばこれを買ったときに……」
こちらのカバンを購入した際、レイナは店内で解析の能力を使用した。持ち運ぶのに不便はない程度の大きさで、頑丈な品物がないのかを調べようとした時、カバンの詳細画面を確認して購入を行った事を思い出す。その際に画面に表示された文章の事を思い出したレイナは今一度カバンに解析の能力を発動させて詳細画面を開く。
『カバン――革製で作り出されたカバン。見かけよりもかなり頑丈に出来ており、小さい荷物も収納して持ち運ぶ事が出来る』
「これ……もしかしたら」
詳細画面に表示された文字を確認したレイナは無意識に指を伸ばし、画面の文章を変更させる。その直後、カバンが光り輝き、画面に表示された説明文が変化した――
「おい、案内役は誰がするんだ。まさかこの地図を買い取れとか言い出すんじゃないだろうな?」
「案内役は俺が勤める!!ギルドの職員で俺以外に同行できる人間はいないからな!!」
「ギルドマスターが自ら……?」
「おお~元黄金級の冒険者が同行なんて心強いね~」
捜索隊にはギルドマスターも加わるらしく、彼が地図で第四階層の出入口まで案内を行い、その後は他の冒険者集団に任せて自身は戻って来た冒険者達のために退路を確保しておくという。
「今回の捜索隊は数十人の銀級冒険者と銅級冒険者の協力の元、安全な通路を確保している。!!前達は無駄な体力を消耗せず、第四階層の攻略だけに集中しろ!!」
「おいおい、そんな大人数で動いてたら魔物どもに狙われるぞ?」
「安心しろ、彼等はいくつかの班に分かれて通路の各場所に拠点を築いている!!後は我々が冒険者が確保している通路を通り、第四階層に目指すだけだ!!」
「既に準備は整っているという事か……見かけの割に抜け目ない男だ!!」
「はっはっはっ!!そう褒めるな!!」
「褒めたのか今の?」
既にギルドマスターの指示によって大迷宮には先行した白銀級以下の冒険者達が待機しており、彼等は第四階層まで繋がる安全な通路を確保しているという。なので道中は魔物と遭遇する確率は低いが、それでも大迷宮は危険な場所なので絶対に安全という確証はない。
30分後までに準備を整えるために会議室の面々はその場で解散となり、銀狼隊の面子も廊下を抜け出すと他の冒険者が声を掛けてきた。最初にレイナの同行を反対した獣人族の青年で名前は「ガロ」という白銀級の冒険者だった。
「おい、リル!!そいつを何処で拾ってきやがった?」
「……ガロか、今は相手をしている暇はない」
「ちっ、相変わらずむかつく野郎だぜ……おい、女!!てめえ、もしも俺達の足手まといになるようなら容赦なく見捨てるからな。どれだけ腕に自慢があるのか知らないが、せいぜい気を付ける事だな」
「あ、どうも……」
「……ふん」
「またね~」
ガロは数人の冒険者を連れて横切ると、その様子を見ていたエルフの青年はレイナを一瞥し、溜息を吐き出すと金魚鉢に乗り込んだ女性を連れて立ち去る。その際に女性だけはレイナに向けて軽く手を振り、エルフの青年の後に続く。その後姿を見送ったレイナにチイが背中から声を掛ける。
「奴等も我々と同じく白金級の冒険者だ。この帝都でも実力者として名を知られている、顔は覚えておいても損はないぞ」
「あの偉そうな狼の獣人はガロ、そして今去っていったのはエルフのイヤンと彼の冒険者集団に入っているマイだ。どちらも優秀な魔術師と治癒魔導士だ」
「ちなみにギルドマスターの名前はゴオン」
「へ、へえっ……」
いきなり大人数の名前を言われても覚えられるかどうか自信はないレイナだが、リル達によると会議室に集まっていた冒険者達はこの帝都でも有名な冒険者らしく、中には将来的には金級へ昇格すると噂されている冒険者も含まれていた。
ちなみに現在の帝都には金級以上の冒険者は存在しない理由は彼等が他の街に存在する大迷宮へ遠征しているらしく、この帝都には本来は3人黄金級の冒険者と10名近くの金級冒険者が存在するという。3名の黄金級冒険者は全員がリーダーを務めており、残りの金級冒険者を取り仕切っている。
「さてと……私達も準備を整えよう。まずは宿に戻り、荷物を整理する必要がある」
「リル様、ということは……」
「ああ、アリシア皇女を救出次第、我々は王都を立ち去ろう。もしも表彰式に呼ばれでもしたら私達の正体に気付く人間もいるかもしれない。レイナ君もそれでいいかい?」
「え?あ、はい……」
「君が無実を証明したいという気持ちは分かる。だが、アリシア皇女を救い出したとしてもそう簡単には君の無実が証明されるとは限らない。今は私達と共に行動する方が安全のはずだ。それに約束しただろう?私達が協力する以上、君も私達のために力を貸すとね」
「そうですね……分かりました」
銀狼隊の力を借りなければレイナはそもそもアリシア皇女の救出のために結成された捜索隊に参加する事も出来ず、御尋ね者としてひっそりと帝都で暮らし続ける事しか出来なかった。しかし、銀狼隊のお陰でアリシア皇女を救出できる好機を得た以上、彼女達に恩を仇で返すわけにはいかないのでレイナもリル達と共にヒトノ帝国を立ち去り、ケモノ王国へ向かう決心をする。
帝都へ残していく勇者達の事は心配だが、現状ではレイナは彼等に会う方法はなく、仮に再会できたとしても自分達が帝国へ利用されようとしている事を伝えても信じてくれるとは限らない。実際に既に他の3人はレイナと違って帝国に手厚い持て成しを受けており、帝国の人間を信用している節がある。そうでなければダガンの鬼のような訓練を受ける度に逃げ出さなかったり、不満を漏らさないはずがない。
もしも勇者達がレイナの言葉を信じても現状では4名の勇者を連れて逃げ出す方法はなく、全ての勇者が逃走を計ろうとしたら帝国も全力で捕まえようとするだろう。そうなれば国外逃亡も難しく、残念ながら今の状況ではレイナは他の勇者を救い出す事は不可能だった。
(3人の事も心配だけど、今はアリシアさんを救い出す事だけを考えよう。そうだ、俺も荷物を何とかしないと……)
この世界に訪れてレイナは文字変換の能力で色々と作り出しており、まずはフラガラッハとアスカロン、それと資金の確保のために用意した「財宝」を思い出す。最初に当面の生活費の確保のために作り出したのだが、未だにレイナは100枚を超える金貨と高額な値打ちがあると思われる宝石を所有している事を思い出し、逃げ出す前に荷物は持ち帰る必要がある。
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出発前に銀狼隊は宿へ戻り、各自で荷物の整理と大迷宮へ向かうための準備を整える中、レイナは机の上に乗った金貨と宝石が入った袋、他にも購入した衣服の類を見て頭を悩ませる。どちらも持ち運ぶにはあまりにも重すぎるため、どうにか処分しなければならない。
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レイナは外出の際に持っていくカバンに視線を向け、大きさ的に考えても残念ながら全部は入りきらない。せいぜい金貨が入った袋と宝石が入った袋ぐらいは無理に詰め込められるが、大迷宮へ行くというのに余分な荷物を持ち込むのはさけなければならなかった。
時と場合によってはこの宿屋に戻らずに出発する可能性もあるため、いらない荷物は処分しなければならない。しかし、処分といっても捨てるのも勿体ないく、かといって欲を出して持ち込めば命取りとなる。
「どうにかならないかな……ん?待てよ、そういえばこれを買ったときに……」
こちらのカバンを購入した際、レイナは店内で解析の能力を使用した。持ち運ぶのに不便はない程度の大きさで、頑丈な品物がないのかを調べようとした時、カバンの詳細画面を確認して購入を行った事を思い出す。その際に画面に表示された文章の事を思い出したレイナは今一度カバンに解析の能力を発動させて詳細画面を開く。
『カバン――革製で作り出されたカバン。見かけよりもかなり頑丈に出来ており、小さい荷物も収納して持ち運ぶ事が出来る』
「これ……もしかしたら」
詳細画面に表示された文字を確認したレイナは無意識に指を伸ばし、画面の文章を変更させる。その直後、カバンが光り輝き、画面に表示された説明文が変化した――
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