解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
39 / 367
城下町編

第39話 大迷宮の仕組み

しおりを挟む
「これは……古王迷宮の各階層の地図か」
「古王迷宮……?」
「この王都に存在する大迷宮の名前だ!!ここにいる冒険者全員が知っての通り、この古王の迷宮は第一から第五階層まで存在する!!そして現在、黄金級と金級を除いた冒険者が立ち寄る事が許されているのは第三階層までだ!!」


机の上には4枚の地図が並べられ、それぞれがかなり大きな見取り図であり、しかも空白の部分も多い。この4枚の地図が現在冒険者達が把握している大迷宮の階層の地図であり、第五階層を除いた全ての階層の地図らしい。


「現在のギルドが把握している各階層の地図だ!!各自、自分で制作した地図を持っているかもしれんが、これがギルドが調査員を派遣して作り上げた地図だと思ってくれ」
「ちっ……嫌にいなるほど精巧だな。こっちは大金を支払ってわざわざ地図製作(マッピング)の技能を持つ奴を雇って作り上げたのによ」
「この地図の複製があるなら貰えませんかね?」
「金さえ払えば作ってやろう!!だが、今は皇女様を救う事だけに集中しろ!!」


ギルドマスターは第四階層の地図を指差し、アリシア皇女が最後に訪れたと思われる階層を示す。第四階層は他の三つの階層の地図の中でも最も空白の部分が多く、せいぜい半径50メートル程度の範囲内の地図しか記されていなかった。


「大迷宮で探索を行っていた冒険者の話によると、最後にアリシア皇女を発見したのはこの第四階層の入口だ!!アリシア皇女は騎士団を引き連れて第四階層へ続く階段を降りてから消息を絶った!!」
「第四階層ですか……それはまた、厄介な場所に行きましたわね」
「ちっ、危険区域か。面倒だな」
「第四階層の地図がはどうしてこんなに空白があるんですか?」


地図の空白が目立つのでレイナは尋ねると、ギルドマスターは難しい表情を浮かべながら理由を話す。


「それは第四階層が未だに完全に踏破されていないからだな!!この階層へは過去に何百人の冒険者が挑んだが、生きて帰ってこれたのは一握りだ!!殆どの人間が第四階層へ挑み、そのまま帰ってこない!!それほどまでに危険な場所なのだ!!」
「現在まで第四階層で確認された全ての魔物が第一級危険種として指定されている。だから第四階層への立ち入りは基本的には金級以上の冒険者しか禁止されているんだ。さらに最下層の第五階層に至ってはここ100年の間は誰も踏み入れたことがないらしい」
「それはどうかな~?黄金級の人達ならもしかしたら皆に黙って第五階層まで入ってたりして~」
「その可能性はあり得なくもないな。あいつら、裏で何をしているのか分からねえからな」


現時点で第四階層へ入る事が出来るのは金級以上の冒険者のため、現時点ではこの場に存在する誰もが第四階層へ立ち入った事はない。最も立ち入りが禁止されているといっても別に出入口で誰かが見張っているわけでもないので、内密に第四階層に挑んだ冒険者も存在してもおかしくはない。

アリシアは冒険者ではないが、大迷宮を管理しているのはヒトノ帝国のため、彼女と騎士団だけは特例として第四階層へ挑むことが許可されている。最も聖剣フラガラッハを所持していなければアリシアも騎士団も入る事は許されなかっただろうが、彼女は幾度となく第四階層へ陥り、貴重な物資を回収して帰還を果たしている。しかし、今回に限っては戻ってくる様子がない。


「アリシア皇女は第四階層へ向かったのは第四階層に出現するある魔物の素材の回収のためだ!!」
「素材だと?一体何の魔物だ?」
「ゴーレムだ!!お前等も名前ぐらいは知っているだろう?鋼鉄よりも硬い岩石で構成された人型の魔物だ!!頑丈で力も強く、しかも危険を察すると逃走したり、他の仲間を呼ぶ程度の知能もある強敵だ!!しかし、奴等を倒せば岩石の体内に秘められている貴重な鉱石や魔石を入手できる!!」
「鉱石?」
「ミスリルと呼ばれる金属の鉱石だ!!鋼鉄の数倍以上の強度を誇り、さらに魔法に対する強い耐性を誇る!!それでいながら加工は難しくはなく、様々な武器や防具の素材として利用される!!鉱山で発掘も出来るが、大迷宮に生息するゴーレムから採取できるミスリルの方が質量が高い!!」
「それに手に入るのは鉱石だけではありません。ゴーレムの体内には「魔水晶」と呼ばれる純度が高い魔石が存在し、この魔水晶がゴーレムの肉体を構成する「核」です。体内の魔水晶を破壊すればゴーレムは死亡しますが、魔水晶が無傷の場合は何度でも肉体を再生させます。もしも魔水晶を破壊せずに取り出す事が出来ればギルドで高く買い取らせていただきます」
「そ、そうですか……あの、途中で脱出する方法とかはないんですか?」
「ない!!それと各階層繋がる階段は階層ごとに位置が異なる!!だから冒険者は徒歩で第四階層まで移動しなければならん!!」


アリシアが大迷宮に挑んだのは「ゴーレム」と呼ばれる魔物の素材が目当てらしく、彼女は騎士団を同行させて第四階層まで挑んだ所は確認されているが、それ以降の彼女の姿を見た者はおらず、連絡も途絶えたという。第一階層から第四階層まで移動するだけでも時間が掛かり、しかもゲームとは違って簡単に外へ脱出する方法もないという。

思っていたよりも大迷宮という場所が危険な場所だと判明し、未だにゴブリン程度の相手しか倒していないレイナは自分が本当に大迷宮に挑んで生き残る事ができるのか不安を抱くが、ここまで来た以上は弱音は吐けずに黙って捜索の方法を聞く事にした。


「まず、我々は第一階層から最短距離で第四階層の出入口まで向かう!!その後は各冒険者集団ごとに分かれて第四階層の捜索を行う!!」
「あれ~皆で行かないの~?」
「当然だ!!何しろ古王迷宮は迷路で構成されているからな!!道幅はせいぜい3メートル程度、しかも魔物が現れた時に大人数で動いていれば通路が狭い環境ではお互いの邪魔となる!!それに人数が多ければ魔物に見つかる可能性も高まるからな!!」
「ちょっと待て、それなら報酬はどうなるんだ?アリシア皇女を救い出した冒険者集団のひとりじめか?」
「安心しろ!!報酬に関しては捜索隊に参加する全ての冒険者に金貨10枚、さらにアリシア皇女を救い出した人間には金貨が100枚贈呈される!!」
『おおっ!!』


アリシアを救い出せば金貨が100枚という言葉に冒険者達は騒ぎ出し、同時にお互いに対抗意識を強める。何としても他の冒険者集団より先にアリシアを見つけ出して自分達の手柄にしようと考える者も居た。しかり、レイナは報酬などどうでもよく、なんとしてもアリシアを救い出す事を誓う。


(この世界で最初に味方になってくれた人だ……何としても助けたい。そして俺の無実を証明してもらうんだ……!!)


レイナはフラガラッハを所有していたためにアリシアの殺害の疑惑を持たれたが、もしも彼女が帰還して命が無事である事が判明すればレイナを処刑に追いやろうとしたウサンの鼻を明かせる事ができる。もしかしたら自分勝手な判断で勇者を殺そうとしたウサンの浅はかさが露呈し、何らかの罪を被せる事ができるかもしれない。

最もレイナの考えはあくまでもアリシアが未だに生きている場合を想定しての話であり、既に彼女が死んでいた場合はどうしようもできない。だが、僅かでも生きている可能性があるのならばレイナは彼女を絶対に見つけ出して救う事を決める。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...