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城下町編
第31話 警告と取引
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「き、貴様!!リル様に何をした!?」
「チイ、駄目……刺激しないで」
「……警告はしましたよ」
青髪の少女はチイというらしく、レイナに短剣を構えるがもう一人の少女がリルを抱き上げながら引き止める。そんな二人に対してレイナは指先を向けると、彼女達は警戒したような表情を浮かべた。それを見てレイナはため息を吐き出し、最後の文字変換の能力を使用する事にした。
(上手く行くかは分からないけど……)
レイナは足元に視線を向け、小石とは呼べないほどの大きさの石を拾い上げる。その彼女の行動に3人は意図が理解出来ずに戸惑うが、レイナは掌に乗った石に対して解析の能力を発動させる。
『石――何の変哲もない石』
「よし……これでいいかな」
「お前、何を……!?」
石を拾い上げて空中で指先を動かしたレイナにチイは戸惑うと、レイナの掌に乗っていた石が唐突に光り輝き、やがて「錠剤」へと変わり果てた。掌に出現した錠剤を見てレイナは安心した表情を浮かべると、チイに向けて放り投げる。
「それを飲ませれば多分、その人は動けるようになると思う」
「なっ!?何だこれは!?」
「薬だよ。見たことないの?」
「薬……?石じゃないの?」
錠剤を受け取ったチイと少女はレイナの言葉を聞いてまじまじと錠剤を見つめ、どうやら二人の反応からこの世界には「錠剤」のようなタイプの薬が存在しない可能性があり、確かに初めて見る人間にとっては得体の知れない物にしか見えないかもしれない。
拾い上げた石を利用して文字変換の能力で名前を「薬」と変換して作り出されたのが「錠剤」だったため、この世界にもレイナは錠剤があるのかと思ったが、どうやら曖昧な意味合いの言葉(文字)では自分の想像した物が作り出される事を改めて思い知る。しかし、リルの身体を治したいと願って文字変換の能力を発動させたのでこの錠剤を彼女が口にすれば助かる可能性はあった。
(まさか自分を殺そうとした相手に情けを掛ける事になるなんて……けど、ここでこの人達と戦ったら俺に勝ち目はない)
最初はリルを戦闘不能に落ち込めば諦めてくれると思ったが、チイも少女も退く気はないらしく、未だに警戒するようにリルを介抱しながらも武器から手を離さない。仮に二人に襲われた場合、レイナは勝てる自信はない。確かに連日のレベル上げで着実に力は身に着けているはずだが、この二人の身体能力は侮れない。
(ここまで全力で逃げたのにこの3人を振り切る事は出来なかった。という事は身体能力はこの3人の方がきっと上のはず……フラガラッハとアスカロンがあるからといっても油断できない。それにもしも戦闘になれば……殺してしまうかもしれない)
3人組の実力は侮れず、仮に戦闘に陥れば最近にこの世界に訪れたばかりのレイナでは実戦経験も戦闘技術も大きな差があるのは間違いない。それに仮に倒せない相手ではなかったとしても、煉瓦をバターのように簡単に切り裂く聖剣を使用して攻撃すれば彼女達を殺してしまうかもしれない。
いくら自分を殺しかけた相手とはいえ、この間までは一般人だったレイナに人殺しの覚悟が簡単に出来るはずがなく、どうにか戦闘を避けるためにレイナは3人に告げる。
「これが最後の警告です。ここで退くのならこちらも貴女達を殺しはしません。但し、もしもまだ俺の命を狙うのなら容赦はしません……ここで全員の身体を麻痺させてゴブリンの餌になってもらう」
「ぐっ……」
「……俺?」
自分が威圧するためにレイナは敢えて最後の言葉は高圧的な態度を取ったが、自分が現在は女である事を忘れて男口調で話した事に少女の方は疑問を抱いたように首を傾げた。だが、チイと呼ばれた少女はレイナの言葉を聞いて自分の掌の錠剤に視線を向け、質問を行う。
「本当に……お前を見逃せば何もしないのか?」
「しない……それと、これは取引です」
「取引、だと?」
「こちらはお前達の正体を知っています。だけど、俺としても他の人間にこちらの正体を知られるわけにはいかない。だからお互いに今日起きた出来事は何も話さない、それを約束してくれるならこっちもそっちの正体を話さない」
「な、なんだと!?」
「……私達の事を知っているの?」
「っ……!?」
レイナの言葉に3人組は驚いた表情を浮かべ、そんな彼女達にレイナは倒れているリルを指差し、彼女の正体を晒す。
「その女の人……いや、女は数日前に帝城へ乗り込み、勇者を殺そうとした。一人は男、もう一人は女……最もどっちの暗殺も失敗しているはずだけど」
「な、何故それをお前が……!?」
「びっくり……」
「っ……!!」
見事にリルの行動を言い当てたレイナに3人組は驚愕し、麻痺で動けないリルも冷や汗を流す。その3人の反応を見てレイナは笑みを浮かべるが、内心は非常に焦っていた。心の中で素直に彼女達が退く様に願い、もう一度忠告を行う。
「どうしてお前達の正体を知っていると思う?それは俺も城の中に居たからだ」
「お前も城に!?」
「どうして?」
「そこまで答える義理はない……だが、忠告しておく。もしもまた勇者の命を狙おうとしたら」
レイナはアスカロンを引き抜くと、近くの建物の壁に向けて接近し、刃を無茶苦茶に振るう。その結果、無残にも切り刻まれた壁がバラバラの瓦礫となって地面に衝突し、土煙が舞い上がる。その光景を見た3人は呆気に取られ、一件は剣術の基礎も出来ていないはずの攻撃のようにしか見えなかったが、煉瓦製の壁を容易く破壊したレイナの膂力に驚かされた。
実際の所はアスカロンの切断力とフラガラッハの攻撃力3倍増の恩恵のお陰なのだが、レイナは自分の力で壁を破壊したかのように見せかけて振り返り、刃を向けながら睨みつける。
「貴女達の誰かが勇者を一人でも殺せば、何処の国へ逃げようと、どんな場所に逃げようと絶対に見つけ出して斬る!!それが嫌ならもう二度と勇者を狙うな!!分かったかっ!?」
『っ……!!』
レイナの怒号に対して3人組は身体を震わせ、彼女達は自分達がレイナを追い込んだと考えていたっが、壁を一瞬で切り刻んだレイナを見て悟った。自分達は彼女を追いこんだのではなく、逆に追い込まれていたのだと知る。
――最も、この場で本当に追い込まれているのはレイナであり、彼女達が激高して襲いかかってきたらどうしようかと内心で本気で焦っていた。本日分の文字変換の文字数を使い果たした以上は致命傷を負っても回復は出来ず、自分の言葉に逆上して3人が襲いかかろうとしたら逃げるしかないレイナは3人が取引に応じる事を切に願う。
やがてレイナの願いが届いたのか、チイと呼ばれた少女は悔し気に錠剤を握り締め、リルに視線を向ける。麻痺されて身体がまともに動けないながらもリルは視線でチイに何かを伝え、彼女は黙って頷いてレイナから頂いた錠剤をリルの口元に押し込む。
「うぐっ……げほ、げほっ!!」
「リル様!?ご無事ですか?」
「平気?」
「ああ……チイ、ネコミン、心配をかけた」
錠剤を飲んだ瞬間にリルは身体が自由に動けるようになったらしく、二人を優しく抱きしめる。だが、そんな彼女を見て一番驚いたのはレイナであり、いくら何でも薬の効果が出るのが早すぎる事に焦った。
(あの薬、こんなに即効性があったのか!?確かに文字変換を発動させた時に「麻痺がすぐに治る薬」が出てくるように願ったけど……)
リルの回復の速さにレイナは驚かされ、彼女が起きた以上は立場は逆転し、これでレイナは本当に後がない。しかし、錠剤を飲んだと言いう事は3人が取引の条件を呑んだと判断したレイナは急いで立ち去ろうとしたが、リルに呼び止められる。
「チイ、駄目……刺激しないで」
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『石――何の変哲もない石』
「よし……これでいいかな」
「お前、何を……!?」
石を拾い上げて空中で指先を動かしたレイナにチイは戸惑うと、レイナの掌に乗っていた石が唐突に光り輝き、やがて「錠剤」へと変わり果てた。掌に出現した錠剤を見てレイナは安心した表情を浮かべると、チイに向けて放り投げる。
「それを飲ませれば多分、その人は動けるようになると思う」
「なっ!?何だこれは!?」
「薬だよ。見たことないの?」
「薬……?石じゃないの?」
錠剤を受け取ったチイと少女はレイナの言葉を聞いてまじまじと錠剤を見つめ、どうやら二人の反応からこの世界には「錠剤」のようなタイプの薬が存在しない可能性があり、確かに初めて見る人間にとっては得体の知れない物にしか見えないかもしれない。
拾い上げた石を利用して文字変換の能力で名前を「薬」と変換して作り出されたのが「錠剤」だったため、この世界にもレイナは錠剤があるのかと思ったが、どうやら曖昧な意味合いの言葉(文字)では自分の想像した物が作り出される事を改めて思い知る。しかし、リルの身体を治したいと願って文字変換の能力を発動させたのでこの錠剤を彼女が口にすれば助かる可能性はあった。
(まさか自分を殺そうとした相手に情けを掛ける事になるなんて……けど、ここでこの人達と戦ったら俺に勝ち目はない)
最初はリルを戦闘不能に落ち込めば諦めてくれると思ったが、チイも少女も退く気はないらしく、未だに警戒するようにリルを介抱しながらも武器から手を離さない。仮に二人に襲われた場合、レイナは勝てる自信はない。確かに連日のレベル上げで着実に力は身に着けているはずだが、この二人の身体能力は侮れない。
(ここまで全力で逃げたのにこの3人を振り切る事は出来なかった。という事は身体能力はこの3人の方がきっと上のはず……フラガラッハとアスカロンがあるからといっても油断できない。それにもしも戦闘になれば……殺してしまうかもしれない)
3人組の実力は侮れず、仮に戦闘に陥れば最近にこの世界に訪れたばかりのレイナでは実戦経験も戦闘技術も大きな差があるのは間違いない。それに仮に倒せない相手ではなかったとしても、煉瓦をバターのように簡単に切り裂く聖剣を使用して攻撃すれば彼女達を殺してしまうかもしれない。
いくら自分を殺しかけた相手とはいえ、この間までは一般人だったレイナに人殺しの覚悟が簡単に出来るはずがなく、どうにか戦闘を避けるためにレイナは3人に告げる。
「これが最後の警告です。ここで退くのならこちらも貴女達を殺しはしません。但し、もしもまだ俺の命を狙うのなら容赦はしません……ここで全員の身体を麻痺させてゴブリンの餌になってもらう」
「ぐっ……」
「……俺?」
自分が威圧するためにレイナは敢えて最後の言葉は高圧的な態度を取ったが、自分が現在は女である事を忘れて男口調で話した事に少女の方は疑問を抱いたように首を傾げた。だが、チイと呼ばれた少女はレイナの言葉を聞いて自分の掌の錠剤に視線を向け、質問を行う。
「本当に……お前を見逃せば何もしないのか?」
「しない……それと、これは取引です」
「取引、だと?」
「こちらはお前達の正体を知っています。だけど、俺としても他の人間にこちらの正体を知られるわけにはいかない。だからお互いに今日起きた出来事は何も話さない、それを約束してくれるならこっちもそっちの正体を話さない」
「な、なんだと!?」
「……私達の事を知っているの?」
「っ……!?」
レイナの言葉に3人組は驚いた表情を浮かべ、そんな彼女達にレイナは倒れているリルを指差し、彼女の正体を晒す。
「その女の人……いや、女は数日前に帝城へ乗り込み、勇者を殺そうとした。一人は男、もう一人は女……最もどっちの暗殺も失敗しているはずだけど」
「な、何故それをお前が……!?」
「びっくり……」
「っ……!!」
見事にリルの行動を言い当てたレイナに3人組は驚愕し、麻痺で動けないリルも冷や汗を流す。その3人の反応を見てレイナは笑みを浮かべるが、内心は非常に焦っていた。心の中で素直に彼女達が退く様に願い、もう一度忠告を行う。
「どうしてお前達の正体を知っていると思う?それは俺も城の中に居たからだ」
「お前も城に!?」
「どうして?」
「そこまで答える義理はない……だが、忠告しておく。もしもまた勇者の命を狙おうとしたら」
レイナはアスカロンを引き抜くと、近くの建物の壁に向けて接近し、刃を無茶苦茶に振るう。その結果、無残にも切り刻まれた壁がバラバラの瓦礫となって地面に衝突し、土煙が舞い上がる。その光景を見た3人は呆気に取られ、一件は剣術の基礎も出来ていないはずの攻撃のようにしか見えなかったが、煉瓦製の壁を容易く破壊したレイナの膂力に驚かされた。
実際の所はアスカロンの切断力とフラガラッハの攻撃力3倍増の恩恵のお陰なのだが、レイナは自分の力で壁を破壊したかのように見せかけて振り返り、刃を向けながら睨みつける。
「貴女達の誰かが勇者を一人でも殺せば、何処の国へ逃げようと、どんな場所に逃げようと絶対に見つけ出して斬る!!それが嫌ならもう二度と勇者を狙うな!!分かったかっ!?」
『っ……!!』
レイナの怒号に対して3人組は身体を震わせ、彼女達は自分達がレイナを追い込んだと考えていたっが、壁を一瞬で切り刻んだレイナを見て悟った。自分達は彼女を追いこんだのではなく、逆に追い込まれていたのだと知る。
――最も、この場で本当に追い込まれているのはレイナであり、彼女達が激高して襲いかかってきたらどうしようかと内心で本気で焦っていた。本日分の文字変換の文字数を使い果たした以上は致命傷を負っても回復は出来ず、自分の言葉に逆上して3人が襲いかかろうとしたら逃げるしかないレイナは3人が取引に応じる事を切に願う。
やがてレイナの願いが届いたのか、チイと呼ばれた少女は悔し気に錠剤を握り締め、リルに視線を向ける。麻痺されて身体がまともに動けないながらもリルは視線でチイに何かを伝え、彼女は黙って頷いてレイナから頂いた錠剤をリルの口元に押し込む。
「うぐっ……げほ、げほっ!!」
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(あの薬、こんなに即効性があったのか!?確かに文字変換を発動させた時に「麻痺がすぐに治る薬」が出てくるように願ったけど……)
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