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城下町編
第29話 侵入者との再会
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――予想外の事態は起きたが、どうにか王都へ続く抜け道が存在する建物の前に辿り着いたレイナはステータス画面を開く。ホブゴブリンの集団を倒した事で大量の経験値が入手したらしく、一気にレベルが「10」まで上昇していた。だが、レベルが上昇しても特に新しい能力は追加されておらず、ゲームのようにレベルを上げれば必殺技や魔法を覚えるわけではないらしい。
「レベルは結構上昇したな……これでやっと他の勇者の皆に追いついたのかな?」
他の勇者たちは初期からレベルが10も存在し、この世界に訪れて数日は掛かったがやっとレイナもクラスメイトへ追いついた事になる。最もレベルが同じだからと言ってステータスが同等とは限らず、現在のレイナはいくつも技能を習得しているのでもしかしたら現時点では他の勇者を勝っていてもおかしくはない。
廃墟街を抜け出し、地下通路を移動して王都へ戻ろうとした時、レイナは建物の方から誰かが出てこようとしている事に気付いて咄嗟に身を隠す。最初は魔物が現れたのかと警戒していたレイナだったが、建物から出てきたのは以前に武器屋で声を掛けてきた女性だった。
(あの女の人は確か前に見た……どうしてこんな所に?)
女性の様子を建物の陰から伺い、疑問を抱いたレイナは「気配遮断」「隠密」を発動させて念入りに気付かれないように心がける。女性の方はレイナに気付いた様子はなく、彼女はハンカチを取り出すと、顔面を拭き取る。すると白色と思われた彼女の肌が褐色へと変わり果て、顔全体を拭うとそこには褐色美人と化した女性の姿が存在した。
「ふうっ……やはり、人の姿を演じるのは神経が使うな」
どうやら化粧か何かで皮膚を白く塗っていた女性は髪の毛を振り払うと、頭の方に動物の耳のような物が現れ、どうやら長い髪の毛でずっと隠していたらしい。レイナは彼女の姿を見てどうやら人間とは異なる種族だと悟る一方、声を聞いて違和感を感じとる。
(この声、前に確かに何処かで聞いたような……思い出した!!あの時、俺を襲った奴だ!?)
レイナは城に存在したとき、自分を襲ってきた侵入者の事を思い出す。ほんの3日前に自分を襲い、そして雛を殺そうとした侵入者の声と同じ声だと気づいたレイナは咄嗟に声を上げそうになる。だが、どうにか口元を抑えて女性の様子を伺い、腰の剣に手を伸ばす。
幸いというべきか女性はレイナの存在に気付いている様子はなく、誰かを待っているのか建物の前に立ち尽くして動く様子はない。それを確認したレイナは女性が本当にあの時の侵入者であるのかを確かめる。
(声はよく似てる、背格好も同じぐらいだ……それにさっきの台詞、どうして人間のふりをして街中に忍び込んでいたんだ?怪しすぎる、やっぱりこの人があの時の……)
女性が城内に侵入した侵入者だと確信したレイナは猛烈に怒りを抱き、彼女のせいで自分は濡れ衣を着せられ、危うく処刑されそうになった事を思い出す。だが、不用意に姿を晒せば逆にレイナの身が危ない。一度は自分を殺しかけた相手に対してレイナは慎重に観察した。
(どうやらここを動く様子はないな……誰かを待っている?ここが待ち合わせ場所なのか?)
建物の前から一歩も動かない女性に対してレイナは冷や汗を流し、自分がどうするべきか考える。ここで彼女を捕まえて帝国に突き出せば自分の無実を晴らせるかと考えたが、すぐにそんな甘い考えは振り払う。
(この人を捕まえても、証拠がなければ誰も俺の無実は証明されない。特にウサンの奴なんて脱走した俺の言葉なんて信じるはずがないな……)
いくらレイナが女性の正体が侵入者だと訴えても、彼女が侵入者である証拠がなければ意味がない。だが、彼女が侵入者である事は間違いなく、ここで見逃すわけにはいかない。それにこのまま放置すれば彼女が他の勇者たちの命を狙う可能性もある。
まずは女性の正体を掴む必要があると判断したレイナは女性が動くのを待とうと決めた時、女性の背後の扉が開き、フードで全身を覆い隠した人物が2人現れた。
(あの恰好は……仲間か?)
新たに現われた二人組の恰好を見てレイナは城内に女性が侵入したときと同じ格好をしている事に気付き、女性は二人を見ると小声で二言三言話し、そのまま3人は建物の奥へと移動する。わざわざ建物から出てきたのに建物に入っていく3人にレイナは疑問を抱くが、自分も後を追う。
扉を開いて中の様子を伺うと3人の姿は見当たらず、周囲を気を付けながらレイナは抜け道が存在する部屋へ向かう。部屋へ入る寸前、レイナは用心して「気配感知」を発動させて3人が部屋の中に存在するのかを確かめる。
(……反応がない?)
気配感知を発動しても何も感じない事に気付いたレイナは中に入り込むと、3人の姿は消えていた。抜け道を通って街へ戻ったのかとレイナは思ったとき、違和感を感じ取った。
(何だ……何かがおかしい)
抜け道を覗きながらレイナは嫌な予感を浮かべ、咄嗟に上空へ顔を向けた瞬間、天井から何かが落ちてくる事に気付き、反射的に身を反らす。
「はああっ!!」
「くっ!?」
天井から何者かが振り下ろした短剣を回避に成功するが、相手は着地すると即座に短剣を突き刺す。それを確認したレイナは後方へ飛んで距離を開き、罠だと気づいた彼女は部屋から抜け出そうとしたが、逃げ道となり得る窓と扉には既に先ほどの女性ともう一人のフードを纏った人物が先回りしていた。
「ほう、気付いたか。気配は完全に殺していたはずだが……」
「……この人、出来る」
「貴様、何者だ!!何故、我々に気付いた!?」
「あはは……何者って、こっちが聞きたいんだけど」
四方ならぬ三方を取り囲まれたレイナは苦笑いを浮かべ、即座に真剣な表情を浮かべて剣を引き抜く。それを見た3人も同時に武器を構え、フードを脱ぎ捨てる。それを見てレイナは全員が女性だと気付き、しかも新たに現れた二人はかなり若いい。どちらも最初に現れた女性と同じく頭には「獣耳」を生やしていた。
最初にレイナに攻撃を仕掛けたのは短髪で青色の髪の毛をしており、顔立ちは幼くて身長は150センチ前後、両手には青色の刃の短剣を握り締めていた。もう片方は紫色の髪の毛を肩甲骨まで伸ばし、眠たそうな目つきに可愛らしく整った顔立ち、それでいながらレイナを上回る程に胸の大きさを誇る。
3人とも美少女(美女)と言っても過言ではない容姿の持ち主だが、その全員に敵意を向けられる方の身となれば見惚れる余裕もなく、レイナは剣を抜いた状態で壁に背を預ける。退路は完全に断たれると、銀髪の女性が腰から青色の刀身の剣を引き抜く。
「その顔、何処かで見たことがあるな……思い出した、武器屋に居た娘か」
「どうも……あの、ちょっと街に戻りたいだけなので通してくれませんかね?」
「そんなわけにはいかん!!我々の正体を知った以上、生かして返さん!!」
「……返さん」
短髪の少女の言葉に眠たそうな目を擦りながらもう一人の少女も答えると、レイナは銀髪の女性に視線を向ける。こちらも二人と同意見なのか口元に笑みを浮かべて剣を構え、それを見たレイナはため息を吐き出す。
(さてと……どうやって逃げようかな)
ここで戦闘に陥ればレイナは3人に勝てる自信はなく、逃げる算段を考える。もしも仮に3人が同時に攻撃を仕掛けてきた場合、反撃も防御も回避も行える自信がないレイナは右手のアスカロンに視線を向け、ある脱出方法を思いつく。
「レベルは結構上昇したな……これでやっと他の勇者の皆に追いついたのかな?」
他の勇者たちは初期からレベルが10も存在し、この世界に訪れて数日は掛かったがやっとレイナもクラスメイトへ追いついた事になる。最もレベルが同じだからと言ってステータスが同等とは限らず、現在のレイナはいくつも技能を習得しているのでもしかしたら現時点では他の勇者を勝っていてもおかしくはない。
廃墟街を抜け出し、地下通路を移動して王都へ戻ろうとした時、レイナは建物の方から誰かが出てこようとしている事に気付いて咄嗟に身を隠す。最初は魔物が現れたのかと警戒していたレイナだったが、建物から出てきたのは以前に武器屋で声を掛けてきた女性だった。
(あの女の人は確か前に見た……どうしてこんな所に?)
女性の様子を建物の陰から伺い、疑問を抱いたレイナは「気配遮断」「隠密」を発動させて念入りに気付かれないように心がける。女性の方はレイナに気付いた様子はなく、彼女はハンカチを取り出すと、顔面を拭き取る。すると白色と思われた彼女の肌が褐色へと変わり果て、顔全体を拭うとそこには褐色美人と化した女性の姿が存在した。
「ふうっ……やはり、人の姿を演じるのは神経が使うな」
どうやら化粧か何かで皮膚を白く塗っていた女性は髪の毛を振り払うと、頭の方に動物の耳のような物が現れ、どうやら長い髪の毛でずっと隠していたらしい。レイナは彼女の姿を見てどうやら人間とは異なる種族だと悟る一方、声を聞いて違和感を感じとる。
(この声、前に確かに何処かで聞いたような……思い出した!!あの時、俺を襲った奴だ!?)
レイナは城に存在したとき、自分を襲ってきた侵入者の事を思い出す。ほんの3日前に自分を襲い、そして雛を殺そうとした侵入者の声と同じ声だと気づいたレイナは咄嗟に声を上げそうになる。だが、どうにか口元を抑えて女性の様子を伺い、腰の剣に手を伸ばす。
幸いというべきか女性はレイナの存在に気付いている様子はなく、誰かを待っているのか建物の前に立ち尽くして動く様子はない。それを確認したレイナは女性が本当にあの時の侵入者であるのかを確かめる。
(声はよく似てる、背格好も同じぐらいだ……それにさっきの台詞、どうして人間のふりをして街中に忍び込んでいたんだ?怪しすぎる、やっぱりこの人があの時の……)
女性が城内に侵入した侵入者だと確信したレイナは猛烈に怒りを抱き、彼女のせいで自分は濡れ衣を着せられ、危うく処刑されそうになった事を思い出す。だが、不用意に姿を晒せば逆にレイナの身が危ない。一度は自分を殺しかけた相手に対してレイナは慎重に観察した。
(どうやらここを動く様子はないな……誰かを待っている?ここが待ち合わせ場所なのか?)
建物の前から一歩も動かない女性に対してレイナは冷や汗を流し、自分がどうするべきか考える。ここで彼女を捕まえて帝国に突き出せば自分の無実を晴らせるかと考えたが、すぐにそんな甘い考えは振り払う。
(この人を捕まえても、証拠がなければ誰も俺の無実は証明されない。特にウサンの奴なんて脱走した俺の言葉なんて信じるはずがないな……)
いくらレイナが女性の正体が侵入者だと訴えても、彼女が侵入者である証拠がなければ意味がない。だが、彼女が侵入者である事は間違いなく、ここで見逃すわけにはいかない。それにこのまま放置すれば彼女が他の勇者たちの命を狙う可能性もある。
まずは女性の正体を掴む必要があると判断したレイナは女性が動くのを待とうと決めた時、女性の背後の扉が開き、フードで全身を覆い隠した人物が2人現れた。
(あの恰好は……仲間か?)
新たに現われた二人組の恰好を見てレイナは城内に女性が侵入したときと同じ格好をしている事に気付き、女性は二人を見ると小声で二言三言話し、そのまま3人は建物の奥へと移動する。わざわざ建物から出てきたのに建物に入っていく3人にレイナは疑問を抱くが、自分も後を追う。
扉を開いて中の様子を伺うと3人の姿は見当たらず、周囲を気を付けながらレイナは抜け道が存在する部屋へ向かう。部屋へ入る寸前、レイナは用心して「気配感知」を発動させて3人が部屋の中に存在するのかを確かめる。
(……反応がない?)
気配感知を発動しても何も感じない事に気付いたレイナは中に入り込むと、3人の姿は消えていた。抜け道を通って街へ戻ったのかとレイナは思ったとき、違和感を感じ取った。
(何だ……何かがおかしい)
抜け道を覗きながらレイナは嫌な予感を浮かべ、咄嗟に上空へ顔を向けた瞬間、天井から何かが落ちてくる事に気付き、反射的に身を反らす。
「はああっ!!」
「くっ!?」
天井から何者かが振り下ろした短剣を回避に成功するが、相手は着地すると即座に短剣を突き刺す。それを確認したレイナは後方へ飛んで距離を開き、罠だと気づいた彼女は部屋から抜け出そうとしたが、逃げ道となり得る窓と扉には既に先ほどの女性ともう一人のフードを纏った人物が先回りしていた。
「ほう、気付いたか。気配は完全に殺していたはずだが……」
「……この人、出来る」
「貴様、何者だ!!何故、我々に気付いた!?」
「あはは……何者って、こっちが聞きたいんだけど」
四方ならぬ三方を取り囲まれたレイナは苦笑いを浮かべ、即座に真剣な表情を浮かべて剣を引き抜く。それを見た3人も同時に武器を構え、フードを脱ぎ捨てる。それを見てレイナは全員が女性だと気付き、しかも新たに現れた二人はかなり若いい。どちらも最初に現れた女性と同じく頭には「獣耳」を生やしていた。
最初にレイナに攻撃を仕掛けたのは短髪で青色の髪の毛をしており、顔立ちは幼くて身長は150センチ前後、両手には青色の刃の短剣を握り締めていた。もう片方は紫色の髪の毛を肩甲骨まで伸ばし、眠たそうな目つきに可愛らしく整った顔立ち、それでいながらレイナを上回る程に胸の大きさを誇る。
3人とも美少女(美女)と言っても過言ではない容姿の持ち主だが、その全員に敵意を向けられる方の身となれば見惚れる余裕もなく、レイナは剣を抜いた状態で壁に背を預ける。退路は完全に断たれると、銀髪の女性が腰から青色の刀身の剣を引き抜く。
「その顔、何処かで見たことがあるな……思い出した、武器屋に居た娘か」
「どうも……あの、ちょっと街に戻りたいだけなので通してくれませんかね?」
「そんなわけにはいかん!!我々の正体を知った以上、生かして返さん!!」
「……返さん」
短髪の少女の言葉に眠たそうな目を擦りながらもう一人の少女も答えると、レイナは銀髪の女性に視線を向ける。こちらも二人と同意見なのか口元に笑みを浮かべて剣を構え、それを見たレイナはため息を吐き出す。
(さてと……どうやって逃げようかな)
ここで戦闘に陥ればレイナは3人に勝てる自信はなく、逃げる算段を考える。もしも仮に3人が同時に攻撃を仕掛けてきた場合、反撃も防御も回避も行える自信がないレイナは右手のアスカロンに視線を向け、ある脱出方法を思いつく。
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