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城下町編
第23話 廃墟街
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「あ、レベルが上がってる……ゴブリン4体でレベル2か。早いのか遅いのか……」
大抵のゲームではゴブリンは最弱の魔物なので経験値は低いが、だからといってこちらの世界のゴブリンの経験値が低いとは限らない。だが、戦ってみた感じでは強敵という程ではなく、聖剣の恩恵を受けているレイナの敵ではない。
フラガラッハの刃に視線を向けると、特に刃毀れ一つも起こしておらず、何故かゴブリンの血も消えていた。恐らくは「自動修復」の効力のお陰で刃を錆びる要素を持つ血液さえも弾く効果があるのかもしれず、この調子ならば刃毀れも錆びる事も恐れる事なく扱えそうだった。
「よし、この調子で倒していくか。けど、普通の攻撃も強化されるなんて凄い剣だな……」
『ギギィイイイッ!!』
街道を進もうとしたレイナの背後から鳴き声が響き、慌てて振り返ると数十メートル離れている大きな建物の屋根の上からゴブリンが存在した。しかも数は多く、建物の中に入っていた他のゴブリンも姿を現し、仲間を襲ったレイナを発見して怒りの咆哮を放つ。
(やばい!?気を抜きすぎて技能を解除してた!?)
隠密の効果が発揮されているのであれば遠方の存在からはレイナの姿は透けるように見えにくいはずだが、どうやら戦闘に夢中になって技能が切れていたらしく、慌ててレイナは距離を取ろうとする。技能を発動させる際は常にある程度は集中しなければならず、気を抜きすぎると勝手に解除されてしまう事を知る。
『ギィイイイッ!!』
「こっちもかっ!?」
距離が離れているので十分に逃げ切れると思ったレイナだが、前方の方からも鳴き声が響き渡り、街道に他のゴブリンが十数匹も出現した。慌ててレイナは引き返そうとしたが、既に後方からもゴブリンが迫り、一本道の通路で前後挟み撃ちにされてしまう。
ゴブリンは力は弱いが動きは素早く、しかも人間のように武器を扱い、集団で行動を行う。新人の冒険者達はゴブリンを侮って返り討ちにされる事も多く、今回の事態はレイナが魔物の特徴を把握せずに無暗に住処に陥ったために起きた出来事であり、不運ではなく必然の結果である。
『ギギィイイッ……!!』
「なっ、多すぎ……!?」
合計で30体は超えるゴブリンに囲まれたレイナはフラガラッハを構え、どうするべきか悩む。そして考え抜いた結果、やはり戦闘ではなく逃走を選択した。
『ギィイイッ!!』
「くっ……い、けぇっ!!」
ゴブリンが一斉に迫ると、レイナは勢い良く近くの建物に駆け出し、瞬動術を発動させて上空へ飛ぶ。その結果、建物の屋根まで跳躍したレイナを見てゴブリン達は呆気に取られ、屋根に着地したレイナは転げ落ちないように必死にしがみつく。
「た、助かった……?」
『ギギィイイッ!!』
「うわっ、止めろっ!?」
だが、屋根に逃走したレイアに対して諦めの悪いゴブリン達は足元の石を拾い上げて投擲を行い、慌ててレイナはその場を離れると、別の建物の上に飛び移る。レベルが上昇したお陰か瞬動術を発動しても体力の消耗が少しだけ抑えられ、どうにかゴブリンの大群から逃れる事に成功した――
――ゴブリン達を撒いた後、レイナは今度は油断しないように常に技能を発動し続けるように心がけ、ゴブリンが3体以上で行動している場合は不用意に襲わないように注意する。安全に確実に倒せると判断したゴブリンだけを狙い、まるで暗殺者のような気分になりながらレイナはゴブリンを狩り続けた。
「せいっ!!」
「ギャウッ!?」
「ギィアッ!?」
建物の中で木の実を喰らっていた2体のゴブリンの首を切り落としたレイナは額の汗を拭い、これで合計で15体目のゴブリンの討伐に成功した。ステータスを確認するとレベルの方も「3」に上昇しており、廃墟街に到着してからだいたい1時間ほど経過していた。
「ふうっ……やっとレベル3か。思ったよりもレベルが上がらないな、やっぱりゲームみたいに上手くはいかないか」
聖剣フラガラッハの「経験値増量」技能の「経験値倍加」「必要経験値削減」の効果はあるはずだが、やはりゴブリンだけを倒しても経験値はそれほど貰えないのか、予想よりもレベルの上昇が遅い。最もレイナも確実に倒せる相手だけを厳選して戦闘を挑んでいるので時間が掛かってしまうのも無理はない。
流石に1時間も動き続けると疲労は蓄積され、レイナはその場に座り込み、周囲の警戒を行いながらも身体を休める事にした。フラガラッハのお陰で戦闘の負担は最小限だが、かりにフラガラッハ以外の武器でゴブリンを倒せるのか気になったレイナは先ほど倒したゴブリン達が所持していた道具を拾い上げる。
「こいつら……剣を持ってるな。それに見たところ、そんなに古くはなさそうだ」
この廃墟街に訪れた人間から奪った物なのか、ゴブリンの傍には長剣と短剣が1つずつ落ちていた。試しにレイナは長剣の方を確認すると、多少の刃毀れはあるがそれ以外は特に損傷はなく、あまり汚れても居ない。ゴブリンが武器の整備を行う程の知性を持ち合わせているのかは分からないが、もしかしたら最近に廃墟街へ入って来た人間から奪った武器の可能性は十分にあった。
長剣(ロングソード)を拾い上げたレイナは剣を振り翳し、試しに今度はこちらの剣でゴブリンに切りかかった場合はどうなるのかを試す事を決めた。フラガラッハを身に着けているだけで「攻撃力3倍増」の効果があるのは先ほど確認済みのため、現在のレイナはどの武器でも3倍の攻撃力を発揮できるはずなので、自分が本当に強くなっているのか確かめるために賭けに出る。
(よし、丁度いいときに近くで1つだけ気配を感じるな……あそこだ)
気配感知の技能で近くに存在するゴブリンの位置を探ると、運がいい事に欠伸を行いながら槍を握り締めたゴブリンが歩いている姿を発見し、レイナは長剣を掲げて背後から接近を行う。気配遮断と無音歩行のお陰でゴブリンに接近しても気付かれる様子はなく、ゴブリンが立ち止まった瞬間、レイナは後方から切りかかった。
「だあっ!!」
「ギィアッ!?」
レイナは攻撃を行う時に無意識に掛け声を上げてしまったが、逆にそれがゴブリンの注意を引いたらしく、後頭部に向けて振り下ろされた長剣の刃は驚いて振り返ったゴブリンの顔面にめり込む。派手な血飛沫が舞い上がり、頭蓋骨を陥没したゴブリンは悲鳴をあげる暇もなく地面に倒れ込む。
「……倒せた。けど、刃が折れちゃったよ」
普通の長剣でも倒す事には成功したが、元々は刃毀れを起こしていた長剣の刃はゴブリンに叩きつけた瞬間に折れてしまう。攻撃力3倍増の効果はあったようだが、逆にそれが原因で剣を叩きつける際に負担を掛けたらしく、生半可な武器では壊れてしまう事が発覚した。
使い古された武器ではなく、新品で頑丈な武器ならば堪えられるだろうが、やはり聖剣と比べると普通の武器では威力は大きく劣る。仮にフラガラッハならば顔面にめり込む所か胴体まで一刀両断していた事は間違いなく、やはり今後はフラガラッハを利用して攻撃を行う方が無難だと判断したレイナは折れてしまった長剣を捨てようとした。だが、折れてしまった長剣の柄に視線を向け、レイナは何となく解析を行う。
「この状態でも解析するとどうなるんだろう?」
『ロングソード(破損)――ドワーフの鍛冶師が作り出した長剣』
「へえ、この状態でも詳細画面は開くのか。でも、フラガラッハの時とは画面の表示が違うな……壊れているせいかな?」
壊れた武器でも解析を発動すると詳細画面が表示される事を知り、武器の名前の右側には「破損」と表示されていた。王都の武器屋で見かけた聖剣の模造品の場合は「模造」という文字が表示されていた事を思い出し、武器の状態は名前の右側に表示される事をレイナは知った。
大抵のゲームではゴブリンは最弱の魔物なので経験値は低いが、だからといってこちらの世界のゴブリンの経験値が低いとは限らない。だが、戦ってみた感じでは強敵という程ではなく、聖剣の恩恵を受けているレイナの敵ではない。
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「よし、この調子で倒していくか。けど、普通の攻撃も強化されるなんて凄い剣だな……」
『ギギィイイイッ!!』
街道を進もうとしたレイナの背後から鳴き声が響き、慌てて振り返ると数十メートル離れている大きな建物の屋根の上からゴブリンが存在した。しかも数は多く、建物の中に入っていた他のゴブリンも姿を現し、仲間を襲ったレイナを発見して怒りの咆哮を放つ。
(やばい!?気を抜きすぎて技能を解除してた!?)
隠密の効果が発揮されているのであれば遠方の存在からはレイナの姿は透けるように見えにくいはずだが、どうやら戦闘に夢中になって技能が切れていたらしく、慌ててレイナは距離を取ろうとする。技能を発動させる際は常にある程度は集中しなければならず、気を抜きすぎると勝手に解除されてしまう事を知る。
『ギィイイイッ!!』
「こっちもかっ!?」
距離が離れているので十分に逃げ切れると思ったレイナだが、前方の方からも鳴き声が響き渡り、街道に他のゴブリンが十数匹も出現した。慌ててレイナは引き返そうとしたが、既に後方からもゴブリンが迫り、一本道の通路で前後挟み撃ちにされてしまう。
ゴブリンは力は弱いが動きは素早く、しかも人間のように武器を扱い、集団で行動を行う。新人の冒険者達はゴブリンを侮って返り討ちにされる事も多く、今回の事態はレイナが魔物の特徴を把握せずに無暗に住処に陥ったために起きた出来事であり、不運ではなく必然の結果である。
『ギギィイイッ……!!』
「なっ、多すぎ……!?」
合計で30体は超えるゴブリンに囲まれたレイナはフラガラッハを構え、どうするべきか悩む。そして考え抜いた結果、やはり戦闘ではなく逃走を選択した。
『ギィイイッ!!』
「くっ……い、けぇっ!!」
ゴブリンが一斉に迫ると、レイナは勢い良く近くの建物に駆け出し、瞬動術を発動させて上空へ飛ぶ。その結果、建物の屋根まで跳躍したレイナを見てゴブリン達は呆気に取られ、屋根に着地したレイナは転げ落ちないように必死にしがみつく。
「た、助かった……?」
『ギギィイイッ!!』
「うわっ、止めろっ!?」
だが、屋根に逃走したレイアに対して諦めの悪いゴブリン達は足元の石を拾い上げて投擲を行い、慌ててレイナはその場を離れると、別の建物の上に飛び移る。レベルが上昇したお陰か瞬動術を発動しても体力の消耗が少しだけ抑えられ、どうにかゴブリンの大群から逃れる事に成功した――
――ゴブリン達を撒いた後、レイナは今度は油断しないように常に技能を発動し続けるように心がけ、ゴブリンが3体以上で行動している場合は不用意に襲わないように注意する。安全に確実に倒せると判断したゴブリンだけを狙い、まるで暗殺者のような気分になりながらレイナはゴブリンを狩り続けた。
「せいっ!!」
「ギャウッ!?」
「ギィアッ!?」
建物の中で木の実を喰らっていた2体のゴブリンの首を切り落としたレイナは額の汗を拭い、これで合計で15体目のゴブリンの討伐に成功した。ステータスを確認するとレベルの方も「3」に上昇しており、廃墟街に到着してからだいたい1時間ほど経過していた。
「ふうっ……やっとレベル3か。思ったよりもレベルが上がらないな、やっぱりゲームみたいに上手くはいかないか」
聖剣フラガラッハの「経験値増量」技能の「経験値倍加」「必要経験値削減」の効果はあるはずだが、やはりゴブリンだけを倒しても経験値はそれほど貰えないのか、予想よりもレベルの上昇が遅い。最もレイナも確実に倒せる相手だけを厳選して戦闘を挑んでいるので時間が掛かってしまうのも無理はない。
流石に1時間も動き続けると疲労は蓄積され、レイナはその場に座り込み、周囲の警戒を行いながらも身体を休める事にした。フラガラッハのお陰で戦闘の負担は最小限だが、かりにフラガラッハ以外の武器でゴブリンを倒せるのか気になったレイナは先ほど倒したゴブリン達が所持していた道具を拾い上げる。
「こいつら……剣を持ってるな。それに見たところ、そんなに古くはなさそうだ」
この廃墟街に訪れた人間から奪った物なのか、ゴブリンの傍には長剣と短剣が1つずつ落ちていた。試しにレイナは長剣の方を確認すると、多少の刃毀れはあるがそれ以外は特に損傷はなく、あまり汚れても居ない。ゴブリンが武器の整備を行う程の知性を持ち合わせているのかは分からないが、もしかしたら最近に廃墟街へ入って来た人間から奪った武器の可能性は十分にあった。
長剣(ロングソード)を拾い上げたレイナは剣を振り翳し、試しに今度はこちらの剣でゴブリンに切りかかった場合はどうなるのかを試す事を決めた。フラガラッハを身に着けているだけで「攻撃力3倍増」の効果があるのは先ほど確認済みのため、現在のレイナはどの武器でも3倍の攻撃力を発揮できるはずなので、自分が本当に強くなっているのか確かめるために賭けに出る。
(よし、丁度いいときに近くで1つだけ気配を感じるな……あそこだ)
気配感知の技能で近くに存在するゴブリンの位置を探ると、運がいい事に欠伸を行いながら槍を握り締めたゴブリンが歩いている姿を発見し、レイナは長剣を掲げて背後から接近を行う。気配遮断と無音歩行のお陰でゴブリンに接近しても気付かれる様子はなく、ゴブリンが立ち止まった瞬間、レイナは後方から切りかかった。
「だあっ!!」
「ギィアッ!?」
レイナは攻撃を行う時に無意識に掛け声を上げてしまったが、逆にそれがゴブリンの注意を引いたらしく、後頭部に向けて振り下ろされた長剣の刃は驚いて振り返ったゴブリンの顔面にめり込む。派手な血飛沫が舞い上がり、頭蓋骨を陥没したゴブリンは悲鳴をあげる暇もなく地面に倒れ込む。
「……倒せた。けど、刃が折れちゃったよ」
普通の長剣でも倒す事には成功したが、元々は刃毀れを起こしていた長剣の刃はゴブリンに叩きつけた瞬間に折れてしまう。攻撃力3倍増の効果はあったようだが、逆にそれが原因で剣を叩きつける際に負担を掛けたらしく、生半可な武器では壊れてしまう事が発覚した。
使い古された武器ではなく、新品で頑丈な武器ならば堪えられるだろうが、やはり聖剣と比べると普通の武器では威力は大きく劣る。仮にフラガラッハならば顔面にめり込む所か胴体まで一刀両断していた事は間違いなく、やはり今後はフラガラッハを利用して攻撃を行う方が無難だと判断したレイナは折れてしまった長剣を捨てようとした。だが、折れてしまった長剣の柄に視線を向け、レイナは何となく解析を行う。
「この状態でも解析するとどうなるんだろう?」
『ロングソード(破損)――ドワーフの鍛冶師が作り出した長剣』
「へえ、この状態でも詳細画面は開くのか。でも、フラガラッハの時とは画面の表示が違うな……壊れているせいかな?」
壊れた武器でも解析を発動すると詳細画面が表示される事を知り、武器の名前の右側には「破損」と表示されていた。王都の武器屋で見かけた聖剣の模造品の場合は「模造」という文字が表示されていた事を思い出し、武器の状態は名前の右側に表示される事をレイナは知った。
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