解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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城下町編

第22話 聖剣フラガラッハの力

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――フラガラッハ――

能力

・攻撃力3倍増
・経験値増量
・魔法耐性強化
・自動修復機能

詳細:300年ほど前に初代勇者によって製作され、大迷宮に封印されていたが、100年ほど前に帝国の3代目皇帝によって発見され、現在は国宝として王族のみが管理する事を許されている。現在の所有者は「霧崎レア」


――――――――――



「改めて解析すると凄い性能の剣だよな……攻撃力が3倍、それに経験値増量は有難いな」


フラガラッハを眺めながらレイナは廃墟街の探索を行い、王都へ繋がる建物を見失わないように気を付けながら周辺を歩き回る。レイナは事前に「剛力」の技能の効果で攻撃力は4倍、更に「経験値倍加」「必要経験値削減」の技能も所持しているのでフラガラッハの性能が重複されていた場合、レベル1の状態でも相当にステータスは強化されているはずだった。

防具を用意するべきか悩んだが、慣れない鎧を身に着けると動作が鈍る可能性も高く、そもそもレイナには不意打ちや奇襲に有効な「隠密」「気配遮断」「無音歩行」更には敵の位置を把握する「気配感知」の技能も身に着けていた。戦法としては魔物を発見して奇襲を仕掛け、相手が団体の場合は身を隠してやり過ごす方法が一番だろう。


(……気配を感じる。この先に何か居るな)


レイナは道の角を曲がる途中、生物の気配を感じ取って立ち止まり、様子を伺う。先ほどの冒険者とは明らかに気配の性質が異なり、案の定というべきか街道を移動する緑色の皮膚をした人型の生物を確認する。


「ギギィッ……」


街道を歩いているのは成人男性の半分程度の身長しか存在せず、異様にやせ細った胴体、それでいながら全身は緑色の皮膚に覆われ、細長い耳に人間とは思えぬ醜い形相の生物がレイナの元へ近づいていた。あちらはまだレイナの存在には気づいておらず、隠れてやり過ごす事も出来るだろうが、レイナはフラガラッハを握り締めて奇襲を仕掛ける事にした。


(大丈夫、勝てる……勝つ!!)


腕を振るわせながらもレイナは道の角で待機を行い、相手が姿を現した瞬間に襲いかかる事を決意し、緊張しながらも準備を整える。そしてゴブリンが顔を出した瞬間、咆哮と共にレイナは剣を振り下ろす。


「はああっ!!」
「ギィアッ――!?」


ゴブリンは気配を完全に殺していたレイナの出現に驚愕し、防御も回避を行う暇もなく首筋にフラガラッハの刃が食い込み、そのままレイナは剣を振り切った。結果としてゴブリンの頭部が宙を舞い、残された胴体は地面へ崩れ落ちた。

地面に倒れたゴブリンの頭部と胴体を確認したレイナは全身から汗を拭きだし、自分が初めて魔物を殺した事を実感した。だが、レイナ本人は手元の聖剣に視線を向け、ゴブリンを切り裂いた時の感触を思い出す。予想に反してまるで豆腐のように柔らかい物を切り裂いたような感覚しかなく、本当に自分がゴブリンの首を切り落としたのかと疑問を抱く程である。


「凄い……これが聖剣の力か」


想像以上に凄まじい性能を誇るフラガラッハに対して、レイナはこの剣が「伝説の聖剣」として讃えられる理由を悟り、これでレベルが1でもゴブリン程度の相手ならば一撃で仕留められる事が判明した。


「よし、この調子で倒そう……あ、そうだ。そういえば昨日覚えた固有能力を試してみるか」


レイナは昨夜の内に覚えた「固有能力」を試そうと考え、周囲の様子を確認して敵の姿はない事を確認し、早速覚えた固有能力を試すために準備を行う。フラガラッハを鞘に戻すと、レイナはステータス画面を確認して能力の詳細を把握し、前方に向けて飛び出す。


(瞬動術!!)


解析と同様に口に出さずとも心の中で念じるだけで固有能力は発動するらしく、前方に向けてレイナは飛び出した瞬間、10メートル近くの距離を一瞬で移動を行う。あまりの勢いに着地の際に足をもつれそうになるが、どうにか体勢を持ち直すとレイナは驚いて後方を振り返り、瞬動術の効果を実感する。


(なるほど、正に「高速移動術」だな……もしも完全に使いこなせるようになったら屋根の上でも飛び回れそうだ)


瞬動術の効果を確認したレイナは両足を抑え、筋肉にかなり負担を与える事、同時に体力の消耗も大きい事も同時に把握する。現在の状態ではあまり多用は出来ず、ここぞという時にだけ使用するように心がける。


「よし、この調子なら今の状態でも十分に戦えそうだな……油断は禁物だけど」


初めての戦闘を乗り越えてレイナは自信が付くと、その場を移動して別の魔物の姿を探す。移動の際中も決して技能の発動は怠らず、目立たぬように行動を開始した――





――数分後、レイナは次の獲物を見つけた場所は街中に存在する広場であり、そこに3体のゴブリンが地面に座り込んでいた。まるで人間のようにゴブリン達は会話を行い、手元には廃墟から回収したのかスコップやツルハシを握り締めていた。どうやらゴブリンは武器を使用するだけの知性を持ち合わせているらしく、レイナは建物の影から様子を伺う。


(今度は3体同時か……流石にこんなに開けた場所だと近づこうとすれば気付かれるな)


隠密の効果で距離が遠い相手には見つかりにくいはずだが、あまり接近し過ぎると流石に視認されてしまうのでゴブリン達もレイナの存在に気付くだろう。そこでレイナは適当な小石を拾い上げ、ゴブリンの1体に目掛けて投擲を行う。


(当たれ!!)


レイナ本人はゴブリンの注意を引き、自分が隠れている路地まで引き寄せるつもりで小石を投げたのだが、何故か予想以上に小石の勢いが強く、雑談中のゴブリンの後頭部に衝突すると血飛沫が舞う。


「ギャウッ……!?」
「ギィアッ!?」
「ギギィッ!?」


唐突に自分達の目の前で血を流して倒れた仲間に残りの2体のゴブリンは戸惑い、その一方でレイナ自身も小石を投げた自分の腕を見て驚いた表情を浮かべる。本人は軽く投げたつもりなのだが、どうしてこのような結果になったのかと考えると、すぐに理由を思いつく。


(まさか、この剣のせいか!?)


どうやらフラガラッハは武器として装備せずとも、身に着けているだけで「攻撃力3倍増」の効果が発揮されるらしく、現在のレイナの攻撃力は強化された状態を維持している事が発覚した。2体のゴブリンは敵襲だと判断して武器を握り締めて周囲を警戒し、その光景を確認したレイナは仕方なく駆け出す。


「くそ、やるしかない……!!」
「ギィッ!?」
「ギィアッ!!」


接近してくるレイナに気付いた2体のゴブリンは敵意を剥き出しにしてスコップとツルハシを構えると、彼女に向けて駆け出す。その動きは思っていたよりも素早く、瞬く間に距離を詰めたゴブリン達はレイナに攻撃を仕掛けた。


「ギィイッ!!」
「このっ!!」


最初に接近してきたゴブリンがスコップを振り翳すと同時にレイナもフラガラッハを振りぬき、スコップの先端の金属部分に刃が衝突した。だが、フラガラッハは勢いが止まる事はなく金属を切断してゴブリンの頭部に食い込み、鮮血が舞う。


「ギィアッ!?」
「だあっ!!」


先頭を走っていたゴブリンがあっさりと着られた事で後続のゴブリンは立ち止まり、慌てて逃走を開始しようとしたが、それをレイナが見逃すはずがなく1匹目を切断した後に身体を回転させ、そのまま2体目の胴体を切り裂く。フラガラッハはゴブリンの肉体を易々と切断し、上半身と下半身に分けられたゴブリンは断末魔の悲鳴をあげて地面に倒れ込む。

フラガラッハを握り締めた状態でレイナは息を荒げ、地面に倒れた2体のゴブリンの死骸を確認すると額の汗を拭い、最後に先ほど石を後頭部に叩きつけられた倒れたゴブリンの元へ赴く。まだ辛うじて生きているらしいが、レイナは剣の刃を構え、頭部に突き刺す。


「……ごめん」
「ギャアッ……!?」


頭部を突き刺さしたゴブリンが確実に絶命した事を確認すると、フラガラッハを鞘に戻してレイナはステータス画面を確認する。どうやらゴブリンを4体倒した事で経験値を得たらしく、既にレベルの項目が「2」に上昇していた。
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