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第10話 文字変換の実験
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――ダガンの地獄の訓練を終えたレアは自分の部屋へ戻り、薄汚れたベッドの上に倒れ込む。ここへ来て部屋を替えてもらう様に頼む事を忘れていた事を思い出すが、今日は疲れ果ててそのままベッドの上に横になる。
「し、死ぬかと思った……こんな訓練を一か月も続けないといけないのか……?」
レアはベッドの上に横たわると、机の上の時計を確認して間もなく日付を迎えようとしている事に気付く。ステータス画面を開いたレアは「状態」の項目を確認し、案の定というべきか「疲労」という文字が表示されていた。震える腕でレアは指先を伸ばし、文字変換の能力を発動させて「健康」という文字に書き換える。
「くっ……大分楽になった」
『条件を満たしました。これより、文字変換の使用文字数がリセットされます』
「あっ、丁度良かった。日付が変わったのか」
状態の項目を変更するとレアの身体が一気に楽になり、先ほどまでの疲労感が嘘の様に消え去った。それとほぼ同時に日付が変わって文字数が更新されたのを確認すると、今後は訓練を終えた後のために文字数は最低でも2文字は残しておくべきだと判断した。
レアはステータス画面の項目を確認し、レベルの数値を変化させた時は「成長痛」なる現象が起きて断念してしまったが、SPに関しては数字を変更しても特に身体に異変はなかった。
(ステータス画面の改竄で成功したのは「SP」だけか……このSPが二桁になればスキルは覚え放題になるのにな)
SPが「10」あれば新しい能力を覚えられるため、仮にSPが二桁存在すればレアは何度でも文字変換の能力で増やす事が出来る。但し、現在は一桁である以上は新しい能力を覚える事も出来ず、どうにかレベルを上昇してSPを入手しなければならない。
通常はSPを獲得するにはレベルの上昇以外には有り得ず、そういう点ではレアの文字変換の能力でSPを増やすという方法は他の勇者よりも優れている。SPが増やせば当然覚えられる能力も簡単に習得できるし、時間は掛かるだろうが全ての能力を覚えられる可能性も十分にあった。
(レベルを文字変換の能力で上昇させればSPも増えるかもしれないけど、またあの痛みに耐えるのは無理だな……地道に魔物を倒してレベルを上げるしかないか。けど、最低でも一か月は訓練するとか言ってたしなぁっ……)
最初の一か月は体力作りのために徹底的に鍛える事をダガンは宣言しており、魔物との戦闘訓練はその後だと彼は言っていた。つまり、地獄のような鍛錬をレアは一か月間は我慢せねばならず、それまではレベルを上昇させる事も出来ない。
今日一日だけでも何度も意識を失いかけ、医療室にも運ばれたレアは一か月も訓練を乗り越えられる自信はない。だが、訓練を受けない状態で魔物と戦って勝てるのかと言われればそちらの方が自信がなかった。
「どうにか出来ないのかな……ん?」
床に倒れた際にレアは机の上を見ると花瓶がある事に気付き、最初にこの部屋へ訪れた時はなかったはずだが、不思議に思って花瓶に近寄る。
「使用人の人が用意したのか?香りは悪くないな……」
紫色の花が添えられた花瓶を見てレアは不思議に思い、何となく「解析」の能力を発動させる。視界に画面が表示され、花瓶の花の詳細画面が表示された。
『紫眠花――非常に高い毒性を持つ花。暗闇になった時のみに毒性の鱗粉を発生させる。この鱗粉を吸い込んだ人間は一週間後に遅効性の毒素によって眠ったように死んでしまう事から紫眠花と名付けられた』
「ぶふぅっ!?」
視界の画面を確認してレアは目を見開き、何度も画面を確認するが文字には一週間後に死亡すると記されていた。レアは唖然とした表情で紫睡花を見つめ、冷や汗を流す。
「だ、誰だよこんなの置いていったの!?」
レアは花瓶から離れると慌てて口元を抑え、一体誰が自分の命を狙おうとしているのか考える。そして最初に思いついたのは「ウサン」であり、彼以外に自分を妬む人間はいない事を確信したレアはウサンの仕業だと判断した。
(くそ、あの禿頭!!俺の事を殺そうとしているのか!!)
自分に明確に殺意を抱いていなければこのような物を部屋の中に持ち込むはずがなく、怒りを抱いたレアは今すぐにウサンの元へ抗議に向かうべきか考えた。だが、不用意に彼を糾弾しても証拠がない以上は言い逃れされる可能性が高く、そもそも殺意を抱いた相手を刺激するような真似は得策とは言えない。
(どうする!?花瓶を捨てるか……いや、それだと怪しまれる。けど、灯りを消すと毒の鱗粉を出すようだし……待てよ?)
解析の能力で表示された「詳細画面」を見たレアはある事に気付き、この画面の文章を文字変換の能力で変換させて上手く毒の効果を失くす事は出来ないのかと考えたレアは指先を伸ばす。
(文章を変換させて毒の効果を失くす事が出来ないかな……待てよ、名前の方を他の文字に変えたらどうなるんだろう?)
レアは試しに「紫眠花」という名前を変更させた場合はどうなるのか試すため、文字変換の能力を発動させて適当に一文字だけ変化させる。
「とりあえず、「花」の部分を「草」に変えてみるか……どうだ?」
『実在しない存在の名前は変更出来ません』
「あ、無理なのか……ん?実在しない……という事は実在する物ならいいのか?」
文字変換の能力でも存在しない物体の名前には変更出来ない事が発覚し、ならば逆に存在する物体の名前を書き込んだ場合はどうなるのかレアは試す。
「し、死ぬかと思った……こんな訓練を一か月も続けないといけないのか……?」
レアはベッドの上に横たわると、机の上の時計を確認して間もなく日付を迎えようとしている事に気付く。ステータス画面を開いたレアは「状態」の項目を確認し、案の定というべきか「疲労」という文字が表示されていた。震える腕でレアは指先を伸ばし、文字変換の能力を発動させて「健康」という文字に書き換える。
「くっ……大分楽になった」
『条件を満たしました。これより、文字変換の使用文字数がリセットされます』
「あっ、丁度良かった。日付が変わったのか」
状態の項目を変更するとレアの身体が一気に楽になり、先ほどまでの疲労感が嘘の様に消え去った。それとほぼ同時に日付が変わって文字数が更新されたのを確認すると、今後は訓練を終えた後のために文字数は最低でも2文字は残しておくべきだと判断した。
レアはステータス画面の項目を確認し、レベルの数値を変化させた時は「成長痛」なる現象が起きて断念してしまったが、SPに関しては数字を変更しても特に身体に異変はなかった。
(ステータス画面の改竄で成功したのは「SP」だけか……このSPが二桁になればスキルは覚え放題になるのにな)
SPが「10」あれば新しい能力を覚えられるため、仮にSPが二桁存在すればレアは何度でも文字変換の能力で増やす事が出来る。但し、現在は一桁である以上は新しい能力を覚える事も出来ず、どうにかレベルを上昇してSPを入手しなければならない。
通常はSPを獲得するにはレベルの上昇以外には有り得ず、そういう点ではレアの文字変換の能力でSPを増やすという方法は他の勇者よりも優れている。SPが増やせば当然覚えられる能力も簡単に習得できるし、時間は掛かるだろうが全ての能力を覚えられる可能性も十分にあった。
(レベルを文字変換の能力で上昇させればSPも増えるかもしれないけど、またあの痛みに耐えるのは無理だな……地道に魔物を倒してレベルを上げるしかないか。けど、最低でも一か月は訓練するとか言ってたしなぁっ……)
最初の一か月は体力作りのために徹底的に鍛える事をダガンは宣言しており、魔物との戦闘訓練はその後だと彼は言っていた。つまり、地獄のような鍛錬をレアは一か月間は我慢せねばならず、それまではレベルを上昇させる事も出来ない。
今日一日だけでも何度も意識を失いかけ、医療室にも運ばれたレアは一か月も訓練を乗り越えられる自信はない。だが、訓練を受けない状態で魔物と戦って勝てるのかと言われればそちらの方が自信がなかった。
「どうにか出来ないのかな……ん?」
床に倒れた際にレアは机の上を見ると花瓶がある事に気付き、最初にこの部屋へ訪れた時はなかったはずだが、不思議に思って花瓶に近寄る。
「使用人の人が用意したのか?香りは悪くないな……」
紫色の花が添えられた花瓶を見てレアは不思議に思い、何となく「解析」の能力を発動させる。視界に画面が表示され、花瓶の花の詳細画面が表示された。
『紫眠花――非常に高い毒性を持つ花。暗闇になった時のみに毒性の鱗粉を発生させる。この鱗粉を吸い込んだ人間は一週間後に遅効性の毒素によって眠ったように死んでしまう事から紫眠花と名付けられた』
「ぶふぅっ!?」
視界の画面を確認してレアは目を見開き、何度も画面を確認するが文字には一週間後に死亡すると記されていた。レアは唖然とした表情で紫睡花を見つめ、冷や汗を流す。
「だ、誰だよこんなの置いていったの!?」
レアは花瓶から離れると慌てて口元を抑え、一体誰が自分の命を狙おうとしているのか考える。そして最初に思いついたのは「ウサン」であり、彼以外に自分を妬む人間はいない事を確信したレアはウサンの仕業だと判断した。
(くそ、あの禿頭!!俺の事を殺そうとしているのか!!)
自分に明確に殺意を抱いていなければこのような物を部屋の中に持ち込むはずがなく、怒りを抱いたレアは今すぐにウサンの元へ抗議に向かうべきか考えた。だが、不用意に彼を糾弾しても証拠がない以上は言い逃れされる可能性が高く、そもそも殺意を抱いた相手を刺激するような真似は得策とは言えない。
(どうする!?花瓶を捨てるか……いや、それだと怪しまれる。けど、灯りを消すと毒の鱗粉を出すようだし……待てよ?)
解析の能力で表示された「詳細画面」を見たレアはある事に気付き、この画面の文章を文字変換の能力で変換させて上手く毒の効果を失くす事は出来ないのかと考えたレアは指先を伸ばす。
(文章を変換させて毒の効果を失くす事が出来ないかな……待てよ、名前の方を他の文字に変えたらどうなるんだろう?)
レアは試しに「紫眠花」という名前を変更させた場合はどうなるのか試すため、文字変換の能力を発動させて適当に一文字だけ変化させる。
「とりあえず、「花」の部分を「草」に変えてみるか……どうだ?」
『実在しない存在の名前は変更出来ません』
「あ、無理なのか……ん?実在しない……という事は実在する物ならいいのか?」
文字変換の能力でも存在しない物体の名前には変更出来ない事が発覚し、ならば逆に存在する物体の名前を書き込んだ場合はどうなるのかレアは試す。
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