解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
10 / 367
プロローグ

第10話 文字変換の実験

しおりを挟む
――ダガンの地獄の訓練を終えたレアは自分の部屋へ戻り、薄汚れたベッドの上に倒れ込む。ここへ来て部屋を替えてもらう様に頼む事を忘れていた事を思い出すが、今日は疲れ果ててそのままベッドの上に横になる。


「し、死ぬかと思った……こんな訓練を一か月も続けないといけないのか……?」


レアはベッドの上に横たわると、机の上の時計を確認して間もなく日付を迎えようとしている事に気付く。ステータス画面を開いたレアは「状態」の項目を確認し、案の定というべきか「疲労」という文字が表示されていた。震える腕でレアは指先を伸ばし、文字変換の能力を発動させて「健康」という文字に書き換える。


「くっ……大分楽になった」
『条件を満たしました。これより、文字変換の使用文字数がリセットされます』
「あっ、丁度良かった。日付が変わったのか」


状態の項目を変更するとレアの身体が一気に楽になり、先ほどまでの疲労感が嘘の様に消え去った。それとほぼ同時に日付が変わって文字数が更新されたのを確認すると、今後は訓練を終えた後のために文字数は最低でも2文字は残しておくべきだと判断した。

レアはステータス画面の項目を確認し、レベルの数値を変化させた時は「成長痛」なる現象が起きて断念してしまったが、SPに関しては数字を変更しても特に身体に異変はなかった。


(ステータス画面の改竄で成功したのは「SP」だけか……このSPが二桁になればスキルは覚え放題になるのにな)


SPが「10」あれば新しい能力を覚えられるため、仮にSPが二桁存在すればレアは何度でも文字変換の能力で増やす事が出来る。但し、現在は一桁である以上は新しい能力を覚える事も出来ず、どうにかレベルを上昇してSPを入手しなければならない。

通常はSPを獲得するにはレベルの上昇以外には有り得ず、そういう点ではレアの文字変換の能力でSPを増やすという方法は他の勇者よりも優れている。SPが増やせば当然覚えられる能力も簡単に習得できるし、時間は掛かるだろうが全ての能力を覚えられる可能性も十分にあった。


(レベルを文字変換の能力で上昇させればSPも増えるかもしれないけど、またあの痛みに耐えるのは無理だな……地道に魔物を倒してレベルを上げるしかないか。けど、最低でも一か月は訓練するとか言ってたしなぁっ……)


最初の一か月は体力作りのために徹底的に鍛える事をダガンは宣言しており、魔物との戦闘訓練はその後だと彼は言っていた。つまり、地獄のような鍛錬をレアは一か月間は我慢せねばならず、それまではレベルを上昇させる事も出来ない。

今日一日だけでも何度も意識を失いかけ、医療室にも運ばれたレアは一か月も訓練を乗り越えられる自信はない。だが、訓練を受けない状態で魔物と戦って勝てるのかと言われればそちらの方が自信がなかった。


「どうにか出来ないのかな……ん?」


床に倒れた際にレアは机の上を見ると花瓶がある事に気付き、最初にこの部屋へ訪れた時はなかったはずだが、不思議に思って花瓶に近寄る。


「使用人の人が用意したのか?香りは悪くないな……」


紫色の花が添えられた花瓶を見てレアは不思議に思い、何となく「解析」の能力を発動させる。視界に画面が表示され、花瓶の花の詳細画面が表示された。



『紫眠花――非常に高い毒性を持つ花。暗闇になった時のみに毒性の鱗粉を発生させる。この鱗粉を吸い込んだ人間は一週間後に遅効性の毒素によって眠ったように死んでしまう事から紫眠花と名付けられた』
「ぶふぅっ!?」



視界の画面を確認してレアは目を見開き、何度も画面を確認するが文字には一週間後に死亡すると記されていた。レアは唖然とした表情で紫睡花を見つめ、冷や汗を流す。


「だ、誰だよこんなの置いていったの!?」


レアは花瓶から離れると慌てて口元を抑え、一体誰が自分の命を狙おうとしているのか考える。そして最初に思いついたのは「ウサン」であり、彼以外に自分を妬む人間はいない事を確信したレアはウサンの仕業だと判断した。


(くそ、あの禿頭!!俺の事を殺そうとしているのか!!)


自分に明確に殺意を抱いていなければこのような物を部屋の中に持ち込むはずがなく、怒りを抱いたレアは今すぐにウサンの元へ抗議に向かうべきか考えた。だが、不用意に彼を糾弾しても証拠がない以上は言い逃れされる可能性が高く、そもそも殺意を抱いた相手を刺激するような真似は得策とは言えない。


(どうする!?花瓶を捨てるか……いや、それだと怪しまれる。けど、灯りを消すと毒の鱗粉を出すようだし……待てよ?)


解析の能力で表示された「詳細画面」を見たレアはある事に気付き、この画面の文章を文字変換の能力で変換させて上手く毒の効果を失くす事は出来ないのかと考えたレアは指先を伸ばす。


(文章を変換させて毒の効果を失くす事が出来ないかな……待てよ、名前の方を他の文字に変えたらどうなるんだろう?)


レアは試しに「紫眠花」という名前を変更させた場合はどうなるのか試すため、文字変換の能力を発動させて適当に一文字だけ変化させる。


「とりあえず、「花」の部分を「草」に変えてみるか……どうだ?」
『実在しない存在の名前は変更出来ません』
「あ、無理なのか……ん?実在しない……という事は実在する物ならいいのか?」


文字変換の能力でも存在しない物体の名前には変更出来ない事が発覚し、ならば逆に存在する物体の名前を書き込んだ場合はどうなるのかレアは試す。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...