解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
6 / 367
プロローグ

第6話 大臣からの嫌がらせ

しおりを挟む
歓迎の宴を終えた後、勇者達は今後自分達が寝泊まりをする部屋に案内される。しかし、他の勇者が王城の二階に案内される中、レアだけは途中で別れて一階に存在する部屋に案内された。部屋の中には個室ではあるが、元々は物置部屋ではないかという程に薄汚れており、窓の類も見つからず、最低限の生活が出来る家具しか用意されていなかった。


「何だよこれ……」


茶色に染まったベッドにレアは視線を向け、事前の皇帝の説明では勇者全員に個室が用意されており、世話役の使用人も用意するという話を聞いていたが、彼の場合は物置のような部屋に使用人の姿も見当たらない。


「くそっ……やっぱり大臣の頭をからかったのが不味かったか。迂闊だった」


自分の割り当てられた部屋にレアは先ほどの会場でウサンを辱めた事が原因だと判断し、恐らく彼の指示でレアが用意されていた部屋とは別の部屋に割り当てられたのだろう。確かに先ほどの彼の対応は無礼と言われてもおかしくはない行動だったが、それでも先に仕掛けたのはウサンであり、逆上して殴りかかろうとした所を引き留めたのは皇女である。

しかし、文句を言おうにも時刻が既に夜中を迎えようとしており、仕方ないのでレアは今日だけはこの部屋で過ごし、明日の朝に皇帝に部屋の事を相談して別の部屋を割り当てて貰う事を決意してベッドに座り込む。ちなみにこの世界の1日は地球と同じく24時間、1年は365日だが、うるう年は存在しない。

ベッドの寝心地自体は意外と悪くはなく、臭いさえ多少我慢すれば眠れられそうなのでレアは明日に備えて休もうとした時、視界に画面が表示された。


『条件を満たしました。これより、文字変換の使用文字数がリセットされます』
「ん?なんだ?」


意識を失いかけた瞬間に表示された画面を見てレアは身体を起き上げると、最初に能力を発動させてから24時間も経過していないにも関わらず、文字変換の能力の使用文字数が「10文字」に戻っている事に気付く。先ほどまでは「9文字」と表示されていたがはずだが、ここでレアは文字変換の能力の使用条件の事を思い出す。


「あ、そういう事か!!1日というのは24時間の事じゃなくて、日付を現していたのか……だから今はもう使えるようになったのか!」


こちらの部屋には時計が存在しないので正確な時刻は分からないが、宴は大分長引いていたので現在の時刻が既に深夜12時を迎えたのは間違いなく、文字変換の能力の「1日に変換可能な文字数は10文字」という文章は日付を迎える度に文字数がリセットされる事が判明した。

ステータス画面を開いたついでにレアは宴の時にウサンに邪魔をされてある作業を中断した事を思い出し、画面上の「加護」の項目に表示されている条件を確認する。


―――――――――――

文字の加護

・文字変換――あらゆる文字を変換できる。1日に変換可能な文字数は10文字のみ、条件は以下の通り

1.文章として成立しない場合は文字の変換は不可能
2.文字の追加や削除は不可能
3.アラビア数字を他の文字や漢数字に変換する事も不可能
4.ステータスの改竄は出来ない


―――――――――――


条件として表示されている4つの文章を確認したレアは、最後の「ステータスの改竄は出来ない」という文章にだけ違和感を覚え、この4番目の条件だけが「不可能」ではなく「出来ない」と表現されている事に違和感を覚えた。


(転移される直前、確かに聞こえたあの声……一体誰なんだろう?)


レアはこの世界へ転移される直前、確かに自分が耳にした声を思い出す。レアの記憶が正しければ女性のような声音でこのように告げられた。



『面白い名前ですね。それなら能力もレアな奴を渡してあげますよ』



結局、あの声の主が何者かだったのかは分からない。だが、ステータス画面に表示された「加護」という文字にレアは気にかかり、もしかしたらあの声の主がこの「文字の加護」という能力を与えたのではないかと考える。別に何か証拠があるわけでもないのだが、レアは何故か文字変換の能力の4番目の条件だけが何者かの意思でわざと「不可能」ではなく「出来ない」という文字で表示されているように思う。


「文章として成立して、文字の追加や削除しなければもしかしたら……」


震える指でレアはステータス画面の条件の項目に人差し指を近づけ、ある二文字だけを変換させる。その結果、指先に触れた画面上の文字が変更され、ステータス画面が更新された。



『4.ステータスの改竄は出来ます』



レアは「出来ない」という文字を『出来ます』と変える事にで条件の変更に成功した。文章として成立しているのかどうかは怪しいが、文字変換が上手く発動したのは間違いなく、ステータス改竄の行えるようになったのは間違いない。


「成功した……のか?」


試しにレアはステータス画面を見直し、本当にステータスの改竄が行えるようになったのかを試すため、試しにSPの項目に視線を向ける。指先をSPの項目の数値に構え、数字を別の数字に変更を行う。


(アラビア数字の場合は他の数字じゃないと変換出来ないんだったよな。じゃあ、とりあえず9にするか)


文字変換の能力を発動させてSPの数値を変化させようとすると、指先が光り輝き、無事に画面上の文字が「1」から「9」という文字に変更されていた。それを見たレアは自分の指先を確認して驚いた表情を浮かべ、同時に文字の加護の真の能力に気付く。


(そうか……文字変換の能力はステータス画面を改竄して能力を強化する事が出来るのか!!待てよ、じゃあ他の条件も上手く文字を変換させる事が出来ればどうなるんだ?)


文字変換の能力の使い方を理解したレアは興奮気味に今度は1日の文字数の制限を変更させようと指を伸ばした瞬間、何故か画面に触れた瞬間に指が弾かれてしまう。


「うわっ!?な、何だっ!?」


痺れたような感覚が指先に広がり、何事かと視線を向けると、何時の間にか文字変換の能力の条件項目に追加がされていた。


―――――――――――

文字の加護

・文字変換――あらゆる文字を変換できる。1日に変換可能な文字数は10文字のみ、条件は以下の通り

1.文章として成立しない場合は文字の変換は不可能
2.文字の追加や削除は不可能
3.アラビア数字を他の文字や漢数字に変換する事も不可能
4.ステータスの改竄は出来ます
5.文字変換の能力に関する条件の変更は不可能

―――――――――――


先ほどまでには存在しなかったはずの5番目の条件が加えられており、しかもレアの心情を読み取ったかのように文字変換の能力に関する条件の変更は出来ない説明文がご丁寧に表示されていた。それを見たレアは誰かに「これ以上のズルは駄目」と言われたような気分に陥り、溜息を吐きながらベッドに座り込む。


『文字数残数:7文字』
「……なるほど、この画面もすぐに消えるのは不正が出来ないためか」


視界に数秒ほど表示された本日の使用できる文字数の画面を見てレアは苦笑いを浮かべ、どうやらこの能力を授けた何者かはそれほど甘くはないらしく、残念ながらレアはこれ以上に文字変換に関する能力の改竄は不可能になった。だが、他の項目の改竄に関しては特に制限は掛けられておらず、試しに画面に指が触れても弾かれる様子はない。

文字の加護を与えたのは何者なのかは分からないが、少なくともレアは神仏の類というよりは人間のような存在に近いように感じられ、そうでもなければレアの名前が珍しいからといって「文字の加護」という変わった能力を与えるはずがない。そう考えたレアは自分が許された範囲内で能力を活用し、自分自身の強化や他の勇者のサポートを行う事を決意する。


(まずは徹底的に文字変換で出来る範囲の改竄を行うか。そういえば、この解析という能力も気になるな……)


レアは自分の画面に表示されている「解析」という能力を見て疑問を抱き、宴の時に遭遇したアリシア皇女の事を思い出す。彼女に助けられたときにレアはアリシアが所持していた長剣の事が気にかかり、観察した時に表示された画面を思い出す。しばらく経過すると画面は消えてしまったが、あの時に唐突に現れた画面にはアリシアが所持していた長剣の詳細が記されていたように思えた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...