解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ

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第3話 魔法

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レア達を召喚した国家の名前は「ヒトノ帝国」と呼ばれ、ホウマの世界の東側の大部分を統治する国家らしい。ちなみにこの世界には大陸が1つだけしか存在せず、ヒトノ帝国は世界の国家の中でも領地の面積は世界一を誇る。だが、現在は「魔王軍」と呼ばれる組織に侵攻を受けており、彼等がレア達を地球から召喚したのはヒトノ帝国の13代目の皇帝を務める「バルトロス」だった。


「魔王軍は我が帝国の領地内にて民衆に大きな被害を与えている。魔王軍と対抗するため、我等も幾度か軍隊を派遣したが、正直に言えば帝国側が不利な状況に追い込まれておる。だからこそ、帝国が建国される遥か昔、古の時代に嘗て世界を支配しようとした魔皇帝と呼ばれる存在を打ち倒したという勇者と呼ばれる存在を召喚し、共に魔王軍と戦って貰おうと思ったのだ」


今現在のレア達は王城の「玉座の間」と呼ばれる広間に移動しており、皇帝が直々に彼等に説明を行う。ウサンは用事があるという事で退室しており、その間に4人は彼に色々と質問を行う。皇帝はウサンと比べるとレア達に好意的に接してどんな質問でも真面目に答えてくれた。

皇帝の話では最初に勇者召喚の提案を行ったのはウサンであり、皇帝自身は他の世界の人間に自分達の世界の厄介事を任せるなど反対したが、結局大勢の家臣達の後押しもあって仕方なく承諾してしまう。皇帝は帝国に伝わる古文書を読み解き、現実世界から勇者となり得る存在をこちらの世界に呼び寄せる儀式を行った結果、見事に成功してレア達がこの城に召喚されたという。

この「勇者召喚」と呼ばれる特別な儀式によって召喚されたのがレア達らしく、彼等がこの世界に訪れた時点で勇者としての特別な力を既に身体に宿しているのは間違いないらしい。実際に彼等の全員がこちらの世界の文字や言葉を学んだわけではないにも関わらずに通じている辺り、どのような原理かは不明だが彼等の目にはこちらの世界の言葉と文字は全て日本語に翻訳されているので特別な力を宿しているという話は信用出来た。


「あの、本当に俺達は元の世界に帰れないんですか?」
「うむ……ウサンの話によると、我々が所有している転移石と呼ばれる特別な魔石が足りず、君たちを帰還させる魔事が出来ないらしい。すまないが転移石を入手出来るまでは勇者殿にはここ生活してもらう必要がある。安心してくれ、誰一人として決して不便な生活を送らせない事を約束しよう」
「それはいいけどよ……さっきの奴みたいに俺達もその魔法というのが使えるのかよ?」
「茂、敬語ぐらい使え……相手は皇帝陛下だぞ」
「ちっ……面倒だな」


皇帝に対して茂が質問を行うと、彼の隣に居た瞬が咎めるように言葉を掛ける。それでも茂の疑問は他の3人も気にかかり、皇帝は彼の質問に真剣に頷いて傍に控えていた兵士に何事か命じると、玉座の間に大量の書物を所持した使用人達が訪れる。


「勇者殿、色々と聞きたい事はあるだろうが、今から儂の言う言葉を口にするか、もしくは頭の中で余の言葉を反芻してくれ……「ステータス」とな」
『ステータス?』


皇帝の言葉に全員が同時に彼の呟いた言葉を口にした瞬間、皆の眼前の空間にパソコンやスマートフォンのような「画面」が誕生する。唐突に視界に現れた謎の画面にレア達は驚愕するが、眼の前に表示されたのはRPGゲームの登場人物キャラクターの性能を示す「ステータス画面」と酷似した画面が視界に広がる。

レアは自分の視界に表示されている画面の一番上には自分の名前が表示されている事を確かめ、他の人間も彼のように戸惑った表情を浮かべており、全員が皇帝の告げた「ステータス」と呼ばれる画面の確認に成功していた。



―――ステータス―――

称号:解析の勇者

性別:男性

年齢:15才

状態:健康

レベル:1

SP:1

―――――――――――

技能

・翻訳
(あらゆる文字・言語を翻訳できる)


―――――――――――

固有能力

・解析――あらゆる物体の詳細を画面として表示する。生物の場合はステータスとして表示される


―――――――――――

文字の加護

・文字変換――あらゆる文字を変換できる。1日に変換可能な文字数は10文字のみ、条件は以下の通り

1.文章として成立しない場合は文字の変換は不可能
2.文字の追加や削除は不可能
3.アラビア数字を他の文字や漢数字に変換する事も不可能
4.ステータスの改竄は出来ない


―――――――――――



視界に表示されているステータス画面にレアは戸惑いを隠せず、本当に自分がゲームの世界に迷い込んだような感覚が広がり、画面に表示されている内容を確認していると皇帝が説明を行う。


「恐らく視界に画面が開いたはずだが、このステータス画面は自分にしか確認する事は出来ん。レベルが上昇すれば身体能力や魔力も大幅に成長するが、体を鍛えなくても十分に力を身に着ける事は出来るぞ」
「おおっ……!!」
「すげぇっ……マジでゲームみたいだ」
「レベルが1か……という事は魔物を倒せば経験値でも貰えるのか?」
「うむ、話が早いな。レベルを上昇させる方法として最も効率的なのは魔物を倒す事じゃな」
「魔物……本当にそんな生物がいるんですか?」
「何?勇者殿の世界には存在しないのか?」
「動物はいますけど……魔物というのは俺達の世界では幻想ファンタジーの存在として扱われていますね」
「ふぁんたじぃっ?言っている意味は良く分からんが……」


皇帝の言葉からレアはこの世界にはゲームのように「魔物」と呼ばれる存在が実在する事を認識し、他の人間も驚きを隠せない。実際に自分達が魔物と呼ばれる存在と戦わされる事になるのではないかと知ると、全員に緊張が走って浮かれていた者も大人しくなる。それでも皇帝の話によればレベルを最も早く上昇させる方法は魔物を倒す手段しか存在せず、普通に生活を送るだけではレベルが上昇する事はない。


「このレベルの目安はどんな感じですか?ここにいる兵士の人達の平均のレベルは分かりますか?」
「ふむ、そこは余も詳しくは知らぬが……おい、どの程度なのじゃ?」
「はっ!!一般的には兵士の平均レベルは15~20であり、将軍クラスになると最低でも30~40レベルです!!ですが、冒険者の中には50~60の人間も存在すると聞いております!!」
「冒険者?冒険者というと、魔物を倒して金を稼ぐ奴か?」
「おお、勇者殿の世界にも冒険者が存在するのか?」
「いえ、そういう訳ではないんですが……」


異世界物の小説では定番の「冒険者」という職業もこの世界には実在するらしく、彼等は魔物に関連する仕事を生業として生活しているらしい。主な仕事は魔物の討伐、あるいは捕獲、場合によっては生態系の調査や盗賊などからのなど、様々な事を行う。

レアは自分のレベルを確認した限りでは今の時点では城の兵士よりもレベルは10以上も差がある。勇者として召喚されたのならばもっと高い数値でも良かったのではないかと考えた時、他の3人の呟きを耳にして目を見開く。


「俺の職業は拳の勇者?レベルが10か……それと、拳の加護とか書いてあるな。格闘家や拳闘家や武闘家の能力を全て扱え、レベルアップ時の身体能力の向上を強化するだとよ」
「僕の職業は剣の勇者と書かれている。レベルは同じく10だ。剣の加護と記されている……内容は剣士、騎士系統の職業の能力を全て身に着けられるそうだ」
「私も魔法の勇者でレベル10かあ……えっとね、魔法の加護というのがある。魔術師系統の全ての能力を覚えられるんだって」
「おお、流石は勇者殿じゃ!!伝承通り、やはり「加護」と呼ばれる特殊能力を授かっていたか!!」
「……えっ?」


自分以外の3人のクラスメイトのレベルが初期値から10も存在する事に気付き、更に自分の「文字の加護」という訳の分からない能力とは異なり、他の3人が何やら役立ちそうな能力にも関わらず、レアの能力は「文字を変換させる」という謎の能力だった。レアが戸惑っている間にもステータス画面を確認した瞬が皇帝に話を聞く。


「あの……魔王軍というのはどんな奴等なんですか?やっぱり、悪魔とかいるんですか?」
「悪魔?それは魔人族の事かな?確か魔王軍の幹部は魔人族で構成されていると聞くが……」
「魔人族……ちょっと言葉の響きは格好いいね~」
「何を呑気な……僕達、本当に戦えるですか?」
「おい!!そんな事より、魔法ってのはどうやって使うんだ!!あの野郎、絶対にぶっ飛ばしてやる!!」


召喚された4人の中では比較的に戦闘に関しては最も馴染みやすそうな茂が皇帝に怒鳴り込み、先ほどウサンに吹き飛ばされたのがまだ気に入らないのか、執拗に魔法の習得を催促する。自分も彼と同じような能力を身に付ける事が出来れば負ける事はないと彼は確信しており、他の人間達も彼の質問の内容は気になった。この世界に魔法が存在するとしたら、異世界人である自分達も魔法が扱えるのか疑問を抱くのも当然である。


「その事に関しては私が答えましょう」


玉座の間の出入口から男性の声が響き渡り、皆が振り向くと玉座の間を退室していたはずのウサンの姿があり、彼は複数の黒衣を纏った人間を引き連れていた。その全員が女性で統一されており、年齢もレア達と同様に10代半ばだと考えられ、容姿も整っている。レアは女性の使用人をわざわざ大臣であるウサンが連れて戻ってきた事に疑問を抱くが、彼はわざとらしい笑みを浮かべて4人に話しかける。


「では皆さん、まずは先ほど渡した書物を開いて下さい」
「書物……これの事か?」
「そうです。ささ、早くこちらを読んで下され」


召喚された人間は全員が「翻訳」という技能を習得しており、こちらの世界の文字は理解できるため、レア達は女性陣から手渡された本の表紙の文字も読める。レアが受け取ったのは表紙に「スラッシュ」と記された分厚い書物だった。彼は不思議に思いながらも中身を開こうとした時、先に与えられた書物を読んでいた人間達が驚きの声を上がる。


「おおっ!?」
「なんだ!?」
「こ、これは!?」
「え?」


次々と他のクラスメイトが驚きの声を上げ、レアは3人の反応に不思議に思いながらも自分の書物を開いてみる。だが、中身は何故か「空白」であり、文字の類が記されていなかった。何処のページを捲っても真っ白のままであり、何も変化はない。そんなレアの反応を見てウサンは訝し気な表情を浮かべて質問を行う。


「……どうかしましたかな?」
「いや……表紙の文字は理解できるんですけど、中身が何も書かれていないんですけど……」
「記されていない?おかしいですな……文字さえ理解出来れば「魔法書」を読み解く事で誰でも魔法は覚えられるのですが……」
「魔法……書?」


初めて聞く単語にレアはウサンが何の話をしようとしているのか問い質そうとした時、彼の視界に新しい画面が表示される。


『魔法の習得は職業に制限が掛けられているので出来ません』
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