最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
179 / 207
戦姫編

浮揚術

しおりを挟む
「ふうっ……これで雷属性は限界値にまで到達したな」
「お疲れさまでした」
「うわ、何時から居たっ!?」


レナは雷属性の付与魔法の魔法書を全て読み終え、遂に彼の雷属性の熟練度が限界値を極める。そんな彼の元に背後に待機していたコウが拍手を行い、彼の行動に呆れながらもレナは他の魔法書に視線を向け、まだまだ机の上に書物が山積みされており、幾ら思考加速の異能を持つレナでも今日中に読み終えられる自信はなかった。


「ふうっ……すいません、スパゲティとか頼めますか?」
「かしこまりました」
「あるんだ……」


冗談混じりでレナはファミレスで注文を行う様にコウに頼むと、彼は即座に承諾して台所に移動を行う。この魔道具店には彼一人しか存在しないのだが、店番を行わずに自分に付きっ切りの彼に疑問を抱くが、あまり気にせずに魔法書に視線を向ける。


「さてと……次は土属性か」


土属性の魔法書を読み取るために机に掌を伸ばすと、不意にレナの視界に全体が黒色の表紙の書物が存在する事に気付き、不思議に感じて彼は手に取ると付与魔法の魔法書ではない代物が混じっていた。


「何だこれ?あの人、間違えて一緒に置いたのかな……」


レナは黒表紙の書物を取り上げ、表題も刻まれていないので魔法書なのかも疑わしく、試しに中を開いて確認を行おうとした時、誤って本を地面に落としてしまう。


「あいてっ」


落とした際に足に当たってしまい、レナは渋々と拾い上げて地面に置くと当初の予定通りに土属性の魔法書に手を伸ばし、黒色の書物に関しては気にしない事にする。勝手に読むのは不味いと判断した彼は当初の予定通りに魔法書の読み取りに集中し、更に運の良い事に新しいスキルを入手した。


『技能スキル「速読」を入手しました』


視界に画面が表示され、短期間で書物を読み続けた事で新たにスキルを習得したらしく、レナは説明文を見ると書物の読み取りを最速化させるスキルだと判明し、試しに魔法書を読み解く。


「おっ……これは便利だな」


ページを一目見た瞬間に内容が頭に走り、次々と捲ると今回は1分も経過せずに書物を読み解くことに成功し、レナは土属性の熟練度を確認すると上昇しており、内容さえ理解していれば魔法書の効果も発揮する事は間違いなく、レナは次々と本を読みこむ。


「ふうっ……この調子なら全部読み終えそうだな」


机の上に山積みされた魔法書も大分減り、レナは使用済みの魔法書は念のために収納石に回収し、暇なときに朗読するために保管を行う。魔法書としての効果を失っても娯楽品としての役割は果たせるため、彼は今までの魔法書を全て保管している。そして2冊目の書物を読み終えようとした時、レナはある事実に気が付いた。


「へえ……土属性の付与魔法はこんな使い方も出来るのか」


現在彼が読み解いている魔法書には主人公が土属性の付与魔法を極め、付与を施した物体を「浮揚」させる術を身に着け、婚約者を奪った魔術師と決闘を繰り広げる場面に入り、勝負の結末は相打ちという形で物語は終えたがレナは土属性の新しい利用法を見出す。


「なるほど……今までは重力を加算させていたけど、重力を弱める事も出来るのか」


レナの土属性の魔法は物体に重力を加えて攻撃を行う方法しか存在しなかったが、試しにレナは魔法書を取り出して土属性の付与魔法を発動させ、決して押し潰さないように気を付けながら魔法書の主人公のように自分の周囲に浮揚させる想像を行う。


「お、やった」


普段ならば魔法を施した瞬間に重力が加算して押し潰される所だったが、今回はレナの目前で魔法書が空中に浮揚し、試しに触れて見れても特に問題はなく、自由に動かせる。また、自分の意思で操作する事も可能であり、魔法書を回転させたり、あるいは上昇や下降を行う事も出来た。


「これはかなり便利だな……確か浮揚術だっけ?」


魔法書の主人公は土属性の付与魔法を利用した戦法を「浮揚術」と名付けており、彼は剣や槍に付与を施して自分の周囲に滞空させて相手に攻撃を行う事を好み、熟練度を上昇させれば加えられる重力も自在に操作する事が可能であり、レナは浮揚術のコツを掴むために読み終えた魔法書を常に滞空させる事にする。


「これで良しと……意外と魔力を消費しないな」


浮揚術は物体に土属性の付与魔法を施す魔法だが、常に魔力を消耗し続ける訳ではなく、あくまでも最初に付与させた魔力の分だけしか魔力を消費しない。但し、時間経過と共に魔力が徐々に弱体化し、完全に消え去るらしく、長時間の利用は出来ない事が判明する。10冊目の魔法書を読み終えた時点でレナは最初に付与させた魔法書が頭の上に落ちてしまい、彼は地味に本の角に頭をぶつけて痛みで悶える事になる。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...