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戦姫編

トロール 〈中級危険種〉

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「ゲヘヘヘッ!!」
「むうっ……視線が気持ち悪い」
「こいつらゴブリン以上に何でも食べますからね……ちなみにスライムも食べられるそうです。つまり……私達も狙われるという事ですよぉっ!!」


コトミンの手を繋ぎ、アイリィは走り出すとトロールの1体が彼女達の後を追い掛け、動作は遅いが歩幅に大きな違いがあり、相手は歩くだけで2人との距離を縮める。その光景を見たレナは咄嗟に魔弓を構えようとした時、彼の傍に大きな影が差す。


「ウアッ!!」
「うわっ!?」


レナの後方に他のトロールが両腕を伸ばして抱き付こうとするが、咄嗟にレナは回避のスキルを発動して右方向に回り、反撃のスキルを発動して右腕の白銀拳を叩き込む。


「このっ!!」
「ゲフッ!?」


トロールの脂肪で構築された巨大な腹部に拳がめり込むが、相手は眉を顰めた程度で損傷を与えられた様子はなく、並のオーク程度ならば身体能力を強化した状態のレナの攻撃を受ければ一撃で倒せるはずだが、トロールの全身が脂肪の鎧に覆われており、衝撃を緩和する。レナは舌打ちを行いながら左手を構え、トロールの腹部に触れて直接相手の肉体に付与魔法を発動した。


雷属性エンチャット!!」
「グゲェエエエエッ!?」


電流を相手の肉体に直接流し込み、トロールは全身を感電させながら倒れ込み、その様子を確認したレナはアイリィ達を追いかけようとしたが、派手な轟音が周囲に響き渡る。


「ぬおおおおおっ!!」
「ゲヘヘッ!!」


ゴンゾウが正面から自分の体長の2倍近くのトロールと向い合い、御互いに両手を握りしめて力比べを行う様に押し合う。ゴンゾウはゴブリンナイトを軽々と振り回す程の怪力を誇るが、トロールの方も腕力には自信があるのか堂々と彼の両手を握りしめ、御互いに押し合う。


「ぐぅっ……うおおおっ!!」
「ウアアッ……!?」


力比べは徐々にゴンゾウに傾き、彼はトロールの巨体に組み付き、後方に押し返す。相手は自分が力負けした事に驚愕するが、腕を振り上げてゴンゾウの頭部に拳を叩き込む。


「ウオオッ!!」
「うぐっ、ぐふっ……舐めるなぁっ!!」
「グハァッ!?」


だが、ゴンゾウはトロールの巨体を両腕で持ち上げ、プロレスのパワーボムの体勢で相手の背中を地面に叩きつけ、頭部にも衝撃が走る。更に彼は両足を握りしめ、トロールの巨体を勢いよく振り回す。


「ぬううううっ!!」
「ウァアアアアアッ……!?」
「せいやぁっ!!」


両手を話した瞬間、トロールの巨体が空中に吹き飛び、傍に存在した建物に衝突して瓦礫と共に崩れ落ちる。その光景にレナは彼の怪力に驚かされるが、その間にもアイリィとコトミンがトロールに追いかけ回されていた。


「ちょ、ちょっとコトミンさん!!こういう時こそ貴女の水圧砲の出番じゃないですか!?」
「忘れてた……てやっ」
「ウオオッ!?」


コトミンが右腕に水滴を垂らし、腕を振り払う動作を行った瞬間、彼女の右腕から三日月状の水の刃が放たれ、トロールの右足を切断する。その光景に誰もが驚愕し、通常の水圧砲は消防車のホースのように勢いよく放水を行うが、今回はアクアカッターのようにトロールの右足を切断する程の威力を誇る「水刃」を放つ。

「新必殺技……名付けて水刃」
「いや、格好いいですね……でもまだ生きてますよ!?」
「ウォオオオオオッ……!!」


片足を着られてもトロールは地面に跪きながらも両手を伸ばし、アイリィとコトミンは腕を回避し、その隙にレナが後方から接近して吸魔石を片手に構える。


雷属性エンチャット!!」
「ウギィイイイイイイイッ!?」


吸魔石から電撃の槍が放たれ、トロールの全身を感電させる。その威力は弓魔術を発動した時よりも威力は増しており、蓄積させていた魔力を一気に解放して最後の一体を倒す。やがて吸魔石の魔力が消失し、レナは黒焦げと化したトロールを確認して安堵の息を吐く。


「ふうっ……危なかったな」
「いや、死ぬかと思いましたよ!!本当に食べられるかと思いましたよ!?」
「むう……ちょっと気持ち悪かった」


滅多に魔物に襲われる事がないアイリィとコトミンだが、スライムでも捕食を行う魔物には彼女達も狙われる事が判明し、レナはトロールに視線を向ける。これほどの厄介な化物が廃都に生息している事に驚いたが、単純な強さはゴブリンナイトを少々上回る程度であり、冷静に対応すれば強敵という程ではない。


「こいつらの素材は剥ぎ取らないのアイリィ?」
「いや、いりませんよこんな奴等……食用にもなりませんし、さっさと燃やしてくださいよ」
「待て……無闇にこの場所で魔物を焼くと臭いを嗅ぎつけて他の魔物がやってくる。放置して置けば勝手に他の魔物が訪れて死骸に食らいつく……今の内に先に進むぞ」


ゴンゾウの言葉にレナ達は了承し、トロールの死骸は放置してその場を移動する事に決めた。
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