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戦姫編

改名

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帝都のゴブリンロード襲撃から二週間が経過し、彼は黒猫亭から陽光教会に拠点を変えて生活を行う。ゴブリンロードの一件以来、彼の存在を探そうとする人間が大量に出現し、目立つ事を避けたレナは治療院の建物から外出する事が出来ず、教会の仕事を手伝いながら生活を送る。

巫女姫のヨウカが聖者の間に存在する聖光石から聖水を生産する際、彼女の「薬効耐性」のスキルの影響で薬品による魔力の回復が行えず、彼女自身も膨大な魔力が原因で魔力の回復速度が追い付けないという問題は解決しておらず、定期的にレナが聖属性の付与魔法を発動して魔力を回復させる。



そしてレナ自身にも大きな変化があり、ゴブリンロードの討伐を成し遂げた彼のステータスは一気に「38」までレベルが上昇する。ステータスが一気に上昇し、更に各属性の付与魔法と耐性の熟練度も大きく上昇しており、火属性と水属性の付与魔法は限界値を迎えていた。また、新しいスキルも幾つか身に着け、ワルキューレ騎士団の訓練にも参加して戦闘の技術を磨く。



レナの戦闘手段は主に魔法を中心としており、彼の覚えている戦技も魔法と組み合わせて使用する事が多く、ワルキューレ騎士団の団長であるミキは彼の戦闘法に関心を抱き、更に砲撃魔法が覚えることが出来ない付与魔術師の職業に悩んでいる彼に対し、最適な助言を行う。


『弓矢を扱えばいいのではないですか?矢に付与魔法を施して攻撃を行えますし、鍛冶職人に頼めば魔石を加工して矢の鏃として取り付ける事も出来るかも知れません』


この言葉をレナが聞いた時、最初に自分がホノカの魔道具店に通っていた際、彼女から弓矢の指導を受けていた事を思い出し、本格的に弓矢の訓練を行う。幸いにも指導を引き受ける人材は溢れており、元々「狙撃」のスキルを習得していたレナは瞬く間に弓矢を扱えるようになった。



――そんな彼が異世界に召喚されてから約二ヶ月の月日が流れ、彼は陽光教会の食堂で皆と共に朝食を取っていると、予想外の人物が教会に訪れる。



「やあ、相変わらず元気そうだね」
「あれ、ホノカさん?」


食堂に現れたのは魔道具店の店主であるホノカであり、彼女の傍にはレナは初めて見る顔の護衛が付いており、口元に覆面をした黒髪の少女が頭を下げる。


「初めましてでござる。拙者はホノカ殿の護衛のカゲマルでござる」
「ござる?」
「拙者って……忍者みたいな外見なのに侍口調だね」
「おおっ?侍を知っているのでござるか?」
「彼女は昨日から僕の護衛を請け負った冒険者だよ」


カゲマルと名乗る少女にレナは握手を行い、ホノカが最近に雇った冒険者の護衛の1人であり、いつも護衛役を行っていた人間が家庭の事情で退職したらしく、冒険者ギルドに依頼して彼女を仕事を引き受けた形になる。


「それよりどうしたんですか?あ、もしかしてこの間の頼んでいた件……」
「そういう事だね。やっと新しい身分証が再発行できたから持ってきたよ」
「再発行?」


ホノカの宣言に食堂内の人間が彼女に視線を向け、実はレノはゴブリンロードの騒動の件が起きる前から彼女に頼みごとを行っており、新しい身分証の発行を依頼していた。彼女はレナが今まで使用していた身分証を受け取り、新しい身分証を差し出した。


「どうぞ、レナ君」
「わあ……ありがとうございます!!」
「……レナ?」



――彼女が渡した身分証には「レナ」という新しい名前が刻まれており、遂にレナは自分の本当の名前の身分証を作成する事に成功する。唐突な名前の改名に他の人間達が驚くが、これでレナは自分の名前が「レノ」と間違われる事がなくなり、安堵の息を吐く。



「おいおい、改名なんて随分と大胆な事をしたね。再発行には相当に金が掛かっただろう?」
「どうしたんですかレノさん?そんなにご自分の名前が嫌だったんですか?」
「いや……嫌というか、こっちが本当の名前だったんだけどね」
「僕も驚いたよ。コトミン君が君の事をレノと言い続けていたからてっきり本名だと思っていたんだが……」


最初にホノカがレナ達の身分証を発行した際、彼女はコトミンが彼の事を「レノ」と呼んでいたので名前を間違って覚えてしまい、その勘違いを強くレナが訂正しなかった事が原因で彼女は間違った名前でレナとコトミンの身分証を発行してしまう。


「……むうっ、レノの名前の方が可愛げがあった」
「そうですね。何となく、レノさんの方が呼びやすかったですね」
「一文字しか変わらないでしょ……じゃあ、これからは皆もレナと呼んでね」
「え~……じゃあ、レナたんと呼べばいいの?」
「分かりましたレナさん!!」
「レノの方が呼びやすいように思えるけどね」
「レナ……何処かで聞いたような……」


レナの発言に全員が戸惑うが、ミキだけは「レナ」という名前に眉を顰めるが、ホノカが先に自分の収納石のブレスレットを発動し、異空間に収めていた木箱を取り出してレナに差し出す。


「それとこれは僕からのプレゼントだよ。最近、弓矢の練習をしていると聞いてたからね……ゴブリンロード討伐のお祝いという事で受け取ってくれるかい?」
「え?」


ホノカが差し出した木箱を受け取り、レナは中身を開くと木箱の中には木造の弓矢が入っており、矢筒と数十本の矢も付属されていた。
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