148 / 207
ゴブリンキング編
ゴブリンの皇帝
しおりを挟む
『ウオァアアアアアアアッ!!』
「ぎゃあぁああああっ!?」
「ひいいっ!?」
「や、止めてくれぇっ!?」
ゴブリンロードは肥大化した両腕を振り上げ、次々と兵士を薙ぎ払う。腕に触れた兵士達は圧倒的な腕力によって十数メートルも吹き飛ばされ、他の兵士を巻き込んで吹き飛ぶか、あるいは街の建物に衝突するか、もしくは地面に叩きつけられて絶命する。
「や、矢を射ろっ!!魔法を撃てっ!!」
「無理ですよ!?こんな化物、どうしようもできませんっ!!」
「駄目だ!!魔法が効かない!!」
兵士達の中には諦めずに抵抗を試みようとする人間も存在したが、ゴブリンロードの全身は鋼鉄の皮膚と化しており、剣も槍も矢も魔法すらも通じない。どのような攻撃を加えようとゴブリンロードの皮膚には傷一つ付けられず、次々と兵士達が蹴散らされていく。
帝国軍の兵士達が一夫的に蹂躙される光景を見せつけられ、レナ達は動くことが出来なかった。全員がゴブリンロードに恐怖を抱いて身体が硬直してしまい、この場に残り続ければ全員が殺されてしまう事を理解しながらも動くことが出来なかった。
「……逃げましょう。もう、どうしようもありません」
最初に声を上げたのはアイリィであり、彼女の言葉に反応して他の人間も身体の硬直から解放され、レナはアイリィに視線を向ける。
「逃げるって……何処に?」
「何処でもいいからこの場所から離れますよ。もう分かっているでしょう?あんなの、もう誰も止められませんよ」
「しかし……」
「現実を見てください!!私達にあんな化け物をどうにかできると思っているんですか!?」
アイリィの言葉にゴンゾウは眉を顰め、彼としてはゴブリンロードを放置して逃げ出す事に抵抗を覚えるが、彼女の言葉通り、兵士達を蹂躙する怪物を止める手段は誰も思いつかない。剣や槍の刃どころか並の砲撃魔法すらも通さない鋼鉄の皮膚、巨人族の何倍も上回る圧倒的な腕力、何よりも仲間達を殺された事で人間に対して激しい怒りを抱いており、この場に存在する兵士を全員倒したとしてもゴブリンロードの暴走は止まらない。
現在のレナ達の戦力では到底敵う相手ではなく、アイリィは撤退を指示する。だが、レナはゴブリンロードに視線を向け、次々と兵士を殺す姿に拳を握りしめ、不意に自分の手元に違和感を覚える。
「あっ……」
「レノ?」
彼は掌を確認すると元の世界の硬貨を握りしめている事に気付き、完全魔法耐性を備えた金属であり、これを使用すればレナの「奥の手」は使用できる。しかし、彼は目の前で暴れるゴブリンロードに視線を向け、自分の魔法が通じる相手なのか疑問を抱く。
レナは現実世界の硬貨を利用して複数の魔法の属性を付与する事で反発作用と呼ばれる現象を引き起こし、強烈な「光の衝撃波」を生み出す事が出来る。しかし、この反発作用の威力はレナの魔法の威力が基準となり、レベルが20程度のステータスの彼の攻撃が通用するのかは本人には分からない。
それでもゴブリンロードに損傷を与える可能性があるのはレナの反発作用を利用した攻撃法だけであり、彼は効果を握りしめて考える。練習の時は「火属性」と「雷属性」の魔法を付与させたが、もしも他の属性を追加した場合はどうなるのかは試していない。威力が上昇するのか、それとも付与は出来ないのか、あるいは相性が悪い属性同士では相殺してしまう可能性もある。
――それでもレナは帝国の兵士を見殺しには出来ず、彼等はあくまでも帝都を守る為にゴブリンの群れに攻撃を行っただけであり、決して悪意を抱いてゴブリンナイトを惨殺したわけではない。ゴブリンロードに殺される兵士の1人1人に家族が存在し、ゴブリンロードを放置すれば更に何百人、あるいは何千人の兵士が殺されてしまうだろう。
彼は硬貨を握りしめ、仮にこの場を逃げ出したとしてもゴブリンロードが見逃す保証もなく、レナは覚悟を決めて硬貨を強く握りしめる。そんな彼の行動にコトミン達は不思議そうな視線を向けるが、レナは彼等に振り返り、自分1人ではゴブリンロードには通じない事は把握しており、3人にも協力を頼む。
「ごめん……もしかしたら俺は死ぬかもしれないけど、皆に手伝って欲しい事がある」
『はあっ!?』
頼み方に少々問題があったが、3人はレナが考えた作戦を聞き終え、彼の提案に唖然とする。それでもレナ一人をこの場に残して逃げ逃げるという選択肢は3人には存在せず、仕方なく彼の提案を受け入れる事にした。
「ぎゃあぁああああっ!?」
「ひいいっ!?」
「や、止めてくれぇっ!?」
ゴブリンロードは肥大化した両腕を振り上げ、次々と兵士を薙ぎ払う。腕に触れた兵士達は圧倒的な腕力によって十数メートルも吹き飛ばされ、他の兵士を巻き込んで吹き飛ぶか、あるいは街の建物に衝突するか、もしくは地面に叩きつけられて絶命する。
「や、矢を射ろっ!!魔法を撃てっ!!」
「無理ですよ!?こんな化物、どうしようもできませんっ!!」
「駄目だ!!魔法が効かない!!」
兵士達の中には諦めずに抵抗を試みようとする人間も存在したが、ゴブリンロードの全身は鋼鉄の皮膚と化しており、剣も槍も矢も魔法すらも通じない。どのような攻撃を加えようとゴブリンロードの皮膚には傷一つ付けられず、次々と兵士達が蹴散らされていく。
帝国軍の兵士達が一夫的に蹂躙される光景を見せつけられ、レナ達は動くことが出来なかった。全員がゴブリンロードに恐怖を抱いて身体が硬直してしまい、この場に残り続ければ全員が殺されてしまう事を理解しながらも動くことが出来なかった。
「……逃げましょう。もう、どうしようもありません」
最初に声を上げたのはアイリィであり、彼女の言葉に反応して他の人間も身体の硬直から解放され、レナはアイリィに視線を向ける。
「逃げるって……何処に?」
「何処でもいいからこの場所から離れますよ。もう分かっているでしょう?あんなの、もう誰も止められませんよ」
「しかし……」
「現実を見てください!!私達にあんな化け物をどうにかできると思っているんですか!?」
アイリィの言葉にゴンゾウは眉を顰め、彼としてはゴブリンロードを放置して逃げ出す事に抵抗を覚えるが、彼女の言葉通り、兵士達を蹂躙する怪物を止める手段は誰も思いつかない。剣や槍の刃どころか並の砲撃魔法すらも通さない鋼鉄の皮膚、巨人族の何倍も上回る圧倒的な腕力、何よりも仲間達を殺された事で人間に対して激しい怒りを抱いており、この場に存在する兵士を全員倒したとしてもゴブリンロードの暴走は止まらない。
現在のレナ達の戦力では到底敵う相手ではなく、アイリィは撤退を指示する。だが、レナはゴブリンロードに視線を向け、次々と兵士を殺す姿に拳を握りしめ、不意に自分の手元に違和感を覚える。
「あっ……」
「レノ?」
彼は掌を確認すると元の世界の硬貨を握りしめている事に気付き、完全魔法耐性を備えた金属であり、これを使用すればレナの「奥の手」は使用できる。しかし、彼は目の前で暴れるゴブリンロードに視線を向け、自分の魔法が通じる相手なのか疑問を抱く。
レナは現実世界の硬貨を利用して複数の魔法の属性を付与する事で反発作用と呼ばれる現象を引き起こし、強烈な「光の衝撃波」を生み出す事が出来る。しかし、この反発作用の威力はレナの魔法の威力が基準となり、レベルが20程度のステータスの彼の攻撃が通用するのかは本人には分からない。
それでもゴブリンロードに損傷を与える可能性があるのはレナの反発作用を利用した攻撃法だけであり、彼は効果を握りしめて考える。練習の時は「火属性」と「雷属性」の魔法を付与させたが、もしも他の属性を追加した場合はどうなるのかは試していない。威力が上昇するのか、それとも付与は出来ないのか、あるいは相性が悪い属性同士では相殺してしまう可能性もある。
――それでもレナは帝国の兵士を見殺しには出来ず、彼等はあくまでも帝都を守る為にゴブリンの群れに攻撃を行っただけであり、決して悪意を抱いてゴブリンナイトを惨殺したわけではない。ゴブリンロードに殺される兵士の1人1人に家族が存在し、ゴブリンロードを放置すれば更に何百人、あるいは何千人の兵士が殺されてしまうだろう。
彼は硬貨を握りしめ、仮にこの場を逃げ出したとしてもゴブリンロードが見逃す保証もなく、レナは覚悟を決めて硬貨を強く握りしめる。そんな彼の行動にコトミン達は不思議そうな視線を向けるが、レナは彼等に振り返り、自分1人ではゴブリンロードには通じない事は把握しており、3人にも協力を頼む。
「ごめん……もしかしたら俺は死ぬかもしれないけど、皆に手伝って欲しい事がある」
『はあっ!?』
頼み方に少々問題があったが、3人はレナが考えた作戦を聞き終え、彼の提案に唖然とする。それでもレナ一人をこの場に残して逃げ逃げるという選択肢は3人には存在せず、仕方なく彼の提案を受け入れる事にした。
1
お気に入りに追加
3,645
あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる