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ゴブリンキング編

ゴブリンロード

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『ギィイイイイイッ……!?』
「撃てっ!!撃ち続けろ!!化物だろうと生身の生物だ!!」


四方八方から弓を構えた兵士が矢を射抜き、ゴブリンキングを守るように密集していたゴブリンナイト達に矢の雨が降り注ぐ。その光景を目撃したレナ達は咄嗟に視線を反らし、相手が魔物とは言え、全身を矢に射抜かれる光景を彼等には見ていられなかった。


「ギィアアアアアッ……!?」
「ギィイイイッ……!!」
『オマエ、タチッ……!?』


ゴブリンナイトは巨人族にも匹敵する巨躯の生物ではあるが、彼等は帝国の討伐隊から奪い取った鎧を着こむことは出来ず、全身に布と毛皮を組み合わせた防具しか装備していない。それでも彼等は全身に矢を受けながらも自分たちの指導者であるゴブリンキングを守るために両腕を広げ、次々と矢が身体に突き刺さりながらも倒れようとしない。


「くそっ!!しぶとい奴等めっ!!」
「魔術師部隊!!一気に蹴散らせ!!」


弓矢を構えていた兵士達が左右に別れ、帝国軍の魔術師の証である青色のローブを纏った男達が現れ、彼等は杖を構えると火属性の砲撃魔法を放つ。


『フレイムランス!!』


十数人の魔術師達が同時に火属性の砲撃魔法を発動し、杖先に装着されている魔石から火の槍が放たれ、ゴブリンナイトの肉体に衝突した瞬間に爆発する。流石のゴブリンナイト達も悲鳴を上げ、肉体が破損して皮膚が剥がれ落ちて筋肉組織が露わになるが、それでもゴブリンキングを守る為に御互いが支え合うように肩を組む。


『ヤメロッ……ナニヲシテイルッ!?』
「ギィイイイッ……!!」


自分を守る為に行動を行う仲間達にゴブリンキングは戸惑うが、ゴブリンナイトは自分の「親」を守る為に彼の傍から離れようとせず、次々と魔術師が砲撃魔法を放出しても彼等は誰一人として逃げない。その光景に周囲の人間達が戸惑い、攻撃の手が緩む。


「お、おい……どういう事だ?どうしてこいつら……」
「怯むなっ!!こいつらのせいで街がどうなったと思ってるんだ!?攻撃を休むんじゃないっ!!」
「お、おう!!」


兵士達は一瞬だけ攻撃を止めたが、すぐに弓兵と魔術師が攻撃を再開する。やがてゴブリンナイト達も限界を迎え、両足を崩して倒れこむ個体も出現し、ゴブリンキングは悲しみの咆哮を放つ。


『ヤメロォオオオオオオオッ……!!』


ゴブリンキングの言葉は攻撃を小なう兵士に向けて言ったのか、それとも自分を守るゴブリンナイトに向けて言ったのか、あるいは両方の意味合いで叫んだのかは本人にしか分からないが、彼の肉体に異変が生じる。徐々に全身の皮膚が緑色から赤色に変色し、全身の爪と牙がより一層に鋭さを増し、やがて全てのゴブリンナイトが倒れた瞬間に彼は身体を起き上げる。



――グォオオオオオオオオオオッ……!!



凄まじい怒りの咆哮が帝都に響き渡り、兵士達は攻撃を中断して耳を抑えてしまい、やがて叫び声が収まると防壁の北門にはゴブリンナイトの死骸の上に立ち尽くしていたゴブリンキングが血の涙を流し、徐々に両腕の筋肉が膨れ上がった。


『ウグッ……ォオオオオオオオッ!!』
「な、なんだ!?」
「ば、化物めっ!!」
「撃てぇっ!!」


肉体を変化させたゴブリンキングに弓兵が矢を射抜くが、全身の筋肉が鋼鉄と化したかのようにゴブリンキングの皮膚が矢の鏃を弾き返す。その光景を見た兵士達は唖然とし、すぐに魔術師が砲撃魔法を発動する。


「こ、これならどうだ!!フレイムランス!!」
『フンッ!!』


魔術師の1人が杖先から火炎の矢を放つが、右腕を巨大化させたゴブリンキングが腕を振り払い、正面から火属性の砲撃魔法を受け止める。肉体が発火するが、ゴブリンキングは気にした風もなく歩み始め、しばらく経過すると魔法で生み出した炎が消え去り、その肉体には火傷すら負っていない事が発覚する。

目の前の光景に兵士達は動揺を隠せず、魔法すら通じない相手に誰もが恐怖を抱き、レナ達も何が起きているのか理解できなかったが、アイリィだけが一言だけ呟いた。


「ゴブリン……ロード」
「えっ?」
「種族の頂点に達した魔物にだけ名付けられる称号です。分かりやすく言えば……あれは最早ゴブリンの王ではなく、皇帝です」
「皇帝……」


彼女の言葉にレナ達は冷や汗を流し、遂にゴブリンの頂点に到達した「ゴブリンロード」は母親と仲間達の死体を乗り越え、兵士達を蹂躙すべく動き出す。
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