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ゴブリンキング編

帝都襲撃

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「はあ?ゴブリン?」
「一体何を言って……」
「ほ、本当っすよ!!街の外にゴブリンが現れたんです!!」
「そんな馬鹿な……ここは帝都だぞ?」


エリナの発言に食堂の客は呆れた表情を浮かべ、この帝都の警備はヴァンパイア、サキュバスの件が起きて以来さらに警備兵が増員されており、しかもゴブリンキングが草原に現れた事で最高レベルの警備が敷かれている。それにも関わらずに街中にゴブリンが現れたと報告するエリナに対し、レナ達だけが反応する。


「どういう事ですか?本当にゴブリンが現れたんですか?」
「あたしは嘘なんか言わないっす!!本当にゴブリンが街のあちこちで暴れてるんですよ!!しかもあいつら、王城の方から現れたんですっ!!」
「王城……まさかっ!?」
「……地下水路!?」


レナ達の脳裏に帝都を抜け出す際に利用した地下水路が思い浮かび、王城の地下牢と帝都の外に繋がる隠し通路であり、もしもエリナの言葉通りにゴブリンが街中に現れたとしたら外の堀に繋がる地下水路から王城に侵入したとしか考えられない。


「外は大変っすよ!!王城から沢山のゴブリンが出てきますし、今は兵士と冒険者が対応してますけど……」
「おい!!いい加減にしろっ!!ゴブリン如きが街の中に入り込むはずが……」


彼女の言葉に男性の1人が食事を邪魔された事で気分を害したのか文句を告げようとしたが、彼の席は窓の傍であり、レナ達が視線を向けた時には窓の外から赤色の物体が飛び出してきた。


「ギィイイイイッ!!」
「えっ……ぎゃあぁあああっ!?」
「なっ!?」


窓から現れたレッドゴブリンが立ち上がった男性に噛みつき、床に押し倒す。確実に首元の急所に牙を喰いこませ、皮膚を食い千切る。その光景に食堂内の人間が悲鳴を上げ、レナ達が動き出す。


「弾撃!!」
「グゲェッ!?」


最初にレナが全身を回転させながら拳をレッドゴブリンの顔面に食らわせ、相手を吹き飛ばす。その後ろからコトミンが掌を喉元を食い千切られた男性に差し出し、回復液で治療を行う。


「がはっ……だ、だすげて……」
「大丈夫……傷は浅い」
「いや、致命傷ですよね……念のために私も……治癒ヒーリング


男性の治療をアイリィも手伝い、その間にレナは窓の外に近づき、外の光景を確認する。先ほど殴り飛ばしたレッドゴブリンが街道で倒れており、周囲は既に混乱の渦と化しており、あちこちから悲鳴や魔物の鳴き声が彼の耳に聞こえて来た。


「不味い……このままだと街がやばい」
「一体どうなってるんだ……!?」


窓枠にゴンゾウも覗き込み、何が起きているのかは誰も理解できないが、1つだけ分かる事はゴブリン達が帝都に襲撃を仕掛けたという事だけである。どうしてゴブリン達が地下水路の存在を知ったのかは不明だが、レナ達は陽光教会に向かう事にする。


「教会に行きましょう。このままだと不味いですよ」
「そうだな……でもここの人達は……」
「皆さんは今は部屋の中に戻ってください!!もしくは冒険者ギルドに向かってください!!冒険者の方なら魔物にも対抗できますから!!」


アイリィの発言に食堂内の人間達が慌てて行動を開始し、彼女の言葉に従って準備を進める。一方でレナ達も破壊された窓を乗り越えて外に移動を行い、まずは陽光教会に移動して現状を確かめる事にした。


「あ、しまった!!ゴンゾウの武器は……」
「問題ない……俺にはこの筋肉がある」
「おおう……」


レナ達は装備品は身に着けたままなので問題はないが、ゴンゾウはレナが宿泊している部屋に彼の鍬を忘れてしまい、武器は持っていない。それでも彼は素手の状態でも戦う覚悟は出来ており、前方の街道で徘徊するレッドゴブリンを発見すると彼は両腕を伸ばす。


「ぬんっ!!」
「ギィアッ!?」
「ぬおおっ!!」


彼は片腕でレッドゴブリンの首を掴み、勢いをつけて投げ飛ばす。通常のゴブリンよりも強い力を所有しているはずのレッドゴブリンを軽々と吹き飛ばすゴンゾウの戦闘力に驚かされながらもレナ達は教会に続く道を移動する。


「ぎゃああっ!?」
「うわぁああっ!!」
「た、助けてくれぇっ!?」
「くそっ……何が起きてやがる!!」


街の至る箇所で悲鳴が響き渡り、既に火事が起きている場所も存在した。その光景を確認しながらレナ達は遭遇したレッドゴブリンは出来る限り討伐を行い、一般人を救い出す。


「ひぃいっ!?」
「ギィイイッ!!」
「させるかっ!!」


地面に倒れ込んだ女性に襲い掛かろうとしたレッドゴブリンにレナは白銀拳を振り翳し、後方から背中を叩きつける。相手は悲鳴を上げて倒れ込み、今更ながらにレナは先ほどから遭遇するゴブリン達が王国軍の鎧を身に着けていない事に気付く。
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