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ゴブリンキング編

教会からの配給

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「どうやって王城に侵入するの?城壁をよじ登る?」
「そんな無茶で無謀な行動するわけないじゃにですか。ここの人達に協力して貰います」
「ここって……誰?まさかミキさんには協力は頼めないし、テンさんも手伝ってくれるとは思えないけど……あっ」
「ヨウカさんですよ。忘れているかも知れませんけど、この教会の一番偉い人ですよ彼女」
「……なるほど、人質に使う。アイリィ、恐ろしい子……」
「違いますよ!!私はどんな凶悪犯罪者ですか!?」


アイリィはコトミンに突っ込みを行い、レナは先ほど別れたヨウカを思い出し、彼女はきっと自室に戻っているので会うのは難しくはないだろうが、アイリィはヨウカに何を頼むのか問い質す。


「ヨウカに何を頼むの?」
「この陽光教会は囚人への食事の配給も行っています。教会が信仰する太陽神は慈愛の女神の象徴でもありますから、週に一度だけ罪人の方に食事の配給を行っています。その配給日が丁度いい具合に明日なんですけど、ヨウカさんに頼んで1日だけ早めて貰いましょう。そして私達も配給のお手伝いさんに紛れ込んで城の中に入りましょう」
「大丈夫なのそれ?ヨウカに迷惑が掛かるんじゃ……」
「だけどこの方法以外に帝都を抜け出す方法はありません。急ぐのなら今ですよ」
「……分かった」


陽光教会には迷惑を掛けてしまう形になるが、レナはゴンゾウの命を助ける為、ヨウカに協力を求める事にした――





――結果として彼女はレナ達の要求をあっさりと認め、囚人の配給日を1日だけ早めて王城に食料を運び込む。幸いというべきなのか、ミキは冒険者ギルドに赴いてギルドマスターと討伐隊の件で話し合いを行う為に出向いており、レナ達は修道女の恰好に成りすまして王城に向かった。

今回の配給を行うのはヨウカ自身であり、彼女の護衛役としてポチ子とアメリアも参加していた。巫女姫のヨウカが囚人に直接配給を行うのは初めてではないらしく、まだ彼女が新しい巫女姫に認められる前は配給日の際は自分自身が配給を行っていたという。食料を詰め込んだ馬車が王城に移動し、その中には修道女の恰好に変装したレナ達の姿もあった。


「……なんで俺達まで修道女の恰好するの?」
「しょうがないじゃないですか。修道女以外の方は身分証の提示を求められるんですから、この恰好じゃないと不味いんですよ」
「だからって女装までする必要ないだろ……顔だけ隠せばいいんじゃないの」
「……レノ、可愛い」
「とってもに合ってるよレノたん!!」
「何処からどう見ても女の子にしか見えません!!」
「に、似合ってると思います……」
「嬉しくないわよぉっ(裏声)」


現在のレナは化粧を施し、他の女性陣と同様に修道女のローブを身に着けていた。胸元には詰め物まで仕込んでおり、外見は完全に女性にしか見えない。以前にコトミンが彼に張り付いて女装した事もあったが、元々顔立ちは中性的だったので特に違和感はなく、声を極力上げなければ気付かれる事はないだろうが、問題は王城に到着した後にも残っている。


「地下水路にはどうやって移動する?」
「地下牢に辿り着ければ移動できますよ。何しろ、地下牢の真下に存在しますから」
「えっ!?なんで牢獄に……」
「灯台下暗し……普通に考えて地下牢なんかに城から脱出できる方法があるとは思わないでしょう?実際に地下水路の存在に気付いた人間はいなかったようですし」
「なるほど……」


アイリィの話によると囚人を収監する場所に実は外に通じる隠し通路があるとは誰も考え付かないらしく、問題は未だに地下水路に通じる隠し通路が存在するかである。現在の王城は300年程前に建て直されたため、現在でも地下水路に通じる隠し通路が残されているのかは不明だが、地下牢から移動できるのならばレナ達には都合が良い。


「頑張ってねレノたん……私達、上手く誤魔化すからね!!」
「ほ、本当は危険だと思いますけど……お友達を救うためなら協力します……」
「必ず無事に帰ってきてください!!」
「……ありがとう」


既にヨウカと護衛役の2人にはレナ達は自分の目的を伝えており、最初は反対されるかと思ったが友達の命を救いたい事を伝えると全員が最後には賛同し、協力する事を約束してくれた。地下水路に抜け出すまでは協力してくれる事を約束してくれた。そして会話を行っている間に馬車が王城に辿り着き、城門の兵士が駆け寄る。


「止まれ!!何者だ!!」
「……陽光教会の者です。囚人に食料の配給を行うために参りました」
「こ、これは失礼しました!!」


アメリアが身分証を取り出し、陽光教会の象徴である十字架と太陽が合わさったような銀色のペンダントを見せつけると慌てて兵士達が敬礼を行い、馬車を王城内部に招きこむ。レナは遂に自分を召喚して追い出した王城に入り込む事に成功し、決して顔見知りに見つからないように気を付けなければならない。
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