最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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ゴブリンキング編

ゴブリンキングの要求

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「その巨人族はどうなった!?」
「い、生きてはいると思うけど……あいつら、捕まえた人間を一か所に集めていた。炭鉱の発掘員が食堂に使っていた炭坑内の空間を牢屋代わりにして毒で動けない人間を集めてたよ」
「魔物が人間を殺さずに生け捕りに……?」
「食堂に移動させられた私達の前にでかいゴブリンが現れた……すぐに私もこいつがゴブリンキングだって分かった。伝承通りに馬鹿でかい体格のゴブリンだったよ。そいつはゴブリンを従えて私達に話しかけてきた……それで盗賊の職業の私に陽光教会に存在する白銀製の道具を盗んで来いって……」
「どうしてゴブリンキングがそんな事を……」
「そんなのこっちが聞きたいよ!!だ、だけど命令を聞かないと私の仲間を殺すって……三日以内に持って来なければ捕まえた人間を全員殺すと言っていたよ」
「……ヨウカ様」
「嘘は吐いてない……と思うけど」
「この人は本当の事しか話していないよ」


ミキが少女の言葉にヨウカに問い質すが、結果は全て彼女の言葉は真実であり、一言も嘘は発していなかった。全員がその場でお互いの顔を見合わせ、ゴブリンキングの登場にアラン炭鉱内の人間が人質として捉えられ、しかも陽光教会の白銀製の道具を盗んでくるように彼女に指示を出した。あまりにも突拍子の無い話を全員が理解するのに多少の時間が掛かったが、少女が嘘を吐いていない事だけは間違いなかった。


「三日以内……帝国が軍隊を派遣する時間を考えたとしても炭鉱内の人質は軍隊が到着する前に殺されてしまいますね。具体的なゴブリンの数は分からないのですか?」
「……分からない。私達を襲ってきた奴等も相当な数だったけど、多分もっと居ると思う。今回の派遣された冒険者の数は50人……そして帝国の兵士は100人はいたけど、全員が碌に抵抗も出来ずに捕まった。下手をしたら数百匹は居るのかも……」
「数百のゴブリン……しかも人間のように毒矢を扱う射手までいるのかい。最悪だね……」
「毒の対策を帝国軍に忠告して置く必要がありますね。我々も出向かなければならないかも知れません」
「な、なあっ……お願いだよ!!どうか仲間を見捨てないでくれ!!その鍵を渡さないとあいつらは……」
「鍵は渡せません……ですが、貴方達の仲間の救出には全力を尽くします。テン、彼女を冒険者ギルドに送って下さい」
「え?だけどこいつは……」
「罪を犯したのは事実ですが、仲間の命を助けるための行為です。それに有力な情報も教えてくれました……処罰は後日という事にしましょう」
「あっ……でもお仕置きはするんですね」


テンは盗賊の少女を引き連れて冒険者ギルドに向い、レナ達はミキの後に続いて執務室に移動する。ポチ子とアメリアも加わり、全員が中に入り込んだのを確認すると彼女はしっかりと扉に鍵をかけ、窓を閉める。


「……今回の騒動に関してですが、先ほどの彼女の話を聞いていて分かった事はゴブリンキングの目的は恐らくは浄化の間の鍵ではなく、この教会に隠してある聖遺物でしょう」
「聖遺物?」
「どういう事ですか?」
「……?」
「わぅっ?」
「だ、団長……その事は部外者に話すのは……」


ミキの言葉にアメリアだけが事情を知っているのか困惑した表情を浮かぶが、彼女は首を振る。


「ここまで来たらレナさん達にも話しておきましょう。この方達は信用できます……先ほどの方はゴブリンキングから白銀製の道具を持ってくるように言われたようですが、実はこの教会には白銀製の武具が隠されています」
「じゃあ、ゴブリンキングの本当の狙いはヨウカの持っている鍵じゃなかったんですか?」
「ええ。きっと「道具」を取ってこいと言っている時点で相手も完全には陽光教会が秘匿している聖遺物の正体を知らなかったのでしょう。この教会には聖遺物と呼ばれる過去の大戦で利用された聖剣が存在するのです」
「聖剣……」


レナこれまでに何度か聞いたことがある単語であり、ミキの語る聖剣は「白銀製」らしく、強力な武器ではあるが無闇に扱えない危険な代物の為、教会に封印されているという。


「この聖剣の名前は「デュランダル」破壊に特化した聖剣なのですが、扱える人間が居なくて100年近く、この教会の地下に封印されています。その存在を知っているのは陽光教会の関係者か、あるいは帝国の王族だけなのですが……ゴブリンキングが何処から情報を掴んだのかが気になりますね」
「どうしてゴブリンキングが聖剣を狙ったと思うんですか?もしかしたら本当にヨウカさんの持っている白銀製の鍵が狙いなんじゃ……」
「浄化の間の鍵の存在を知っているのは陽光教会の中でも私と巫女姫様だけなのです。代々、鍵の存在を知っているのは聖魔導士の職業と巫女姫の位に就いた人間にしか教えられません。テンに関しては彼女を信頼して私の方から話しましたが……」
「つまり他の人間に鍵の存在を知られているはずがないと……まあ、確かに鍵の存在を知っていたら「道具」なんて単語は使いませんよね」


ミキの説明に全員が納得し、彼女は執務室の机の上に羊皮紙を開き、レナは覗き込むと帝都周辺の地域の地図らしく、帝都の北部の方角に存在する鉱山を指差す。
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