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ゴブリンキング編
白銀の鍵
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「鍵が一つしかないってどういう事ですか?普通、そんな重要そうな部屋の鍵は複数存在するんじゃないですか?」
「浄化の間は白銀製の鍵でないと開かないんです!!素材があまりにも希少すぎて1つしか作れず、あの鍵を奪われると扉は開けません!!」
「なら扉か壁を破壊すれば……」
「それは出来ません!!あそこは神聖な場所なんです……それに侵入者の対策のために非常に頑強に作られているので破壊行為自体が無意味です」
「だけど何でこんな時に鍵を盗まれるなんて……」
「こんな時だからこそだよ。普段ここは怪我人以外の部外者の立ち入りは禁止しているんだ。アラン炭鉱の怪我人の治療で人手を割いた隙に盗人が入り込んだんだね……くそったれ!!」
「巫女姫様の前で下品な言葉は控えなさい……ああ、どうすれば……」
「……ポチ子に臭いを嗅がせて追いかければ?」
「わふっ?」
コトミンの発言に全員の視線がポチ子に向けられ、確かに彼女の犬型の獣人族の彼女の嗅覚は優れており、盗賊の臭いを嗅ぎつければ追跡を行う事も出来るかも知れない。テンは慌ててポチ子を抱き上げ、ミキの指示を仰ぐ。
「団長!!」
「テン!!貴方はポチ子と共に盗人の追跡を行いなさい!!他の団員は鍵以外の被害がないのかを捜索しなさい!!」
『はっ!!』
「わんっ!!」
彼女の指示に全員が即座に行動を開始し、鍵が盗まれるという想定外の事体に対してもミキは冷静に対応を行い、ヨウカの肩を掴む。
「巫女姫様の念のために私の傍を離れないで下さい。鍵の盗人以外にも賊が隠れている可能性がありますから……」
「う、うん……でも、どうしよう。浄化の間に入れないと聖水が生み出せないのに……」
「大丈夫です。現在、レノ様の見つけ出した方法から聖水の生成を試みています。聖光石から生み出される代物よりも質は落ちるかも知れませんが……」
「気になるのはこの状況で鍵を盗み出す輩が現れた事ですね……その盗賊はアラン炭鉱から訪れた冒険者なんですよね?それなら他の人に話を聞けば何か分かるかも知れませんよ」
「確かに……怪我人の方は何処ですか?」
「今は緊急医療室に集めています。全員、軽傷とは言えない傷でしたが回復薬の投与で怪我自体は治っています」
「ちょっと話を聞いてみませんか?何か情報を持っているかも知れませんし……」
アイリィの発言にミキは承諾し、彼女はレナ達を連れて緊急医療室と呼ばれる広間に案内する。病院の病室のようにベッドが並べられており、そこには20人程の男性が横たわっていた。予想外の大人数にレナは意外に感じ、ここからアラン炭鉱は馬でも数時間の距離は掛かる場所だと彼は聞いていたが、これだけの大人数が戻って来た事に疑問を抱く。
「この人達はどうやって戻ってきたの?」
「転移石です。彼等はB級冒険者の「青薔薇」という冒険者団体なのですが、貴重な転移石を使用して街に戻ってきました」
「転移石……?」
「特定の場所に瞬間移動できる貴重な魔石ですよ。移動先は転移結晶と呼ばれる魔水晶が存在する場所だけですけど、各国の重要拠点や大迷宮が存在する場所には必ず転移結晶が存在します。この帝都の中心の広場にも転移結晶の台座がありますよ」
「この方達は魔物との戦闘から逃れるため、転移石を使用して街に戻ってきました。ですが辿り着いた時には彼等はクド草の毒に侵されていました」
「クド草って……さっき話していた猛毒の奴?」
「説明が遅れましたけど、クド草は遅行性の毒物なんです。毒を受けた時点では痺れ薬のように動けなくなり、時間が経過する事に症状が悪化し、死に至ります。大量の毒を仕込まれた場合は即死しますが、この人達は毒を受けても自力で戻ってきたんですか?」
「いえ、先ほど話していた鍵を盗み出した盗賊が転移石を使用し、この教会に救援を求めました。今思えばそれが罠だったのかも知れませんが……」
「この様子だと意識が戻るまでは話を聞けそうにありませんね」
現在は陽光教会の解毒薬を投与してクド草の毒は完全に抜けた状態だが、それでも全員が体力は消耗しており、しばらくは意識が戻りそうにない。この状態では話を聞く事は難しく、ミキは傍の患者に近づいて額に触れる。
「……熱がありますね。毒は抜けきったようですが、疲労が激しいです。恐らくは転移する直前まで激しい戦闘を繰り広げていたのでしょう」
「クド草の毒を受けていたのなら……やっぱり草原で遭遇した奴のように毒を仕込んだ奴がいるのか」
「気絶する直前の彼等の話によるとゴブリンの群れに襲われたそうです。しかも全員が弓矢を使用しており、ファングに乗り込んだ個体も居たそうです」
「完全に私達が遭遇したゴブリンと同類ということですか……だけどB級の冒険者でもこの有様とは……」
「ねえ、さっきは聞き流したけどB級冒険者ってどういう事?この人たち全員がBランクの冒険者という事?」
「違いますよ。パーティの人数によって名称が変化するんです。例えば2~5人の冒険者団体ならDランク、6~10人規模ならC級、11~20人規模ならB級、そして30人以上の冒険者団体ならA級冒険者団体として認識されます」
「階級は関係ないのか……」
「この方達は全員C~Dランクの冒険者のようですね。それでも普通ならばゴブリンに後れを取る事はない実力は身に着けているはずですが……」
通常のゴブリンは新人の冒険者でも討伐可能な存在だが、C~Dランクの中級冒険者が倒された以上、炭坑内に現れたゴブリンは少なくとも大人数の冒険者を倒した事になる。。
「浄化の間は白銀製の鍵でないと開かないんです!!素材があまりにも希少すぎて1つしか作れず、あの鍵を奪われると扉は開けません!!」
「なら扉か壁を破壊すれば……」
「それは出来ません!!あそこは神聖な場所なんです……それに侵入者の対策のために非常に頑強に作られているので破壊行為自体が無意味です」
「だけど何でこんな時に鍵を盗まれるなんて……」
「こんな時だからこそだよ。普段ここは怪我人以外の部外者の立ち入りは禁止しているんだ。アラン炭鉱の怪我人の治療で人手を割いた隙に盗人が入り込んだんだね……くそったれ!!」
「巫女姫様の前で下品な言葉は控えなさい……ああ、どうすれば……」
「……ポチ子に臭いを嗅がせて追いかければ?」
「わふっ?」
コトミンの発言に全員の視線がポチ子に向けられ、確かに彼女の犬型の獣人族の彼女の嗅覚は優れており、盗賊の臭いを嗅ぎつければ追跡を行う事も出来るかも知れない。テンは慌ててポチ子を抱き上げ、ミキの指示を仰ぐ。
「団長!!」
「テン!!貴方はポチ子と共に盗人の追跡を行いなさい!!他の団員は鍵以外の被害がないのかを捜索しなさい!!」
『はっ!!』
「わんっ!!」
彼女の指示に全員が即座に行動を開始し、鍵が盗まれるという想定外の事体に対してもミキは冷静に対応を行い、ヨウカの肩を掴む。
「巫女姫様の念のために私の傍を離れないで下さい。鍵の盗人以外にも賊が隠れている可能性がありますから……」
「う、うん……でも、どうしよう。浄化の間に入れないと聖水が生み出せないのに……」
「大丈夫です。現在、レノ様の見つけ出した方法から聖水の生成を試みています。聖光石から生み出される代物よりも質は落ちるかも知れませんが……」
「気になるのはこの状況で鍵を盗み出す輩が現れた事ですね……その盗賊はアラン炭鉱から訪れた冒険者なんですよね?それなら他の人に話を聞けば何か分かるかも知れませんよ」
「確かに……怪我人の方は何処ですか?」
「今は緊急医療室に集めています。全員、軽傷とは言えない傷でしたが回復薬の投与で怪我自体は治っています」
「ちょっと話を聞いてみませんか?何か情報を持っているかも知れませんし……」
アイリィの発言にミキは承諾し、彼女はレナ達を連れて緊急医療室と呼ばれる広間に案内する。病院の病室のようにベッドが並べられており、そこには20人程の男性が横たわっていた。予想外の大人数にレナは意外に感じ、ここからアラン炭鉱は馬でも数時間の距離は掛かる場所だと彼は聞いていたが、これだけの大人数が戻って来た事に疑問を抱く。
「この人達はどうやって戻ってきたの?」
「転移石です。彼等はB級冒険者の「青薔薇」という冒険者団体なのですが、貴重な転移石を使用して街に戻ってきました」
「転移石……?」
「特定の場所に瞬間移動できる貴重な魔石ですよ。移動先は転移結晶と呼ばれる魔水晶が存在する場所だけですけど、各国の重要拠点や大迷宮が存在する場所には必ず転移結晶が存在します。この帝都の中心の広場にも転移結晶の台座がありますよ」
「この方達は魔物との戦闘から逃れるため、転移石を使用して街に戻ってきました。ですが辿り着いた時には彼等はクド草の毒に侵されていました」
「クド草って……さっき話していた猛毒の奴?」
「説明が遅れましたけど、クド草は遅行性の毒物なんです。毒を受けた時点では痺れ薬のように動けなくなり、時間が経過する事に症状が悪化し、死に至ります。大量の毒を仕込まれた場合は即死しますが、この人達は毒を受けても自力で戻ってきたんですか?」
「いえ、先ほど話していた鍵を盗み出した盗賊が転移石を使用し、この教会に救援を求めました。今思えばそれが罠だったのかも知れませんが……」
「この様子だと意識が戻るまでは話を聞けそうにありませんね」
現在は陽光教会の解毒薬を投与してクド草の毒は完全に抜けた状態だが、それでも全員が体力は消耗しており、しばらくは意識が戻りそうにない。この状態では話を聞く事は難しく、ミキは傍の患者に近づいて額に触れる。
「……熱がありますね。毒は抜けきったようですが、疲労が激しいです。恐らくは転移する直前まで激しい戦闘を繰り広げていたのでしょう」
「クド草の毒を受けていたのなら……やっぱり草原で遭遇した奴のように毒を仕込んだ奴がいるのか」
「気絶する直前の彼等の話によるとゴブリンの群れに襲われたそうです。しかも全員が弓矢を使用しており、ファングに乗り込んだ個体も居たそうです」
「完全に私達が遭遇したゴブリンと同類ということですか……だけどB級の冒険者でもこの有様とは……」
「ねえ、さっきは聞き流したけどB級冒険者ってどういう事?この人たち全員がBランクの冒険者という事?」
「違いますよ。パーティの人数によって名称が変化するんです。例えば2~5人の冒険者団体ならDランク、6~10人規模ならC級、11~20人規模ならB級、そして30人以上の冒険者団体ならA級冒険者団体として認識されます」
「階級は関係ないのか……」
「この方達は全員C~Dランクの冒険者のようですね。それでも普通ならばゴブリンに後れを取る事はない実力は身に着けているはずですが……」
通常のゴブリンは新人の冒険者でも討伐可能な存在だが、C~Dランクの中級冒険者が倒された以上、炭坑内に現れたゴブリンは少なくとも大人数の冒険者を倒した事になる。。
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