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ゴブリンキング編

ゴブリン

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「ファングに……ゴブリンだと?どういう組み合わせだい?」
「なにか可笑しいんですか?」
「基本的にゴブリンは山岳地帯にしか生息しません。力が弱いから草原なんかに住みつこうとすると他の魔物の餌食にされるんですよ。しかもファングを乗りこなすなんて……」
「……レナ、気を付ける」


唐突に馬車から現れたファングとゴブリンの組み合わせに全員が動揺がするが、テンとミキは即座に武器を構える。アメリアは馬車を守るように移動を行い、ポチ子はアイリィとコトミンの傍に移動し、レナは念のために火属性の吸魔石を握りしめ、攻撃の準備を行う。

ファングに乗り込んだゴブリンは無表情のまま周囲を見渡し、レナに視線を向けた時点で舌で唇を舐め回す。この場で真面な武器を所持していない彼を標的に選んだらしく、背中に装備していた人間用の短剣と盾を取り出して身に着ける。


「ギィイイイッ!!」
「ウォオンッ!!」
「来るよ!!」


ゴブリンが雄叫びを上げた瞬間にファングが動き出し、真っ先にレナに向けて飛び込む。すぐに彼は吸魔石を取り出して投げ込もうとした時、ミキが彼の前に移動して魔装を突き刺す。


「乱れ突き!!」
「おおっ!?」


彼女が槍専用の戦技を発動させ、残像を生み出す程の速度で槍を突き刺す。ゴブリンは空中でそれを確認すると自分の左手に装着した鉄製の盾を構えて彼女の槍を受ける。


「ギィアッ!?」
「ギャンッ!?」
「……浅いっ」


彼女の魔槍を受けた事でゴブリンの所持していた盾が弾かれ、ファングも前脚に刃物が掠るが無事に地面に着地する。仕留めきれなかった事にミキは唇を噛み締め、一方でテンが大剣を後方から振り上げる。


「ふんっ!!」
「ギィッ!!」
「ウォンッ!!」


背中から斬りかかられたにも関わらずにゴブリンはファングの胴体を叩き、それに反応するようにファングは跳躍を行って回避を行い、さらに移動先にいたポチ子に襲い掛かる。


「ギィイイイッ!!」
「わうっ!?」


彼女は咄嗟に自分も双剣を構えるが、ゴブリンはファングの上に乗り込みながら短剣で斬りかかり、金属音が響き渡る。それだけでは終わらず、ファングの方が彼女の身体を押し倒し、牙を構える。


「ガァアッ!!」
「きゃうんっ!?」
「さ、させませんっ!!」


ファングは彼女の頭に噛みつこうとしたが、アメリアが戦斧を振り翳し、咄嗟にゴブリンが気付いてファングを後退させて回避させる。ファングは即座に駆け出してレナ達の周囲を走り回り、その行動にテンは鼻を鳴らし、ミキは魔槍を構えたまま全員を呼び寄せる。


「集まってください!!1人にならないで!!」
「は、はい!!」
「わんっ!!」
「ちっ!!すばしっこいね!!」
「ほら、行きますよ」
「……んっ」
「何だこいつ……」


先ほどのオークよりも素早く、それでいながらレナ達の攻撃を的確に対処を行い、弱い人間を優先的に狙う事から相当な知能を有している事が伺える。レナは掌を構え、一か八かの賭けになるが相手の移動先を呼んで地面に水属性の付与魔法を施した。


水属性エンチャット!!」
「ギャウンッ!?」
「ギィイッ!?」
「おおっ!?」
「こ、この魔法は!?」


レナは足元の地面を凍り付かせ、ファングの足元を滑らせる。ゴブリンはその拍子で背中から落ちてしまい、派手に転倒する。その隙を逃さずにまずは厄介なファングの方から仕留める為、レナは続けて氷の地面と化した大地に雷属性を付与させる。


雷属性エンチャット
「ギャウウウッ!?」
「うわっ!?何だっ!?」
「電気!?」
「おおっ!!考えましたね!!」


凍り付いた地面に雷属性の魔力が付与され、普通の場合は氷は電気を通さないが、レナの付与魔法は物体に魔法の力を封じる魔法であり、凍り付いた地面に雷属性の電気を流し込む事は可能。ファングは悲鳴を上げて倒れ込み、その光景にゴブリンは驚愕し、自分だけでも逃げ去ろうとする。


「ギィイイイッ!!」
「あ、待ちやがれ!!」
「逃がしません!!ポチ子!!」
「わぅんっ!!」


ミキの言葉にポチ子が反応し、彼女は双剣を口に加え、本物の犬のように四足歩行に切り替えると走り出す。その速度は凄まじく、すぐにゴブリンの背後に追い付き、十分近付くと後方から跳躍を行って弾丸のように横回転しながら口元の双剣の刃でゴブリンを斬り付けた。


和風牙わふうが!!」
「ギィアァアアアアアアアアッ!?」


全身を斬り付けられてゴブリンは悲鳴を上げ、地面に倒れこむ。一方のポチ子は見事に着地を決め、回り過ぎたせいで足元がふらつくが、それでも口元の双剣を両手に持ち替えて皆に笑顔を向ける。


「や、やりました~」
「よくやったよポチ子!!」
「あの子、意外と戦闘力がありますね」
「当たり前です。ああ見えても将来有望なワルキューレ騎士団の女騎士ですよ?」
「す、すごいポチ子ちゃん……」


全員が彼女の称賛の言葉を口にしながら駆け寄り、そして地面に倒れたゴブリンに視線を向けた。
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