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ゴブリンキング編
破壊された商団の馬車
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馬車に全員が乗り込み、移動を再開する。帝都の近くには村や町が存在しないため、日帰りで戻れる距離までしか馬車は移動は出来ないが、先ほどのオークの件も気になり、この周辺を調査も兼ねて移動を開始すると、運転を任されたアメリアがミキに声を掛ける。
「あ、あの……前方に馬車が見えます」
「どんな馬車ですか?」
「……それが倒れているんです。それに……し、死体です!!」
「止まりなっ!!」
アメリアの言葉に全員が前方に視線を向けると、彼女の言葉通りに道の上に横転した馬車と死体となった馬と人間が存在し、慌てて馬車を止めるとテンが真っ先に駆け付け、倒れている馬車の元に移動する。
「おい!!……駄目だ、全員死んでやがる」
「……ざっと20人は倒れていますね。それにこの馬の死体……どう考えてもオークだけに襲われた感じではないですね」
「……猛獣に襲われたような傷口だな」
馬車の傍に倒れている馬の死骸には獣の噛み傷が存在し、傷跡の大きさから考えても獣型の魔物に襲われたとしか考えられず、レナは口元を抑えながら人間の死体に視線を向ける。何度見ても人間の死体は慣れず、それでも調べる必要があり、彼等がどうして死んだのか確かめなければならない。
「これは……妙ですね。全員が魔獣に噛みつかれた後がありますけど、殺されているだけで捕食された様子がありません」
「どういう事ですか?殺すだけ殺して置いてそのまま放置したと言うんですか?」
「そんな馬鹿な……魔獣は腹が減った時にしか人間を襲わないはずだろ?」
「ですけどそれ以外に考えられません。しかも確実に急所だけを噛み千切っています。喉、胸元、頭……相当に利口ですね」
全ての死体は急所を確実に噛み千切られており、それ以外の部分は何故か噛みつかれた様子はなかった。単純に空腹で襲い掛かっていたとしたら他の部位も噛みつかれていても可笑しくはないが、何故か死体は食い散らした痕跡は存在せず、急所だけを噛みちぎられた状態で倒れていた。
「おい、これを見ろよ。こいつら、どうやら武器を運んでいたようだよ」
「本当ですか?」
「あっ!!さっきのオークが持っていた盾と同じ物があります!!」
馬車の横には木箱が大量に落ちており、落下の時の影響で壊れた木箱の破片が散らばっており、中身はポチ子の言葉通りに先ほどのオークが使用していた装備品と同じ型の武具と防具が落ちていた。恐らく先ほどのオークはこの場所から装備品を入手したと考えられる。
「という事はさっきのオークもここに来たのか……あれ?あいつらは死体には興味ないのかな?」
「オークはああ見えても草食ですよ。余程お腹が空いていない限り、人間の死体には食らいつきません」
「そうなんだ……意外だな」
「ちなみにゴブリンは雑食ですから何でも食べますよ。特に人間の肉の味を好む傾向があるので人間を見つけた瞬間に襲い掛かりますよ」
「怖いな……という事はオークが死体を食い荒らさなくてもおかしくはないか」
「気になるのはこの商団に襲い掛かった魔獣です。この傷口から間違いなく肉食獣である事は確かですが、傷跡から考えて同じ個体に襲われたとしか考えられません」
「この草原に出現する魔物の中で可能性が高いのは……ファングか?」
「ファング?」
「全身が黒色の毛皮で覆われた狼ですよ。但し、その大きさは普通の狼よりも一回りは大きく、牙も異様に長い魔物です」
アイリィの説明にレナは死体を確認し、仮にテンの予想が当たっていたとしたらファングという魔物が馬車を襲い、商人とその護衛を行っていた人間を殺した事になる。
「ですが仮にファングだとしたら不審な点が幾つか存在します。まず、死体の損傷が少ない事です。ファングはゴブリンのように雑食性ですから人間の死体だろうと食らいつきます。それにファングは夜行性なので昼間に遭遇する可能性は低いはず……」
「なら別の魔物が馬車を襲った?」
「でもよ団長、この周辺にはファング以外にこんな芸当を行える魔物なんていないぜ?」
「それはそうですが……もしかしたらこれは」
「すんすん……こ、これは!!」
ミキが言葉を言い終える前にポチ子が大声を上げ、何事かと彼女に視線を向けるとポチ子は鼻を引くつかせて横転した馬車を指差し、威嚇するように唸り声を上げる。
「中に何かが居ます!!酷い血の臭いです!!」
「何だと!?」
「……待ち伏せ!?」
ポチ子の発言に全員が驚愕し、彼女の声に反応するように横転した馬車を内側から破壊して黒色の物体が飛び出した。それは全身が黒色の毛皮で覆われた狼であり、さらにその背中には全身が人型の魔物が乗り込んでいた。
――ウォオオオオンッ!!
狼の咆哮が響き渡り、レナ達はその声量に耳を塞ぎ、魔物は馬車の上に立ってこちらを見下ろす。その背中には子供のような体格の全身が緑色の皮膚に覆われた小鬼のような生物が存在し、レナはすぐに元の世界でもスライムと同様に有名な魔物の「ゴブリン」だと気付く。
「あ、あの……前方に馬車が見えます」
「どんな馬車ですか?」
「……それが倒れているんです。それに……し、死体です!!」
「止まりなっ!!」
アメリアの言葉に全員が前方に視線を向けると、彼女の言葉通りに道の上に横転した馬車と死体となった馬と人間が存在し、慌てて馬車を止めるとテンが真っ先に駆け付け、倒れている馬車の元に移動する。
「おい!!……駄目だ、全員死んでやがる」
「……ざっと20人は倒れていますね。それにこの馬の死体……どう考えてもオークだけに襲われた感じではないですね」
「……猛獣に襲われたような傷口だな」
馬車の傍に倒れている馬の死骸には獣の噛み傷が存在し、傷跡の大きさから考えても獣型の魔物に襲われたとしか考えられず、レナは口元を抑えながら人間の死体に視線を向ける。何度見ても人間の死体は慣れず、それでも調べる必要があり、彼等がどうして死んだのか確かめなければならない。
「これは……妙ですね。全員が魔獣に噛みつかれた後がありますけど、殺されているだけで捕食された様子がありません」
「どういう事ですか?殺すだけ殺して置いてそのまま放置したと言うんですか?」
「そんな馬鹿な……魔獣は腹が減った時にしか人間を襲わないはずだろ?」
「ですけどそれ以外に考えられません。しかも確実に急所だけを噛み千切っています。喉、胸元、頭……相当に利口ですね」
全ての死体は急所を確実に噛み千切られており、それ以外の部分は何故か噛みつかれた様子はなかった。単純に空腹で襲い掛かっていたとしたら他の部位も噛みつかれていても可笑しくはないが、何故か死体は食い散らした痕跡は存在せず、急所だけを噛みちぎられた状態で倒れていた。
「おい、これを見ろよ。こいつら、どうやら武器を運んでいたようだよ」
「本当ですか?」
「あっ!!さっきのオークが持っていた盾と同じ物があります!!」
馬車の横には木箱が大量に落ちており、落下の時の影響で壊れた木箱の破片が散らばっており、中身はポチ子の言葉通りに先ほどのオークが使用していた装備品と同じ型の武具と防具が落ちていた。恐らく先ほどのオークはこの場所から装備品を入手したと考えられる。
「という事はさっきのオークもここに来たのか……あれ?あいつらは死体には興味ないのかな?」
「オークはああ見えても草食ですよ。余程お腹が空いていない限り、人間の死体には食らいつきません」
「そうなんだ……意外だな」
「ちなみにゴブリンは雑食ですから何でも食べますよ。特に人間の肉の味を好む傾向があるので人間を見つけた瞬間に襲い掛かりますよ」
「怖いな……という事はオークが死体を食い荒らさなくてもおかしくはないか」
「気になるのはこの商団に襲い掛かった魔獣です。この傷口から間違いなく肉食獣である事は確かですが、傷跡から考えて同じ個体に襲われたとしか考えられません」
「この草原に出現する魔物の中で可能性が高いのは……ファングか?」
「ファング?」
「全身が黒色の毛皮で覆われた狼ですよ。但し、その大きさは普通の狼よりも一回りは大きく、牙も異様に長い魔物です」
アイリィの説明にレナは死体を確認し、仮にテンの予想が当たっていたとしたらファングという魔物が馬車を襲い、商人とその護衛を行っていた人間を殺した事になる。
「ですが仮にファングだとしたら不審な点が幾つか存在します。まず、死体の損傷が少ない事です。ファングはゴブリンのように雑食性ですから人間の死体だろうと食らいつきます。それにファングは夜行性なので昼間に遭遇する可能性は低いはず……」
「なら別の魔物が馬車を襲った?」
「でもよ団長、この周辺にはファング以外にこんな芸当を行える魔物なんていないぜ?」
「それはそうですが……もしかしたらこれは」
「すんすん……こ、これは!!」
ミキが言葉を言い終える前にポチ子が大声を上げ、何事かと彼女に視線を向けるとポチ子は鼻を引くつかせて横転した馬車を指差し、威嚇するように唸り声を上げる。
「中に何かが居ます!!酷い血の臭いです!!」
「何だと!?」
「……待ち伏せ!?」
ポチ子の発言に全員が驚愕し、彼女の声に反応するように横転した馬車を内側から破壊して黒色の物体が飛び出した。それは全身が黒色の毛皮で覆われた狼であり、さらにその背中には全身が人型の魔物が乗り込んでいた。
――ウォオオオオンッ!!
狼の咆哮が響き渡り、レナ達はその声量に耳を塞ぎ、魔物は馬車の上に立ってこちらを見下ろす。その背中には子供のような体格の全身が緑色の皮膚に覆われた小鬼のような生物が存在し、レナはすぐに元の世界でもスライムと同様に有名な魔物の「ゴブリン」だと気付く。
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