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ゴブリンキング編
固有魔法
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「それでどうしますか?オークと戦うことは出来ましたが、まだ魔物と戦いますか?」
「そうだな……俺はともかく、こっちの2人も戦闘は経験して置かないとな」
「いや、そうは言いますけど私達って多分ですけど魔物に襲われないと思うんですよ」
「何言ってんだい、人間が魔物に襲われないなんて事があるわけないだろう?」
「いやいや、本当ですって……実際にオークも私達には近づかなかったでしょ?」
「言われてみれば確かに……」
魔物であるコトミンと彼女の分身体が張り付いたアイリィに対してオークの群れは近付こうともせず、実際に2人は先ほどの戦闘で襲われる様子はなかった。本能的に自分たちと同じ魔物だと判断したのか、あるいは敵対する程の相手ではないのかと判断したのかは不明だが、少なくともオークの場合は彼女達を無視して他の人間を優先的に襲っていたのは事実だった。
「だけど幾ら何でも襲われた時の対抗手段を用意しないのは不味いだろう?というか、あんた達は武器どころか防具も用意していないのかい?」
「私は治癒魔導士ですから身軽な方が都合が良いんですよ」
「……私は全身が武器」
「まだいうかお前は……」
アイリィは実際に治癒魔導士のように回復魔法を幾つか扱え、コトミンの方も怪我や魔力を回復させる回復液を生み出せる。一応はレナも2人に武器か防具を用意しようとしたが、コトミンは防具を着る事を嫌がり、アイリィの方は魔術師の杖を用意している。
「こっちの嬢ちゃんはともかく、あんたは本当に難にも身に着けていないじゃないかい。その体格なら格闘家じゃないんだろう?」
「問題ない……いざとなったら消化液を出す」
「えっ、ちょっと待って……そんな物も出せるの?」
さり気なく呟いたコトミンの言葉にレナは動揺するが、他の面子は納得できない表情を浮かべる。魔物との戦闘の手助けを頼まれたにも関わらず、魔物と戦う術を持っていない非戦闘員の人間が居る事に不満を覚えるのは当たり前の話である。不穏な空気を察したアイリィは仕方なくコトミンの耳元に口を近づけ、何事か囁く。
「……そう言えばいいの?」
「いいから早くしてくださいよ。貴方のせいでレナさんにも迷惑が掛かりますよ」
「分かった……実は私は特別な力を持っている」
「特別な力?何があるって言うんだい?」
「固有魔法」
『えっ!?』
「あび……なに?」
アイリィの言葉にレナ以外の全員が驚愕し、一方で初めて聞く単語にレナは首を傾げるが、アイリィがすぐに説明を行う。
「戦技に属さない魔法の事です。分かりやすく言えばスキルではなく、自分自身の力で生み出した魔法ですね。一流の魔術師でも生み出す事は難しく、実際に扱える人も物凄く少ないですよ」
「それをコトミンは使えるの?」
「……見てて」
――彼女はアメリアに馬車を停止させ、全員を外に移動させると自分は草原に存在する岩の前に移動した。彼女が何を考えているのか気になったレナ達は様子を伺うと、コトミンは意識を集中させるように瞼を閉じる。
「ふぅっ……」
「おおっ……今までにないほど集中した表情ですよ」
「そうかい?あたしの目には立ったまま眠っているようにしか見えないけど……」
「黙って見ていなさい……もしも本当に固有魔法が扱えるのならば彼女の才能は計り知れません」
「尻尾がぷるぷるします……」
「だ、大丈夫でしょうか……」
「くしゅんっ」
「……今、誰か普通にくしゃみしませんでした?」
全員がコトミンの行動を見守り、彼女は目を開くと掌から液体が迸り、足元に向けて解き放つ。
「アクアスライサー」
「うわっ!?」
「これは!?」
彼女の掌から大量の水が放たれ、地面に水が伝わり、コトミンの前方に存在する岩に衝突し、水圧の刃が岩石を一刀両断する。その光景に誰もが唖然とし、コトミンは満足そうに頷く。
「……これが私の固有魔法。名付けて水圧砲」
「あれ!?名前変わってませんか?」
「最初の名前はアイリィが付けた……でも気に入らなかった」
「ちょっと!!あれでもちゃんと考えたんですよ!?」
コトミンの発言にアイリィは憤慨し、一方でミキはコトミンの「水圧砲」によって破壊された岩壁を確認し、感心したように頷く。
「これは見事ですね……砲撃魔法の中でも中級レベルの威力は誇ります」
「それってどれくらい凄いんですか?」
「先ほどのオーク程度の相手ならば確実に仕留めます。恐らくゴーレムのような岩石の外殻に覆われた存在でも損傷を与える事が出来るでしょう。コトミンさん……先ほどは貴女の実力を疑い、申し訳ありません」
「悪かったね嬢ちゃん。こんな魔法を使えるとは思わなかったよ」
「凄かったです!!」
「あ、あの……ごめんなさい」
「気にしていない……早く行こう」
ミキ達も彼女の実力を認め、コトミンは別に最初から気にしてはおらず、その一方でレナはアイリィに質問を行う。
「あれ……どういう原理?」
「コトミンさんが体内に吸収していた水分を一気に放出しただけですよ。彼女、収納石みたいに大量の水分を体内に蓄積できるみたいです」
「なるほど」
アイリィの説明にレナは納得し、一先ずは草原をもう少しだけ散策する事にした。
「そうだな……俺はともかく、こっちの2人も戦闘は経験して置かないとな」
「いや、そうは言いますけど私達って多分ですけど魔物に襲われないと思うんですよ」
「何言ってんだい、人間が魔物に襲われないなんて事があるわけないだろう?」
「いやいや、本当ですって……実際にオークも私達には近づかなかったでしょ?」
「言われてみれば確かに……」
魔物であるコトミンと彼女の分身体が張り付いたアイリィに対してオークの群れは近付こうともせず、実際に2人は先ほどの戦闘で襲われる様子はなかった。本能的に自分たちと同じ魔物だと判断したのか、あるいは敵対する程の相手ではないのかと判断したのかは不明だが、少なくともオークの場合は彼女達を無視して他の人間を優先的に襲っていたのは事実だった。
「だけど幾ら何でも襲われた時の対抗手段を用意しないのは不味いだろう?というか、あんた達は武器どころか防具も用意していないのかい?」
「私は治癒魔導士ですから身軽な方が都合が良いんですよ」
「……私は全身が武器」
「まだいうかお前は……」
アイリィは実際に治癒魔導士のように回復魔法を幾つか扱え、コトミンの方も怪我や魔力を回復させる回復液を生み出せる。一応はレナも2人に武器か防具を用意しようとしたが、コトミンは防具を着る事を嫌がり、アイリィの方は魔術師の杖を用意している。
「こっちの嬢ちゃんはともかく、あんたは本当に難にも身に着けていないじゃないかい。その体格なら格闘家じゃないんだろう?」
「問題ない……いざとなったら消化液を出す」
「えっ、ちょっと待って……そんな物も出せるの?」
さり気なく呟いたコトミンの言葉にレナは動揺するが、他の面子は納得できない表情を浮かべる。魔物との戦闘の手助けを頼まれたにも関わらず、魔物と戦う術を持っていない非戦闘員の人間が居る事に不満を覚えるのは当たり前の話である。不穏な空気を察したアイリィは仕方なくコトミンの耳元に口を近づけ、何事か囁く。
「……そう言えばいいの?」
「いいから早くしてくださいよ。貴方のせいでレナさんにも迷惑が掛かりますよ」
「分かった……実は私は特別な力を持っている」
「特別な力?何があるって言うんだい?」
「固有魔法」
『えっ!?』
「あび……なに?」
アイリィの言葉にレナ以外の全員が驚愕し、一方で初めて聞く単語にレナは首を傾げるが、アイリィがすぐに説明を行う。
「戦技に属さない魔法の事です。分かりやすく言えばスキルではなく、自分自身の力で生み出した魔法ですね。一流の魔術師でも生み出す事は難しく、実際に扱える人も物凄く少ないですよ」
「それをコトミンは使えるの?」
「……見てて」
――彼女はアメリアに馬車を停止させ、全員を外に移動させると自分は草原に存在する岩の前に移動した。彼女が何を考えているのか気になったレナ達は様子を伺うと、コトミンは意識を集中させるように瞼を閉じる。
「ふぅっ……」
「おおっ……今までにないほど集中した表情ですよ」
「そうかい?あたしの目には立ったまま眠っているようにしか見えないけど……」
「黙って見ていなさい……もしも本当に固有魔法が扱えるのならば彼女の才能は計り知れません」
「尻尾がぷるぷるします……」
「だ、大丈夫でしょうか……」
「くしゅんっ」
「……今、誰か普通にくしゃみしませんでした?」
全員がコトミンの行動を見守り、彼女は目を開くと掌から液体が迸り、足元に向けて解き放つ。
「アクアスライサー」
「うわっ!?」
「これは!?」
彼女の掌から大量の水が放たれ、地面に水が伝わり、コトミンの前方に存在する岩に衝突し、水圧の刃が岩石を一刀両断する。その光景に誰もが唖然とし、コトミンは満足そうに頷く。
「……これが私の固有魔法。名付けて水圧砲」
「あれ!?名前変わってませんか?」
「最初の名前はアイリィが付けた……でも気に入らなかった」
「ちょっと!!あれでもちゃんと考えたんですよ!?」
コトミンの発言にアイリィは憤慨し、一方でミキはコトミンの「水圧砲」によって破壊された岩壁を確認し、感心したように頷く。
「これは見事ですね……砲撃魔法の中でも中級レベルの威力は誇ります」
「それってどれくらい凄いんですか?」
「先ほどのオーク程度の相手ならば確実に仕留めます。恐らくゴーレムのような岩石の外殻に覆われた存在でも損傷を与える事が出来るでしょう。コトミンさん……先ほどは貴女の実力を疑い、申し訳ありません」
「悪かったね嬢ちゃん。こんな魔法を使えるとは思わなかったよ」
「凄かったです!!」
「あ、あの……ごめんなさい」
「気にしていない……早く行こう」
ミキ達も彼女の実力を認め、コトミンは別に最初から気にしてはおらず、その一方でレナはアイリィに質問を行う。
「あれ……どういう原理?」
「コトミンさんが体内に吸収していた水分を一気に放出しただけですよ。彼女、収納石みたいに大量の水分を体内に蓄積できるみたいです」
「なるほど」
アイリィの説明にレナは納得し、一先ずは草原をもう少しだけ散策する事にした。
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