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ゴブリンキング編
後始末
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「ふうっ……やばかったな」
「そうですか?結構余裕そうじゃないですか」
「……んっ」
額の汗を拭うレナの元にアイリィとコトミンが歩み寄り、何時の間にか回収していたのかコトミンが先ほどオークにレナが投げ込んだ吸魔石を渡す。既に蓄積された魔力を使い切っているので新しく魔力を封じなければ使用できないが、普通の魔石と違って頑丈の為、相当な速度を引き出してオークの肉体に衝突したにも関わらずに罅割れ1つ存在しなかった。
吸魔石を受け取り、コトミンの頭を撫でやりながらレナは周囲を見渡し、他にオークが隠れていないのかを確認するとアイリィが肩を叩く。彼女に顔を向けるとアイリィはオークの死骸を指差しており、不審な点を発見したらしい。
「レナさん、これ見てくださいよ。このオークの装備品……どれも新品ですよ」
「え?本当に?」
「確かに……どの武器や防具も殆ど使用された形跡がありません」
ミキもオークの装備品に違和感を抱いたらしく、2人によると大抵の人型の魔物が所持している武具や防具は人間の冒険者から奪った物だが、レナ達が遭遇したオークの装備品はどういう事なのかどれもが新品その物の状態であり、使い込まれた様子はなかった。しかも全てのオークの装備品が新品同然という点が気にかかり、アイリィはオークが所持していた槍を確認する。
「どう見てもオークの手作りとは思えませんね……間違いなく、人の手で生み出された物です。もしかしたらこのオーク達は武器を運んでいる商団の馬車でも襲った可能性がありますね」
「商団……そんな事あるの?」
「普通はどんな商団も必ず冒険者や傭兵の護衛を付けて移動を行いますけど、魔物の中でもゴブリンやオークのような知能が高い魔物は集団で襲い掛かり、荷物を奪う事もあります。ですけど、こんな見晴らしの良い草原で商団が襲われるとは考えにくいですね……オークは見ての通り、鈍重ですから夜間のような視界が悪い時に襲われる時ぐらいしか荷物を奪われる事はないと思いますけど……」
「商団の馬車に問題が起きただけじゃないの?車輪が壊れたとか……」
「その可能性が一番高いですね。だけど気になるのはさっきレナさんが倒したオークです」
「え?どうして?」
「あのですね……オークは頭は悪くはないですが手先は不器用なんです。それにも関わらずにレナさんを襲った個体だけが人間用の弓矢で的確に矢を射かけてきたんですよ?普通のオークなら弓矢なんて使おうとすら考えないのに……」
アイリィはレナが倒した丘の上に存在したオークに視線を向け、既に彼の土属性の魔法によって身体が四散してしまい、死体が地面に転がっている。どうしてオークが弓矢という普通の剣や槍よりも扱うには高度な技術を要する武器を使用していたのか気になるが、もう確かめるすべはない。
「あ、あの……副団長が戻って着ませんけど……」
「心配はありませんよ。テンなら大丈夫でしょう……今のうちにオークの死体の後処理と装備品を回収して起きましょう」
ミキの提案により、レナ達は討伐した魔物の処理を行う。今回のように魔物を討ち果たした際の後始末はまずは死体から回収できる素材を剥ぎ取り、後は他の魔物が血の臭いを嗅ぎつけてくる前に死体を焼却する必要がある。オークの肉体は食用になる部分も存在するため、アメリアがとポチ子が手際よくナイフで肉を剥ぎ取り、他の者は彼等の装備品を回収する。これらの類は所有者が存在したとしても魔物から奪われていた場合は所有権は魔物を打ち倒した人間に移り、もしもあとでオークが所有していた装備品の本来の所有者が現れたとしても返却する義務はない。
今回のオーク戦で得た戦利品は話し合いの結果、オークの装備品はレノ達が回収し、食用として剥ぎ取った肉はミキ達が受け取る。装備品の中にレナ達が扱えそうな物はなく、後で帝都に戻った時に武器屋で売却を行う事を決める。ちなみにテンは全身に返り血を浴びた状態で帰還し、意外と追いつくのに時間が掛かったのかオークの頭部を3つ背中に抱えて帰ってきた。
「いやっ……意外と時間が掛かった。悪かったね、護衛なのに勝手に離れてて……まあ、団長がいるなら問題ないだろうけど」
「貴方という人は……まあ、いいでしょう。それよりもレノ様は意外と戦闘慣れしていますね。初めてオークと戦った割には緊張している様子が見られませんでしたが……」
「普段からオークより厄介な奴に絡まれやすいので……」
「そうですね。その辺は同情しますよ」
魔物が入り込めないはずの帝都に滞在していたにも関わらず、ヴァンパイアやサキュバスと言った凶悪な魔人種と戦闘を繰り広げて勝利を収めたレナにとってはオークは強敵とは感じられなかった。
「そうですか?結構余裕そうじゃないですか」
「……んっ」
額の汗を拭うレナの元にアイリィとコトミンが歩み寄り、何時の間にか回収していたのかコトミンが先ほどオークにレナが投げ込んだ吸魔石を渡す。既に蓄積された魔力を使い切っているので新しく魔力を封じなければ使用できないが、普通の魔石と違って頑丈の為、相当な速度を引き出してオークの肉体に衝突したにも関わらずに罅割れ1つ存在しなかった。
吸魔石を受け取り、コトミンの頭を撫でやりながらレナは周囲を見渡し、他にオークが隠れていないのかを確認するとアイリィが肩を叩く。彼女に顔を向けるとアイリィはオークの死骸を指差しており、不審な点を発見したらしい。
「レナさん、これ見てくださいよ。このオークの装備品……どれも新品ですよ」
「え?本当に?」
「確かに……どの武器や防具も殆ど使用された形跡がありません」
ミキもオークの装備品に違和感を抱いたらしく、2人によると大抵の人型の魔物が所持している武具や防具は人間の冒険者から奪った物だが、レナ達が遭遇したオークの装備品はどういう事なのかどれもが新品その物の状態であり、使い込まれた様子はなかった。しかも全てのオークの装備品が新品同然という点が気にかかり、アイリィはオークが所持していた槍を確認する。
「どう見てもオークの手作りとは思えませんね……間違いなく、人の手で生み出された物です。もしかしたらこのオーク達は武器を運んでいる商団の馬車でも襲った可能性がありますね」
「商団……そんな事あるの?」
「普通はどんな商団も必ず冒険者や傭兵の護衛を付けて移動を行いますけど、魔物の中でもゴブリンやオークのような知能が高い魔物は集団で襲い掛かり、荷物を奪う事もあります。ですけど、こんな見晴らしの良い草原で商団が襲われるとは考えにくいですね……オークは見ての通り、鈍重ですから夜間のような視界が悪い時に襲われる時ぐらいしか荷物を奪われる事はないと思いますけど……」
「商団の馬車に問題が起きただけじゃないの?車輪が壊れたとか……」
「その可能性が一番高いですね。だけど気になるのはさっきレナさんが倒したオークです」
「え?どうして?」
「あのですね……オークは頭は悪くはないですが手先は不器用なんです。それにも関わらずにレナさんを襲った個体だけが人間用の弓矢で的確に矢を射かけてきたんですよ?普通のオークなら弓矢なんて使おうとすら考えないのに……」
アイリィはレナが倒した丘の上に存在したオークに視線を向け、既に彼の土属性の魔法によって身体が四散してしまい、死体が地面に転がっている。どうしてオークが弓矢という普通の剣や槍よりも扱うには高度な技術を要する武器を使用していたのか気になるが、もう確かめるすべはない。
「あ、あの……副団長が戻って着ませんけど……」
「心配はありませんよ。テンなら大丈夫でしょう……今のうちにオークの死体の後処理と装備品を回収して起きましょう」
ミキの提案により、レナ達は討伐した魔物の処理を行う。今回のように魔物を討ち果たした際の後始末はまずは死体から回収できる素材を剥ぎ取り、後は他の魔物が血の臭いを嗅ぎつけてくる前に死体を焼却する必要がある。オークの肉体は食用になる部分も存在するため、アメリアがとポチ子が手際よくナイフで肉を剥ぎ取り、他の者は彼等の装備品を回収する。これらの類は所有者が存在したとしても魔物から奪われていた場合は所有権は魔物を打ち倒した人間に移り、もしもあとでオークが所有していた装備品の本来の所有者が現れたとしても返却する義務はない。
今回のオーク戦で得た戦利品は話し合いの結果、オークの装備品はレノ達が回収し、食用として剥ぎ取った肉はミキ達が受け取る。装備品の中にレナ達が扱えそうな物はなく、後で帝都に戻った時に武器屋で売却を行う事を決める。ちなみにテンは全身に返り血を浴びた状態で帰還し、意外と追いつくのに時間が掛かったのかオークの頭部を3つ背中に抱えて帰ってきた。
「いやっ……意外と時間が掛かった。悪かったね、護衛なのに勝手に離れてて……まあ、団長がいるなら問題ないだろうけど」
「貴方という人は……まあ、いいでしょう。それよりもレノ様は意外と戦闘慣れしていますね。初めてオークと戦った割には緊張している様子が見られませんでしたが……」
「普段からオークより厄介な奴に絡まれやすいので……」
「そうですね。その辺は同情しますよ」
魔物が入り込めないはずの帝都に滞在していたにも関わらず、ヴァンパイアやサキュバスと言った凶悪な魔人種と戦闘を繰り広げて勝利を収めたレナにとってはオークは強敵とは感じられなかった。
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