上 下
70 / 207
ゴブリンキング編

魔力補給の結果

しおりを挟む
「俺を連れて来たのはヨウカ……あ、いや巫女姫様に魔力を分けられないのか試すためですか?」
「その通りです。もしもレナ様が巫女姫様に魔力を送り込む事ができるなら魔力回復薬よりも魔力が回復できるのではと考えたのですが……」
「えっ?そんな事が出来るの!?」


ミキの言葉にヨウカは驚き、レナとしては過度な期待されても困るのだが、薬物耐性のスキルを持つヨウカであってもレナの付与魔法なら魔力を回復させる可能性は高く、ミキはレナに頼み込む。


「レノ様、お願いします」
「はあっ……分かりました。それなら手を出してください」
「う、うん……」
「なんでしょうか……レノさんが私達以外に魔力を送り込むのは複雑な気持ちです」
「……じぇらしぃっ」
「何が始まるってんだい?」


皆の視線を受けながらもレナはヨウカの差し出された掌を優しく両手で掴み、あまり男性と接点がない彼女は男子から手を握られた事に頬を赤く染め、一方でレナは掌を通して聖属性の付与魔法を発動させる。


聖属性エンチャット
「ほわわっ!?」
「よ、ヨウカ様!?」
「だ、大丈夫……少し驚いただけだから」


自分の体内に魔力が流れ込み、ヨウカは奇怪な声を上げてしまう。その反応にミキが驚いた表情を浮かべるが、ヨウカはすぐに魔力を体内に送り込まれる感覚に慣れたようにレナの掌を握りしめる。


「どう?まだ大丈夫ですか?」
「け、敬語はいいよ~……それよりも、もう少しだけ……」
「分かった……ベホ〇ミ!!」
「ベ〇イミ?」


レナはアイリィやコトミンに送り出す時よりも大量の魔力を注ぎ込み、疑問を抱く。先ほどのミキとの会話では彼女の魔力容量は小さすぎるせいで聖水を大量に生みだせないと聞いていたのだが、どういう事なのか全力で魔力を送り続けているにも関わらずに彼女は手を離さそうとしない。


「おおっ……凄い!!どんどん力が湧き上がってくる!!」
「よ、ヨウカ様?」
「力が溢れる……高まるぅっ!!」
「あ、あの……大丈夫なんですかこれ?」
「レナの顔色が……」
「ううっ……」


ヨウカは興奮した様子で送り込まれる魔力を受け取るが、一方でレナの方は魔力を吸収され続けて身体に疲労感が蓄積し、それでも彼の方も意地になって手を離さない。


「この……ベ〇マ!!」
「ふわぁあっ!?」


一気に大量の魔力を流し込み、ヨウカが頬を赤らめて堪らずに手を離してしまい、彼女は膝を崩す。その様子に慌ててミキとテンが寄り添うが、彼女は掌を見つめて興奮したように頷く。


「す、凄い……今なら何でも出来そうな気がする!!」
「よ、ヨウカ様?」
「ちょっと待ってて!!」


彼女は起き上がると即座に部屋の中に入り込み、扉を勢いよく閉める。扉が閉じられた際に軽い衝撃が通路に走り、派手に走り回る足音が部屋の中から鳴り響く。数秒ほど全員が唖然と部屋の扉に視線を向けていたが、すぐに正気を取り戻したミキがレナに振り返る。


「れ、レノさん……ヨウカ様に何をしたのですか?」
「いや、ちょっと待って……何だか頭が痛い」
「魔力を使いすぎたようですね。少し頭を触りますよ……うわ、ちょっと熱がありますね。コトミンさんに回復して貰ったら……」
『出来た~!!』


アイリィが言葉を言い終える前に部屋の内部からヨウカの歓喜の声が上がり、即座に扉が勢いよく開かれる。今度は開かれた拍子に扉のドアノブが壊れてしまい、その光景に全員が驚愕するが部屋から出てきたヨウカは満面の笑みを浮かべていた。そして彼女の手元には巨大なガラス製の壺を抱えており、中には白色に光り輝く液体が満ち溢れていた。


「ねえねえこれ見て!!いっぱい出たよ!!」
「こ、これは……」
「聖水……ですかい!?」
「おおっ……」
「うわ、これは凄いですね……」
「眩しいな……」


ヨウカが抱えている壺の中には大量の聖水が溢れており、その輝きはレナ達が生産する聖水よりも輝いており、しかも彼女の場合は時間を掛けずに一瞬で生み出した事になる。すぐにミキが壺の中身を覗き込み、鑑定のスキルも覚えているのか驚いた表情を浮かべる。


「こ、これ程の上質な聖水を生み出すなんて……ですがお体は大丈夫なんですか?」
「うん!!何だかよく分からないけど、すっごく調子がいいんだ!!」
「どういう事ですか団長?巫女姫様は魔力容量が少ないんじゃ……」
「分かりません……分かりませんが、恐らくはレノ様のお蔭でしょう。本当にありがとうございます!!」
「ありがとう!!えっと、レノ君?……のお蔭でこんなにいっぱい出ちゃったよ!!」
「いえいえ……うっ……頭が痛い」
「ちょっ……大丈夫ですか?」
「この近くに執務室があります。そちらに移動しましょう」


ヨウカとミキに礼を告げられるが、レナは頭を抑えてアイリィに抱えられる。予想以上に魔力を消耗したらしく、慌ててミキは彼が休憩出来る場所に案内を行う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

花婿が差し替えられました

凛江
恋愛
伯爵令嬢アリスの結婚式当日、突然花婿が相手の弟クロードに差し替えられた。 元々結婚相手など誰でもよかったアリスにはどうでもいいが、クロードは相当不満らしい。 その不満が花嫁に向かい、初夜の晩に爆発!二人はそのまま白い結婚に突入するのだった。 ラブコメ風(?)西洋ファンタジーの予定です。 ※『お転婆令嬢』と『さげわたし』読んでくださっている方、話がなかなか完結せず申し訳ありません。 ゆっくりでも完結させるつもりなので長い目で見ていただけると嬉しいです。 こちらの話は、早めに(80000字くらい?)完結させる予定です。 出来るだけ休まず突っ走りたいと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです! ※すみません、100000字くらいになりそうです…。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...