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ゴブリンキング編
自由冒険者
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「さっき魔物の素材を剥ぎ取って街で売却してたと言ってましたよね。だけど魔物の素材で金銭に換えれる物なんてたかが知れてると思うんですけど……」
「そうなの?」
「食用の魔物なら別ですけど、魔物の素材を買い取ってくれる商人がそもそも少ないですからね。昔、召喚された勇者が何故か狩り取った魔物の牙や皮を律儀に狩り取って鍛冶屋に持ってきて武器を作るように指示した事もありますよ。魔物の骨や皮で何を作れと言うんですかね……」
「あははっ……そうなんだ」
ゲームなどでは魔物の素材で武器を作る事も珍しくはないが、こちらの世界では魔物の素材は特に大きな価値はない。一応は竜種のような牙や鱗が金属級の硬度を誇る魔物の素材ならば別だが、ゴブリンやスライムの素材は全く価値はない。食用となる魔物も存在するのでそちらの方は比較的に高価で買い取ってくれるらしく、別に全ての魔物の素材が全く価値が無いという訳でもない。
「俺は採取のスキルを持っている……だから薬草も摘み取って金を稼いでいた」
「え!?それを早く言ってくださいよ!!採取のスキルを持っているなんて凄いじゃないですか?」
「採取?」
「薬草や鉱石の遭遇率に関わるスキルですよ。熟練度が高い程、上質な素材が発見しやすくなります」
「薬草という事は……傷を回復させる効果があるの?」
「回復薬の原材料の1つですよ?どんな人間も求める高級品ですよ。しかも天然物の場合は金貨単位で取引されても可笑しくないですよ」
「そんなに!?」
こちらの世界の薬草は非常に希少品であり、高価に取引される代物でもあり、ゴンゾウは度の途中で薬草を見つけて売却する事で路銀を稼いでいた。薬草のような植物を採取する時は彼の「採取」のスキルは非常に役立つスキルのため、商人ならば誰もが求める能力として有名である。
「ゴンゾウさんは商人になる気はないんですか?」
「ない。俺は冒険者以外の職業に就く気はない」
「惜しいですね……でも採取のスキルを持っていると知ったらさっきの冒険者ギルドの対応も違ったと思いますよ。採取のスキル持ちの人間は少ないですからね」
「そうなのか?」
「なら今から戻れば冒険者として認めてもらえるかな?」
「いや、自分で言っておいてなんですけど辞めておいた方がいいでしょうね。採取のスキルを所持していると知られたら、ゴンゾウさんはきっと採取系の仕事だけを任されますよ。先ほどの話だとゴンゾウさんは英雄のような冒険者になりたいんですよね」
「その通りだ」
「なら諦めるしかありませんね。下手に採取のスキルを所持している事を知られたら面倒事に巻き込まれるのは確実ですし、無難に冒険者ギルドの関係者を見つけ出して友好的な関係を築いて身元保証人になって貰うしかないですね」
「そうか……」
アイリィの言葉にゴンゾウは溜息を吐きだし、そんな彼にレナは同情する。やはりホノカに彼の事を紹介して身元保証人を引き受けて貰えないのかとレナは考えたが、先ほどのアイリィの言葉を思い出し、迂闊に彼女を巻き込む事は出来ない。そんな事を考えていると今まで黙ってジュースを飲んでいたコトミンが口を開く。
「……冒険者は冒険者ギルドに入らないとなれないの?」
「え?」
「冒険者ギルドに入らないで冒険者にはなれないの?」
彼女の言葉に沈黙が訪れ、必然的にこの場で冒険者ギルドに最も詳しいアイリィに視線が集中し、彼女は腕を組んで考える素振りを行いながら語り出す。
「……そうですね。絶対になれないという訳ではないですよ。実際に冒険者ギルドに所属していない自由の冒険者も存在しますから」
「え?本当に?」
「但し、その場合だと色々と問題が多いんです。ギルドに所属している冒険者は依頼を失敗した場合、ギルド側が責任を取ります。だからギルドの依頼は成功した場合の報酬の一部は必ずギルド側に譲渡します。それと帝国公認の冒険者ギルドの冒険者は税金を払わずに済みます。一方で自由の冒険者は仕事の責任は全て自己負担になります。依頼が成功すれば報酬は全て受け取れますが、冒険者ギルドに所属していない事を吐いて報酬を渋る人間もいますよ。その点は正式に冒険者ギルドに依頼を行って依頼書の発注を既に終えている場合、指定されている依頼内容の条件に反しない限りは正当な報酬が支払われます。ギルドに依頼した場合、成功後に依頼の報酬金額を変更する事は出来ませんからね。もしも文句を付けたら帝国の法律に従い、相応の対処を要請します」
「取り立て屋みたいだな……」
「あまりにも依頼人との揉め事が多かった事から、仕方なく帝国側が新しい制度を築いたんですよ。その点は昔よりも良かったかも知れませんね」
アイリィの説明にレナは頷き、確かに話を聞く限りでは自由の冒険者よりも帝国公認の冒険者ギルドの冒険者の方が制限も多いが、社会福祉はしっかりとしている。
「そうなの?」
「食用の魔物なら別ですけど、魔物の素材を買い取ってくれる商人がそもそも少ないですからね。昔、召喚された勇者が何故か狩り取った魔物の牙や皮を律儀に狩り取って鍛冶屋に持ってきて武器を作るように指示した事もありますよ。魔物の骨や皮で何を作れと言うんですかね……」
「あははっ……そうなんだ」
ゲームなどでは魔物の素材で武器を作る事も珍しくはないが、こちらの世界では魔物の素材は特に大きな価値はない。一応は竜種のような牙や鱗が金属級の硬度を誇る魔物の素材ならば別だが、ゴブリンやスライムの素材は全く価値はない。食用となる魔物も存在するのでそちらの方は比較的に高価で買い取ってくれるらしく、別に全ての魔物の素材が全く価値が無いという訳でもない。
「俺は採取のスキルを持っている……だから薬草も摘み取って金を稼いでいた」
「え!?それを早く言ってくださいよ!!採取のスキルを持っているなんて凄いじゃないですか?」
「採取?」
「薬草や鉱石の遭遇率に関わるスキルですよ。熟練度が高い程、上質な素材が発見しやすくなります」
「薬草という事は……傷を回復させる効果があるの?」
「回復薬の原材料の1つですよ?どんな人間も求める高級品ですよ。しかも天然物の場合は金貨単位で取引されても可笑しくないですよ」
「そんなに!?」
こちらの世界の薬草は非常に希少品であり、高価に取引される代物でもあり、ゴンゾウは度の途中で薬草を見つけて売却する事で路銀を稼いでいた。薬草のような植物を採取する時は彼の「採取」のスキルは非常に役立つスキルのため、商人ならば誰もが求める能力として有名である。
「ゴンゾウさんは商人になる気はないんですか?」
「ない。俺は冒険者以外の職業に就く気はない」
「惜しいですね……でも採取のスキルを持っていると知ったらさっきの冒険者ギルドの対応も違ったと思いますよ。採取のスキル持ちの人間は少ないですからね」
「そうなのか?」
「なら今から戻れば冒険者として認めてもらえるかな?」
「いや、自分で言っておいてなんですけど辞めておいた方がいいでしょうね。採取のスキルを所持していると知られたら、ゴンゾウさんはきっと採取系の仕事だけを任されますよ。先ほどの話だとゴンゾウさんは英雄のような冒険者になりたいんですよね」
「その通りだ」
「なら諦めるしかありませんね。下手に採取のスキルを所持している事を知られたら面倒事に巻き込まれるのは確実ですし、無難に冒険者ギルドの関係者を見つけ出して友好的な関係を築いて身元保証人になって貰うしかないですね」
「そうか……」
アイリィの言葉にゴンゾウは溜息を吐きだし、そんな彼にレナは同情する。やはりホノカに彼の事を紹介して身元保証人を引き受けて貰えないのかとレナは考えたが、先ほどのアイリィの言葉を思い出し、迂闊に彼女を巻き込む事は出来ない。そんな事を考えていると今まで黙ってジュースを飲んでいたコトミンが口を開く。
「……冒険者は冒険者ギルドに入らないとなれないの?」
「え?」
「冒険者ギルドに入らないで冒険者にはなれないの?」
彼女の言葉に沈黙が訪れ、必然的にこの場で冒険者ギルドに最も詳しいアイリィに視線が集中し、彼女は腕を組んで考える素振りを行いながら語り出す。
「……そうですね。絶対になれないという訳ではないですよ。実際に冒険者ギルドに所属していない自由の冒険者も存在しますから」
「え?本当に?」
「但し、その場合だと色々と問題が多いんです。ギルドに所属している冒険者は依頼を失敗した場合、ギルド側が責任を取ります。だからギルドの依頼は成功した場合の報酬の一部は必ずギルド側に譲渡します。それと帝国公認の冒険者ギルドの冒険者は税金を払わずに済みます。一方で自由の冒険者は仕事の責任は全て自己負担になります。依頼が成功すれば報酬は全て受け取れますが、冒険者ギルドに所属していない事を吐いて報酬を渋る人間もいますよ。その点は正式に冒険者ギルドに依頼を行って依頼書の発注を既に終えている場合、指定されている依頼内容の条件に反しない限りは正当な報酬が支払われます。ギルドに依頼した場合、成功後に依頼の報酬金額を変更する事は出来ませんからね。もしも文句を付けたら帝国の法律に従い、相応の対処を要請します」
「取り立て屋みたいだな……」
「あまりにも依頼人との揉め事が多かった事から、仕方なく帝国側が新しい制度を築いたんですよ。その点は昔よりも良かったかも知れませんね」
アイリィの説明にレナは頷き、確かに話を聞く限りでは自由の冒険者よりも帝国公認の冒険者ギルドの冒険者の方が制限も多いが、社会福祉はしっかりとしている。
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