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ゴブリンキング編
巨人族のゴンゾウ
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レナ達は巨人族の青年の銅貨を拾うのを手伝い、一枚も残さずに拾い上げたのを確認すると、彼はお礼として一緒に食事を行わないのか誘う。最初はレナ達も断ったが、彼は頑なに礼をしたいと申し付け、結局は食事代を半分だけ支払って貰う事にする。巨人族でも一緒に食べられる飲食店を探すのに時間は掛かったが、4人は少し早めに昼食を行う。
「え?それじゃあ、貴方は自分の故郷からここまで歩いてきたんですか?」
「そうだ。ここまで辿り着くのに二ヶ月は歩いた」
「ちょっと待って……巨人族の領土からこの帝都までどれくらいの距離があるの?」
「いや、最低でも1000キロは離れていますよ……しかも徒歩で移動するなんて……道中に魔物にも襲われたでしょう?」
「俺達、巨人族は人間よりも身体が大きいから乗せてくれる動物が少ない。だから歩いて移動するしかなかった……だが、大抵の魔物は俺の姿を見ると逃げ出したし、腹が減ったら魔物を喰って素材を剥ぎ取って村や町で売ってお金に換えていた」
「ああ、なるほど……意外と生活力がありますね」
「……スライムも食べた?」
「いや、スライムは食べ物じゃないだろう……?」
「ほっ……」
「今、安心しただろ」
ゴンゾウと名乗る巨人族の青年は驚く事にレナよりも年下の15才らしく、彼は故郷を離れて子供のころから憧れていた冒険者になるためにわざわざ帝国領土まで訪れたと話す。どうして巨人族の領土で冒険者を目指さなかったのかと言うと、彼等の国では冒険者ギルドは存在しないため、わざわざ帝国領土まで訪れたという。
巨人族の領土では冒険者ギルドではなく、傭兵ギルドと呼ばれる組織が主流らしく、こちらのギルドは主に戦場を渡り歩く傭兵だけで組織されたギルドであり、ゴンゾウも幼少の頃は傭兵になるために身体を鍛えて生きてきた。
しかし、彼は子供の頃に父親の友人の人間が持ってきた人間の国の絵本を読んだ時、人間の国では冒険者という職業が存在をするのを知る。絵本の中に出てくる冒険者は非常に逞しく、魔物から人々を救い出す英雄として描かれていたという。彼はその絵本を見て以来、冒険者という職業に憧れ、成人年齢を迎えた時に自国を抜け出して帝国に存在する冒険者ギルドを巡って冒険者になる事を目指す。
だが、結果的には現在の帝国の法律によって他国の出身であろうと一般人の冒険者志願は禁止されており、紹介してくれる人間の知り合いもいなかったゴンゾウは帝国各地の冒険者ギルドから追い払われ、結局帝都まで行きついたらしいが、結局はこの帝都でも加入を認められなかった。
「このまま国に戻る事は出来ない……妹と父親に立派な冒険者になって仕送りすると約束している。だが、この帝国は巨人族には厳しいらしい……」
「本当に腐ってますね……わざわざ遠い所からやってきた人をあんな風に追い払うなんて」
「昔は帝国も他種族には友好的だったと父親から聞いていた。だが、今の国王の代から可笑しくなったと聞いている。優秀な人材を帝国に引き抜き、自分達に逆らう者は容赦しないと言っていた」
「もう魔王軍よりも悪役みたいなんだけど……」
「そうですね。だから実は魔王軍を支持する存在も居ると噂されていますよ」
これからゴンゾウはどうすればいいのか分からず、自国に戻る訳にもいかず、だからと言って冒険者になる手段を見つける以前に路銀が尽きかけており、どうにか職に就いて生活費を稼ぐしかないのだが、生憎と巨人族を募集している仕事場は非常に少なかった。
「力仕事には自信があるし、故郷に居た時は畑を耕していたが、何処も雇ってくれない……どうすればいいのか」
「今までは旅をしながら魔物を狩って生活していたんですよね。もう並の冒険者よりも冒険者らしい生活をしていると思いますけど……」
「一人旅……大変だった?」
「そうだな……1人で過ごす事が何よりも寂しかった。それと外で寝る時は見張り役もいなかったからずっと起きて過ごしていた」
「サバイバルだな……」
他の人間と行動して旅をしていれば街の外で野営を行う時は味方が見張り役を行い、安心して他の人間は就寝も出来るが、ゴンゾウの場合は1人で行動していたので夜を迎えると周囲の警戒を怠らずに起きていなければならず、夜営を行う際は常に周囲を警戒しなければならない。冒険者になるために帝国領土を彷徨い歩く彼の旅は何度も命の危機に陥ったという。
「冒険者になるのは諦められないの?」
「正直に言えば……後には引けないという気持ちもある。大見得を切って故郷の人間と別れたのに冒険者になれずに戻ってきたら皆に合わせる顔が無い……」
「気持ちは分かりますけどね……それにここから戻るにしても命懸けでしょうし、戻るという選択肢はなさそうですね」
「冒険者か……あ、それならホノカさんに頼めば……」
「レノさんがホノカさんの事をどう思っているのかは知りませんけど、彼女は商売人ですよ?自分に何の関わりもなく、利益をもたらしていない人を紹介してくれるほど甘い人間じゃありませんよ」
アイリィの言葉にレナは黙り込み、確かにゴンゾウはホノカとは会った事すらない。幾らレノが彼に同情してホノカに頼み込もうと彼女としては自分がよく知らない人間を迂闊に冒険者ギルドに紹介するはずがない。もしもゴンゾウを紹介したとしても彼が仕事で大きな不始末を起こした場合、紹介した彼女にも責任が追及されてしまうかも知れない。
「え?それじゃあ、貴方は自分の故郷からここまで歩いてきたんですか?」
「そうだ。ここまで辿り着くのに二ヶ月は歩いた」
「ちょっと待って……巨人族の領土からこの帝都までどれくらいの距離があるの?」
「いや、最低でも1000キロは離れていますよ……しかも徒歩で移動するなんて……道中に魔物にも襲われたでしょう?」
「俺達、巨人族は人間よりも身体が大きいから乗せてくれる動物が少ない。だから歩いて移動するしかなかった……だが、大抵の魔物は俺の姿を見ると逃げ出したし、腹が減ったら魔物を喰って素材を剥ぎ取って村や町で売ってお金に換えていた」
「ああ、なるほど……意外と生活力がありますね」
「……スライムも食べた?」
「いや、スライムは食べ物じゃないだろう……?」
「ほっ……」
「今、安心しただろ」
ゴンゾウと名乗る巨人族の青年は驚く事にレナよりも年下の15才らしく、彼は故郷を離れて子供のころから憧れていた冒険者になるためにわざわざ帝国領土まで訪れたと話す。どうして巨人族の領土で冒険者を目指さなかったのかと言うと、彼等の国では冒険者ギルドは存在しないため、わざわざ帝国領土まで訪れたという。
巨人族の領土では冒険者ギルドではなく、傭兵ギルドと呼ばれる組織が主流らしく、こちらのギルドは主に戦場を渡り歩く傭兵だけで組織されたギルドであり、ゴンゾウも幼少の頃は傭兵になるために身体を鍛えて生きてきた。
しかし、彼は子供の頃に父親の友人の人間が持ってきた人間の国の絵本を読んだ時、人間の国では冒険者という職業が存在をするのを知る。絵本の中に出てくる冒険者は非常に逞しく、魔物から人々を救い出す英雄として描かれていたという。彼はその絵本を見て以来、冒険者という職業に憧れ、成人年齢を迎えた時に自国を抜け出して帝国に存在する冒険者ギルドを巡って冒険者になる事を目指す。
だが、結果的には現在の帝国の法律によって他国の出身であろうと一般人の冒険者志願は禁止されており、紹介してくれる人間の知り合いもいなかったゴンゾウは帝国各地の冒険者ギルドから追い払われ、結局帝都まで行きついたらしいが、結局はこの帝都でも加入を認められなかった。
「このまま国に戻る事は出来ない……妹と父親に立派な冒険者になって仕送りすると約束している。だが、この帝国は巨人族には厳しいらしい……」
「本当に腐ってますね……わざわざ遠い所からやってきた人をあんな風に追い払うなんて」
「昔は帝国も他種族には友好的だったと父親から聞いていた。だが、今の国王の代から可笑しくなったと聞いている。優秀な人材を帝国に引き抜き、自分達に逆らう者は容赦しないと言っていた」
「もう魔王軍よりも悪役みたいなんだけど……」
「そうですね。だから実は魔王軍を支持する存在も居ると噂されていますよ」
これからゴンゾウはどうすればいいのか分からず、自国に戻る訳にもいかず、だからと言って冒険者になる手段を見つける以前に路銀が尽きかけており、どうにか職に就いて生活費を稼ぐしかないのだが、生憎と巨人族を募集している仕事場は非常に少なかった。
「力仕事には自信があるし、故郷に居た時は畑を耕していたが、何処も雇ってくれない……どうすればいいのか」
「今までは旅をしながら魔物を狩って生活していたんですよね。もう並の冒険者よりも冒険者らしい生活をしていると思いますけど……」
「一人旅……大変だった?」
「そうだな……1人で過ごす事が何よりも寂しかった。それと外で寝る時は見張り役もいなかったからずっと起きて過ごしていた」
「サバイバルだな……」
他の人間と行動して旅をしていれば街の外で野営を行う時は味方が見張り役を行い、安心して他の人間は就寝も出来るが、ゴンゾウの場合は1人で行動していたので夜を迎えると周囲の警戒を怠らずに起きていなければならず、夜営を行う際は常に周囲を警戒しなければならない。冒険者になるために帝国領土を彷徨い歩く彼の旅は何度も命の危機に陥ったという。
「冒険者になるのは諦められないの?」
「正直に言えば……後には引けないという気持ちもある。大見得を切って故郷の人間と別れたのに冒険者になれずに戻ってきたら皆に合わせる顔が無い……」
「気持ちは分かりますけどね……それにここから戻るにしても命懸けでしょうし、戻るという選択肢はなさそうですね」
「冒険者か……あ、それならホノカさんに頼めば……」
「レノさんがホノカさんの事をどう思っているのかは知りませんけど、彼女は商売人ですよ?自分に何の関わりもなく、利益をもたらしていない人を紹介してくれるほど甘い人間じゃありませんよ」
アイリィの言葉にレナは黙り込み、確かにゴンゾウはホノカとは会った事すらない。幾らレノが彼に同情してホノカに頼み込もうと彼女としては自分がよく知らない人間を迂闊に冒険者ギルドに紹介するはずがない。もしもゴンゾウを紹介したとしても彼が仕事で大きな不始末を起こした場合、紹介した彼女にも責任が追及されてしまうかも知れない。
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