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スラム編
回復薬生産
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アイリィはコトミンから受け取った上級回復薬の原液を全ての硝子瓶に数滴だけ落とし、続いて水桶の綺麗な井戸水を硝子瓶に流し込む。彼女の説明によると一定の割合で回復液と飲料水を配合する事で回復薬を生成できるらしく、アイリィは真剣な表情で割合を間違いない様に硝子瓶に注入する。
「よく見て置いて下さいね。間違っても原液は入れ過ぎず、だからといて飲料水も多く含み過ぎないように気を付けてください。理想的な割合は原液が2割、飲料水が8割、つまりは「2:8」の割合下級回復薬が生み出せますよ」
「それなら中級回復薬は?」
「その場合は「4:6」の割合です。上級回復薬の場合は「8:2」ですよ」
彼女は説明を行いながら手慣れた動作で回復薬を生み出し、5本分の薬瓶を用意する。これだけで銀貨5枚分の価値があり、もしも中級回復薬を生み出せたら1本だけでも銀貨3枚分の価値があり、上級回復薬ならば最低でも銀貨8枚分の価値がある。
「中級は作らないの?」
「確かにそっちの方が儲けが大きいですけど、ここは地道に下級回復薬だけを作っておきましょう。中級回復薬は作るとしても1本か2本ぐらいで十分でしょう」
「コトミンはまだ作れる?」
「大丈夫」
レナはコトミンに今度は桶を手渡し、魔力回復薬の原液の方は効果が薄いらしいので彼女にはこれからは回復液だけの生成に集中させ、アイリィは生成された回復液を飲料水と配合させて硝子瓶に詰め込む作業を行う。レナは2人の補助を行い、新しい桶や硝子瓶の用意を行ったり、あるいは疲れたコトミンに聖属性の付与魔法を施す。
――1時間後、机の上には30本分の下級回復薬が並んでおり、さらに1本だけ中級回復薬も生み出す。これ等の類を買い取ってくれるのはホノカが経営している魔道具店のような店が主に買い取ってくれるのだが、他にも雑貨屋や治療院が薬の売買を行うらしく、収納石が取り付けられたレナの鞄に全て詰め込んで早速売却に向かう事にした。通常の回復薬よりも少し高めの効果を誇るため、アイリィの交渉によっては定価の価格よりも高値で買い取ってくれるかも可能性もある。
レナ達が向かったのは市場であり、この帝都にはホノカの経営している魔道具店以外には店として成り立っている魔道具店は存在せず、その代わりに市場の方に回復薬を取り扱っている露天商が幾つか存在した。交渉に関してはアイリィに一任し、レナとコトミンは彼女と商人のやり取りを後ろで見守る。
「だから言ってるじゃないですか。これは普通の回復薬とは違うんですよ?鑑定のスキルを持っているならこの回復薬の効果は分かるでしょう?」
「確かに通常の回復薬よりは効果はありそうだが……だが、銀貨1枚というのは少し高すぎないか?」
「この回復薬は中級には劣りますが、下級よりは確実に効果が高いんですよ?つまり銀貨1枚以上の価値があります。これらを上手く販売すれば十分な利益は出ますよね?」
「う~んっ……しかし……」
「そんな迷っている貴方にこちらも用意してますよ。この下級回復薬を全部購入してくれるというのなら、この中級回復薬を格安で売却しましょう」
「なっ!?中級回復薬だと……そんな物まで……」
「どうします?買わないというのなら他の方の元に行きますけど……」
「ううっ……わ、分かった!!君達の言い値で買うよ!!その代わり、これからも回復薬を入手する機会があったら僕だけに売ってくれないか?」
「……考えておきます。じゃあ、念のために名前だけを教えてくれますか?」
交渉は傍から見る限りではアイリィが有利に進めており、普通ならば一般人が持ち込んだ品物など軽く見られて安く買い叩かれるのだが、彼女は「鑑定」のスキルを持っている商人を探し出し、自分達が持ち込んだ回復薬の効果を直に本人に確かめさせた後に取引を持ちかける。このような交渉の経験は初めてではないのがアイリィは手慣れた様子で取引を進める。
「やりましたよ。一気に銀貨が32枚で買い取ってくれました。ほぼ普通の回復薬の原価の値段で売り捌けましたね」
「うわ、凄いな……」
「……でも、また作るの?」
「当たり前じゃないですか。今度はこのお金でちゃんとした調合器具を購入してもっと品質のいい回復薬を効率よく生み出しますよ。だけどやり過ぎると目立つのである程度の時間を置いてから他の露天商とも交渉を行いましょうか」
「さっきの人とはもう売却しないの?」
「良い人そうではありますけど、一応は他の人とも関係を築いて置きたいんです、もっとこちらに好条件で売却してくれる方もいるでしょうし……例のホノカさんという人も気になりますからね」
「なるほど……まあ、アイリィに任せるよ」
回復薬の件についてはアイリィに任せる事に決め、彼女のお蔭で実際に30枚以上の銀貨を稼ぐ事に成功したのは事実であり、彼女が調合器具を所望するのならば買い揃える必要があるのだろう。アイリィの言葉に従い、宿屋に戻る前にもう少しだけ市場を回り、必要な材料を買い揃える事にした。
「よく見て置いて下さいね。間違っても原液は入れ過ぎず、だからといて飲料水も多く含み過ぎないように気を付けてください。理想的な割合は原液が2割、飲料水が8割、つまりは「2:8」の割合下級回復薬が生み出せますよ」
「それなら中級回復薬は?」
「その場合は「4:6」の割合です。上級回復薬の場合は「8:2」ですよ」
彼女は説明を行いながら手慣れた動作で回復薬を生み出し、5本分の薬瓶を用意する。これだけで銀貨5枚分の価値があり、もしも中級回復薬を生み出せたら1本だけでも銀貨3枚分の価値があり、上級回復薬ならば最低でも銀貨8枚分の価値がある。
「中級は作らないの?」
「確かにそっちの方が儲けが大きいですけど、ここは地道に下級回復薬だけを作っておきましょう。中級回復薬は作るとしても1本か2本ぐらいで十分でしょう」
「コトミンはまだ作れる?」
「大丈夫」
レナはコトミンに今度は桶を手渡し、魔力回復薬の原液の方は効果が薄いらしいので彼女にはこれからは回復液だけの生成に集中させ、アイリィは生成された回復液を飲料水と配合させて硝子瓶に詰め込む作業を行う。レナは2人の補助を行い、新しい桶や硝子瓶の用意を行ったり、あるいは疲れたコトミンに聖属性の付与魔法を施す。
――1時間後、机の上には30本分の下級回復薬が並んでおり、さらに1本だけ中級回復薬も生み出す。これ等の類を買い取ってくれるのはホノカが経営している魔道具店のような店が主に買い取ってくれるのだが、他にも雑貨屋や治療院が薬の売買を行うらしく、収納石が取り付けられたレナの鞄に全て詰め込んで早速売却に向かう事にした。通常の回復薬よりも少し高めの効果を誇るため、アイリィの交渉によっては定価の価格よりも高値で買い取ってくれるかも可能性もある。
レナ達が向かったのは市場であり、この帝都にはホノカの経営している魔道具店以外には店として成り立っている魔道具店は存在せず、その代わりに市場の方に回復薬を取り扱っている露天商が幾つか存在した。交渉に関してはアイリィに一任し、レナとコトミンは彼女と商人のやり取りを後ろで見守る。
「だから言ってるじゃないですか。これは普通の回復薬とは違うんですよ?鑑定のスキルを持っているならこの回復薬の効果は分かるでしょう?」
「確かに通常の回復薬よりは効果はありそうだが……だが、銀貨1枚というのは少し高すぎないか?」
「この回復薬は中級には劣りますが、下級よりは確実に効果が高いんですよ?つまり銀貨1枚以上の価値があります。これらを上手く販売すれば十分な利益は出ますよね?」
「う~んっ……しかし……」
「そんな迷っている貴方にこちらも用意してますよ。この下級回復薬を全部購入してくれるというのなら、この中級回復薬を格安で売却しましょう」
「なっ!?中級回復薬だと……そんな物まで……」
「どうします?買わないというのなら他の方の元に行きますけど……」
「ううっ……わ、分かった!!君達の言い値で買うよ!!その代わり、これからも回復薬を入手する機会があったら僕だけに売ってくれないか?」
「……考えておきます。じゃあ、念のために名前だけを教えてくれますか?」
交渉は傍から見る限りではアイリィが有利に進めており、普通ならば一般人が持ち込んだ品物など軽く見られて安く買い叩かれるのだが、彼女は「鑑定」のスキルを持っている商人を探し出し、自分達が持ち込んだ回復薬の効果を直に本人に確かめさせた後に取引を持ちかける。このような交渉の経験は初めてではないのがアイリィは手慣れた様子で取引を進める。
「やりましたよ。一気に銀貨が32枚で買い取ってくれました。ほぼ普通の回復薬の原価の値段で売り捌けましたね」
「うわ、凄いな……」
「……でも、また作るの?」
「当たり前じゃないですか。今度はこのお金でちゃんとした調合器具を購入してもっと品質のいい回復薬を効率よく生み出しますよ。だけどやり過ぎると目立つのである程度の時間を置いてから他の露天商とも交渉を行いましょうか」
「さっきの人とはもう売却しないの?」
「良い人そうではありますけど、一応は他の人とも関係を築いて置きたいんです、もっとこちらに好条件で売却してくれる方もいるでしょうし……例のホノカさんという人も気になりますからね」
「なるほど……まあ、アイリィに任せるよ」
回復薬の件についてはアイリィに任せる事に決め、彼女のお蔭で実際に30枚以上の銀貨を稼ぐ事に成功したのは事実であり、彼女が調合器具を所望するのならば買い揃える必要があるのだろう。アイリィの言葉に従い、宿屋に戻る前にもう少しだけ市場を回り、必要な材料を買い揃える事にした。
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