29 / 207
スラム編
強化スキルの存在
しおりを挟む
「それで本当にアイリィはどうするの?俺と一緒じゃないと魔力も補給できないんじゃないの?」
「補給以前にお金も住むところもありませんからね……しばらくの間はお世話になります」
「……よろしく」
新たにスケルトン少女(元)のアイリィを仲間に加え、レナ達はスラム街を離れて人気の多い場所に移動する。途中で非常に興奮した様子の男性が面倒そうな顔を浮かべる警備兵を無理やり引き連れて「本当に見たんだ」などと叫びながらスラム街に移動する姿を見かけたが、敢えて無視して3人は黒猫亭に向かう。
「だけどどう説明しよう……コトミンだけでも一緒に暮らしているのにからかわれるのにもう1人追加したらなんて言われるか……」
「それならお金だけ渡してくれれば別の部屋を取りますよ?私としても1人の方が気楽ですし……あっ、ちょっと図々しいですかね」
「いや、別にいいよ。はいお金」
レナは懐から銀貨を幾つか取り出し、アイリィに手渡す。彼女は黙って受け取ると、不思議そうに彼に視線を向ける。
「……自分で言っておいてなんですけど、本当にいいんですか?こんなにあっさり私を信用してお金を渡すなんて……もしも私が逃げ出したらどうするんですか?」
「それはないと信じてるよ。だってアイリィの声には「嘘」とは感じなかったから」
「……?」
アイリィの言葉にレナは意味深に返答を行い、人の声を聴くだけで善意や悪意を見抜ける能力を持つ彼だからこそ彼女の言葉には嘘が無い事を確信する。彼女は不思議な表情を抱きながらも銀貨を受け取り、何かを思い出したように掌を叩く。
「あ、そうだ。それならお金の代わりに面白いスキルの習得方法を教えてあげますよ。レナさんのような魔術師の方に人気なスキルです」
「へえ……どんなの?」
「魔力の回復速度を上昇させるスキルです。名前は「魔力回復速度上昇」という文字通りのスキルなんですけど……習得方法は何回か根こそぎ魔力を消費した状態になる事です」
「それ持ってるよ」
「あららっ……」
この世界に訪れてから3日程でレナが習得していたスキルであり、既に習得していたスキルだった。
「だったら魔力容量を拡張化させる「魔力増加」のスキルは……」
「それも持ってる」
先ほどの魔力回復速度上昇と同じく何時の間にか習得していたスキルであり、どちらも熟練度の項目が存在するが何か特別な事をしていたわけでもないのにどちらも「5」を迎えていた。レナはこの際に熟練度の限界値を伸ばす方法が無いのかを尋ねる。
「魔法やスキルの熟練度の限界値を伸ばす事は出来る?」
「無理ですね。熟練度は10段階までしか存在しませんよ。だけど、魔法を強化するスキルならあるそうですけど……」
「そうなの?」
「でも修得条件がとんでもなく難しいんですよ。竜種クラスの魔物を倒したり、あるいは伝説の魔道具を使用しないと覚えられないとか……そもそも伝説のような存在として取り扱われていますからね」
「そうなのか……」
アイリィの話によるとスキルの中には魔物を打ち倒す事で修得したり、あるいは危機的な困難を乗り越える事で芽生える事もある。レナの場合は先ほど彼女が説明していた「魔力回復速度上昇」や「魔力増加」も連日の付与魔法の連続使用によって覚えたと考えられ、実際に何度か魔法の使い過ぎで気絶した事はあったが、それらの苦難を乗り越えたからこそ習得できたスキルの可能性が高い。
「コトミンのお蔭か……いい子いい子」
「……?」
唐突に頭を撫でられたコトミンは不思議そうな表情を浮かべるが、実際に彼女のお蔭でレナは色々なスキルを身に付けられたのは事実である。彼女に聖属性の付与魔法を施す事で熟練度の向上や新たなスキルの修得したのは間違いなく、最初の日に木箱に閉じ込められた彼女を救い出せた事は正にレナの「幸運」だった。
「いちゃついている所を悪いんですけど、これからどうします?外に出向いて魔物狩りでも行いますか?」
「それが出来たらね……この帝都は身分証が無いと出られないんだよ」
「身分証……?」
アイリィに帝都を抜け出す際は身分証が必要な事を説明すると、彼女は不思議そうに首を傾げる。
「そんな制度があったんですか……ですけど、それなら外壁を乗り越えればいいんじゃないですか?」
「いや、あの壁をどうやって乗り越えるのさ……」
帝都の周囲は20メートルを超える壁が囲んでおり、魔物の侵入を考慮して非常に頑丈な素材で築き上げられており、兵士の目を盗んで壁をよじ登る事は難しい。それに外壁の周囲には大きな堀も存在し、上手く外壁に移動出来たとしても脱出は難しい。これらの情報はレナはホノカから聞いており、更に現在では何故か帝都の出入り検問が強化されており、噂では帝都を抜け出した勇者が関係していると言われている。
「補給以前にお金も住むところもありませんからね……しばらくの間はお世話になります」
「……よろしく」
新たにスケルトン少女(元)のアイリィを仲間に加え、レナ達はスラム街を離れて人気の多い場所に移動する。途中で非常に興奮した様子の男性が面倒そうな顔を浮かべる警備兵を無理やり引き連れて「本当に見たんだ」などと叫びながらスラム街に移動する姿を見かけたが、敢えて無視して3人は黒猫亭に向かう。
「だけどどう説明しよう……コトミンだけでも一緒に暮らしているのにからかわれるのにもう1人追加したらなんて言われるか……」
「それならお金だけ渡してくれれば別の部屋を取りますよ?私としても1人の方が気楽ですし……あっ、ちょっと図々しいですかね」
「いや、別にいいよ。はいお金」
レナは懐から銀貨を幾つか取り出し、アイリィに手渡す。彼女は黙って受け取ると、不思議そうに彼に視線を向ける。
「……自分で言っておいてなんですけど、本当にいいんですか?こんなにあっさり私を信用してお金を渡すなんて……もしも私が逃げ出したらどうするんですか?」
「それはないと信じてるよ。だってアイリィの声には「嘘」とは感じなかったから」
「……?」
アイリィの言葉にレナは意味深に返答を行い、人の声を聴くだけで善意や悪意を見抜ける能力を持つ彼だからこそ彼女の言葉には嘘が無い事を確信する。彼女は不思議な表情を抱きながらも銀貨を受け取り、何かを思い出したように掌を叩く。
「あ、そうだ。それならお金の代わりに面白いスキルの習得方法を教えてあげますよ。レナさんのような魔術師の方に人気なスキルです」
「へえ……どんなの?」
「魔力の回復速度を上昇させるスキルです。名前は「魔力回復速度上昇」という文字通りのスキルなんですけど……習得方法は何回か根こそぎ魔力を消費した状態になる事です」
「それ持ってるよ」
「あららっ……」
この世界に訪れてから3日程でレナが習得していたスキルであり、既に習得していたスキルだった。
「だったら魔力容量を拡張化させる「魔力増加」のスキルは……」
「それも持ってる」
先ほどの魔力回復速度上昇と同じく何時の間にか習得していたスキルであり、どちらも熟練度の項目が存在するが何か特別な事をしていたわけでもないのにどちらも「5」を迎えていた。レナはこの際に熟練度の限界値を伸ばす方法が無いのかを尋ねる。
「魔法やスキルの熟練度の限界値を伸ばす事は出来る?」
「無理ですね。熟練度は10段階までしか存在しませんよ。だけど、魔法を強化するスキルならあるそうですけど……」
「そうなの?」
「でも修得条件がとんでもなく難しいんですよ。竜種クラスの魔物を倒したり、あるいは伝説の魔道具を使用しないと覚えられないとか……そもそも伝説のような存在として取り扱われていますからね」
「そうなのか……」
アイリィの話によるとスキルの中には魔物を打ち倒す事で修得したり、あるいは危機的な困難を乗り越える事で芽生える事もある。レナの場合は先ほど彼女が説明していた「魔力回復速度上昇」や「魔力増加」も連日の付与魔法の連続使用によって覚えたと考えられ、実際に何度か魔法の使い過ぎで気絶した事はあったが、それらの苦難を乗り越えたからこそ習得できたスキルの可能性が高い。
「コトミンのお蔭か……いい子いい子」
「……?」
唐突に頭を撫でられたコトミンは不思議そうな表情を浮かべるが、実際に彼女のお蔭でレナは色々なスキルを身に付けられたのは事実である。彼女に聖属性の付与魔法を施す事で熟練度の向上や新たなスキルの修得したのは間違いなく、最初の日に木箱に閉じ込められた彼女を救い出せた事は正にレナの「幸運」だった。
「いちゃついている所を悪いんですけど、これからどうします?外に出向いて魔物狩りでも行いますか?」
「それが出来たらね……この帝都は身分証が無いと出られないんだよ」
「身分証……?」
アイリィに帝都を抜け出す際は身分証が必要な事を説明すると、彼女は不思議そうに首を傾げる。
「そんな制度があったんですか……ですけど、それなら外壁を乗り越えればいいんじゃないですか?」
「いや、あの壁をどうやって乗り越えるのさ……」
帝都の周囲は20メートルを超える壁が囲んでおり、魔物の侵入を考慮して非常に頑丈な素材で築き上げられており、兵士の目を盗んで壁をよじ登る事は難しい。それに外壁の周囲には大きな堀も存在し、上手く外壁に移動出来たとしても脱出は難しい。これらの情報はレナはホノカから聞いており、更に現在では何故か帝都の出入り検問が強化されており、噂では帝都を抜け出した勇者が関係していると言われている。
16
お気に入りに追加
3,645
あなたにおすすめの小説

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる