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バルトロス帝国編
襲撃
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「おかしいな……まだかな」
5冊目の魔法書を読み終えたレナは戻って来ないホノカに疑問を抱き、既に彼女が店の奥に移動してから30分を経過しようとしていた。どういう訳なのかレナは1冊の魔法書をほぼ5分ペースで読み終えており、ステータス画面を確認すると着実に熟練度が上昇していた。そして彼は4冊目の「聖属性」の魔法書を読み終えた時点で熟練度が「9」を迎えており、あと1冊読めば熟練度の限界値に到達する事になる。
このまま本を読み続ける事も考えたが、少し心配になったレナは店の奥を覗き込むが、ホノカの姿は見えず、階段が垣間見えたので上の階に居るのかも知れず、レナは彼女の名前を呼び出す。
「ホノカさ~ん?」
名前を呼んでも返答はなく、レナの持ち込んだ鞄を「収納袋」に改造する作業に時間が掛かっているのかと疑問を抱くが、不意に二階の方から大きな物音が聞こえた。天井から駆け回るような音が聞こえ、明らかに何かが破壊されたような騒音まで聞こえてくる。何かが起きているのは間違いなく、レナは店の奥の階段に移動する。
「ホノカさん!?」
「くっ……逃げるんだっ!!」
階段を見上げると肩から血を流すホノカの姿があり、彼女は無残に切り刻まれたレナの鞄を持っており、すぐに彼に逃げるように指示する。何が起きているのか分からなかったが、ホノカが何者かに襲われているのは間違いなく、レナは彼女を助けるために階段を登ろうとした時、嫌に聞き覚えのある声が響いた。
「あら……貴方は何処かで会った事があるわね?」
「あっ……!?」
倒れているホノカの前に金髪の女性が姿を現し、間違いなく最初にこの世界に召喚された時、レナが遭遇した占い師の女性であり、彼女の右手は血が染まっていた。しかも右手の爪が肉食動物のように鋭利に研ぎ澄まされており、状況的に考えてホノカの肩とレナの鞄を切り裂いたのは女性の仕業で間違いない。
「丁度良かったわ……あの時は逃がしたけど、今回は……」
「うっ……」
女性に視線を向けられただけでレナは身体が上手く動かず、最初に遭遇した時のように彼女の言葉が嫌に頭に響く。それでも前回の時と比べたら意識は残っており、レナは頭を抑えながらホノカに視線を向けると、彼女は片を抑えながら叫び声を上げる。
「こいつは……ヴァンパイアだ!!魅了の眼で君を操ろうとしている!!早く逃げるんだ!!」
「うるさいわね……無駄よ。前の時は失敗したけど、私が本気になればどんな人間も虜に出来るのよ……ねえ、坊や?」
「あうっ……」
ヴァンパイアと呼ばれた女性はレナに微笑み掛け、そのあまりの美貌に意識が遠くなりそうだが、前回に習得した「魅了耐性」の影響なのか完全には意識を失わない。それでも時間の問題であり、どうにか逃げないとこのままでは2人とも捕まってしまう。
「ヴァンパイア……」
レナの知る限り、神話などでは十字架等を恐れる悪魔のような存在として描かれているが、この世界のヴァンパイアが同じような弱点を持っているとは限らない。それでも対抗する手段を見出さなければならず、レナは自分の扱える魔法を考える。
付与魔法は物体に魔法の力を付与させる魔法であり、そもそも武器の類を所持していなければ使用する事も出来ない。現在のレナの付与魔法の中で熟練度が高いのは火属性と聖属性だけであり、この二つを攻撃に利用する方法を考え、ある作戦を思いついた。彼は懐に手を伸ばし、一昨日に眠る前に付与魔法の練習としてポケットに入れたままだった元の世界の硬貨を取り出し、指先で掴んで構える。その行動にヴァンパイアは眉を顰めるが、レナは付与魔法を発動する。
「聖属性!!」
「きゃああっ!?」
「くぅっ!?」
硬貨に聖属性の付与魔法を発動した瞬間、硬貨が閃光のように光り輝き、ヴァンパイアの視界を奪う。レナは直前に目を閉じていたので助かったが、ホノカも瞼を閉じてしまう。先ほどまで読み込んでいた魔法書のお蔭で聖属性の熟練度が「9」まで上昇した影響もあり、訓練の時よりも光量が大きく増していた。これで厄介なヴァンパイアの「瞳」から解放された事でレナの身体が楽になり、すぐに店内に戻って武器になりそうな物を探し出す。
「弓矢……!?」
自分が唯一扱える武器を探し出そうとするが、以前に借りた時はホノカは店の奥から弓矢を持ってきた事を思い出し、店の方では展示していない。それでも武器を探そうとすると机の上に並べられている魔石が目に入り、レナは1つ握りしめると階段に戻る。
「こ、のっ……ガキィッ!!」
「くっ!?」
だが、ヴァンパイアは完全に視力が回復する前に充血した目を見開きながらレナに飛びかかる。その光景に彼は自分が殺されると思ったが、次の瞬間、目の前のヴァンパイアに異常が生じた。
「こぉろぉしぃてぇ……!!」
「えっ……?」
――階段から飛び降りたはずのヴァンパイアが空中で唐突に減速し、憤怒の表情を浮かべたまま口を開いた状態でゆっくりと叫び声を上げていた。レナは唖然としていたが、同時に自分の身体も上手く動かせない事に気付き、まるでテレビのスローモーションのように自分たちの肉体が遅く動く事に気付く。
レナは何が起きているのか理解できなかったが、確実に近づいてくるヴァンパイアに向けて魔石を握りしめ、付与魔法を発動して投擲を行う。
「火属性!!」
「やぁ……!?」
魔石を投げ込んだ瞬間に付与魔法の効果で発火し、ヴァンパイアの眼前に迫る。魔石は魔法の媒介に利用される道具だが、もしも火属性の魔石に付与魔法を施した場合はどうなるのか、結果から言えば魔法を強化させる魔石その物を発火させた事によって魔石が暴走し、小規模の爆発を引き起こした。
「ぐぎゃあぁあああああああっ!?」
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
顔面に爆炎を受けた事でヴァンパイアは悲鳴を上げ、そのまま階段を転げ落ちる。その光景にホノカは驚愕し、一方でレナは周囲の時間の流れが元に戻った事に気付き、慌てて後退した。
5冊目の魔法書を読み終えたレナは戻って来ないホノカに疑問を抱き、既に彼女が店の奥に移動してから30分を経過しようとしていた。どういう訳なのかレナは1冊の魔法書をほぼ5分ペースで読み終えており、ステータス画面を確認すると着実に熟練度が上昇していた。そして彼は4冊目の「聖属性」の魔法書を読み終えた時点で熟練度が「9」を迎えており、あと1冊読めば熟練度の限界値に到達する事になる。
このまま本を読み続ける事も考えたが、少し心配になったレナは店の奥を覗き込むが、ホノカの姿は見えず、階段が垣間見えたので上の階に居るのかも知れず、レナは彼女の名前を呼び出す。
「ホノカさ~ん?」
名前を呼んでも返答はなく、レナの持ち込んだ鞄を「収納袋」に改造する作業に時間が掛かっているのかと疑問を抱くが、不意に二階の方から大きな物音が聞こえた。天井から駆け回るような音が聞こえ、明らかに何かが破壊されたような騒音まで聞こえてくる。何かが起きているのは間違いなく、レナは店の奥の階段に移動する。
「ホノカさん!?」
「くっ……逃げるんだっ!!」
階段を見上げると肩から血を流すホノカの姿があり、彼女は無残に切り刻まれたレナの鞄を持っており、すぐに彼に逃げるように指示する。何が起きているのか分からなかったが、ホノカが何者かに襲われているのは間違いなく、レナは彼女を助けるために階段を登ろうとした時、嫌に聞き覚えのある声が響いた。
「あら……貴方は何処かで会った事があるわね?」
「あっ……!?」
倒れているホノカの前に金髪の女性が姿を現し、間違いなく最初にこの世界に召喚された時、レナが遭遇した占い師の女性であり、彼女の右手は血が染まっていた。しかも右手の爪が肉食動物のように鋭利に研ぎ澄まされており、状況的に考えてホノカの肩とレナの鞄を切り裂いたのは女性の仕業で間違いない。
「丁度良かったわ……あの時は逃がしたけど、今回は……」
「うっ……」
女性に視線を向けられただけでレナは身体が上手く動かず、最初に遭遇した時のように彼女の言葉が嫌に頭に響く。それでも前回の時と比べたら意識は残っており、レナは頭を抑えながらホノカに視線を向けると、彼女は片を抑えながら叫び声を上げる。
「こいつは……ヴァンパイアだ!!魅了の眼で君を操ろうとしている!!早く逃げるんだ!!」
「うるさいわね……無駄よ。前の時は失敗したけど、私が本気になればどんな人間も虜に出来るのよ……ねえ、坊や?」
「あうっ……」
ヴァンパイアと呼ばれた女性はレナに微笑み掛け、そのあまりの美貌に意識が遠くなりそうだが、前回に習得した「魅了耐性」の影響なのか完全には意識を失わない。それでも時間の問題であり、どうにか逃げないとこのままでは2人とも捕まってしまう。
「ヴァンパイア……」
レナの知る限り、神話などでは十字架等を恐れる悪魔のような存在として描かれているが、この世界のヴァンパイアが同じような弱点を持っているとは限らない。それでも対抗する手段を見出さなければならず、レナは自分の扱える魔法を考える。
付与魔法は物体に魔法の力を付与させる魔法であり、そもそも武器の類を所持していなければ使用する事も出来ない。現在のレナの付与魔法の中で熟練度が高いのは火属性と聖属性だけであり、この二つを攻撃に利用する方法を考え、ある作戦を思いついた。彼は懐に手を伸ばし、一昨日に眠る前に付与魔法の練習としてポケットに入れたままだった元の世界の硬貨を取り出し、指先で掴んで構える。その行動にヴァンパイアは眉を顰めるが、レナは付与魔法を発動する。
「聖属性!!」
「きゃああっ!?」
「くぅっ!?」
硬貨に聖属性の付与魔法を発動した瞬間、硬貨が閃光のように光り輝き、ヴァンパイアの視界を奪う。レナは直前に目を閉じていたので助かったが、ホノカも瞼を閉じてしまう。先ほどまで読み込んでいた魔法書のお蔭で聖属性の熟練度が「9」まで上昇した影響もあり、訓練の時よりも光量が大きく増していた。これで厄介なヴァンパイアの「瞳」から解放された事でレナの身体が楽になり、すぐに店内に戻って武器になりそうな物を探し出す。
「弓矢……!?」
自分が唯一扱える武器を探し出そうとするが、以前に借りた時はホノカは店の奥から弓矢を持ってきた事を思い出し、店の方では展示していない。それでも武器を探そうとすると机の上に並べられている魔石が目に入り、レナは1つ握りしめると階段に戻る。
「こ、のっ……ガキィッ!!」
「くっ!?」
だが、ヴァンパイアは完全に視力が回復する前に充血した目を見開きながらレナに飛びかかる。その光景に彼は自分が殺されると思ったが、次の瞬間、目の前のヴァンパイアに異常が生じた。
「こぉろぉしぃてぇ……!!」
「えっ……?」
――階段から飛び降りたはずのヴァンパイアが空中で唐突に減速し、憤怒の表情を浮かべたまま口を開いた状態でゆっくりと叫び声を上げていた。レナは唖然としていたが、同時に自分の身体も上手く動かせない事に気付き、まるでテレビのスローモーションのように自分たちの肉体が遅く動く事に気付く。
レナは何が起きているのか理解できなかったが、確実に近づいてくるヴァンパイアに向けて魔石を握りしめ、付与魔法を発動して投擲を行う。
「火属性!!」
「やぁ……!?」
魔石を投げ込んだ瞬間に付与魔法の効果で発火し、ヴァンパイアの眼前に迫る。魔石は魔法の媒介に利用される道具だが、もしも火属性の魔石に付与魔法を施した場合はどうなるのか、結果から言えば魔法を強化させる魔石その物を発火させた事によって魔石が暴走し、小規模の爆発を引き起こした。
「ぐぎゃあぁあああああああっ!?」
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
顔面に爆炎を受けた事でヴァンパイアは悲鳴を上げ、そのまま階段を転げ落ちる。その光景にホノカは驚愕し、一方でレナは周囲の時間の流れが元に戻った事に気付き、慌てて後退した。
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