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バルトロス帝国編
弓矢の練習
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「魔物は何処に生息してるんですか?」
「おいおい……まさか君一人で魔物と戦うつもりかい?さっきの話は聞いていただろう。正直に言って君のステータスは子供並なんだよ」
「でも、一応は魔法を使えますし……」
「駄目だ。付与魔法はあくまでも武器に魔法の力を付与させる魔法だろう?君は武器や格闘の心得があるのかい?」
「うっ……」
ホノカの言う通り、確かにレナは元の世界でも武道の類を学んではいない。それどころか他人と喧嘩した事もなく、格闘経験など一度もない。それ以前いこの世界の魔物というのがどんな存在なのかも完全には理解しておらず、レナ自身ももしも敵にコトミンのような人間のような外見の魔物が現れた場合、本当に相手と戦えるのかは分からなかった。
「やれやれ……しょうがない、お姉さんが少し協力してあげよう」
「協力?」
「処分するつもりだった付与魔術師向けの道具を渡してあげるよ。扱い方も教えてあげるよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「但し、生活に余裕が出来たら僕の店を贔屓してくれよ?」
彼女は店の奥に移動し、数分後に弓矢と矢筒を抱えて戻ってきた。机の上に弓矢を置くと10本程の矢を横一列に並べ、レナに1本差し出してくる。彼は不思議そうに受け取ると、ホノカは弓の弦を引き搾り、具合を確かめる。
「付与魔術師が扱えるのは付与魔法だけ……普通の魔術師のように砲撃魔法は扱えなかったね」
「砲撃魔法?」
「名前の取りに魔力を砲撃するように解き放つ魔法さ」
要は魔力を光線のように撃ち出す魔法らしく、漫画やゲームでは定番と言える魔法と言える。但し、付与魔術師のレナでは扱えない魔法であり、彼の場合は物体に魔法の力を付与させる事しか出来ない。
「君の付与魔法の中で一番得意な属性はなんだい?」
「得意……火属性です」
「火属性の付与魔法か……どの程度扱えるんだい?いや、実際に試した方がいいかな。その弓矢の鏃の部分に付与してくれないか?」
「あ、はい……火属性」
レナは言葉通りに受け取った矢に付与魔法を施し、鏃に火が灯る。熟練度が4に上がっているため、火力の方も強まっており、火矢と化した矢をホノカに見せると彼女は感心した風に頷く。
「へえ……一瞬で付与魔法を施せるのか。それにこの火力……もしかしたら弓矢の技術を身に付ければ冒険者になれるかもしれないな」
「え?」
「まあ、まずは弓矢を扱えるようにならないとね。裏の方に行こうか」
ホノカに促され、レナは店に誰もいなくなるのは良いのかと疑問を抱くが、ホノカの好意を無下には出来ない。それに今後の事を考えれば戦闘の技術は身に付けて置きたいため、彼女に甘えさせてもらう事にする。
――その後、店の裏でレナは弓矢の基本的な扱い方を教えてもらい、まずは矢を的に当てる事から練習を行う。付与魔法を鏃に施す前に相手に矢を当てられる技術を身に付けなければ何も始まらず、ホノカはしばらくしたら店の方に戻ったが、レナは夕方を迎えるまで練習を繰り返し、何度も取り扱い慣れない弓矢の弦を引いたために指先の皮膚が剥がれてしまうが、定期的に聖属性の付与魔法を施して治療を行う。どうやら回復魔法は自分にも利用できる事がこの時に判明した。
流石に夜を迎えるとレナも宿屋の方に帰宅し、ずっと宿屋に閉じ籠っていたコトミンと合流する。彼女は身体を動かさないように今まで眠っていたらしく、身体を維持するために今日もレナが「聖属性」の付与魔法を施す。
「どう?気持ちいい?」
「んっ……レノの温かい力が身体に染みわたる」
「それは良かった」
彼女の掌を握りしめながらレナは「聖属性」を施し、コトミンの肉体に聖属性の魔力を送り込む。彼女は心地いいのか猫の様に目を細め、レナの身体に擦り寄る。出会ってまだ二日程だが随分と懐かれあ様であり、彼女の頭を撫でながらレナは自分のステータ画面を確認すると熟練度が向上している事に気付く。
色々と試した結果、付与魔法の熟練度が上昇しやすいのは付与を施す対象の物体の大きさが関係しており、火属性の熟練度を4まで上昇させるときはレナは元の世界の硬貨に数十回も付与魔法を施したが、聖属性の場合は弓矢の練習で負った怪我の治療の時に数回、そしてコトミンの肉体維持のために魔力を送り込む行為の2回目だけで熟練度が3にまで上昇していた。この事から付与させる物体によって熟練度の上昇値も変化するのは間違いない。
「……レノ、昨日よりも魔力の容量が増加してる?」
「えっ……そうかな」
「間違いない。だって昨日よりも送り込まれる魔力が多いから」
コトミンの言葉にレナは自分の掌を見つめ、昨夜は何十回も魔法を使用した後にコトミンに魔法を施した事で気絶してしまったが、今回は彼女に魔法を施しても十分に魔力の方にも余裕があった。何時の間にかステータスのレベルも3に上昇しており、レベルが低い状態だと熟練度の上昇だけで得られる経験値だけでレベルが上がるらしい。
最初の頃と比べるとレナの付与魔法を施す時の身体の負担も大きく軽減されており、この調子ならば他の魔法の熟練度の上昇させる事も出来るだろう。だが、その前に例の「回復屋」の仕事を行うため、レナは聖属性の熟練度を優先的に上げる事を決める。
「コトミン、もう少しだけ続けても大丈夫?」
「……どんと来い」
「何処で覚えたそんな言葉……なら続けるよ」
「あっ……んぅっ……ふぅうっ」
一気に熟練度を上昇させるために彼女の身体に送り込む魔力を増幅させ、レナは身体の限界まで聖属性の付与魔法を施す。魔力が切れても一度眠れば完全に回復する事は実証済みであり、部屋の中にいる間はコトミンの肉体磁も兼ねて彼女に魔力を与え続ける。何としてもあと2日の間に生活費を稼ぐ方法を確保しなければならず、レナは自分の取り柄である付与魔法の練習を行う。
「おいおい……まさか君一人で魔物と戦うつもりかい?さっきの話は聞いていただろう。正直に言って君のステータスは子供並なんだよ」
「でも、一応は魔法を使えますし……」
「駄目だ。付与魔法はあくまでも武器に魔法の力を付与させる魔法だろう?君は武器や格闘の心得があるのかい?」
「うっ……」
ホノカの言う通り、確かにレナは元の世界でも武道の類を学んではいない。それどころか他人と喧嘩した事もなく、格闘経験など一度もない。それ以前いこの世界の魔物というのがどんな存在なのかも完全には理解しておらず、レナ自身ももしも敵にコトミンのような人間のような外見の魔物が現れた場合、本当に相手と戦えるのかは分からなかった。
「やれやれ……しょうがない、お姉さんが少し協力してあげよう」
「協力?」
「処分するつもりだった付与魔術師向けの道具を渡してあげるよ。扱い方も教えてあげるよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「但し、生活に余裕が出来たら僕の店を贔屓してくれよ?」
彼女は店の奥に移動し、数分後に弓矢と矢筒を抱えて戻ってきた。机の上に弓矢を置くと10本程の矢を横一列に並べ、レナに1本差し出してくる。彼は不思議そうに受け取ると、ホノカは弓の弦を引き搾り、具合を確かめる。
「付与魔術師が扱えるのは付与魔法だけ……普通の魔術師のように砲撃魔法は扱えなかったね」
「砲撃魔法?」
「名前の取りに魔力を砲撃するように解き放つ魔法さ」
要は魔力を光線のように撃ち出す魔法らしく、漫画やゲームでは定番と言える魔法と言える。但し、付与魔術師のレナでは扱えない魔法であり、彼の場合は物体に魔法の力を付与させる事しか出来ない。
「君の付与魔法の中で一番得意な属性はなんだい?」
「得意……火属性です」
「火属性の付与魔法か……どの程度扱えるんだい?いや、実際に試した方がいいかな。その弓矢の鏃の部分に付与してくれないか?」
「あ、はい……火属性」
レナは言葉通りに受け取った矢に付与魔法を施し、鏃に火が灯る。熟練度が4に上がっているため、火力の方も強まっており、火矢と化した矢をホノカに見せると彼女は感心した風に頷く。
「へえ……一瞬で付与魔法を施せるのか。それにこの火力……もしかしたら弓矢の技術を身に付ければ冒険者になれるかもしれないな」
「え?」
「まあ、まずは弓矢を扱えるようにならないとね。裏の方に行こうか」
ホノカに促され、レナは店に誰もいなくなるのは良いのかと疑問を抱くが、ホノカの好意を無下には出来ない。それに今後の事を考えれば戦闘の技術は身に付けて置きたいため、彼女に甘えさせてもらう事にする。
――その後、店の裏でレナは弓矢の基本的な扱い方を教えてもらい、まずは矢を的に当てる事から練習を行う。付与魔法を鏃に施す前に相手に矢を当てられる技術を身に付けなければ何も始まらず、ホノカはしばらくしたら店の方に戻ったが、レナは夕方を迎えるまで練習を繰り返し、何度も取り扱い慣れない弓矢の弦を引いたために指先の皮膚が剥がれてしまうが、定期的に聖属性の付与魔法を施して治療を行う。どうやら回復魔法は自分にも利用できる事がこの時に判明した。
流石に夜を迎えるとレナも宿屋の方に帰宅し、ずっと宿屋に閉じ籠っていたコトミンと合流する。彼女は身体を動かさないように今まで眠っていたらしく、身体を維持するために今日もレナが「聖属性」の付与魔法を施す。
「どう?気持ちいい?」
「んっ……レノの温かい力が身体に染みわたる」
「それは良かった」
彼女の掌を握りしめながらレナは「聖属性」を施し、コトミンの肉体に聖属性の魔力を送り込む。彼女は心地いいのか猫の様に目を細め、レナの身体に擦り寄る。出会ってまだ二日程だが随分と懐かれあ様であり、彼女の頭を撫でながらレナは自分のステータ画面を確認すると熟練度が向上している事に気付く。
色々と試した結果、付与魔法の熟練度が上昇しやすいのは付与を施す対象の物体の大きさが関係しており、火属性の熟練度を4まで上昇させるときはレナは元の世界の硬貨に数十回も付与魔法を施したが、聖属性の場合は弓矢の練習で負った怪我の治療の時に数回、そしてコトミンの肉体維持のために魔力を送り込む行為の2回目だけで熟練度が3にまで上昇していた。この事から付与させる物体によって熟練度の上昇値も変化するのは間違いない。
「……レノ、昨日よりも魔力の容量が増加してる?」
「えっ……そうかな」
「間違いない。だって昨日よりも送り込まれる魔力が多いから」
コトミンの言葉にレナは自分の掌を見つめ、昨夜は何十回も魔法を使用した後にコトミンに魔法を施した事で気絶してしまったが、今回は彼女に魔法を施しても十分に魔力の方にも余裕があった。何時の間にかステータスのレベルも3に上昇しており、レベルが低い状態だと熟練度の上昇だけで得られる経験値だけでレベルが上がるらしい。
最初の頃と比べるとレナの付与魔法を施す時の身体の負担も大きく軽減されており、この調子ならば他の魔法の熟練度の上昇させる事も出来るだろう。だが、その前に例の「回復屋」の仕事を行うため、レナは聖属性の熟練度を優先的に上げる事を決める。
「コトミン、もう少しだけ続けても大丈夫?」
「……どんと来い」
「何処で覚えたそんな言葉……なら続けるよ」
「あっ……んぅっ……ふぅうっ」
一気に熟練度を上昇させるために彼女の身体に送り込む魔力を増幅させ、レナは身体の限界まで聖属性の付与魔法を施す。魔力が切れても一度眠れば完全に回復する事は実証済みであり、部屋の中にいる間はコトミンの肉体磁も兼ねて彼女に魔力を与え続ける。何としてもあと2日の間に生活費を稼ぐ方法を確保しなければならず、レナは自分の取り柄である付与魔法の練習を行う。
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