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バルトロス帝国編
不遇職
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「能力が期待できないって……だけど、この精霊の加護というのも特別な加護じゃ……」
「生憎と精霊の加護はエルフ族だけに与えられる加護だ。人間がその加護を受けたというのは珍しい事ですが、問題なのは付与魔術師という職業なのだ」
「……どういう事なんですか?」
敬語する事も我慢できなくなったのか、デキンは高慢な態度でレナに対応する。彼の変貌に他の人間達も眉を顰めるが、レナとしてはどうしても自分のステータス画面に表示されている「付与魔術師」という職業が気になり、デキンに問い質す。最初から能力が期待できないと言われても納得できるはずがなく、せめて役に立たない理由を彼の口から聞きたかった。
「付与魔術師という職業は非常に希少ではあるが、他の魔術師の職業と比べて魔力の消耗が激しい魔法しか覚えん。しかも扱える魔法には制限が存在し、他の魔術師は強力な砲撃魔法や広域魔法を扱えるが、付与魔術師は名前の通りに付与魔法と呼ばれる大して役に立たない魔法しか覚えられん……唯一の長所は魔術師の職業の中ではトップクラスの魔力容量と治癒魔導士のように回復魔法を多少扱える程度……その回復魔法も本職の人間には遠く及ばないがな」
「そんな……でも魔力容量が多いのは良い事なんじゃ」
「あくまでも他の職業と比べれば、だ。付与魔法自体が大して役に立たないのに馬鹿みたいに魔力を消耗するのだ。試しに自分で確かめたらどうだ?画面の下に自分が扱える魔法も表示されているだろう?」
デキンの言葉通り、レナのステータス画面には扱える魔法が表示されており、この世界では呪文名を唱えるだけで魔法は発動される。元の世界の漫画やゲームのように魔法を発動するのに漫画やゲームように呪文を呟く必要せず、レナは画面に表示されている魔法の名前を呟いた。
「火属性……あれ?」
レナ本人は普通に漢字を読み取って発音しようとしたのだが、出てきた言葉は別の言葉であり、同時に掌が熱くなる感覚が広がる。何が起きているのかと自分の右腕を見ると、掌の先から赤色の光が漏れていた事に気付く。
「な、何だ?」
「ふんっ!!おい、誰か何か貸してやれ」
「これをどうぞ」
「え、あ、はい……」
彼の近くにいた男が懐から羽ペンを差し出すと、レナが光り輝いている方の手で受け取った瞬間、羽ペンが発火する。彼は慌てて掌の上に乗った羽ペンを手放してしまい、地面に落ちる寸前で燃えていた羽ペンの火が消え去り、残されたのは黒焦げになった羽ペンだけだった。
「うわっ!?……あれっ?」
「な、何だ!?今、燃えていたよな……」
「どういう事……?」
レナは落ちていた羽ペンを拾い上げ、不思議そうに自分の掌を確認すると先ほどまで掌を覆い尽くしていた赤色の光が消失している事に気付く。
「一体何が……あ、あれ……?」
「霧崎君!?どうしたんだ?」
「大丈夫!?」
「いや、急に体から力が抜けて……」
「ふんっ……それが魔力枯渇と呼ばれる状態だ。魔力をあまりにも消耗し過ぎると精神面だけではなく肉体にも影響が出てくる。どうやら今の魔法で魔力を使い切ったようだな」
魔法を一度使用した途端にレナの肉体に異様な脱力感が陥り、クラスメイトの佐藤に手を貸して貰い、何とか立ち上がる。そんな彼にデキンはわざとらしく頭を抑えながら溜息を吐きだす。
「どうやら本当に只の一般人が召喚されたようだな。まあいい、他の勇者様を訓練場にお連れしろ。吾輩はこの男を処理を行う」
「はっ!!」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!何をするんですか!?」
「くそっ、離しやがれっ!!」
「いやっ!!止めてっ!!何処に触ってるのよ!?」
「うわぁあっ!?」
「皆っ……!?」
レナを除くクラスメイト達が大勢の男達に連行され、残された「一般人」であるレナに対してデキンは見下した態度のまま彼に視線を向け、兵士に視線を向ける。
「おい!!この男を城の外に追い払え!!」
「はっ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
「お止めなさい!!」
兵士達がすぐにレナの元に駆け寄り、彼を無理やり拘束しようとした時、広間の中に女性の声が響き渡る。全員が驚いて声の方を振り向くと、そこには銀色のドレスを身に纏った美しい女性が立っており、彼女の傍には日本人の様に黒髪の女性が立っていた。
「デキン大臣!!これは何の騒ぎですか?」
「こ、これは王女様!!本日もお美しく……」
「私の質問に答えなさい!!一体何をしていたのですか?」
デキンから王女と呼ばれた女性の外見は金色に輝く髪の毛を腰元まで伸ばし、人形のように端正に整った顔立ちであり、宝石の様に美しい碧眼を彼に向ける。胸元は異様なまでに膨らんでおり、それでいながら下腹部は非常に細く、滑らかな身体の曲線を描いていた。
彼女はデキンの傍にいるレナに視線を向け、すぐに彼の服装を見て何かを悟ったように驚いた表情を浮かべ、自分の前に跪くデキンに問い質す。
「この方は……もしや今日召喚されるという勇者様ではないのですか?」
「い、いえ!!この男は違います!!本当の勇者様は現在は訓練場の方に……」
「どういう事ですか?では、この御方は何者ですか?」
「そ、それは……」
王女はデキンに強く問いただすと彼は冷や汗を流し、2人のやり取りを見ていたレナは王女の方がデキンよりも立場が上だと感じ取った。
「生憎と精霊の加護はエルフ族だけに与えられる加護だ。人間がその加護を受けたというのは珍しい事ですが、問題なのは付与魔術師という職業なのだ」
「……どういう事なんですか?」
敬語する事も我慢できなくなったのか、デキンは高慢な態度でレナに対応する。彼の変貌に他の人間達も眉を顰めるが、レナとしてはどうしても自分のステータス画面に表示されている「付与魔術師」という職業が気になり、デキンに問い質す。最初から能力が期待できないと言われても納得できるはずがなく、せめて役に立たない理由を彼の口から聞きたかった。
「付与魔術師という職業は非常に希少ではあるが、他の魔術師の職業と比べて魔力の消耗が激しい魔法しか覚えん。しかも扱える魔法には制限が存在し、他の魔術師は強力な砲撃魔法や広域魔法を扱えるが、付与魔術師は名前の通りに付与魔法と呼ばれる大して役に立たない魔法しか覚えられん……唯一の長所は魔術師の職業の中ではトップクラスの魔力容量と治癒魔導士のように回復魔法を多少扱える程度……その回復魔法も本職の人間には遠く及ばないがな」
「そんな……でも魔力容量が多いのは良い事なんじゃ」
「あくまでも他の職業と比べれば、だ。付与魔法自体が大して役に立たないのに馬鹿みたいに魔力を消耗するのだ。試しに自分で確かめたらどうだ?画面の下に自分が扱える魔法も表示されているだろう?」
デキンの言葉通り、レナのステータス画面には扱える魔法が表示されており、この世界では呪文名を唱えるだけで魔法は発動される。元の世界の漫画やゲームのように魔法を発動するのに漫画やゲームように呪文を呟く必要せず、レナは画面に表示されている魔法の名前を呟いた。
「火属性……あれ?」
レナ本人は普通に漢字を読み取って発音しようとしたのだが、出てきた言葉は別の言葉であり、同時に掌が熱くなる感覚が広がる。何が起きているのかと自分の右腕を見ると、掌の先から赤色の光が漏れていた事に気付く。
「な、何だ?」
「ふんっ!!おい、誰か何か貸してやれ」
「これをどうぞ」
「え、あ、はい……」
彼の近くにいた男が懐から羽ペンを差し出すと、レナが光り輝いている方の手で受け取った瞬間、羽ペンが発火する。彼は慌てて掌の上に乗った羽ペンを手放してしまい、地面に落ちる寸前で燃えていた羽ペンの火が消え去り、残されたのは黒焦げになった羽ペンだけだった。
「うわっ!?……あれっ?」
「な、何だ!?今、燃えていたよな……」
「どういう事……?」
レナは落ちていた羽ペンを拾い上げ、不思議そうに自分の掌を確認すると先ほどまで掌を覆い尽くしていた赤色の光が消失している事に気付く。
「一体何が……あ、あれ……?」
「霧崎君!?どうしたんだ?」
「大丈夫!?」
「いや、急に体から力が抜けて……」
「ふんっ……それが魔力枯渇と呼ばれる状態だ。魔力をあまりにも消耗し過ぎると精神面だけではなく肉体にも影響が出てくる。どうやら今の魔法で魔力を使い切ったようだな」
魔法を一度使用した途端にレナの肉体に異様な脱力感が陥り、クラスメイトの佐藤に手を貸して貰い、何とか立ち上がる。そんな彼にデキンはわざとらしく頭を抑えながら溜息を吐きだす。
「どうやら本当に只の一般人が召喚されたようだな。まあいい、他の勇者様を訓練場にお連れしろ。吾輩はこの男を処理を行う」
「はっ!!」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!何をするんですか!?」
「くそっ、離しやがれっ!!」
「いやっ!!止めてっ!!何処に触ってるのよ!?」
「うわぁあっ!?」
「皆っ……!?」
レナを除くクラスメイト達が大勢の男達に連行され、残された「一般人」であるレナに対してデキンは見下した態度のまま彼に視線を向け、兵士に視線を向ける。
「おい!!この男を城の外に追い払え!!」
「はっ!!」
「ちょ、ちょっと!?」
「お止めなさい!!」
兵士達がすぐにレナの元に駆け寄り、彼を無理やり拘束しようとした時、広間の中に女性の声が響き渡る。全員が驚いて声の方を振り向くと、そこには銀色のドレスを身に纏った美しい女性が立っており、彼女の傍には日本人の様に黒髪の女性が立っていた。
「デキン大臣!!これは何の騒ぎですか?」
「こ、これは王女様!!本日もお美しく……」
「私の質問に答えなさい!!一体何をしていたのですか?」
デキンから王女と呼ばれた女性の外見は金色に輝く髪の毛を腰元まで伸ばし、人形のように端正に整った顔立ちであり、宝石の様に美しい碧眼を彼に向ける。胸元は異様なまでに膨らんでおり、それでいながら下腹部は非常に細く、滑らかな身体の曲線を描いていた。
彼女はデキンの傍にいるレナに視線を向け、すぐに彼の服装を見て何かを悟ったように驚いた表情を浮かべ、自分の前に跪くデキンに問い質す。
「この方は……もしや今日召喚されるという勇者様ではないのですか?」
「い、いえ!!この男は違います!!本当の勇者様は現在は訓練場の方に……」
「どういう事ですか?では、この御方は何者ですか?」
「そ、それは……」
王女はデキンに強く問いただすと彼は冷や汗を流し、2人のやり取りを見ていたレナは王女の方がデキンよりも立場が上だと感じ取った。
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