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崩壊地球編

最後の決戦まで

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「クオを倒せば倒す程、崩壊する未来が近づいてくる……けど、まだ二週間はあるんでしょ?」
「そうですね。ですけど、このペースでいくと全てのクオの討伐までに一週間は掛かりません」
「一週間か……まだ一週間の余裕はあるけど、安心は出来ないな」


先日まで一か月はあった猶予が半分にまで迫り、さらにクオを倒せば崩壊が早まる可能性はある。だが、ここまで来た以上はもうクオの討伐は止められない。


「あの……こういうのはどうかな?この転移装置は年単位で時を戻れるんでしょ?なら、崩壊する日の丁度1年後の日に戻る事も出来るんだよね?」
「はい、それは可能ですね」
「……なら、地球が崩壊する過程がどうなるかのを確認した後、1年後に過去に戻って世界を救う事も出来るというわけか」
「そうですね。それだと私達も対策がしやすいですし、その方法が確実です。ですが……」
「その場合だと結局は世界が崩壊するパラレルワールドが生まれてしまうか……」


過去を変えた所でパラレルワールドが発生するだけで本来の世界の壊滅は避けられず、結局は人類が救われた世界と滅亡した世界に枝分かれする事になる。しかし、この方法ならばルノ達は最も危険はなく、仮に彼等の力を以てしても世界が滅亡するのが止められない未来が確定していたとしたら地球へ戻らずにこの世界で平和に暮らしていける。

正直に言えばルノもナオも地球に未練はあるが、同時にこの世界の事も大切に想っている。色々と苦しい事もあったが、反面に楽しい事も多かった。魔法の世界で冒険など地球で暮らしていた頃では絶対に有り得ない環境に二人とも慣れてしまう。

そもそもルノとナオが存在した時代の地球に戻る事ならば不可能ではなく、その場合は二人とも平和に暮らす事は出来る。数十年後には世界が崩壊するといってもこちらの世界に召喚される前の日常に戻る事は出来る。



――だが、ここで人類を見捨てる選択が出来ないからこそ二人は「勇者」と「英雄」としてこの世界に迎え入れられた。ルノとナオはお互いの顔を見て頷き、それを確認した他の者達は覚悟を抱いたような表情を浮かべ、転生者であるリーリスも地球が滅びる運命を黙って静観する事は出来なかった。



滅亡する世界が生まれるかもしれないのにそれを見捨てる事は出来ないと判断したルノ達はクオの討伐を急ぎ、そして壊裂で現れるはずの最大の脅威に立ち向かうべく準備を始める。




まず、リーリスの作戦で今後はクオの討伐を行わず、捕獲という形で大量の檻を地球へ運び込む。その後は人海戦術を駆使してクオの捕獲を行い、島内の研究施設にて隔離を行う。今までの傾向からクオを倒すと壊裂が縮小化する一方、地球が崩壊する未来が近づく事は明白だったため、それならば敢えてクオを生かした状態で隔離を行う。

その後はあらゆる事態を想定してリーリスはヨツバ王国の協力してもらい、大量の精霊薬の生成を急ぐ。他にも各国から資材を提供してもらい、以前に大量のゴーレムがバルトロス帝国を襲おうとした時に彼女が作り出した「魔導大砲」の制作も同時に行う。この世界で最も強力な兵器があるとすればこの魔導大砲の他には存在せず、大量の魔石を用意して砲弾の制作も実行する。

リディアの方も戦力となり得る魔物を集め、ジャンヌもユニコーンに頼んで共に戦ってもらう事を約束した。他にもサムカ、ソウシなどといった外国の猛者たちも強力を行い、着実に準備は整っていく。問題があるとすれば転移装置の腕輪を使用して送り込める人員は10名だけなのだが、こちらの方はナオの空間魔法で対処する事になった。




――13日後、遂に世界の崩壊まで明日を控えた時、リーリスは島内で確保していた全てのクオの討伐を行うために研究施設ごと爆発させる。必要な研究データと機材の方は持ち込み済みであり、これで研究施設を跡形もなく吹き飛ばせば地球の人間にクオの存在も異世界へ訪れる技術も渡る事は無い。

クオを全滅させる事になってしまったのは申し訳なかったが、クオはどうしても自分以外の存在を敵として認識してしまうため、生かしておけば生態系を乱す危険な存在だった。なので彼等には悪いと思いながらもルノ達は研究施設と共に葬り去る。その結果、予想通りというべきか最後の新聞の内容が変化を果たし、白紙に変わるのと同時に東京上空へ広がる壊裂に異変が起きた――
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