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崩壊地球編
白竜の子供
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――白竜を倒す事に成功したルノは白竜が住処にしていた岩山へ降り立つと、そこには神殿が存在した。リーリスによると神殿には過去の勇者が遺したという伝説の聖剣が封じられいるらしいが、ルノの目的は聖剣などではなく、神殿内部に存在するという転移石の回収だった。
「あった。結構大きいな……白竜を倒したお陰かな?」
神殿の奥部には「聖水」と呼ばれる回復薬と同等かそれ以上の回復効果を齎す回復液が湧き出る温泉が存在し、その奥には大量の転移石が沈んでいた。ルノは潜って全ての転移石を回収する事に成功すると、濡れた服を乾かす間に温泉を堪能する。
「ふぃ~……気持ちいいな、お前もそう思うだろう?」
「シャアアッ♪」
湯舟の中にはルノ以外に子供の「白竜」が存在し、この白竜の子供は先ほどルノが倒した個体の兄弟だと思われ、岩山の中に隠れていた所をルノが拾い上げた。こちらの白竜はまだ年齢も幼く、力も弱い。しかも虐待を受けていた形跡があり、傷だらけだった。
白竜は長寿ではあるが同時に成長が遅い生物であり、子供の頃は好奇心旺盛で人懐っこい。しかし、最強の竜種の異名は伊達ではなく、子供とはいえ戦闘能力は侮れない。現にルノが白竜の子供を発見したときには住処に紛れ込んだ甲殻獣を捕食し、さらにルノの姿を見ると敵と判断して襲いかかってきた。
『シャアアッ!!』
『うわ、じゃれつくなよ……よしよし』
「シャアッ!?」
だが、白竜はルノに噛みついてもその牙は皮膚を貫く事は無く、ルノにじゃれついてきたと勘違いされてしまう。必死に白竜はルノに攻撃を仕掛けるが、ルノは白竜の牙を受けても傷一つ付かず、逆に白竜を従わせる。
『ほれほれ、ここがいいのか?』
『シャアッ♪』
白竜のお腹を撫でてやると嬉しそうに鳴き声を上げ、結局は本当に白竜もルノに懐いてしまい、後を付いてくる。白竜からすれば自分の兄を殺した相手ではあるが、そもそも竜種同士は親子愛や兄弟愛という概念は薄く、むしろ自分を虐めてくる兄を倒してくれた存在としてルノに懐いてしまう。
神殿の中でルノは白竜と戯れた後、服が乾くと転移石を回収して白竜と別れを告げる。最初は連れて帰ろうかとしたが、白竜は縄張りを離れる事を嫌がり、ルノは白竜を置いて行く事にした。
「元気でな……ちゃんと食べて大きくなるんだぞ」
「シャウッ!!」
最後に白竜を抱き上げるとルノは転移石を持ち上げて飛び去り、その様子を白竜は見送る。この白竜が数百年後、この地に訪れたある人間と壮絶な死闘を繰り広げる事は今の時点では誰も知らない――
――大量の転移石を確保したルノが研究施設に戻ると、クオの討伐に向かっていたリーリス達も帰還しており、彼女達は疲れた表情でルノを出迎える。
「お帰りなさいルノさん、首尾はどうでした?」
「ばっちりだよ。これでこの階層の竜種は粗方狩りつくしたと思う」
「そうですか、それは良い情報ですね。ですが、こちらの方は今日も進展がありませんでした」
「クオを何体か捕まえる事には成功したけど、やっぱり殺処分になったよ……リディアさんも頑張ってはみたけど、クオはやっぱり従える事は出来ないって」
「あいつら、普通の魔物よりも知能が高いせいで上手く私でも操れないのよ……」
クオの捜索を行っていたリーリス達は本日も数体のクオの捕獲には成功したが、性格が獰猛で人間には決して懐こうとせず、檻を破壊して逃げ出そうとしたので仕方なく処分したという。魔物使いのリディアでさえもクオは従わせる事は出来ないらしく、現状ではクオは他の魔物と違って飼育は不可能だと改めて反応した。
「これで私達が殺処分したクオの数は50体を超えます。ですが、壊裂の方は以前と殆ど変化はありません。やはり、想定していた数よりもクオは繁殖しているようですね」
「けど、少しは規模が縮まったんでしょ?なら、やっぱり壊裂が発生した原因はクオが地球に存在するせいなの?」
「ええ、それは確定しました。全てのクオを討伐すれば壊裂の現象は消失するはずです。それは間違いありませんね」
壊裂の原因はリーリスの推測通り、地球に異世界の生物が存在する事が原因らしく、本来ならば存在するはずがない生物が地球に現れたことが原因で時空に影響が発生し、壊裂が出現したと考えられた。
現時点でクオは50体ほど討伐に成功したが、島内にはまだまだ未発見のクオが存在するはずであり、現在はコトネが率いる日影の部隊に島の偵察を行わせている。クオを発見次第に帝国四天王が出向き、討伐を行っている。だが、第五階層の脅威となり得る魔物はルノが殆ど討伐を果たした事により、これで本格的にルノもクオの討伐に参加できる。
「リーリス、明日からは俺も一緒に行くよ。あ、でも明日が襲撃の日だっけ?」
「ええ、そうです。新聞によると明日現れる魔物は……あれ?」
未来の地球で回収した新聞を読み上げようとしたリーリスは驚きの声を上げ何事かとルノは彼女の新聞を覗くと、そこには予想外の光景が映し出されていた。
「あった。結構大きいな……白竜を倒したお陰かな?」
神殿の奥部には「聖水」と呼ばれる回復薬と同等かそれ以上の回復効果を齎す回復液が湧き出る温泉が存在し、その奥には大量の転移石が沈んでいた。ルノは潜って全ての転移石を回収する事に成功すると、濡れた服を乾かす間に温泉を堪能する。
「ふぃ~……気持ちいいな、お前もそう思うだろう?」
「シャアアッ♪」
湯舟の中にはルノ以外に子供の「白竜」が存在し、この白竜の子供は先ほどルノが倒した個体の兄弟だと思われ、岩山の中に隠れていた所をルノが拾い上げた。こちらの白竜はまだ年齢も幼く、力も弱い。しかも虐待を受けていた形跡があり、傷だらけだった。
白竜は長寿ではあるが同時に成長が遅い生物であり、子供の頃は好奇心旺盛で人懐っこい。しかし、最強の竜種の異名は伊達ではなく、子供とはいえ戦闘能力は侮れない。現にルノが白竜の子供を発見したときには住処に紛れ込んだ甲殻獣を捕食し、さらにルノの姿を見ると敵と判断して襲いかかってきた。
『シャアアッ!!』
『うわ、じゃれつくなよ……よしよし』
「シャアッ!?」
だが、白竜はルノに噛みついてもその牙は皮膚を貫く事は無く、ルノにじゃれついてきたと勘違いされてしまう。必死に白竜はルノに攻撃を仕掛けるが、ルノは白竜の牙を受けても傷一つ付かず、逆に白竜を従わせる。
『ほれほれ、ここがいいのか?』
『シャアッ♪』
白竜のお腹を撫でてやると嬉しそうに鳴き声を上げ、結局は本当に白竜もルノに懐いてしまい、後を付いてくる。白竜からすれば自分の兄を殺した相手ではあるが、そもそも竜種同士は親子愛や兄弟愛という概念は薄く、むしろ自分を虐めてくる兄を倒してくれた存在としてルノに懐いてしまう。
神殿の中でルノは白竜と戯れた後、服が乾くと転移石を回収して白竜と別れを告げる。最初は連れて帰ろうかとしたが、白竜は縄張りを離れる事を嫌がり、ルノは白竜を置いて行く事にした。
「元気でな……ちゃんと食べて大きくなるんだぞ」
「シャウッ!!」
最後に白竜を抱き上げるとルノは転移石を持ち上げて飛び去り、その様子を白竜は見送る。この白竜が数百年後、この地に訪れたある人間と壮絶な死闘を繰り広げる事は今の時点では誰も知らない――
――大量の転移石を確保したルノが研究施設に戻ると、クオの討伐に向かっていたリーリス達も帰還しており、彼女達は疲れた表情でルノを出迎える。
「お帰りなさいルノさん、首尾はどうでした?」
「ばっちりだよ。これでこの階層の竜種は粗方狩りつくしたと思う」
「そうですか、それは良い情報ですね。ですが、こちらの方は今日も進展がありませんでした」
「クオを何体か捕まえる事には成功したけど、やっぱり殺処分になったよ……リディアさんも頑張ってはみたけど、クオはやっぱり従える事は出来ないって」
「あいつら、普通の魔物よりも知能が高いせいで上手く私でも操れないのよ……」
クオの捜索を行っていたリーリス達は本日も数体のクオの捕獲には成功したが、性格が獰猛で人間には決して懐こうとせず、檻を破壊して逃げ出そうとしたので仕方なく処分したという。魔物使いのリディアでさえもクオは従わせる事は出来ないらしく、現状ではクオは他の魔物と違って飼育は不可能だと改めて反応した。
「これで私達が殺処分したクオの数は50体を超えます。ですが、壊裂の方は以前と殆ど変化はありません。やはり、想定していた数よりもクオは繁殖しているようですね」
「けど、少しは規模が縮まったんでしょ?なら、やっぱり壊裂が発生した原因はクオが地球に存在するせいなの?」
「ええ、それは確定しました。全てのクオを討伐すれば壊裂の現象は消失するはずです。それは間違いありませんね」
壊裂の原因はリーリスの推測通り、地球に異世界の生物が存在する事が原因らしく、本来ならば存在するはずがない生物が地球に現れたことが原因で時空に影響が発生し、壊裂が出現したと考えられた。
現時点でクオは50体ほど討伐に成功したが、島内にはまだまだ未発見のクオが存在するはずであり、現在はコトネが率いる日影の部隊に島の偵察を行わせている。クオを発見次第に帝国四天王が出向き、討伐を行っている。だが、第五階層の脅威となり得る魔物はルノが殆ど討伐を果たした事により、これで本格的にルノもクオの討伐に参加できる。
「リーリス、明日からは俺も一緒に行くよ。あ、でも明日が襲撃の日だっけ?」
「ええ、そうです。新聞によると明日現れる魔物は……あれ?」
未来の地球で回収した新聞を読み上げようとしたリーリスは驚きの声を上げ何事かとルノは彼女の新聞を覗くと、そこには予想外の光景が映し出されていた。
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