最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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崩壊地球編

準備は入念に

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「それで、結局その9か月前に現れる魔物の正体とかは分からないの?」
「駄目ですね、新聞はここで途切れてますし、本も残っていません。調べようがない以上は直接見るしかないですね」
「転移装置で調べる事は出来ないの?」
「あの装置の映像は年単位でしか変更出来ないので……」


転移装置を利用して9か月前の地球の映像を移せれば魔物正体も掴めるかと思ったが、生憎と転移装置は年単位でしか過去や未来の映像を表示する事しか出来ないため、現状では確かめようがない。仕方なく探索はここまでにしておいてルノ達は引き返す事にした。また、この世界の資料も念のために持ち帰る。もしも歴史が変わった場合、この世界の物体がどうなるのかも調べる必要があった。


「じゃあ、戻りましょうか。魔物に見つかる前に……」
「そうだね……この状況じゃ、僕たちの家もきっと大変な事になってるんだろうな」
「……あんまり考えたくはないな。早く帰ろう」
「……うん」


家に戻りたいという気持ちもあったが、世界が崩壊した状況では戻ったところで家族が生き残っているとは思えず、そもそもここはルノ達が暮していた地球の数十年後の世界なので家族や家がまだ残っているのかも怪しい。ルノ達は転移装置が発動する時間まで待機する――




――帰還後、リーリスは新聞の内容と書物の情報を照らし合わせ、地球で魔物が出現する日付と種類を徹底的に調べ尽くす。そして火竜の次に東京を襲うのは「ゴブリンの大群」だと判明した。


「この新聞によると次に出現するのはゴブリンの大群のようです。数は恐らくは1000体、この時に現れたゴブリンによって東京の人間は数千人の死傷者が出たようです」
「その時の自衛隊はどうやって対処したの?」
「壊裂の周辺地域を隔離した後、一気に一掃したそうです。前回の火竜の件以降、自衛隊の方も壊裂から再び魔物が現れる事を想定して壊裂の周辺地域に部隊を待機させていたようです」
「日付は丁度10日後か……けど、よくあんな高いところから落ちてゴブリンが生き残ったね」


壊裂が存在するのは東京の上空、高度すると1000メートルは存在する。それほどの高さから魔物の中では最弱の部類に入るゴブリンが生き残れた事にナオは驚くが、リーリスが補足を行う。


「太古の時代のゴブリンは今よりもずっと力が強かったんです。それに科学が発展した事で高層ビルも増えてましたからね。そのビルの上に飛び乗って生き残った個体も多数存在します」
「なるほど……」
「……対策はどうしたらいい?」
「まあ、ここは我らのルノさんに全てを任せる……と言いたい処ですけど、数が多すぎるだけにルノさんだけで完全に仕留めきれるとは限りません。ここはナオさんも力を貸してください」
「力を貸す?どうやって?」
「いいですか?まずナオさんが……」


リーリスは自分の考えた作戦を伝え、確実にゴブリンを仕留めるための方法をルノとナオに伝える。






それから10日後、壊裂が出現する時間帯を迎えるとルノとナオは準備を整え、コトネがデザインを行い、リーリスが制作した特殊な衣服を身に着けた状態で待機していた。


「……正体がばれないように変装するのは聞いていたけどさ、これってちょっと派手過ぎない?」
「まるで戦隊ヒーローになった気分だよ……」
「いいじゃないですか、格好いいですよ」
「……イカす」


ルノとナオは日影の忍者が着込むような黒装束に着替え、更に顔を隠すために特別製の仮面を身に着ける。今度からはこの衣装で地球へ乗り込み、魔物を倒すために行動する事が決まる。

衣装に関してはともかく、事前にルノとナオは作戦の段取りを改めて見つめなおし、リーリスの考えた作戦が上手く行けば一人も被害者を出さずに倒せるのは間違いない。ルノとナオは自分の腕輪に視線を向け、壊裂が出現する5分前に転移するように設定を行う。


「よし、じゃあ行ってくるよ」
「気を付けてくださいね。相手はゴブリンとはいえ、油断しないでください」
「……何かあったら私たちも向かう」
「大丈夫、それじゃあ30分後にまた会おう」


リーリスが装置を発動させると、二人の身体は光に包まれ、再び地球へと転移した――





――リーリスの転移装置は時間の操作だけではなく、転移先の場所の指定も行える。そこでルノ達は最初に転移する場所を東京の遥か上空へと指定を行い、二人は空中へ転移する。空を飛ぶ事が出来るルノはナオの身体を掴み、そのまま上空へと飛翔する。


「うわわっ!?」
「ナオ君、これぐらいの高さがあれば平気?」
「た、多分……うん、問題ないよ」


成層圏のぎりぎりの所まで氷塊の魔法で作り出した乗り物で移動を行うと、ナオは準備を整える。そして間もなくゴブリンの大群が出現する時間帯まで迫り、ルノとナオは氷飛行機を下降させて地上へと向かう。
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