最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

崩壊地球編

遂に地球へ

「――うわっ！？」


ルノの視界の風景が戻ると、自分が東京の景色が視界に広がる。どうやら何処かの公園の上に転移されたらしく、ルノは間違いなく自分が元の世界へ戻って来た事を確認すると、感動を覚えた。


「やった、本当に転移したんだ……って、そんな事を言っている場合じゃない！！」
『シャアアアッ！！』


火竜らしき生物がヘリコプターに向けて接近し、首を伸ばして噛みつこうとしている光景を見たルノは即座に助け出すため、魔法の準備を行う。幸いな事にこの世界に戻っても魔法の力は扱えるらしく、ルノは飛翔術を発動させて火竜の元へ向かおうとした時、足元に何かが当たる。


「ん？これは……お面かな？」


どうやら公園で遊んでいた子供の忘れ物らしく、恐らくはこの時代の戦隊ヒーローのグッズと思われるお面が落ちていた。ルノはお面を拾い上げると、一応は正体が知られないようにする必要があるか考え、自分の顔に張り付ける。その時、火竜の元に自衛隊のヘリコプターが接近して発砲を行い、火竜の追跡するテレビ局のヘリコプターから注意を逸らす。


『シャアッ……！？』


銃弾を受けた火竜は標的をテレビ局のヘリコプターから自衛隊に変更し、頑丈なら鱗で弾丸を弾きながら自衛隊のヘリコプターへ向かう。どうやらこの世界の技術の武器では火竜の肉体に傷をつける事も難しいらしく、火竜は銃撃をものともせずに接近する。


「不味いっ！！」


ルノは火竜がヘリコプターに接近する前に止める必要があると判断し、咄嗟に螺旋氷弾の魔法を放とうとしたが、ここが市街地である事を思い出す。もしも空中で火竜を仕留めたとしても市街地に火竜が墜落したら被害は免れず、場合によっては大勢の死傷者が埋まれてしまう。

仕方なく、ルノは火竜を誰の被害も出ない場所へ誘導させるため、飛翔術を発動して接近を行う。地上の人々は唐突に地上から出現したルノの姿を見て驚愕するが、お面のお陰で顔はバレずに済み、ルノは火竜の尻尾を掴んで引き留める。


「止まれっ！！」
『ギャウッ！？』


火竜は尻尾を掴まれると自衛隊のヘリコプターから引き剥がされ、そのままルノは尻尾を掴んだ状態で火竜の巨体を振り回し、ハンマー投げの選手の要領で勢いを付けて空中に浮揚した状態で投げ飛ばす。


「でりゃああああっ！！」
『シャアアアアッ！？』


火竜の巨体が放り出され、そのまま自分が出現した「壊裂」の元にまで吹き飛ばされ、亀裂に飲み込まれる寸前にどうにか体勢を整えて翼を広げて勢いを殺す。だが、そんな火竜に対してレノは飛翔術で接近すると、そのまま亀裂に目掛けて突っ込む。


「元の世界に、戻れぇええっ！！」
『アガァッ！？』


ルノは火竜に腹部に強烈な衝撃を与えると、強制的に火竜を壊裂の中へ押し込もうとした。だが、予想に反して上空の亀裂の中に火竜を押し込もうとした瞬間、何かに弾かれるようにルノは押し返されてしまう。


「うわっ！？」
『ガアッ！？』


火竜と共にルノは地上へ墜落しかけるが、寸前で火竜の背中にしがみつき、どうにか火竜を地上へ落下させる前に空中で持ち上げる。火竜は必死に暴れて振り解こうとするが、ルノは決して話さず、そのまま火竜をどうにか東京の上空から離すための手段を考える。

時間は残り２、３分程度しか残っておらず、火竜を倒す事は容易いとはいえ、この巨体を地上へ着地させる場所を見つけなければ大惨事を引き起こす。そこでルノは東京湾の事を思い出し、海上ならば火竜を落としても問題ないと考え、火竜の肉体を掴んだまま強制的に飛行する。


「こっちだ！！」
『シャアアアッ！？』


火竜を掴んだ状態でルノは東京湾の方向に向けて加速し、その凄まじい速度に火竜は悲鳴をあげ、ルノ達の行動を観測していたヘリコプターさえも振り切る。やがて時間切れの寸前でルノは東京湾へとたどり着くと、海上に船が存在しない場所まで移動を行い、火竜に止めを刺すために最後の魔法を放つ。


「螺旋氷弾！！」
『シャギャアアアアッ！？』


胸元に目掛けてルノは至近距離から特大の螺旋状の氷弾を放ち、火竜の胸元を抉りこむ。確実に絶命した火竜の死骸をそのままルノはゆっくりと海上に降ろすと、死骸は浮かぶこともなく沈み始め、額の角の形をした経験石だけが浮き上がった。


「ふうっ……どうにかなったな」


海から浮き上がって来た経験石の上に降り立ち、ルノはこれを持ち帰る事は出来ないのかと思った時、上空から複数のヘリコプターが近づいてくる事に気付く。どうやら別の自衛隊のヘリコプターらしく、銃器を構えた状態でルノに接近する。


『動くな！！君は完全に包囲されている、そのまま動かずに両手を上げて待機しろ！！』
「え、いや……あの……」
『我々には発泡許可が下りている！！下手に動けば撃つぞ！！』


ヘリコプターから自衛隊の隊員が銃器を構えた状態でルノを取り囲み、慌ててルノは両手をあげようとした時、腕輪が光り輝く。