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番外編
道場破り
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※時系列は魔王を倒した後の話です。
――帝国の英雄、初級魔術師のルノの名前は世界中に知れ渡っていた。理由としては世界各地でルノの活躍によって多くの民衆が救われ、更に獣人国や巨人国の内乱を食い止めた事により、民衆の間ではルノは伝説の勇者と同等の力を持つ魔術師だと噂されていた。
しかし、その噂を聞きつけて気に入らないのは世界各地の魔術師だった。彼等はルノが単独で竜種を討伐し、あの悪名高き魔王軍を壊滅させたという話を信じられなかった。災害の象徴と呼ばれる竜種を一人で倒せる人間などいるはずがなく、数多くの魔術師がルノの実力を疑う。
魔術師の中には実際にルノの実力を確かめるためにわざわざバルトロス王国の王都まで乗り込み、ルノに会うために訪れる魔術師も居た。連日のようにルノの屋敷の前には世界各地の優秀な魔術師が訪れ、自分達と腕を競うように申し込む。
「ここが帝国の英雄の屋敷か……ふん、これ見よがしに随分と立派な建物だな!!」
「噂によると屋敷を用意したのはバルトロス王国らしいがな」
「はっ!!どうせただの詐欺師だろ?竜種を倒したなんてホラを吹きやがって……おら、出てこい!!」
屋敷の出入口の前には大勢の魔術師が集まり、ルノに会うためにわざわざ他国から訪れた者も少なくはない。彼等全員が自分の魔法の腕に自信があった。そこでルノと対面して彼の実力を計り、もしも自分の方が魔法の腕が優れていた場合はバルトロス王国へ仕官して好待遇で迎え入れさせようと考えるに人間も少なからず存在した。
「おら、中に居る事は分かってるんだ!!さっさと出てこい!!」
「どうした、俺たちが怖いのか!?それでも帝国の英雄か!!」
「正々堂々と勝負しろ!!」
屋敷の門の前で魔術師達は騒ぎ出し、屋敷の主であるルノが出てくるのを待つ。やがて屋敷の中から扉を開かれ、遂にルノが現れたのかと魔術師達は視線を向けると、出てきたのは花柄模様のエプロンと三角巾を身に着けたロプスが現れた。
「キュロロロッ?」
「さ、サイクロプス!?な、なんでこんな化物がここに!?」
「おお、落ち着け!!まだ子供のようだ、恐れることはない!!」
「というか、何でエプロンを付けてるんだ……?」
現れたのが魔人族の中でも怒らせると手が付けられらないサイクロプスだと気づいた魔術師達は焦り声をあげ、そんな彼等の姿を見たロプスは首を傾げると、続けて庭の方から黒狼種の子供達の群れとルウが現れる。
「ウォンッ?」
『クゥンッ?』
「こ、黒狼種だと!?嘘だろ、どうして黒狼種がここに居るんだ!?」
「まさか飼っているのか!?これだけの黒狼種を!?」
「し、信じられねえ……というか、こいつら人間には懐かないんじゃないのかよ?」
サイクロプスだけではなく、黒狼種も現れた事に魔術師達は怖気づき、極めつけに屋根から見張り役を行っていたミノタウロスが両手に棍棒を抱えた状態で降り立つ。
「ブモォオオオッ!!」
「ぎゃああああっ!!ミノタウロスまでぇっ!?」
「嘘だろ、なんでこんな化物がここに居るんだよ!?」
「おい、まだ上から降りてくるぞ!?」
ミノに続いて屋根の上から降り立つ物体が存在し、今度は何が現れるのかと魔術師達は身構えると、ミノの頭の上に全身をぷるぷるさせながらスライムが着地する。
「ぷるるんっ!!」
『何だ、スライムか……可愛いなぁっ』
「ぷるんっ!?」
威嚇のつもりで現れたにも関わらず、スラミンは自分を見て和んでしまった魔術師達に怒ったように身体を弾ませるが、その姿も可愛らしいので逆に魔術師達は冷静さを取り戻す。
「おい、やべえよ……この屋敷、危険種ばかりいやがる。こんな奴等を飼育してるなんて聞いてねえよ……」
「も、もしかして……帝国の英雄があらゆる魔物を従えさせるという噂は本当じゃないのか?あくまでも噂だが、牙竜も飼いならしているとか聞いた事があるぞ」
「嘘だろ……けど、これだけの魔物を従えさせる当たり、相当な実力者なのは間違いない。というか、魔物使いでもこんな大勢の魔物を従えさせられないだろ……」
次々と現れる魔物達に魔術師達は怖気づき、まだ姿を見せぬルノに対して恐怖を抱き始めたころ、唐突に彼等は頭上を照らしていた太陽に阻まれてしまう。
「あれ、急に暗くなった……?」
「何だ?まだ日が暮れる時間帯じゃ……」
「お、おい!!上を見ろ!!」
唐突に自分達の足元が影に覆われた事に気付いた魔術師達は頭上を見上げると、そこには巨大なマンモスのような生物を抱えたルノの姿が存在し、飛翔術で大型の魔獣を仕留めたルノは自分の屋敷に戻ると背負っていた魔物を下ろす。
「ふうっ……流石にちょっと重かったな。けど、獣人国まで遠出したかいがあったな。これだけあれば皆の食事代も浮くし、余った素材はドルトンさんの所に持っていこう」
「キュロロッ♪」
「ブモォッ」
「ウォンッ!!」
『クゥ~ンッ』
「ぷるぷるっ♪」
大型の魔獣を仕留めて戻って来たルノの元に魔獣達が駆け寄り、主人を迎え入れるようにじゃれつく。その光景を見て居た魔術師達は全身から冷や汗を流し、彼等の存在に気付いたルノは不思議そうに振り返る。
「あれ……すいません、もしかしてうちの用事があるんですか?」
『……いえ、只の通りすがりです』
ルノの言葉に魔術師達は何事もなかったようにその場を立ち去り、そんな彼等の後姿をルノは不思議そうに見送った――
※ちなみに仕留めた魔獣は「マモウ」と呼ばれる危険種です。
――帝国の英雄、初級魔術師のルノの名前は世界中に知れ渡っていた。理由としては世界各地でルノの活躍によって多くの民衆が救われ、更に獣人国や巨人国の内乱を食い止めた事により、民衆の間ではルノは伝説の勇者と同等の力を持つ魔術師だと噂されていた。
しかし、その噂を聞きつけて気に入らないのは世界各地の魔術師だった。彼等はルノが単独で竜種を討伐し、あの悪名高き魔王軍を壊滅させたという話を信じられなかった。災害の象徴と呼ばれる竜種を一人で倒せる人間などいるはずがなく、数多くの魔術師がルノの実力を疑う。
魔術師の中には実際にルノの実力を確かめるためにわざわざバルトロス王国の王都まで乗り込み、ルノに会うために訪れる魔術師も居た。連日のようにルノの屋敷の前には世界各地の優秀な魔術師が訪れ、自分達と腕を競うように申し込む。
「ここが帝国の英雄の屋敷か……ふん、これ見よがしに随分と立派な建物だな!!」
「噂によると屋敷を用意したのはバルトロス王国らしいがな」
「はっ!!どうせただの詐欺師だろ?竜種を倒したなんてホラを吹きやがって……おら、出てこい!!」
屋敷の出入口の前には大勢の魔術師が集まり、ルノに会うためにわざわざ他国から訪れた者も少なくはない。彼等全員が自分の魔法の腕に自信があった。そこでルノと対面して彼の実力を計り、もしも自分の方が魔法の腕が優れていた場合はバルトロス王国へ仕官して好待遇で迎え入れさせようと考えるに人間も少なからず存在した。
「おら、中に居る事は分かってるんだ!!さっさと出てこい!!」
「どうした、俺たちが怖いのか!?それでも帝国の英雄か!!」
「正々堂々と勝負しろ!!」
屋敷の門の前で魔術師達は騒ぎ出し、屋敷の主であるルノが出てくるのを待つ。やがて屋敷の中から扉を開かれ、遂にルノが現れたのかと魔術師達は視線を向けると、出てきたのは花柄模様のエプロンと三角巾を身に着けたロプスが現れた。
「キュロロロッ?」
「さ、サイクロプス!?な、なんでこんな化物がここに!?」
「おお、落ち着け!!まだ子供のようだ、恐れることはない!!」
「というか、何でエプロンを付けてるんだ……?」
現れたのが魔人族の中でも怒らせると手が付けられらないサイクロプスだと気づいた魔術師達は焦り声をあげ、そんな彼等の姿を見たロプスは首を傾げると、続けて庭の方から黒狼種の子供達の群れとルウが現れる。
「ウォンッ?」
『クゥンッ?』
「こ、黒狼種だと!?嘘だろ、どうして黒狼種がここに居るんだ!?」
「まさか飼っているのか!?これだけの黒狼種を!?」
「し、信じられねえ……というか、こいつら人間には懐かないんじゃないのかよ?」
サイクロプスだけではなく、黒狼種も現れた事に魔術師達は怖気づき、極めつけに屋根から見張り役を行っていたミノタウロスが両手に棍棒を抱えた状態で降り立つ。
「ブモォオオオッ!!」
「ぎゃああああっ!!ミノタウロスまでぇっ!?」
「嘘だろ、なんでこんな化物がここに居るんだよ!?」
「おい、まだ上から降りてくるぞ!?」
ミノに続いて屋根の上から降り立つ物体が存在し、今度は何が現れるのかと魔術師達は身構えると、ミノの頭の上に全身をぷるぷるさせながらスライムが着地する。
「ぷるるんっ!!」
『何だ、スライムか……可愛いなぁっ』
「ぷるんっ!?」
威嚇のつもりで現れたにも関わらず、スラミンは自分を見て和んでしまった魔術師達に怒ったように身体を弾ませるが、その姿も可愛らしいので逆に魔術師達は冷静さを取り戻す。
「おい、やべえよ……この屋敷、危険種ばかりいやがる。こんな奴等を飼育してるなんて聞いてねえよ……」
「も、もしかして……帝国の英雄があらゆる魔物を従えさせるという噂は本当じゃないのか?あくまでも噂だが、牙竜も飼いならしているとか聞いた事があるぞ」
「嘘だろ……けど、これだけの魔物を従えさせる当たり、相当な実力者なのは間違いない。というか、魔物使いでもこんな大勢の魔物を従えさせられないだろ……」
次々と現れる魔物達に魔術師達は怖気づき、まだ姿を見せぬルノに対して恐怖を抱き始めたころ、唐突に彼等は頭上を照らしていた太陽に阻まれてしまう。
「あれ、急に暗くなった……?」
「何だ?まだ日が暮れる時間帯じゃ……」
「お、おい!!上を見ろ!!」
唐突に自分達の足元が影に覆われた事に気付いた魔術師達は頭上を見上げると、そこには巨大なマンモスのような生物を抱えたルノの姿が存在し、飛翔術で大型の魔獣を仕留めたルノは自分の屋敷に戻ると背負っていた魔物を下ろす。
「ふうっ……流石にちょっと重かったな。けど、獣人国まで遠出したかいがあったな。これだけあれば皆の食事代も浮くし、余った素材はドルトンさんの所に持っていこう」
「キュロロッ♪」
「ブモォッ」
「ウォンッ!!」
『クゥ~ンッ』
「ぷるぷるっ♪」
大型の魔獣を仕留めて戻って来たルノの元に魔獣達が駆け寄り、主人を迎え入れるようにじゃれつく。その光景を見て居た魔術師達は全身から冷や汗を流し、彼等の存在に気付いたルノは不思議そうに振り返る。
「あれ……すいません、もしかしてうちの用事があるんですか?」
『……いえ、只の通りすがりです』
ルノの言葉に魔術師達は何事もなかったようにその場を立ち去り、そんな彼等の後姿をルノは不思議そうに見送った――
※ちなみに仕留めた魔獣は「マモウ」と呼ばれる危険種です。
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