上 下
617 / 657
外伝〈転移石を求めて〉

ゲートキー

しおりを挟む
「困りましたね、ここまで探しても見つからない辺り、もしかしたらゲートキーとやらは紛失しているのかも知れません」
「ええっ……そんな」
「……今までの苦労が水の泡?」
「仕方ありませんね、どんな物なのかも把握出来ない状況では手分けして捜索するのも難しいですし……」
「ん?ちょっと待って、そういえばこれは試してないんじゃないの?」


リーリスは諦めかけようとした時、ルノは最初に転移装置が存在する部屋を見つけた時に運び出した大きな金庫を指差す。


「そういえば最初にあの部屋に入った時、この金庫が転移装置を下敷きにして隠してたよね。もしかしてこれがゲートキーじゃないの?」
「え?でも、中身は何も入ってないよ?千里眼で確かめたから……」
「いや、待ってください。もしかしてこれその物がゲートキーなのでは?私達が訪れた時には既にゲートキーが設置された状態で放置されていたのかもしれません!!」
「ええっ!?」


ルノの何気ない言葉にリーリスは衝撃を受けた表情を浮かべ、巨大金庫の元へ向かう。この金庫が仮にゲートキーだったとした場合、転移装置を下敷きにして放置されていたのではなく、実は転移装置に設置されていた状態ではないのかを確かめるために金庫を更に入念に調べた。


「ルノさん、デブリ王子、この金庫を持ち上げてください!!底の方に何か隠されているかも!!」
「分かった!!」
「ふんぬらばぁっ!!」
「うわ、凄い!?」


二人は力尽くで金庫を持ち上げてひっくり返すと、予想どおりというべきか金庫の底の中央部には特機が存在し、丁度転移装置の凹みの部分にはめ込むような形をしていた。どうやら転移装置に入っていた魔水晶が砕けていた理由は魔力を失われたのが理由ではなく、装置と金庫の凹凸に押し潰されて砕けたらしい。

まさか金庫その物がゲートキーだとは思いつかず、試しにルノ達は再び部屋の中へ金庫を運び出す。事前にリーリスは入手した転移石を転移装置に設置した後に金庫を再び元の位置に戻した瞬間、今まではどんな事をしても開かなかった巨大金庫の扉が開かれる音がした。


「あ、今鍵が開くような音がしたよ!?」
「これは盲点でしたね!!恐らく、この金庫その物が転移装置の要だったんです!!」
「じゃあ、扉を開けて見るよ?」


ルノは慎重に金庫の扉を開こうとすると、扉の部分はあっさりと開かれ、ルノ達は予想外の光景を目にした。それは金庫の内部は水晶のような物で張り巡らされ、しばらくするとテレビの画面のように水晶に映像が写しだされる。


「こ、これは……」
「間違いありません!!地球の景色を映し出していますよ!!」
「何!?こ、これが異界の風景なのか!?」
「……驚いた」


水晶に映し出された映像を見てルノ達は「地球」の都市部の光景だと確信し、全員が興奮を収まらないルノ、リーリス、ナオにとっては久しぶりの故郷の風景であり、デブリとコトネも初めて見る異世界(二人の基準では)の風景に驚愕する。


「やりましたよ!!遂に地球へ帰還する手掛かりを入手しましたね!!」
「でもリーリスさん、この状態からどうやって元へ戻るの?今の所は映像が流れているようにしか見えないけど……」
「あ、待って!!扉の開閉口の部分に何か書いてあるよ!!」


金庫の扉の裏側に説明文らしき文章が記されている事に気付いたルノが声を上げると、どうやら転移装置の使用法の説明文である事が判明した。


『転移装置の使い方をここに記します。転移装置は二つの機能が存在し、まずは時代と場所を設定し、当時の世界の映像を映し出す機能。他に転移魔法陣を発動させ、地球へ帰還する機能の二つのみ』
「やった!!地球への帰還方法も記されているよ!?」
「落ち着いて下さい!!まずは文章を全部確認しましょう!!」


帰還という文字を見つけてナオは興奮するが、リーリスが落ち着かせて次の文章を読む。最も彼女も興奮は隠せないのか鼻息を鳴らしながら扉の裏面の文章を読み解く。


『地球へ帰還する方法は映像に触れた状態で移動したい場所を思い描くだけで転移します。但し、時代が異なる光景を思い描いた場合は転移は出来ません。また、こちらの世界へ帰還する方法は転移した場所へ戻り、転移結晶石を掲げれば転移魔法陣が再び発生します。その魔法陣の上に移動すれば自動的に転移が発動し、こちらの世界へ帰還します』
「おおっ!!という事は転移石があれば何度でもこの世界に行き来出来るというわけですか!!」
「……良かった、それならお別れしなくていい」
「本当に良かった……あ、でもリンの事は両親にどう説明しよう。外国人だと誤魔化しきれるかな……」
「ん?誤魔化すとはどういう意味だナオ?」
「あっちの世界では森人族はいないんだよ。だからリンさんを紹介したら、きっとナオ君の両親は卒倒するだろうね……」
「うん……」


元の世界へ戻れると判明した途端、ナオはこちらの世界で出来た恋人のリンの事をどのように両親に紹介するべきか悩む。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。