616 / 657
外伝〈転移石を求めて〉
帰還魔法陣
しおりを挟む
「なるほど……恐らく、この水晶の欠片の正体は転移石です。この転移石を使用した際に魔力を失って只の水晶の欠片になってしまったんですね」
「え?でも、前に帝国の魔法陣に転移石を落としたときは消えてなくなったとか言ってなかった?」
「魔水晶が魔力を失うと必ずしも水晶化してしまうわけじゃないんです。急激に魔力を消耗すると破片すらも残らない事もありますから」
「という事は、この転移魔法陣に落ちている水晶は元々は転移石だったの?」
転移魔法陣の中央部の凹みを覗き込み、残念ながら水晶の破片しか残っておらず、今の状態では使用出来る様子はなかった。だが、現在のルノ達には手元に転移石が一つだけ存在し、これを使用すれば転移魔法陣を発動出来る可能性はあった。
「試しにこの転移石で反応するか調べてみましょう」
「ちょっと、大丈夫なの?勝手に魔法陣が起動したりしたら……」
「ここまで来たら多少の危険は覚悟でやってみましょう……念のために皆さんは下がってください。私が試しますから」
リーリスの言葉に従い、ルノ達は台座から離れると彼女は慎重に転移魔法陣の中央部の凹みに転移石を下ろす。しばらくの間は何も起きなかったが、やがて放置された転移石が光り輝き、魔法陣全体に光が灯る。
「反応を示しました!!やっぱり、これが帰還のための転移魔法陣で間違いありません!!」
「……けど、光るだけで特になにも変化はない」
「まだ何か起動するために必要な物があるのかな……?」
魔法陣は光り輝いているので台座自体が壊れている様子はなく、どうして魔法陣が発動しないのかルノ達は疑問を抱くと、台座の端の方に文字が刻まれている事にデブリが気付く。
「師匠!!1階で発見した柱の文章と似たような文字がここに記されてますぞ!!」
「え?どれどれ?」
「……どうやらこの台座の使い方が記されてね」
ルノとナオが覗き込むと、やはりというべきか文章は日本語が使用されていた。内容は転移魔法陣の台座の使用方法が事細かに記され、恐らくこの台座を作り出した研究者が残した文章だと思われる。
『万が一の場合、私以外の地球人がこの「帰還魔法陣」を発見した際のための使用方法を残しておきます。台座の魔法陣を発動させるためには大迷宮内で得られる転移結晶石を用意する事、そして転移の行先と時代を設定するためにはゲートキーを用意する事。この二つが存在しない限り、転移魔法陣は発動しません』
「ゲートキー……?」
「どうやら転移石以外に何か道具がないと発動しないみたいだけど……でも、ここまでの道中で他に気になる物なんて見つからなかったよね?」
「さっきの部屋にあるんじゃないのか?」
「探しましょう!!」
説明文の内容を信じるのならば研究者の「帰還魔法陣」と呼ばれる装置の発動には転移石以外の道具が必要らしく、ルノ達は研究室を探し回すが、説明文に記されている「ゲートキー」なる物が見当もつかない。そもそも名前だけではどのような道具なのか想像するのも難しい。
「う~ん……それっぽいのは見当たりませんね。キーというぐらいだから鍵みたいな物なんでしょうか?」
「カードキーとかじゃない?」
「でも、台座にはカードキーを差し込むような装置はなかったよ?」
「……ルノ達が何を話しているのか分からない」
「その、かーどきーとはなんですか?」
地球の知識を持つルノ達は「ゲートキー」と呼ばれる道具が「カードキー」のような物なのかと想像するが、こちらの世界の住民であるコトネとデブリは理解出来ず、地球の知識が伝わっている日の国の住民であるコトネも流石にカードキーの存在までは知らされていないらしい(そもそも日の国の創設者が過去の地球の人間なので知るはずもないのだが)。
研究室を探し回って見た結果、残念ながらゲートキーらしき道具は見当たらず、ルノ達はへたり込んでしまう。あと少しで地球へ引き返す事が出来るかもしれないのに肝心の起動方法が分からず、全員がため息を吐き出す。
「片っ端から部屋中にある道具を台座に設置しましたが、何も反応しませんね……この部屋にはないんでしょうか?」
「そもそも、その「かーどきー」というのがどういう物か分からないと探すのも面倒だぞ……」
「う~ん……千里眼を使って他の部屋とか調べてみたけど、何処も殺風景な部屋ばかりだね。ここのような研究施設っぽい場所は見当たらないよ」
「他の隠し部屋の道具も試したけど、反応なしか……」
「……疲れた」
帰還方法は判明し、転移石も用意したにも関わらず、このままではルノ達の体力の方が付きそうだった。一度引き返すという手もあるが、もしもルノ達が入手した転移石が「粗悪品」だった場合は大迷宮から脱出した際に消失してしまう。そうなると再び大迷宮内で転移石を発見しなければならず、二度手間になってしまう。
「え?でも、前に帝国の魔法陣に転移石を落としたときは消えてなくなったとか言ってなかった?」
「魔水晶が魔力を失うと必ずしも水晶化してしまうわけじゃないんです。急激に魔力を消耗すると破片すらも残らない事もありますから」
「という事は、この転移魔法陣に落ちている水晶は元々は転移石だったの?」
転移魔法陣の中央部の凹みを覗き込み、残念ながら水晶の破片しか残っておらず、今の状態では使用出来る様子はなかった。だが、現在のルノ達には手元に転移石が一つだけ存在し、これを使用すれば転移魔法陣を発動出来る可能性はあった。
「試しにこの転移石で反応するか調べてみましょう」
「ちょっと、大丈夫なの?勝手に魔法陣が起動したりしたら……」
「ここまで来たら多少の危険は覚悟でやってみましょう……念のために皆さんは下がってください。私が試しますから」
リーリスの言葉に従い、ルノ達は台座から離れると彼女は慎重に転移魔法陣の中央部の凹みに転移石を下ろす。しばらくの間は何も起きなかったが、やがて放置された転移石が光り輝き、魔法陣全体に光が灯る。
「反応を示しました!!やっぱり、これが帰還のための転移魔法陣で間違いありません!!」
「……けど、光るだけで特になにも変化はない」
「まだ何か起動するために必要な物があるのかな……?」
魔法陣は光り輝いているので台座自体が壊れている様子はなく、どうして魔法陣が発動しないのかルノ達は疑問を抱くと、台座の端の方に文字が刻まれている事にデブリが気付く。
「師匠!!1階で発見した柱の文章と似たような文字がここに記されてますぞ!!」
「え?どれどれ?」
「……どうやらこの台座の使い方が記されてね」
ルノとナオが覗き込むと、やはりというべきか文章は日本語が使用されていた。内容は転移魔法陣の台座の使用方法が事細かに記され、恐らくこの台座を作り出した研究者が残した文章だと思われる。
『万が一の場合、私以外の地球人がこの「帰還魔法陣」を発見した際のための使用方法を残しておきます。台座の魔法陣を発動させるためには大迷宮内で得られる転移結晶石を用意する事、そして転移の行先と時代を設定するためにはゲートキーを用意する事。この二つが存在しない限り、転移魔法陣は発動しません』
「ゲートキー……?」
「どうやら転移石以外に何か道具がないと発動しないみたいだけど……でも、ここまでの道中で他に気になる物なんて見つからなかったよね?」
「さっきの部屋にあるんじゃないのか?」
「探しましょう!!」
説明文の内容を信じるのならば研究者の「帰還魔法陣」と呼ばれる装置の発動には転移石以外の道具が必要らしく、ルノ達は研究室を探し回すが、説明文に記されている「ゲートキー」なる物が見当もつかない。そもそも名前だけではどのような道具なのか想像するのも難しい。
「う~ん……それっぽいのは見当たりませんね。キーというぐらいだから鍵みたいな物なんでしょうか?」
「カードキーとかじゃない?」
「でも、台座にはカードキーを差し込むような装置はなかったよ?」
「……ルノ達が何を話しているのか分からない」
「その、かーどきーとはなんですか?」
地球の知識を持つルノ達は「ゲートキー」と呼ばれる道具が「カードキー」のような物なのかと想像するが、こちらの世界の住民であるコトネとデブリは理解出来ず、地球の知識が伝わっている日の国の住民であるコトネも流石にカードキーの存在までは知らされていないらしい(そもそも日の国の創設者が過去の地球の人間なので知るはずもないのだが)。
研究室を探し回って見た結果、残念ながらゲートキーらしき道具は見当たらず、ルノ達はへたり込んでしまう。あと少しで地球へ引き返す事が出来るかもしれないのに肝心の起動方法が分からず、全員がため息を吐き出す。
「片っ端から部屋中にある道具を台座に設置しましたが、何も反応しませんね……この部屋にはないんでしょうか?」
「そもそも、その「かーどきー」というのがどういう物か分からないと探すのも面倒だぞ……」
「う~ん……千里眼を使って他の部屋とか調べてみたけど、何処も殺風景な部屋ばかりだね。ここのような研究施設っぽい場所は見当たらないよ」
「他の隠し部屋の道具も試したけど、反応なしか……」
「……疲れた」
帰還方法は判明し、転移石も用意したにも関わらず、このままではルノ達の体力の方が付きそうだった。一度引き返すという手もあるが、もしもルノ達が入手した転移石が「粗悪品」だった場合は大迷宮から脱出した際に消失してしまう。そうなると再び大迷宮内で転移石を発見しなければならず、二度手間になってしまう。
0
お気に入りに追加
11,315
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
弾撃の魔術師 ~魔法を弾く魔法使い~
カタナヅキ
ファンタジー
主人公の「レイト」は一流の魔術師を目指して魔法学園に入ったが、同級生の女子生徒を庇った際に事件を起こしたせいで退学を言い渡された。彼が在学中に覚えたの防御魔法だけであり、家族の元にも戻らずに冒険者として自立するために冒険者養成学校に入学した。そこでも勉強が苦手な女の子を助けたり、影を操る少年と友達になったり、試験にて魔物に襲われている女の子を救う。
冒険者となった彼の元に過去に助けられた者たちが集まり、優れた能力を持つ仲間が傍にいるせいでレイトは他の人間から強い仲間に寄生する冒険者と馬鹿にされる。しかし、他の人間にどんな風に言われようとレイトは構わず、防御魔法を極めて子供の頃から憧れていた「魔術師」になる事を目指す――
※久々の新作です!!お楽しみください!!
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。