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外伝〈転移石を求めて〉

帰還魔法陣

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「なるほど……恐らく、この水晶の欠片の正体は転移石です。この転移石を使用した際に魔力を失って只の水晶の欠片になってしまったんですね」
「え?でも、前に帝国の魔法陣に転移石を落としたときは消えてなくなったとか言ってなかった?」
「魔水晶が魔力を失うと必ずしも水晶化してしまうわけじゃないんです。急激に魔力を消耗すると破片すらも残らない事もありますから」
「という事は、この転移魔法陣に落ちている水晶は元々は転移石だったの?」


転移魔法陣の中央部の凹みを覗き込み、残念ながら水晶の破片しか残っておらず、今の状態では使用出来る様子はなかった。だが、現在のルノ達には手元に転移石が一つだけ存在し、これを使用すれば転移魔法陣を発動出来る可能性はあった。


「試しにこの転移石で反応するか調べてみましょう」
「ちょっと、大丈夫なの?勝手に魔法陣が起動したりしたら……」
「ここまで来たら多少の危険は覚悟でやってみましょう……念のために皆さんは下がってください。私が試しますから」


リーリスの言葉に従い、ルノ達は台座から離れると彼女は慎重に転移魔法陣の中央部の凹みに転移石を下ろす。しばらくの間は何も起きなかったが、やがて放置された転移石が光り輝き、魔法陣全体に光が灯る。


「反応を示しました!!やっぱり、これが帰還のための転移魔法陣で間違いありません!!」
「……けど、光るだけで特になにも変化はない」
「まだ何か起動するために必要な物があるのかな……?」


魔法陣は光り輝いているので台座自体が壊れている様子はなく、どうして魔法陣が発動しないのかルノ達は疑問を抱くと、台座の端の方に文字が刻まれている事にデブリが気付く。


「師匠!!1階で発見した柱の文章と似たような文字がここに記されてますぞ!!」
「え?どれどれ?」
「……どうやらこの台座の使い方が記されてね」


ルノとナオが覗き込むと、やはりというべきか文章は日本語が使用されていた。内容は転移魔法陣の台座の使用方法が事細かに記され、恐らくこの台座を作り出した研究者が残した文章だと思われる。



『万が一の場合、私以外の地球人がこの「帰還魔法陣」を発見した際のための使用方法を残しておきます。台座の魔法陣を発動させるためには大迷宮内で得られる転移結晶石を用意する事、そして転移の行先と時代を設定するためにはゲートキーを用意する事。この二つが存在しない限り、転移魔法陣は発動しません』
「ゲートキー……?」
「どうやら転移石以外に何か道具がないと発動しないみたいだけど……でも、ここまでの道中で他に気になる物なんて見つからなかったよね?」
「さっきの部屋にあるんじゃないのか?」
「探しましょう!!」


説明文の内容を信じるのならば研究者の「帰還魔法陣」と呼ばれる装置の発動には転移石以外の道具が必要らしく、ルノ達は研究室を探し回すが、説明文に記されている「ゲートキー」なる物が見当もつかない。そもそも名前だけではどのような道具なのか想像するのも難しい。


「う~ん……それっぽいのは見当たりませんね。キーというぐらいだから鍵みたいな物なんでしょうか?」
「カードキーとかじゃない?」
「でも、台座にはカードキーを差し込むような装置はなかったよ?」
「……ルノ達が何を話しているのか分からない」
「その、かーどきーとはなんですか?」


地球の知識を持つルノ達は「ゲートキー」と呼ばれる道具が「カードキー」のような物なのかと想像するが、こちらの世界の住民であるコトネとデブリは理解出来ず、地球の知識が伝わっている日の国の住民であるコトネも流石にカードキーの存在までは知らされていないらしい(そもそも日の国の創設者が過去の地球の人間なので知るはずもないのだが)。

研究室を探し回って見た結果、残念ながらゲートキーらしき道具は見当たらず、ルノ達はへたり込んでしまう。あと少しで地球へ引き返す事が出来るかもしれないのに肝心の起動方法が分からず、全員がため息を吐き出す。


「片っ端から部屋中にある道具を台座に設置しましたが、何も反応しませんね……この部屋にはないんでしょうか?」
「そもそも、その「かーどきー」というのがどういう物か分からないと探すのも面倒だぞ……」
「う~ん……千里眼を使って他の部屋とか調べてみたけど、何処も殺風景な部屋ばかりだね。ここのような研究施設っぽい場所は見当たらないよ」
「他の隠し部屋の道具も試したけど、反応なしか……」
「……疲れた」


帰還方法は判明し、転移石も用意したにも関わらず、このままではルノ達の体力の方が付きそうだった。一度引き返すという手もあるが、もしもルノ達が入手した転移石が「粗悪品」だった場合は大迷宮から脱出した際に消失してしまう。そうなると再び大迷宮内で転移石を発見しなければならず、二度手間になってしまう。
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