最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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外伝〈転移石を求めて〉

転移石の秘密

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「ほらほら、ここで地球の文字が読めるのはレナさんとナオさんと私だけなんですから片っ端から読んでください!!そこの御二人も部屋の中を調べ回って何か気になる物があったら教えてください!!」
「わ、分かった」
「……とりあえず、棚の物から見て回る」


リーリスに命じられるままにルノ、ナオは本棚のファイルを調べ、デブリとコトネも部屋の中を隈なく調査する。だが、ファイルに記されている文字は日本語ではなく外国語が殆どだったのでルノとナオは困り果てた。


「いや、リーリス……ここのファイル、全部外国語見たいだから読めないんだけど」
「何言ってんですか、二人とも翻訳スキルは習得しているはずでしょう?この文字を読みたいと強く念じれば読めるようになりますよ」
「あ、そうだった。というか、翻訳スキルって地球の文字でも効果を発揮するの!?」


注意深くファイルを読み取るとリーリスの言葉通りにルノとナオは文字が頭の中で読めるようになり、内容を理解する事が出来た。忘れていたが地球から訪れた二人はこの世界に辿り着いた時点で翻訳スキルを習得しており、ファイルの内容を確認して帰還の手掛かりを探す。


「あ、これを見て!!ここに「転移結晶石」という文字が書かれてるよ!!これって、もしかして転移石の事じゃないの?」
「あ、本当だ!!こっちのファイルにもその名前が書かれてる!!」
「ほら、こっちも見てください!!ここに転移結晶石の絵が記されています!!どうやらこの研究施設を作り出した人はこれを利用して元の世界に戻っていたようです!!」


ファイルを調べていく内にどうやら施設を作り出した研究者は「転移結晶石」と呼ばれる物を利用して地球に帰還していた事が発覚し、リーリスが開いたファイルには転移結晶石の絵が記されていた。それは間違いなくルノ達が知る転移石で間違いなく、研究者はどうやら異世界人に与えられる「異能」で地球へ帰還していたわけではなく、この転移結晶石を利用して帰還した事が判明した。

資料によると研究者は10年程の時を費やして地球へ帰還する方法を見つけ出し、この世界でも希少な魔石を搔き集め、転移の方法を探し続けた。そして彼は対に長年の研究で地球へ帰還する装置を生み出し、その装置の燃料として必要な「転移結晶石」を作り出したという。


「ふむふむ……どうやら資料によると、この転移結晶石は自然界に存在する魔石のようですが、あまりにも希少過ぎて簡単には手に入らないようです。そこで研究者は実験を重ねた結果、人工的に転移結晶石を生み出す事に成功したようです」
「何!?つまり、転移石は人の手で作る事が出来るのか!?」
「……驚いた」
「恐らく、この大迷宮内で発掘される転移石も人工産なんでしょうね。待ってください……これは、そういう事でしたか」
「どうしたの?」
「この大迷宮の秘密が明かされました……どうやらこの塔の大迷宮自体が転移石を作り出すために創設された建物のようです」
『ええっ!?』


リーリスの言葉に全員が驚愕し、彼女の読み解くファイルによると、世界中に存在する大迷宮は次世代の勇者を育てるためだけに作り出されたわけではなく、地球へ帰還するために必要不可欠な「転移石」の人工生成のためにも作り出されたという。




――大迷宮内は元々は初代の勇者の一人が自分達の次の世代に召喚されるであろう新しい勇者、正確には地球人のために残したという伝承が残っている。しかし、研究者が残した資料によると大迷宮が作られた真の目的は「転移結晶石」と呼ばれる魔石を人工生産する施設としての役割を持つという。

大迷宮内で多数の魔物が生息するのは後々に訪れる勇者の育成のためだが、資料によると大迷宮内で魔物の死骸が消えてしまうのはその死骸の養分を吸収し、長い時間を掛けて転移結晶石を生み出す事が発覚した。だから大迷宮内のあちこちで転移石が発生するようになり、ルノ達が見つけ出した転移石も元々は誰かが隠していた物ではなく、大迷宮が生み出した産物だと発覚した。

転移石を作り出すために魔物の養分が必要なのであれば別にわざわざ死骸だけを用意すればいいように思えるが、この大迷宮は勇者を育成する役目も持つため、次世代の勇者が力を身に着けるために大迷宮に訪れ、魔物を倒して地球へ帰還するために必要な転移石を入手させる名目で作り出されたという。



大迷宮内に存在する転移魔法陣もこのシステムを利用して魔物の養分を糧に作動しているらしく、ルノ達が発見した転移石は直前で大量の魔物を倒していた事で偶然にも発生した物を発見した可能性もあった。しかし、質の悪い転移石の場合は何故か大迷宮を脱出すると消失してしまうという事故も多発し、残念ながら大迷宮のシステムも完璧ではなかった。
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