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外伝〈転移石を求めて〉
消えたリーリスを追って
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「あ、階段だ。ここから上の階層に行けるみたいだけど……リーリスは結局見つからなかったね」
「でも、ここにも薬瓶が落ちてるぞ?」
「という事はリーリスさんも階段を登ったのかな……結局、今の所は罠も何もなかったね」
「……拍子抜けした」
一階を調べつくしたルノ達は上に繋がる階段を発見すると、リーリスの残したと思われる空の薬瓶を拾い上げ乍ら上の階層へ向かう。ここまで移動するのに予想よりも時間が掛かったが、未だにリーリスの姿は見当たらない。
「ここが二階か……構造は一階と大して変わりないね」
「リーリス!!居たら返事して!!」
「……返事がない、やっぱり屍になったようだ」
「そのネタはもういいから……けど、何でリーリスさんが見つからないんだろう」
捜索を開始してから相当な時間が経過しているが、未だにリーリスを千里眼で捉えられない事にナオは疑問を抱き、道標のように落ちている空の薬瓶を頼りにルノ達は先に進む。ここまでの道中では罠も魔物も見つかってはいないが、決して油断せずに慎重に先に進む。
「う~ん……この階層もなんか変な感じがする。誰かに見られているような……」
「でも、俺もコトネさんの感知スキルには何も反応がないんだよね」
「……怪しい気配はする」
「そうだ!!こういう時はリーリスが持っていたハッケン君を使ってみたらどうだ!?」
誰かの視線を感じるが特に周囲に怪しい点はなく、スキルにも反応はないがデブリはリーリスが開発した「ハッケン君」を取り出す。このハッケン君は生物を探知する能力を持ち、擬態能力が高い魔物であろうと感知する事が出来る魔道具である。
全員がハッケン君を覗きこんでみると、コンパスを想像させる針が僅かに揺れ動いており、このハッケン君は魔物にしか反応しないはずなので、僅かにとはいえ針が動いている以上は迷宮内の何処かに魔物が潜んでいる事が発覚した。
「おおっ!?針が動いてるぞ!?」
「本当だ。でも、反応が小さいから近くにはいないのかな?」
「それよりもこれが反応しているという事は、やっぱりこの建物の中にも魔物が隠れているのか……油断できないな」
「……これから先はより慎重に進まないといけない」
「ちょっと待って……段々と反応が大きくなってる」
ルノが握りしめたハッケン君の針が徐々に揺れが激しくなり、それを見たコトネ達は咄嗟に周囲を警戒して身構えるが、特に暗闇の中から何かが現れる様子はない。だが、第四階層のブロック・ゴーレムの一件もあるので壁の中に隠れて移動する魔物かもしれず、全員が背中を合わせて周囲を警戒した。
「……気配は感じないけど、何か嫌な予感がする」
「く、来るなら来い!!この筋肉の前にひれ伏せ!!」
「こんな事ならもっと弾を用意しておけば良かった……」
「反応がもっと強まった……すぐ傍に居るよ!!」
ハッケン君の針が激しく回転を始め、近くに魔物が存在するのは確かなのだが周囲に特に変化はなく、ルノ達は壁や床の方も警戒するがゴーレムの類が出現する気配はない。だが、彼等の耳元に微かに足音のような音が届く。
「何か聞こえる……でも、何処から聞こえるのか分からない」
「デブリ王子、森人族だから耳は良いと言ってたましたよね?何処から聞こえてくるか分かりません?」
「むむむっ……ちょっと待って、集中している」
「……早くして、ここに残っていると危険な気がする」
この中で最も聴覚が鋭いのはデブリのため、足音が聞こえてくる方向を探ろうとデブリは細長い耳を動かすと、彼は目を見開いて天井を指差す。
「上だ!!上の方から音が聞こえてくる!!」
「天井!?」
デブリの言葉を聞いた瞬間、全員が天井に視線を向けるがそこには何も存在せず、照明さえ取り付けていない天井が広がっているだけである。但し、コトネは咄嗟にクナイを取り出すと投擲を行い、ナオも両手に握りしめた小石を撃ち込む。
「……攻撃」
「指弾!!」
二人が同時に天井に向けて攻撃を仕掛けた瞬間、何もない空間から紫色の光が灯ると、まるで生物の眼のように蠢ていて天井から落下する。2人のクナイと指弾を回避した紫色の眼はそのまま地上付近へ降り立つと、徐々に松明の光によって全体像が露わになった。
――クォオオオオッ!!
奇怪な鳴き声を上げながらルノ達の前に現れたのはゴリラのように全体が体毛に覆われながらも人間のように二足歩行を行い、両手両足の爪は熊の様に長く、それでいながら胴体に比べて手足は細がなく、コアラの耳を想像させる大きな耳を持ち、カメレオンのような眼球、さらにひょっとこの仮面を想像させる細がない口が特徴的な生物が姿を現す。
様々な動物の特徴を併せ持つ謎の生物の登場にルノ達は動揺を隠せず、この世界に住むコトネやデブリも始めて目撃する生物なのか二人も呆気に取られ、4人は天井から唐突に現れた謎の生物と対峙する。
「でも、ここにも薬瓶が落ちてるぞ?」
「という事はリーリスさんも階段を登ったのかな……結局、今の所は罠も何もなかったね」
「……拍子抜けした」
一階を調べつくしたルノ達は上に繋がる階段を発見すると、リーリスの残したと思われる空の薬瓶を拾い上げ乍ら上の階層へ向かう。ここまで移動するのに予想よりも時間が掛かったが、未だにリーリスの姿は見当たらない。
「ここが二階か……構造は一階と大して変わりないね」
「リーリス!!居たら返事して!!」
「……返事がない、やっぱり屍になったようだ」
「そのネタはもういいから……けど、何でリーリスさんが見つからないんだろう」
捜索を開始してから相当な時間が経過しているが、未だにリーリスを千里眼で捉えられない事にナオは疑問を抱き、道標のように落ちている空の薬瓶を頼りにルノ達は先に進む。ここまでの道中では罠も魔物も見つかってはいないが、決して油断せずに慎重に先に進む。
「う~ん……この階層もなんか変な感じがする。誰かに見られているような……」
「でも、俺もコトネさんの感知スキルには何も反応がないんだよね」
「……怪しい気配はする」
「そうだ!!こういう時はリーリスが持っていたハッケン君を使ってみたらどうだ!?」
誰かの視線を感じるが特に周囲に怪しい点はなく、スキルにも反応はないがデブリはリーリスが開発した「ハッケン君」を取り出す。このハッケン君は生物を探知する能力を持ち、擬態能力が高い魔物であろうと感知する事が出来る魔道具である。
全員がハッケン君を覗きこんでみると、コンパスを想像させる針が僅かに揺れ動いており、このハッケン君は魔物にしか反応しないはずなので、僅かにとはいえ針が動いている以上は迷宮内の何処かに魔物が潜んでいる事が発覚した。
「おおっ!?針が動いてるぞ!?」
「本当だ。でも、反応が小さいから近くにはいないのかな?」
「それよりもこれが反応しているという事は、やっぱりこの建物の中にも魔物が隠れているのか……油断できないな」
「……これから先はより慎重に進まないといけない」
「ちょっと待って……段々と反応が大きくなってる」
ルノが握りしめたハッケン君の針が徐々に揺れが激しくなり、それを見たコトネ達は咄嗟に周囲を警戒して身構えるが、特に暗闇の中から何かが現れる様子はない。だが、第四階層のブロック・ゴーレムの一件もあるので壁の中に隠れて移動する魔物かもしれず、全員が背中を合わせて周囲を警戒した。
「……気配は感じないけど、何か嫌な予感がする」
「く、来るなら来い!!この筋肉の前にひれ伏せ!!」
「こんな事ならもっと弾を用意しておけば良かった……」
「反応がもっと強まった……すぐ傍に居るよ!!」
ハッケン君の針が激しく回転を始め、近くに魔物が存在するのは確かなのだが周囲に特に変化はなく、ルノ達は壁や床の方も警戒するがゴーレムの類が出現する気配はない。だが、彼等の耳元に微かに足音のような音が届く。
「何か聞こえる……でも、何処から聞こえるのか分からない」
「デブリ王子、森人族だから耳は良いと言ってたましたよね?何処から聞こえてくるか分かりません?」
「むむむっ……ちょっと待って、集中している」
「……早くして、ここに残っていると危険な気がする」
この中で最も聴覚が鋭いのはデブリのため、足音が聞こえてくる方向を探ろうとデブリは細長い耳を動かすと、彼は目を見開いて天井を指差す。
「上だ!!上の方から音が聞こえてくる!!」
「天井!?」
デブリの言葉を聞いた瞬間、全員が天井に視線を向けるがそこには何も存在せず、照明さえ取り付けていない天井が広がっているだけである。但し、コトネは咄嗟にクナイを取り出すと投擲を行い、ナオも両手に握りしめた小石を撃ち込む。
「……攻撃」
「指弾!!」
二人が同時に天井に向けて攻撃を仕掛けた瞬間、何もない空間から紫色の光が灯ると、まるで生物の眼のように蠢ていて天井から落下する。2人のクナイと指弾を回避した紫色の眼はそのまま地上付近へ降り立つと、徐々に松明の光によって全体像が露わになった。
――クォオオオオッ!!
奇怪な鳴き声を上げながらルノ達の前に現れたのはゴリラのように全体が体毛に覆われながらも人間のように二足歩行を行い、両手両足の爪は熊の様に長く、それでいながら胴体に比べて手足は細がなく、コアラの耳を想像させる大きな耳を持ち、カメレオンのような眼球、さらにひょっとこの仮面を想像させる細がない口が特徴的な生物が姿を現す。
様々な動物の特徴を併せ持つ謎の生物の登場にルノ達は動揺を隠せず、この世界に住むコトネやデブリも始めて目撃する生物なのか二人も呆気に取られ、4人は天井から唐突に現れた謎の生物と対峙する。
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