最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
608 / 657
外伝〈転移石を求めて〉

消えたリーリスを追って

しおりを挟む
「あ、階段だ。ここから上の階層に行けるみたいだけど……リーリスは結局見つからなかったね」
「でも、ここにも薬瓶が落ちてるぞ?」
「という事はリーリスさんも階段を登ったのかな……結局、今の所は罠も何もなかったね」
「……拍子抜けした」


一階を調べつくしたルノ達は上に繋がる階段を発見すると、リーリスの残したと思われる空の薬瓶を拾い上げ乍ら上の階層へ向かう。ここまで移動するのに予想よりも時間が掛かったが、未だにリーリスの姿は見当たらない。


「ここが二階か……構造は一階と大して変わりないね」
「リーリス!!居たら返事して!!」
「……返事がない、やっぱり屍になったようだ」
「そのネタはもういいから……けど、何でリーリスさんが見つからないんだろう」


捜索を開始してから相当な時間が経過しているが、未だにリーリスを千里眼で捉えられない事にナオは疑問を抱き、道標のように落ちている空の薬瓶を頼りにルノ達は先に進む。ここまでの道中では罠も魔物も見つかってはいないが、決して油断せずに慎重に先に進む。


「う~ん……この階層もなんか変な感じがする。誰かに見られているような……」
「でも、俺もコトネさんの感知スキルには何も反応がないんだよね」
「……怪しい気配はする」
「そうだ!!こういう時はリーリスが持っていたハッケン君を使ってみたらどうだ!?」


誰かの視線を感じるが特に周囲に怪しい点はなく、スキルにも反応はないがデブリはリーリスが開発した「ハッケン君」を取り出す。このハッケン君は生物を探知する能力を持ち、擬態能力が高い魔物であろうと感知する事が出来る魔道具である。

全員がハッケン君を覗きこんでみると、コンパスを想像させる針が僅かに揺れ動いており、このハッケン君は魔物にしか反応しないはずなので、僅かにとはいえ針が動いている以上は迷宮内の何処かに魔物が潜んでいる事が発覚した。


「おおっ!?針が動いてるぞ!?」
「本当だ。でも、反応が小さいから近くにはいないのかな?」
「それよりもこれが反応しているという事は、やっぱりこの建物の中にも魔物が隠れているのか……油断できないな」
「……これから先はより慎重に進まないといけない」
「ちょっと待って……段々と反応が大きくなってる」


ルノが握りしめたハッケン君の針が徐々に揺れが激しくなり、それを見たコトネ達は咄嗟に周囲を警戒して身構えるが、特に暗闇の中から何かが現れる様子はない。だが、第四階層のブロック・ゴーレムの一件もあるので壁の中に隠れて移動する魔物かもしれず、全員が背中を合わせて周囲を警戒した。


「……気配は感じないけど、何か嫌な予感がする」
「く、来るなら来い!!この筋肉の前にひれ伏せ!!」
「こんな事ならもっと弾を用意しておけば良かった……」
「反応がもっと強まった……すぐ傍に居るよ!!」


ハッケン君の針が激しく回転を始め、近くに魔物が存在するのは確かなのだが周囲に特に変化はなく、ルノ達は壁や床の方も警戒するがゴーレムの類が出現する気配はない。だが、彼等の耳元に微かに足音のような音が届く。


「何か聞こえる……でも、何処から聞こえるのか分からない」
「デブリ王子、森人族だから耳は良いと言ってたましたよね?何処から聞こえてくるか分かりません?」
「むむむっ……ちょっと待って、集中している」
「……早くして、ここに残っていると危険な気がする」


この中で最も聴覚が鋭いのはデブリのため、足音が聞こえてくる方向を探ろうとデブリは細長い耳を動かすと、彼は目を見開いて天井を指差す。


「上だ!!上の方から音が聞こえてくる!!」
「天井!?」


デブリの言葉を聞いた瞬間、全員が天井に視線を向けるがそこには何も存在せず、照明さえ取り付けていない天井が広がっているだけである。但し、コトネは咄嗟にクナイを取り出すと投擲を行い、ナオも両手に握りしめた小石を撃ち込む。


「……攻撃」
「指弾!!」


二人が同時に天井に向けて攻撃を仕掛けた瞬間、何もない空間から紫色の光が灯ると、まるで生物の眼のように蠢ていて天井から落下する。2人のクナイと指弾を回避した紫色の眼はそのまま地上付近へ降り立つと、徐々に松明の光によって全体像が露わになった。



――クォオオオオッ!!



奇怪な鳴き声を上げながらルノ達の前に現れたのはゴリラのように全体が体毛に覆われながらも人間のように二足歩行を行い、両手両足の爪は熊の様に長く、それでいながら胴体に比べて手足は細がなく、コアラの耳を想像させる大きな耳を持ち、カメレオンのような眼球、さらにひょっとこの仮面を想像させる細がない口が特徴的な生物が姿を現す。

様々な動物の特徴を併せ持つ謎の生物の登場にルノ達は動揺を隠せず、この世界に住むコトネやデブリも始めて目撃する生物なのか二人も呆気に取られ、4人は天井から唐突に現れた謎の生物と対峙する。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。