607 / 657
外伝〈転移石を求めて〉
安全地帯
しおりを挟む
「う~ん……なんか怪しいけど、一応は用心して進もうか」
「……そういう事なら私が先行する。暗視、観察眼、捜索のスキルを持つ私なら罠を見破れる自信がある」
「俺も暗殺者のスキルは一通り覚えているから罠を見つけるのは得意だよ」
「おお、頼りになるな!!」
暗殺者であるコトネとナオの言葉に甘え、二人を先行させてルノとデブリは後に続く。松明を握り締めたコトネが一番前を歩き、ナオは彼女の後に続きながらも周囲を警戒しながら千里眼の能力を発動させ、定期的にリーリスの捜索を行う。
「ナオ君、リーリスはこの建物の中に居るの?」
「う~ん……今の所は姿を見かけないけど、建物のあちこちでリーリスさんが持っていた空の薬瓶が落ちてるね。多分、道標として置いて行ったのかもしれないね」
「道標といってもこんな暗闇の中で薬瓶を置いたところで意味あるのか?」
「言われてみれば確かに……なら、リーリスは気付かない間に薬瓶を落としているのかな?」
「でも、これまでに発見した薬瓶は全部空なのが気になるんだけど……」
「待って、全員止まって」
先行していたコトネが立ち止まると、彼女は足元の床を指差す。ルノ達は床を覗き込むと、通路全体に刻まれていた紋様が描かれていない箇所が存在した。
「この部分だけ紋様が記されていない。だから罠の可能性がある」
「何!?罠だと!?」
「それって落とし穴!?」
「もしくは後ろの方から大きな岩が転がってくるとか!?」
「……落ち着いて、まだ罠とは決まっていない」
コトネはクナイを取り出すと紋様が刻まれていない床に目掛けて投げ込むと、クナイは床の上に落ちても特に反応は示さず、念のために彼女はもう一本のクナイを取り出すと恐る恐る近づいて床に刺すが変化はない。
「……落とし穴系の罠ではないと思う。けど、油断しないで」
「どれどれ……うん、触っても問題なさそうだね」
「でも、それならどうしてここだけ紋様が記されていないんだろう?」
紋様が記されていない床の規模は前後左右1メートルは存在し、試しにルノが注意しながら床に乗り込んでも何も反応はなかった。罠の類ではないとしたら、どうしてこの部分だけ魔法を吸収する紋様が存在しないのかと不思議に思ったルノはある事に気付く。
「待てよ……もしかしてここなら」
「ルノ君?」
「ちょっと待ってね……光球!!」
「うおっ!?」
ルノは掌を構えて魔法を唱えた瞬間、通路全体を照らす程の光の球体が誕生し、その場で固定化させた。先ほどまではどんな魔法を使おうとも遺跡全体に刻まれた紋様によって魔力が吸収されて無効化されていたが、この場所だけは魔法が使用出来る事が判明した。
「やっぱりこの床の上だと普通に魔法が使えるみたいだよ。あ、だけど紋様がある場所へ移動させると吸収されるようだけど……」
「え?本当に?ちょっと待って……あ、空間魔法も使える!!」
「……収納石も使える」
ナオも試しに空間魔法を発動させた所、この場所だけならば黒渦を生み出す事に成功し、試しにコトネも収納石を利用する事が出来た。どうやら紋様が刻まれていない場所ならば魔法の使用が可能らしく、魔法が使えると知ったルノは安心する。
「多分、ここは休憩所みたいな場所なんだよ。さっきの柱に書かれていた事が事実だとしたら、きっとここを作った人達は勇者として召喚された人間を鍛える施設みたいな場所を作ろうとした。だけど、魔法を完全に禁止すると勇者の人達が危ないと考えて、魔法を使用出来る場所も残しておいたんじゃないかな?」
「なるほど……確かにそう考えると辻褄は合うね」
「よく分からないが、ここなら安全という事か?」
「……安全とは言い切れないけど、少なくとも魔法を扱えるだけでも有難い」
建物の内部に存在する限りはありとあらゆる魔法や魔石の使用が出来ないと思い込んでいたルノ達だが、建物の内部にも魔法が使用出来る場所が存在する事を知って安堵した。だが、先に進む以上は油断は出来ず、都合よくこれからも魔法が使用出来る空間を発見できるとは限らない。
ルノ達はしばらくの間は休憩した後、ナオの千里眼を頼りにリーリスが残していったと思われる空の薬瓶を頼りに通路を進む。だが、歩いて10分ほど経過したが未だに彼女の姿が千里眼を使用しても捉えられない事にナオは疑問を抱く。
「おかしいな……この建物の構造はだいたい把握したけど、リーリスさんの姿が見つからない。薬瓶はあちこちにおちているのに……」
「ナオ、そもそもこの建物は何階建てなんだ?結構歩いたように思えるが……」
「あ、すいません。えっと、建物の階層は3階までです。だけど、今の所はリーリスさんの薬瓶があるのは一階だけなんですけど……」
「この建物、想像以上に広い。というより……広すぎる気がする」
「確かになにか雰囲気がおかしい気がするよね……何だか落ち着かないというか」
通路の奥へ進むほどルノ達は言いようの知れない不安感を抱き、本当にこのまま進むべきか思い悩む。しかし、リーリスがこの建物の中に入った可能性が高い以上、彼女を見つけるまで進まなければならなかった。
「……そういう事なら私が先行する。暗視、観察眼、捜索のスキルを持つ私なら罠を見破れる自信がある」
「俺も暗殺者のスキルは一通り覚えているから罠を見つけるのは得意だよ」
「おお、頼りになるな!!」
暗殺者であるコトネとナオの言葉に甘え、二人を先行させてルノとデブリは後に続く。松明を握り締めたコトネが一番前を歩き、ナオは彼女の後に続きながらも周囲を警戒しながら千里眼の能力を発動させ、定期的にリーリスの捜索を行う。
「ナオ君、リーリスはこの建物の中に居るの?」
「う~ん……今の所は姿を見かけないけど、建物のあちこちでリーリスさんが持っていた空の薬瓶が落ちてるね。多分、道標として置いて行ったのかもしれないね」
「道標といってもこんな暗闇の中で薬瓶を置いたところで意味あるのか?」
「言われてみれば確かに……なら、リーリスは気付かない間に薬瓶を落としているのかな?」
「でも、これまでに発見した薬瓶は全部空なのが気になるんだけど……」
「待って、全員止まって」
先行していたコトネが立ち止まると、彼女は足元の床を指差す。ルノ達は床を覗き込むと、通路全体に刻まれていた紋様が描かれていない箇所が存在した。
「この部分だけ紋様が記されていない。だから罠の可能性がある」
「何!?罠だと!?」
「それって落とし穴!?」
「もしくは後ろの方から大きな岩が転がってくるとか!?」
「……落ち着いて、まだ罠とは決まっていない」
コトネはクナイを取り出すと紋様が刻まれていない床に目掛けて投げ込むと、クナイは床の上に落ちても特に反応は示さず、念のために彼女はもう一本のクナイを取り出すと恐る恐る近づいて床に刺すが変化はない。
「……落とし穴系の罠ではないと思う。けど、油断しないで」
「どれどれ……うん、触っても問題なさそうだね」
「でも、それならどうしてここだけ紋様が記されていないんだろう?」
紋様が記されていない床の規模は前後左右1メートルは存在し、試しにルノが注意しながら床に乗り込んでも何も反応はなかった。罠の類ではないとしたら、どうしてこの部分だけ魔法を吸収する紋様が存在しないのかと不思議に思ったルノはある事に気付く。
「待てよ……もしかしてここなら」
「ルノ君?」
「ちょっと待ってね……光球!!」
「うおっ!?」
ルノは掌を構えて魔法を唱えた瞬間、通路全体を照らす程の光の球体が誕生し、その場で固定化させた。先ほどまではどんな魔法を使おうとも遺跡全体に刻まれた紋様によって魔力が吸収されて無効化されていたが、この場所だけは魔法が使用出来る事が判明した。
「やっぱりこの床の上だと普通に魔法が使えるみたいだよ。あ、だけど紋様がある場所へ移動させると吸収されるようだけど……」
「え?本当に?ちょっと待って……あ、空間魔法も使える!!」
「……収納石も使える」
ナオも試しに空間魔法を発動させた所、この場所だけならば黒渦を生み出す事に成功し、試しにコトネも収納石を利用する事が出来た。どうやら紋様が刻まれていない場所ならば魔法の使用が可能らしく、魔法が使えると知ったルノは安心する。
「多分、ここは休憩所みたいな場所なんだよ。さっきの柱に書かれていた事が事実だとしたら、きっとここを作った人達は勇者として召喚された人間を鍛える施設みたいな場所を作ろうとした。だけど、魔法を完全に禁止すると勇者の人達が危ないと考えて、魔法を使用出来る場所も残しておいたんじゃないかな?」
「なるほど……確かにそう考えると辻褄は合うね」
「よく分からないが、ここなら安全という事か?」
「……安全とは言い切れないけど、少なくとも魔法を扱えるだけでも有難い」
建物の内部に存在する限りはありとあらゆる魔法や魔石の使用が出来ないと思い込んでいたルノ達だが、建物の内部にも魔法が使用出来る場所が存在する事を知って安堵した。だが、先に進む以上は油断は出来ず、都合よくこれからも魔法が使用出来る空間を発見できるとは限らない。
ルノ達はしばらくの間は休憩した後、ナオの千里眼を頼りにリーリスが残していったと思われる空の薬瓶を頼りに通路を進む。だが、歩いて10分ほど経過したが未だに彼女の姿が千里眼を使用しても捉えられない事にナオは疑問を抱く。
「おかしいな……この建物の構造はだいたい把握したけど、リーリスさんの姿が見つからない。薬瓶はあちこちにおちているのに……」
「ナオ、そもそもこの建物は何階建てなんだ?結構歩いたように思えるが……」
「あ、すいません。えっと、建物の階層は3階までです。だけど、今の所はリーリスさんの薬瓶があるのは一階だけなんですけど……」
「この建物、想像以上に広い。というより……広すぎる気がする」
「確かになにか雰囲気がおかしい気がするよね……何だか落ち着かないというか」
通路の奥へ進むほどルノ達は言いようの知れない不安感を抱き、本当にこのまま進むべきか思い悩む。しかし、リーリスがこの建物の中に入った可能性が高い以上、彼女を見つけるまで進まなければならなかった。
0
お気に入りに追加
11,314
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。