最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
606 / 657
外伝〈転移石を求めて〉

魔法禁止区域

しおりを挟む
「うわ、本当に真っ暗だ……デブリは大丈夫?見えないんじゃないの?」
「ぬう……こんな事なら眼球の筋肉を鍛えるべきでした」
「いや、それは無理だと思うけど……ちょっと待って、まだここは魔法が使えるんだよね?辺りを照らすよ」


ルノは光球の魔法を発動させて周囲を照らした瞬間、予想以上に自分達が存在する地下空間が広い事に気付く。恐らくは直径1キロを超える空間の中に巨大な古代ローマの遺跡を想像させる建物が存在した。試しにルノは光球の魔法で照らしながら遺跡に近付くと、階段の当たりに紋様のような物が刻まれている事を知る。


「これが遺跡か……リーリス!!聞こえたら返事して!!」
「……返事がない、ただの屍になったようだ」
「あれ!?なんでコトネさんが俺達の世界のネタを知ってるの!?」


建物に向けてルノは声を掛けても返事は戻らないが、足元を照らすと確かに人間の足跡が残っており、遺跡の中に誰かが入った事は間違いない。落とし穴の出入口にハッケン君が落ちて居た事も考えてもリーリスである事は間違いないが、声が届かない程に建物の奥に入ったのかもしれない。


「今の所は普通に魔法が使えるけど……あ!?」


光球を操作しながらルノが遺跡の階段に近付いた瞬間、段差に刻まれていた紋様に光球が吸い込まれるように近づき、やがて紋様に触れた瞬間に光が小さくなって消えていく。その様子を見ていたルノ達は建物を見上げると、壁や天井にも同じような紋様が刻まれている事に気付く。


「なるほど……魔法が吸収される仕組みになっているから俺の空間魔法も発動しなかったんだ」
「……正確に言えば発動した瞬間に吸収されて消えてなくなる。一瞬だけなら使えなくもないけど、すぐに吸収されるみたい」
「むうっ……これは困ったな、こんな暗闇の中をどうやって進めばいいんだ?」
「大丈夫、松明を持ってきた」


コトネは収納石を利用して松明を取り出し、火打石で火を灯す。念のために松明の火を遺跡に近づけてみても反応しない事を確認すると、遺跡に刻まれた紋様はやはり魔法にしか反応しない事が判明する。


「ここから先は魔法も魔石の力も使えない。だから収納石も利用出来ないから今の内に回復薬や武器の類は取り出して持ち運んだ方が良い」
「なるほど……けど、参ったな。魔法が使えないとなるといざというときに逃げ出す事も出来ないのか」
「安心しろナオ!!例えどんな相手が現れようと僕と師匠の敵ではない!!」
「そうかな……まあ、一応はコトネから貰った刀もあるし、戦えない事はないかな?」


魔法が使えない以上はルノも戦闘では武器を使って戦うしかなく、ここから先は慎重に進まなければならない。先行しているリーリスを見つけて合流し、全員で脱出の方法を探るためにルノ達は遺跡の中に入り込む。


「……今の所は気配は感じられない」
「という事は近くに魔物はいないのか……逆に言えばリーリスも近くにはいないと」
「この遺跡、思っていたよりも大分広いね。それに暗いせいか千里眼でも上手く把握できないし……」
「あ、師匠!!ここに何か書いてありますぞ!!」


松明を掲げたデブリが先行して建物の内部を調べていると、彼は通路の真ん中に設置されている大きな柱に文字のような物が刻まれている事に気付き、ルノを呼び寄せる。


「どれどれ……あれ、これって日本語じゃない!?」
「あ、本当だ!!これ日本語だよ!!」
「ニ、ニホンゴ……?」
「異世界人の国の言葉だと思えばいい。日の国でも伝わっている言語のひとつ」


柱に刻まれていたのは日本語の文字で間違いなく、内容を確認する限りだとこの建物を作り出した人物が刻んだ文字だと思われた。


『この遺跡に辿り着いた者へ警告する。ここから先は勇者の資格を持つ人間だけが入る事を許可されている。資格無き者は即刻に立去れ』
「なんだこれ……警告文?」
「勇者って……つまり、ここは勇者のために作り出した建物なのかな?」
「裏面にも何か書いてありますぞ!!」


デブリの言葉にルノ達は柱の裏側に移動すると、こちらにも日本語で別の内容が刻まれ、表に書かれていた文章と比べると随分とフランクな感じで記されていた。


『表面の文章を見た方へ注意!!ここから先には次世代の勇者を育成するために過去に召喚された初代勇者たちが残した罠がいくつも張り巡らされています!!ですが、罠を乗り越えると勇者の力を高めるためのお宝が手に入りますよ!!by親愛なる隣の骸骨より』
「……なにこれ?」
「つまり、ここから先には罠があるって事?」


裏面に記された文章を確認してルノ達は首を傾げ、この文章を信じるならばここから先は勇者を育てるために張り巡らされた罠があるという事だが、一体何者がこの文章を書き残したのか疑問を抱く。表面の文章は綺麗に文字が掘り起こされているのに対し、裏面の文章はまるで無理やり硬い物で削り取ったかのような文章だった。

恐らく、ルノ達が訪れる前に何者かがこの遺跡の中に入り込み、柱に文字を刻んで後々に訪れるであろう人物に警告文を書いたのだろう。だが、文章が日本語で記されている辺り、もしかしたらルノ達のように過去に召喚された日本人の仕業である可能性も高かった。





※親愛なる隣の骸骨の正体は不遇職にて判明します。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。