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外伝〈転移石を求めて〉
高原の支配者
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「この死体……毒が混じっている」
「え?毒?」
「ここを見て、紫色に腫れ上がっている……多分、噛まれた時に毒を受けたとしか思えない」
コトネがトロールの死骸に毒液が付着している事を確認し、皮膚の一部分が紫色に変色している事が判明した。恐らくトロールを捕食した魔物は毒を持つ生物だと考えられ、噛み傷の大きさから考えても相当な大きさを誇る。
「……トロール程の大型の魔物を食い荒らす大きさ、それに強力な毒液を持つ魔物は限られている。もしかしたら……牙竜よりも厄介な魔物かもしれない」
「牙竜よりも?」
「ルノも前に会ったことがある魔物かもしれない。少し前、王国にゴーレムの大群が攻め込もうとした時に襲われた相手を覚えてる?」
「それってまさか……」
ルノの脳裏に魔王軍の幹部であり、デキンと同様に「人化」の薬によって本当の姿を隠していた竜種を思い出す。かつてルノと激戦を繰り広げた「蛇竜」と呼ばれる竜種で強力な毒と石化の魔眼を持つ厄介な相手であった。
「まさか、ここに蛇竜が現れたの!?」
「可能性は高い。他にトロールをこんなに簡単に捕食するような魔物は滅多にいない……もしかしたら既に私達の近くにいるかもしれない」
「でも、あんなに巨大な蛇が傍に居たらすぐに気付くんじゃ……」
「普通ならそう……だけど、ここは大迷宮。何が起きるのか分からない」
コトネはトロールを殺害したのは「蛇竜」であると判断し、この高原の何処かに蛇竜が隠れているのではないかと推測する。そんな彼女の予測を肯定するかのように地響きが唐突に鳴り響き、二人の足元の地面が盛り上がると、地中から巨大な蛇が姿を現す。
――シャアアアッ!!
蛇の鳴き声が高原中に響き渡り、姿を現したのは全身が紫色の鱗で覆われた大蛇が出現し、身体の長さが20メートルは存在する巨大蛇がルノ達を見下ろす。慌ててルノはコトネを守るために彼女の前に移動すると、巨大蛇の怪しく光る瞳をコトネに直視させないように庇う。
「うわっ!?まさか本当に蛇竜がいるなんて……コトネ!!目を合わせないようにして!!」
「大丈夫、瞼は閉じているけど心眼のスキルで状況は把握できる……ルノは平気?」
「俺はなんか、魔法耐性が高すぎて魔眼の効果を受け付けないらしいから……あれ?だけど、この蛇って……何か色が違う?」
「シャアアッ……!!」
姿を現した大蛇に対してルノはコトネを庇いながらも以前に遭遇した蛇竜と比べて体型も小さく、鱗の色合いも異なる事に気付く。魔王軍のガイアは全身が緑色の鱗に紫色の瞳を持つ巨大蛇だったが、今回の相手は鱗も瞳の色も紫色で統一されていた。
ガイアと比べれば断然に小さく、ルノとコトネの姿を確認しても即座に襲いかかるような真似はせず、様子を伺うように大蛇は二人を観察する。ルノは瞳を合わせても特に自分の身体に変化は訪れない事を確認して安堵し、どうやら蛇竜が持つ「石化の魔眼」の効果は自分の身体は受け付けない事を再認識する。
(前に会った奴と比べたら随分と小さいな……いや、それでも十分に大きいけど)
これまでに遭遇した竜種と比べればルノ達の前に現れた蛇竜は胴体が長いという部分を除けばそれほど大きさは感じられず、火竜や地竜と比べても迫力は小さい。それでもルノ達の10倍以上の大きさを誇る事には変わりはなく、大蛇は二人の観察を負えると大きく顎を開いて口から煙を吐き出す。
「アガァアアアッ!!」
「っ!?不味い、風圧!!」
「にゃうっ……!?」
吐き出された紫の煙を確認してルノは直感で危険を感じ取り、咄嗟に両手を前に広げて風圧の魔法を発動させ、煙を振り払う。結果としてはルノの判断は間違ってはおらず、煙を浴びたトロールの死骸は全身に硫酸でも注がれたように溶け始めた。
「シャウッ……!?」
「な、なんてヤバイ煙だ……コトネ、ここから離れるよ!!」
「わっ……」
ルノはコトネの身体を両手で抱きかかえるとその場を跳躍し、大蛇から急いで距離を取る。自分の吐き出した煙を逆に吹き飛ばされ、視界を封じられた大蛇は二人が逃げた事に気付かず、煙が晴れるまでの間は忙しなく首を動かす。
コトネを抱えながらルノは通り過ぎ様に煙を浴びた影響で溶解化したトロールの死骸を確認し、さらに地面の雑草さえも溶けている事に気が付き、途轍もなく溶解性が高い煙である事を確認する。もしもあのまま煙がルノ達を覆い込んでいたら無事では済まなかった可能性も高い。
(魔法の類の攻撃なら俺の魔法耐性の高さなら防げるかもしれないけど、多分だけどこの煙は俺でも受けたら不味い気がする!!)
魔法を利用した自然現象の類ならばルノの魔法耐性の高さならばある程度は防ぐ事が出来るが、大蛇が吐き出した煙は魔法の類で生み出したとは考えられず、毒性の高い煙である事は間違いない。そんな煙を受ければいくらルノでも生き延びられるかは分からず、すぐにルノは大蛇から逃げるために駆け抜ける。
「え?毒?」
「ここを見て、紫色に腫れ上がっている……多分、噛まれた時に毒を受けたとしか思えない」
コトネがトロールの死骸に毒液が付着している事を確認し、皮膚の一部分が紫色に変色している事が判明した。恐らくトロールを捕食した魔物は毒を持つ生物だと考えられ、噛み傷の大きさから考えても相当な大きさを誇る。
「……トロール程の大型の魔物を食い荒らす大きさ、それに強力な毒液を持つ魔物は限られている。もしかしたら……牙竜よりも厄介な魔物かもしれない」
「牙竜よりも?」
「ルノも前に会ったことがある魔物かもしれない。少し前、王国にゴーレムの大群が攻め込もうとした時に襲われた相手を覚えてる?」
「それってまさか……」
ルノの脳裏に魔王軍の幹部であり、デキンと同様に「人化」の薬によって本当の姿を隠していた竜種を思い出す。かつてルノと激戦を繰り広げた「蛇竜」と呼ばれる竜種で強力な毒と石化の魔眼を持つ厄介な相手であった。
「まさか、ここに蛇竜が現れたの!?」
「可能性は高い。他にトロールをこんなに簡単に捕食するような魔物は滅多にいない……もしかしたら既に私達の近くにいるかもしれない」
「でも、あんなに巨大な蛇が傍に居たらすぐに気付くんじゃ……」
「普通ならそう……だけど、ここは大迷宮。何が起きるのか分からない」
コトネはトロールを殺害したのは「蛇竜」であると判断し、この高原の何処かに蛇竜が隠れているのではないかと推測する。そんな彼女の予測を肯定するかのように地響きが唐突に鳴り響き、二人の足元の地面が盛り上がると、地中から巨大な蛇が姿を現す。
――シャアアアッ!!
蛇の鳴き声が高原中に響き渡り、姿を現したのは全身が紫色の鱗で覆われた大蛇が出現し、身体の長さが20メートルは存在する巨大蛇がルノ達を見下ろす。慌ててルノはコトネを守るために彼女の前に移動すると、巨大蛇の怪しく光る瞳をコトネに直視させないように庇う。
「うわっ!?まさか本当に蛇竜がいるなんて……コトネ!!目を合わせないようにして!!」
「大丈夫、瞼は閉じているけど心眼のスキルで状況は把握できる……ルノは平気?」
「俺はなんか、魔法耐性が高すぎて魔眼の効果を受け付けないらしいから……あれ?だけど、この蛇って……何か色が違う?」
「シャアアッ……!!」
姿を現した大蛇に対してルノはコトネを庇いながらも以前に遭遇した蛇竜と比べて体型も小さく、鱗の色合いも異なる事に気付く。魔王軍のガイアは全身が緑色の鱗に紫色の瞳を持つ巨大蛇だったが、今回の相手は鱗も瞳の色も紫色で統一されていた。
ガイアと比べれば断然に小さく、ルノとコトネの姿を確認しても即座に襲いかかるような真似はせず、様子を伺うように大蛇は二人を観察する。ルノは瞳を合わせても特に自分の身体に変化は訪れない事を確認して安堵し、どうやら蛇竜が持つ「石化の魔眼」の効果は自分の身体は受け付けない事を再認識する。
(前に会った奴と比べたら随分と小さいな……いや、それでも十分に大きいけど)
これまでに遭遇した竜種と比べればルノ達の前に現れた蛇竜は胴体が長いという部分を除けばそれほど大きさは感じられず、火竜や地竜と比べても迫力は小さい。それでもルノ達の10倍以上の大きさを誇る事には変わりはなく、大蛇は二人の観察を負えると大きく顎を開いて口から煙を吐き出す。
「アガァアアアッ!!」
「っ!?不味い、風圧!!」
「にゃうっ……!?」
吐き出された紫の煙を確認してルノは直感で危険を感じ取り、咄嗟に両手を前に広げて風圧の魔法を発動させ、煙を振り払う。結果としてはルノの判断は間違ってはおらず、煙を浴びたトロールの死骸は全身に硫酸でも注がれたように溶け始めた。
「シャウッ……!?」
「な、なんてヤバイ煙だ……コトネ、ここから離れるよ!!」
「わっ……」
ルノはコトネの身体を両手で抱きかかえるとその場を跳躍し、大蛇から急いで距離を取る。自分の吐き出した煙を逆に吹き飛ばされ、視界を封じられた大蛇は二人が逃げた事に気付かず、煙が晴れるまでの間は忙しなく首を動かす。
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(魔法の類の攻撃なら俺の魔法耐性の高さなら防げるかもしれないけど、多分だけどこの煙は俺でも受けたら不味い気がする!!)
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