593 / 657
外伝〈転移石を求めて〉
高原
しおりを挟む
「ここは何処だろう……草原?」
「……どちらかというと高原という方が正しいと思う」
ルノとコトネが降り立った場所は草原というよりも高原という表現が正しく、遠目には大きな岩山や湖も確認出来た。恐らくは第三階層よりも広い事は間違いなく、試しにルノは飛翔術を利用して上空から様子を確認すると、これまでに訪れた第三階層や第四階層とは全く異なる風景が広がる。
「凄いな……天井や照明さえなければ外の世界にしか見えない。あいてっ!?」
飛び過ぎたせいでルノは天井部分に頭をぶつけてしまうが、確認した限りではこちらの階層は数キロほどの広さを誇り、第三階層よりも何倍もの広さが存在した。本当に建物の中なのか疑う程の広さを誇るが、天井が存在する時点でここが大迷宮内である事は間違いない。
地上に降りたルノはコトネと共に周囲の状況を確認すると、二人以外に高原には生物の姿は見えず、残念ながら近くにリーリス達は転移していないらしい。それでもナオならば千里眼と空間魔法の能力でルノ達を見つけ出して迎えに来てくれるのではないかと思ったが、5分以上経過しても現れる様子はなかった。
「う~ん……ここで待っていてもしょうがないし、皆を探しに行こう。まあ、多分だけど全員無事だと思うよ。あ、でもリーリスが少し心配かな」
「……デブリ王子とナオは平気だと思う。リーリスもああ見えて強いから平気」
「そういえば前にデキン大臣を吹き飛ばした事もあったよね。何気にリーリスって強いよね」
「一応は将軍職を任される程の強さは持っている。それに色々な薬を普段から常備しているからきっと大丈夫」
はぐれた三人とも全員が魔物に抗う能力を持ち合わせて居るため、ルノ達とはぐれたとしても問題ないと思うが、仮にここが第五階層だとした場合はどのような魔物が潜んでいるのか分からないため、用心して先に進む必要がある。久々にルノはスポーツカー型の氷塊を生み出し、コトネと共に移動を行う。
「こうして二人で乗るのなんて最初にあった頃以来じゃない?」
「……懐かしい、あれから1年ぐらい経っている」
「あ、そうか……もうそんなに経っているのか」
コトネの言葉にルノはこの世界に訪れてから何時の間にか1年も経過している事に気付き、もしも自分が元の世界に戻った時、地球とこちらの世界の時間の流れが同じだった場合を考えると不安に陥る。1年間も地球から離れていれば色々と問題もあり、地球では行方不明扱いされているだろう。
地球に戻った後にルノが通っていた高校に戻れるのかも分からず、同級生は既に二年生に上がり、自分一人だけが一年生のままだと考えると高校には通いにくい。それでも地球の家族や友人と再会したいという気持ちは強く、ルノは絶対に元の世界に戻るためにまずは仲間達の合流を急ぐ。
「コトネ、何か気付いたらすぐに教えて」
「分かった。でも、さっきから変な感じがする……こんな見晴らしのいい場所なのに魔物の姿が見えない。何処かに隠れている様子もない」
「え、本当に?」
氷自動車で移動を開始してから数分が経過したが、これまでにルノとコトネは一度も魔物の姿を見かけず、高原には1匹のゴブリンも存在しなかった。まさか魔物が生息していないはず階層があるとは思えず、実際に魔物の死骸と思われる骨などは見かけた。
「……死骸があるという事は魔物がこの場所にも生息している事は間違いない。なのにどうして姿を見せないのか……考えられるとしたら他の協力な魔物に住処を追われたとか」
「住処を追われたって……こんな広い高原の魔物達が全員逃げ出す程の大物が現れたの?」
「あくまでも推測、だけどもしも私の考えが当たっていたら、相手は相当に厄介な魔物で間違いない」
コトネは移動中に前方を指差すと、氷自動車の正面の方角に驚くべき光景が広がり、彼女が示した先には数体のトロールの死体が横たわっていた。しかも全ての死骸が獣に食い荒らされたように引きちぎられ、苦悶の表情を浮かべた状態で死亡していた。
「これは……トロールの死骸?」
「トロールは危険度がレベル3もある大物、しかもこれだけの数の魔物が殺されている事を考えても途轍もない相手と遭遇したとしか思えない。例えば……竜種とか」
「竜種……」
竜種が高原に住み着いた魔物達を食い散らした事により、高原内に生息していた魔物達は別の場所に住処を移住した可能性が出てきた事にルノ達は緊張感を抱く。氷自動車を停車させてルノ達はトロールの死骸を調べると、つい最近に殺されたばかりなのか死体は完全には腐っておらず、血の痕跡も新しい。
「……死体の様子からついさっきに殺されたとしか思えない。それにこの食い千切られた後、恐らくトロールを殺したのは大型の魔獣で間違いない」
「牙竜かな?」
「そこまでは分からない。でも、可能性は高い……?」
コトネがトロールの死骸を調べる際中、彼女は死骸から得体の知れない痕跡を発見して疑問を抱く。
「……どちらかというと高原という方が正しいと思う」
ルノとコトネが降り立った場所は草原というよりも高原という表現が正しく、遠目には大きな岩山や湖も確認出来た。恐らくは第三階層よりも広い事は間違いなく、試しにルノは飛翔術を利用して上空から様子を確認すると、これまでに訪れた第三階層や第四階層とは全く異なる風景が広がる。
「凄いな……天井や照明さえなければ外の世界にしか見えない。あいてっ!?」
飛び過ぎたせいでルノは天井部分に頭をぶつけてしまうが、確認した限りではこちらの階層は数キロほどの広さを誇り、第三階層よりも何倍もの広さが存在した。本当に建物の中なのか疑う程の広さを誇るが、天井が存在する時点でここが大迷宮内である事は間違いない。
地上に降りたルノはコトネと共に周囲の状況を確認すると、二人以外に高原には生物の姿は見えず、残念ながら近くにリーリス達は転移していないらしい。それでもナオならば千里眼と空間魔法の能力でルノ達を見つけ出して迎えに来てくれるのではないかと思ったが、5分以上経過しても現れる様子はなかった。
「う~ん……ここで待っていてもしょうがないし、皆を探しに行こう。まあ、多分だけど全員無事だと思うよ。あ、でもリーリスが少し心配かな」
「……デブリ王子とナオは平気だと思う。リーリスもああ見えて強いから平気」
「そういえば前にデキン大臣を吹き飛ばした事もあったよね。何気にリーリスって強いよね」
「一応は将軍職を任される程の強さは持っている。それに色々な薬を普段から常備しているからきっと大丈夫」
はぐれた三人とも全員が魔物に抗う能力を持ち合わせて居るため、ルノ達とはぐれたとしても問題ないと思うが、仮にここが第五階層だとした場合はどのような魔物が潜んでいるのか分からないため、用心して先に進む必要がある。久々にルノはスポーツカー型の氷塊を生み出し、コトネと共に移動を行う。
「こうして二人で乗るのなんて最初にあった頃以来じゃない?」
「……懐かしい、あれから1年ぐらい経っている」
「あ、そうか……もうそんなに経っているのか」
コトネの言葉にルノはこの世界に訪れてから何時の間にか1年も経過している事に気付き、もしも自分が元の世界に戻った時、地球とこちらの世界の時間の流れが同じだった場合を考えると不安に陥る。1年間も地球から離れていれば色々と問題もあり、地球では行方不明扱いされているだろう。
地球に戻った後にルノが通っていた高校に戻れるのかも分からず、同級生は既に二年生に上がり、自分一人だけが一年生のままだと考えると高校には通いにくい。それでも地球の家族や友人と再会したいという気持ちは強く、ルノは絶対に元の世界に戻るためにまずは仲間達の合流を急ぐ。
「コトネ、何か気付いたらすぐに教えて」
「分かった。でも、さっきから変な感じがする……こんな見晴らしのいい場所なのに魔物の姿が見えない。何処かに隠れている様子もない」
「え、本当に?」
氷自動車で移動を開始してから数分が経過したが、これまでにルノとコトネは一度も魔物の姿を見かけず、高原には1匹のゴブリンも存在しなかった。まさか魔物が生息していないはず階層があるとは思えず、実際に魔物の死骸と思われる骨などは見かけた。
「……死骸があるという事は魔物がこの場所にも生息している事は間違いない。なのにどうして姿を見せないのか……考えられるとしたら他の協力な魔物に住処を追われたとか」
「住処を追われたって……こんな広い高原の魔物達が全員逃げ出す程の大物が現れたの?」
「あくまでも推測、だけどもしも私の考えが当たっていたら、相手は相当に厄介な魔物で間違いない」
コトネは移動中に前方を指差すと、氷自動車の正面の方角に驚くべき光景が広がり、彼女が示した先には数体のトロールの死体が横たわっていた。しかも全ての死骸が獣に食い荒らされたように引きちぎられ、苦悶の表情を浮かべた状態で死亡していた。
「これは……トロールの死骸?」
「トロールは危険度がレベル3もある大物、しかもこれだけの数の魔物が殺されている事を考えても途轍もない相手と遭遇したとしか思えない。例えば……竜種とか」
「竜種……」
竜種が高原に住み着いた魔物達を食い散らした事により、高原内に生息していた魔物達は別の場所に住処を移住した可能性が出てきた事にルノ達は緊張感を抱く。氷自動車を停車させてルノ達はトロールの死骸を調べると、つい最近に殺されたばかりなのか死体は完全には腐っておらず、血の痕跡も新しい。
「……死体の様子からついさっきに殺されたとしか思えない。それにこの食い千切られた後、恐らくトロールを殺したのは大型の魔獣で間違いない」
「牙竜かな?」
「そこまでは分からない。でも、可能性は高い……?」
コトネがトロールの死骸を調べる際中、彼女は死骸から得体の知れない痕跡を発見して疑問を抱く。
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。