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外伝〈転移石を求めて〉

高原

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「ここは何処だろう……草原?」
「……どちらかというと高原という方が正しいと思う」


ルノとコトネが降り立った場所は草原というよりも高原という表現が正しく、遠目には大きな岩山や湖も確認出来た。恐らくは第三階層よりも広い事は間違いなく、試しにルノは飛翔術を利用して上空から様子を確認すると、これまでに訪れた第三階層や第四階層とは全く異なる風景が広がる。


「凄いな……天井や照明さえなければ外の世界にしか見えない。あいてっ!?」


飛び過ぎたせいでルノは天井部分に頭をぶつけてしまうが、確認した限りではこちらの階層は数キロほどの広さを誇り、第三階層よりも何倍もの広さが存在した。本当に建物の中なのか疑う程の広さを誇るが、天井が存在する時点でここが大迷宮内である事は間違いない。

地上に降りたルノはコトネと共に周囲の状況を確認すると、二人以外に高原には生物の姿は見えず、残念ながら近くにリーリス達は転移していないらしい。それでもナオならば千里眼と空間魔法の能力でルノ達を見つけ出して迎えに来てくれるのではないかと思ったが、5分以上経過しても現れる様子はなかった。


「う~ん……ここで待っていてもしょうがないし、皆を探しに行こう。まあ、多分だけど全員無事だと思うよ。あ、でもリーリスが少し心配かな」
「……デブリ王子とナオは平気だと思う。リーリスもああ見えて強いから平気」
「そういえば前にデキン大臣を吹き飛ばした事もあったよね。何気にリーリスって強いよね」
「一応は将軍職を任される程の強さは持っている。それに色々な薬を普段から常備しているからきっと大丈夫」


はぐれた三人とも全員が魔物に抗う能力を持ち合わせて居るため、ルノ達とはぐれたとしても問題ないと思うが、仮にここが第五階層だとした場合はどのような魔物が潜んでいるのか分からないため、用心して先に進む必要がある。久々にルノはスポーツカー型の氷塊を生み出し、コトネと共に移動を行う。


「こうして二人で乗るのなんて最初にあった頃以来じゃない?」
「……懐かしい、あれから1年ぐらい経っている」
「あ、そうか……もうそんなに経っているのか」


コトネの言葉にルノはこの世界に訪れてから何時の間にか1年も経過している事に気付き、もしも自分が元の世界に戻った時、地球とこちらの世界の時間の流れが同じだった場合を考えると不安に陥る。1年間も地球から離れていれば色々と問題もあり、地球では行方不明扱いされているだろう。

地球に戻った後にルノが通っていた高校に戻れるのかも分からず、同級生は既に二年生に上がり、自分一人だけが一年生のままだと考えると高校には通いにくい。それでも地球の家族や友人と再会したいという気持ちは強く、ルノは絶対に元の世界に戻るためにまずは仲間達の合流を急ぐ。


「コトネ、何か気付いたらすぐに教えて」
「分かった。でも、さっきから変な感じがする……こんな見晴らしのいい場所なのに魔物の姿が見えない。何処かに隠れている様子もない」
「え、本当に?」


氷自動車で移動を開始してから数分が経過したが、これまでにルノとコトネは一度も魔物の姿を見かけず、高原には1匹のゴブリンも存在しなかった。まさか魔物が生息していないはず階層があるとは思えず、実際に魔物の死骸と思われる骨などは見かけた。


「……死骸があるという事は魔物がこの場所にも生息している事は間違いない。なのにどうして姿を見せないのか……考えられるとしたら他の協力な魔物に住処を追われたとか」
「住処を追われたって……こんな広い高原の魔物達が全員逃げ出す程の大物が現れたの?」
「あくまでも推測、だけどもしも私の考えが当たっていたら、相手は相当に厄介な魔物で間違いない」


コトネは移動中に前方を指差すと、氷自動車の正面の方角に驚くべき光景が広がり、彼女が示した先には数体のトロールの死体が横たわっていた。しかも全ての死骸が獣に食い荒らされたように引きちぎられ、苦悶の表情を浮かべた状態で死亡していた。


「これは……トロールの死骸?」
「トロールは危険度がレベル3もある大物、しかもこれだけの数の魔物が殺されている事を考えても途轍もない相手と遭遇したとしか思えない。例えば……竜種とか」
「竜種……」


竜種が高原に住み着いた魔物達を食い散らした事により、高原内に生息していた魔物達は別の場所に住処を移住した可能性が出てきた事にルノ達は緊張感を抱く。氷自動車を停車させてルノ達はトロールの死骸を調べると、つい最近に殺されたばかりなのか死体は完全には腐っておらず、血の痕跡も新しい。


「……死体の様子からついさっきに殺されたとしか思えない。それにこの食い千切られた後、恐らくトロールを殺したのは大型の魔獣で間違いない」
「牙竜かな?」
「そこまでは分からない。でも、可能性は高い……?」


コトネがトロールの死骸を調べる際中、彼女は死骸から得体の知れない痕跡を発見して疑問を抱く。
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