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外伝〈転移石を求めて〉
大迷宮探索
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「あれ?ここ、さっき通らなかった?」
「……通っていない。構造が似ているけれど、残した目印がないからここは別の場所」
「そういえばさっきルノさんが壁に残した傷がありませんね。なるほど、こういう風に似たような通路をいくつも作り出して探索者の方向感覚を乱そうとしてるんですね」
「ぬうっ……なんと面倒な場所だな」
「コトネが居てくれて助かったよ」
「えっへん」
コトネのお陰でルノ達は道に迷って元の場所に戻る事もなく、先に進む事に成功する。歩き始めてから大分時間は経過しているが未だに他の人間どころか魔物とも遭遇しておらず、ルノ達は迷宮内を歩き回っていた。
「それにしても何にも現れないな……大迷宮というぐらいだからいっぱい魔物が出てくる場所かと思っていた」
「……私が一人で訪れた時はもっと魔物と遭遇した。だけど、今回は妙に魔物の数が少ない気がする」
「まあ、別にいいじゃないですか。余計な戦闘をせずに済むなら一番です」
「いや、そういう訳にもいかなさそうだよ。前の方から気配を感じる」
コトネの後に続いていたナオが皆を引き留め、前方の通路の突き当りの左右の通路に視線を向け、右側の方から強い気配を感じとる。ナオが指摘した直後に右の通路からルノにとってはよく見覚えがある魔物が姿を現す。
「ブモォオオオッ……!!」
「あれは……ミノタウロス!?ここには魔人族も生息してたんですか!!」
「驚いた!!でも、ルノ君が飼っているミノタウロスと違って肌色が黒なんだね」
「……これは強敵、油断しない方が良い」
「ふっ……ミノタウロスか、今の僕にぴったりの相手だな!!」
通路の奥から現れたのは全身が黒毛に覆われたミノタウロスだった。ミノタウロスはルノが飼育している種と比べても体格は小さく、頭部の角も小さかった。だが、冒険者の死骸から剥ぎ取ったのかミスリル製の鎧に両手に血塗れの鉞を抱え、口元にこびり付いた血を舌で舐めとる。
ミノタウロスはルノ達の姿を発見すると、醜悪な笑みを浮かべて鉞を握り締め、逃がさないとばかりに両手を広げて歩み寄ってきた。ルノが飼育しているミノタウロスは外見は怖いが実際は面倒見がよく、優しい性格である。しかし、こちらのミノタウロスに関しては人間を餌としか認識しておらず、躊躇なくルノ達に向けて襲い掛かった。
「ブモォオオオッ!!」
「来ますよ!!皆、気をつけて下さい!!」
「ここは僕に任せろ!!」
デブリが突進を仕掛けてきたミノタウロスに対して両手を構えると、正面からミノタウロスの巨体を受け止めようとする。だが、相手はデブリに接近すると両手の鉞を振り翳し、彼の肉体を斬りつけようとしてきた。
「ブフゥッ!!」
「危ないデブリ王子!!」
「……させないっ」
鉞がデブリに触れる直前、ナオは「指弾」の戦技で足元の小石を放ち、ミノタウロスの右手に的中させて鉞を手放させる。その一方でコトネの方も短剣を引き抜くと空中に跳躍して振りぬかれた鉞の刃を別方向に受け流す。
「ブモォッ!?」
「うおおおっ!!」
両手の鉞を弾かれたミノタウロスに対してデブリは突進すると、アマレスの選手のようにタックルを行い、ミノタウロスの巨体を地面に倒す。慌ててミノタウロスは起き上がろうとしたが、デブリは先にミノタウロスの胴体に乗り込み、拳を叩き下ろす。
「おらおらおらっ!!」
「ブフゥッ!?ブモッ……ブギャアッ!?」
「うわ、凄い光景ですね……森人族がミノタウロスを殴り倒すなんて滅多に見れる光景じゃないですよ」
「デブリ王子本当に凄い……」
顔面に向けて容赦なくデブリは拳を叩き込み、ミノタウロスは必死に腕を組んで防ごうとするが、他種族に比べれば筋力に恵まれないはずの森人族から繰り出されるとは思えない程の拳の威力にミノタウロスは鼻血を噴き出す。だが、やはり体格差があるのでミノタウロスは上体を反らしてどうにかデブリ王子を振り払うと、鉞を掴んで無我夢中に振り回す。
「ブフッ……ブモォオッ!!」
「うわっ!?危ない!?」
「回避っ」
「ルノさんガード!!」
「わあっ!?人を盾にしないでよ!!」
無茶苦茶に振り回された鉞を慌ててルノ達は回避する中、デブリはボクシングのフットワークのような足取りで動くと、冷静にミノタウロスが振り払う鉞を回避しながら接近する。
「拳打!!」
「ブフゥッ!?」
格闘家が扱う「拳打」と呼ばれる戦技を発動させたデブリはミノタウロスの腹部に強烈な拳を叩き込み、相手が怯んだ隙に更に追撃を加えた。
「連打!!」
「ガハァッ!?」
先ほど同じ個所に拳を更に叩き込まれたミノタウロスは耐え切れずに吐血し、立っている事もままならずに跪く。それを好機と判断したデブリは右足を掲げると、勢いよく振り下ろす。
「必殺!!踵落としぃっ!!」
「ブフゥウウウッ!?」
強烈な踵落としがミノタウロスの頭部に叩きつけられた瞬間、頭蓋骨が陥没するほどの威力で叩き込まれたミノタウロスは白目を剥き、地面に倒れた。その光景を見て居たルノ達は呆気に取られ、リーリスは愕然とする。
「ええっ……ひ、一人でミノタウロスを倒しましたよこの人!?というか、森人族が素手でミノタウロスを殺すなんて……」
「王子凄すぎる……」
「デブリも頼もしくなったね」
「はっはっはっ!!どうですか師匠!?僕も強くなって……あいだぁあああっ!?」
「デブリ王子!?」
「あ、でも流石に損傷はあったようですね……」
踵落としを決めて誇らしげに振り返ろうとしたデブリだったが、直後に自分の右足を抑えて地面に転がり込む。どうやら攻撃の際に足首を捻ったらしく、仕方なくリーリスは治療を行う。
「……通っていない。構造が似ているけれど、残した目印がないからここは別の場所」
「そういえばさっきルノさんが壁に残した傷がありませんね。なるほど、こういう風に似たような通路をいくつも作り出して探索者の方向感覚を乱そうとしてるんですね」
「ぬうっ……なんと面倒な場所だな」
「コトネが居てくれて助かったよ」
「えっへん」
コトネのお陰でルノ達は道に迷って元の場所に戻る事もなく、先に進む事に成功する。歩き始めてから大分時間は経過しているが未だに他の人間どころか魔物とも遭遇しておらず、ルノ達は迷宮内を歩き回っていた。
「それにしても何にも現れないな……大迷宮というぐらいだからいっぱい魔物が出てくる場所かと思っていた」
「……私が一人で訪れた時はもっと魔物と遭遇した。だけど、今回は妙に魔物の数が少ない気がする」
「まあ、別にいいじゃないですか。余計な戦闘をせずに済むなら一番です」
「いや、そういう訳にもいかなさそうだよ。前の方から気配を感じる」
コトネの後に続いていたナオが皆を引き留め、前方の通路の突き当りの左右の通路に視線を向け、右側の方から強い気配を感じとる。ナオが指摘した直後に右の通路からルノにとってはよく見覚えがある魔物が姿を現す。
「ブモォオオオッ……!!」
「あれは……ミノタウロス!?ここには魔人族も生息してたんですか!!」
「驚いた!!でも、ルノ君が飼っているミノタウロスと違って肌色が黒なんだね」
「……これは強敵、油断しない方が良い」
「ふっ……ミノタウロスか、今の僕にぴったりの相手だな!!」
通路の奥から現れたのは全身が黒毛に覆われたミノタウロスだった。ミノタウロスはルノが飼育している種と比べても体格は小さく、頭部の角も小さかった。だが、冒険者の死骸から剥ぎ取ったのかミスリル製の鎧に両手に血塗れの鉞を抱え、口元にこびり付いた血を舌で舐めとる。
ミノタウロスはルノ達の姿を発見すると、醜悪な笑みを浮かべて鉞を握り締め、逃がさないとばかりに両手を広げて歩み寄ってきた。ルノが飼育しているミノタウロスは外見は怖いが実際は面倒見がよく、優しい性格である。しかし、こちらのミノタウロスに関しては人間を餌としか認識しておらず、躊躇なくルノ達に向けて襲い掛かった。
「ブモォオオオッ!!」
「来ますよ!!皆、気をつけて下さい!!」
「ここは僕に任せろ!!」
デブリが突進を仕掛けてきたミノタウロスに対して両手を構えると、正面からミノタウロスの巨体を受け止めようとする。だが、相手はデブリに接近すると両手の鉞を振り翳し、彼の肉体を斬りつけようとしてきた。
「ブフゥッ!!」
「危ないデブリ王子!!」
「……させないっ」
鉞がデブリに触れる直前、ナオは「指弾」の戦技で足元の小石を放ち、ミノタウロスの右手に的中させて鉞を手放させる。その一方でコトネの方も短剣を引き抜くと空中に跳躍して振りぬかれた鉞の刃を別方向に受け流す。
「ブモォッ!?」
「うおおおっ!!」
両手の鉞を弾かれたミノタウロスに対してデブリは突進すると、アマレスの選手のようにタックルを行い、ミノタウロスの巨体を地面に倒す。慌ててミノタウロスは起き上がろうとしたが、デブリは先にミノタウロスの胴体に乗り込み、拳を叩き下ろす。
「おらおらおらっ!!」
「ブフゥッ!?ブモッ……ブギャアッ!?」
「うわ、凄い光景ですね……森人族がミノタウロスを殴り倒すなんて滅多に見れる光景じゃないですよ」
「デブリ王子本当に凄い……」
顔面に向けて容赦なくデブリは拳を叩き込み、ミノタウロスは必死に腕を組んで防ごうとするが、他種族に比べれば筋力に恵まれないはずの森人族から繰り出されるとは思えない程の拳の威力にミノタウロスは鼻血を噴き出す。だが、やはり体格差があるのでミノタウロスは上体を反らしてどうにかデブリ王子を振り払うと、鉞を掴んで無我夢中に振り回す。
「ブフッ……ブモォオッ!!」
「うわっ!?危ない!?」
「回避っ」
「ルノさんガード!!」
「わあっ!?人を盾にしないでよ!!」
無茶苦茶に振り回された鉞を慌ててルノ達は回避する中、デブリはボクシングのフットワークのような足取りで動くと、冷静にミノタウロスが振り払う鉞を回避しながら接近する。
「拳打!!」
「ブフゥッ!?」
格闘家が扱う「拳打」と呼ばれる戦技を発動させたデブリはミノタウロスの腹部に強烈な拳を叩き込み、相手が怯んだ隙に更に追撃を加えた。
「連打!!」
「ガハァッ!?」
先ほど同じ個所に拳を更に叩き込まれたミノタウロスは耐え切れずに吐血し、立っている事もままならずに跪く。それを好機と判断したデブリは右足を掲げると、勢いよく振り下ろす。
「必殺!!踵落としぃっ!!」
「ブフゥウウウッ!?」
強烈な踵落としがミノタウロスの頭部に叩きつけられた瞬間、頭蓋骨が陥没するほどの威力で叩き込まれたミノタウロスは白目を剥き、地面に倒れた。その光景を見て居たルノ達は呆気に取られ、リーリスは愕然とする。
「ええっ……ひ、一人でミノタウロスを倒しましたよこの人!?というか、森人族が素手でミノタウロスを殺すなんて……」
「王子凄すぎる……」
「デブリも頼もしくなったね」
「はっはっはっ!!どうですか師匠!?僕も強くなって……あいだぁあああっ!?」
「デブリ王子!?」
「あ、でも流石に損傷はあったようですね……」
踵落としを決めて誇らしげに振り返ろうとしたデブリだったが、直後に自分の右足を抑えて地面に転がり込む。どうやら攻撃の際に足首を捻ったらしく、仕方なくリーリスは治療を行う。
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